ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第13話 駆けるガンダム

 

ドレイクが提案した作戦は戦力を二つの役割に分けることになる。

 

単独で高火力を発揮するムウのメビウス・ゼロが、隕石群に隠れながら隠密行動を取り、前方に布陣したナスカ級を急襲。敵の足を奪う。

 

その間、アークエンジェルならびにクラックスの護衛兼、囮役としてメビウスライダー隊とキラのストライクが敵と交戦する筋書きだ。

 

《くれぐれも落とされるなよ?いざとなれば逃げ回ればいい。相手がそれを追えば仲間がフォローしてくれる。メビウスライダー隊を信じろ》

 

ドレイクの言葉を、キラはストライクのコクピットで静かに聞いていた。ブリーフィングを終えたキラとムウは、ハンガーへ赴き、それぞれの機体へと乗り込んで待機している。

 

アークエンジェルの射出カタパルトにムウのメビウス・ゼロが運び込まれて行くのが見えた。

 

《という訳だ。キラ、君のコールサインは一時的だがライトニング3になる。リークはライトニング2、俺はライトニング1だ。モビルアーマーとモビルスーツの混成隊だが、うまく連携していこう》

 

アークエンジェルの左側で並行する護衛艦クラックスでも、同じように出撃準備が整えられていた。

 

ギリギリまで続いた調整を何とか終えたメビウス・インターセプターに乗るラリーが、短距離レーザー通信でキラにそう告げる。

 

あくまで軍属でないから仮だな、というムウの声。りょ、了解とキラはぎこちなくラリーの通信に答えた。

 

《キラ君、とにかく、艦と自分を守ることだけを考えて。戦闘は俺たちがフォローする。君は君ができることを精一杯するんだ》

 

「は、はい!ありがとうございます、ベルモンド少尉」

 

ゆっくりと開いて行くゲート。その先には漆黒の宇宙が広がっている。ふと、キラはストライクに乗る寸前に出会った、幼馴染のことを思い出した。

 

アスラン・ザラ。

 

彼はたしかに、ザフトのノーマルスーツを着ていた。そして、そのままG兵器へと乗り込んで、コロニーを無茶苦茶にして、飛び去っていった。

 

(…アスラン…本当に君なのか?…コロニーを攻撃したのも…この船を沈めに来るのも…)

 

《メビウス・ゼロ、フラガ機、リニアカタパルトへ!》

 

そんな考えに耽っていると、ハンガー内に管制官の声が響く。カタパルトを見ると、ムウの機体が既に射出態勢に入っていた。

 

《了解!ムウ・ラ・フラガ、ライトニングリーダー、出るぞ!ボウズも、アークエンジェルも、戻ってくるまで沈むなよ!》

 

「は、はい!大尉もお気をつけて…!」

 

ガシュゥッという金属のスライドする音ともに、メビウス・ゼロが宇宙へと放たれた。

 

《ローラシア級、後方50に接近!もうまもなくだ!》

 

《こちらメビウスライダー隊、ラリー・レイレナード、ライトニング1、発艦する!》

 

《同じくメビウスライダー隊、リーク・ベルモンド、ライトニング2、出撃します!》

 

《メビウスライダー隊の配置が完了し次第、メインエンジン始動!ストライク、発進位置へ!カタパルト接続。システム、オールグリーン!》

 

戦闘が始まる…。ヘリオポリス近域で戦った時とは別の緊張感がキラを包み込んで行く。隠密先行、そして前の敵を討つ。その間、自分たちが敵を引きつけながら後方の敵から艦を守る。

 

果たして、うまくいくのか。

自分の出来ることは、なんなのか。

ただ、モビルスーツを動かすことしかできない自分に何が出来るのか。

 

呼吸が荒くなっていくのが自分でもわかった。

 

《キラ!》

 

コクピットに響いたのは慣れ親しんだ声。キラはバイザー越しに通信モニターを見ると、そこにはインカムをつけたミリアリアが写っていた。

 

「ミリアリア!?」

 

《以後、私がモビルスーツ及びモビルアーマーの戦闘管制となります。よろしくね!》

 

《よろしくお願いします、だよ》

 

学友に対してだからか、ラフに喋るミリアリアを同じく管制官を務める下士官が優しく窘めた。

 

《そんな可愛い子が戦闘管制官か、キラ君が羨ましいよ》

 

《何か言ったか?ライトニング2》

 

レーザー通信から聞こえたリークのぼやきに、クラックスの管制官が「ほほう」と、やや怒気を含んだようにリークに詰め寄る。リークは《あー》とか《うー》とか言いながら、返答に困っているようだった。

 

《こちらは早期警戒管制室のAWACS、「オービット」だ。キラ・ヤマトくん、君は軍属ではないが、メビウスライダー隊に所属するならこちらの指揮系統は理解しておいてもらいたい》

 

「AWACS…ですか?」

 

《あー。簡単に言えば、目標の探知、敵機の判別や友軍機への指示といった、「データ・リンク」という役割を果たす事になる。前回までは突発的なトラブルだったため、メビウスライダー隊が指揮を取っていたが、今回からはこちらから指示を出す。各機は戦闘に集中してほしい》

 

《へそ曲げるなよー、ニック》

 

《ライトニング1、本名で呼ぶのはやめてくれ》

 

そう言って冗談めいたように笑うメビウスライダー隊の面々。キラの抱えていた緊張感もどこかに抜け去っていて、出撃前とは思えない穏やかな空気が流れる。

 

そんな空気を、ナタルが咳払いをひとつ零して、改めて引き締め直した。

 

《私語は慎むように!ストライクの装備はエールストライカーを。アークエンジェルが吹かしたら、あっという間に敵が来るぞ!いいな!》

 

「…はい!」

 

《キラ・ヤマト!ストライク発進だ! 》

 

カタパルトにストライクが乗り、背部にエールユニット、そして両腕に武装と盾が装備されて行く。カタパルトの先に広がる宙を見つめて、キラはさまざまなことを思い返す。

 

今、この艦を守れるのは、俺たちだけなんだぜ?

 

お前にばっか戦わせて、守ってもらってばっかじゃな。

 

こういう状況なんだもの、私たちだって…

 

みんな、戦ってる。大切なものを守るために。

 

だから…!

 

「キラ・ヤマト!ガンダム!行きます!!」

 

 

////

 

 

「よーし、出たなライトニング3。まずは俺たち三人でエレメントを組むぞ」

 

アークエンジェルから飛び出したストライクを挟むように、俺とリークがキラの両隣を飛ぶ。今回のメビウスライダー隊は、俺たち三人で1小隊という扱いになる。

 

《わ、わかりました!》

 

ぎこちなくキラは答えるものの、その操縦に淀みはなくしっかりと俺たちの飛行に合わせて飛んでいる。

 

《オービットより、メビウスライダー隊へ!後方より接近する熱源3、距離67、モビルスーツだ》

 

来たな。俺は来るべき敵との遭遇を目前にして意識を研ぎ澄ます。今回の敵は今までのモノとは比べものにならない。リークもキラも、同じように意識を鋭く、あたりを警戒しているようだった。

 

《対モビルスーツ戦闘、用意!ミサイル発射管、13番から24番、コリントス装填、リニアカノン、バリアント、両舷起動!目標データ入力、急げ!》

 

《イーゲルシュテルン対空迎撃用意!こちらもミサイル発射管、6番から13番へ、ヘルダート装填!急げよ!》

 

アークエンジェルも、それを護衛するクラックスも後方から迫る敵艦に備えて迎撃準備を整える。そんな中で、アークエンジェルの管制官は最悪の情報を入手した。

 

《機種特定…これは…Xナンバー、イージス、デュエル、バスター、ブリッツです!》

 

《なにぃ!?》

 

管制官の報告に、ナタルが信じられないような声を上げた。艦長であるマリューも、敵が打ってきた最悪のカードに動揺するしかない。

 

《奪ったGを全て投入してきたというの…?》

 

《なんてこった!ライトニング1!敵はこちらの新兵器だ!警戒レベル最大に引きあげろ!》

 

その場にいる誰もがパニックだった。

 

俺を除いて。

 

G兵器が出てくることは想定済みだ。だが、想定できたところで変わることはない。今はただ、最善の策を講ずるしかないのだ。

 

 

 

////

 

 

赤服が駆るG兵器を見送ったクルーゼは、仮面の下で笑っていた。

 

敵もまさか奪われたばかりのG兵器と戦うことになるとは思うまい。

 

強化APSV弾でも傷一つ付かないフェイズシフト装甲に、ジンを遥かに上回る機動性。

 

そしてそれを操るのはコーディネーター。

 

さて、どう凌ぐ?流星のパイロット。

 

クルーゼの関心はそこにあった。イザークやアスランたちの戦果よりも、それと相対した敵の戦いぶりの方に興味がある。

 

地球軍がモビルスーツに対抗するために準備した「対モビルスーツ戦」に特化した機体。まともに考えれば、ジンどころか、シグーでも苦戦は必至。モビルアーマーなど手も足も出ないはず。

 

この戦いで、自分が一目を置く「流星」は生き残ることができるのか?または、それ以上のことを成すのか?それともここで沈む程度の器なのか。

 

見定めさせて貰おう。

 

クルーゼはただそれを思い、小さく笑うだけだった。

 

 

 

 

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