ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第155話 The Unsung War 5

 

 

 

「ラミアス艦長!!」

 

「地球軍の新型!?それも別方向から…バーフォード艦長の動きは!?」

 

「同じく困惑している模様!あっ!ブルー25、チャーリーに艦影確認!ライブラリ照合ーーアガメムノン級です!」

 

いきなり現れた地球軍の信号反応を示す新型機。付け加えるように現れたのは、その新型の母艦であろうアガメムノン級の宇宙戦艦だ。

 

「こんなところに!?」

 

そう言ってマリューはすぐさま思考を走らせる。おそらく、あの船はアズラエル理事やバーフォード艦長の指揮するドミニオンとは、別口でこちらにやってきている。

 

ドミニオンは囮?この新型機の攻撃が本命というなら、まだ消耗していないこのタイミングで攻めてくる理由が説明できない。

 

となればーー。

 

《ラミアス艦長!》

 

そんなマリューの思考を止めたのは、急遽映像通信をよこしてきたバーフォードだった。

 

「バーフォード艦長!これは一体!」

 

普段見せない怒りの形相をするバーフォードに戸惑うマリューだったが、向こうは「戦闘は停止だ!」と力強く言葉を紡ぐ。

 

《それより暗号通信だ!コードは送った!くそ!やつらめ!》

 

すぐさま通信オペレーターが暗号コードを受け取ると、一瞬くぐもった声を発して、驚愕の表情を浮かべながらマリューの方へと振り返った。

 

そこに記されていた一文。

 

 

〝地球軍がNジャマーキャンセラーを手に入れた〟

 

 

その一報は、アズラエルの持つ裏側の情報筋からもたらされたものだった。

 

「バカな…!!どうやって手に入れたんだ!?」

 

そう言って戸惑うクルーを横目に、アズラエルは握り拳を作って送られてきたデータの詳細を見つめる。出所ははっきりしないが、今はそれは問題ではない。1番まずいのは地球軍側が核を使えるという事実だ。

 

「アズラエル理事!」

 

「くそ!最悪の相手に最悪の情報が回った!やつらめ!容赦なく核を使うつもりだぞ!?」

 

情報によれば、地球軍の主力艦隊に核が搭載され、明朝にはプラントに向けて進行が開始されるということだ。ただ、目的地は不明、地球軍側も今回の作戦には細心の注意と機密性を持たせてる。それほどまでに打つというのかーーーあの愚かな核を!!

 

「なにが青き清浄なる世界だ!何が野蛮なコーディネーターを浄化するだ!!こいつらの方が遥かに野蛮だ!!その世界を核で汚しては元も子もないじゃあないか!!」

 

アズラエル自身、高価な兵器を作って飾っておくより、それは使うためにあるという持論は持っている。だが、それはあくまで自身の身を守るため。立つ場所すら失う兵器を平然と使うなどーーそんなことをさせないために、自分はこの博打にチップをかけたというのに。

 

「アークエンジェルに通信を繋げ!それに〝彼ら〟にも!!僕らに与えられた時間はもう無いぞ!」

 

「了解!」

 

もはや試験などいう猶予すら無くなった。紳士的な模擬戦はここまで。ここから先、時間の猶予はない。

 

 

////

 

 

黄色部隊、ウィリアム・サザーランド直轄の特殊部隊である彼らの母艦、シンファクシのブリッジで、艦長は黄色部隊のメンバーが投入され、混乱状態となりつつある戦場を眺めながらニヤリと笑みを浮かべる。

 

『さて、では終幕と行こう。ゴットフリート、照準!目標、アークエンジェル、ドミニオン!てぇ!』

 

艦首に備わったゴットフリート2門が、容赦なく動きが鈍っているアークエンジェルとドミニオンへと向けられ、その砲口から緑の極光が宇宙へ線を描いた。

 

「回避!」

 

「撃ってきた!?アイツらも地球軍じゃないのか!?」

 

距離もあったのか、間一髪で避けることができたが、戸惑っている二隻への攻撃の手は緩めない。艦長はサザーランドから受けた指示を実直に遂行していく。

 

『アズラエル理事、貴方にはここで果てて頂く。青き清浄なる世界のためにね』

 

ブルーコスモス盟主であるムルタ・アズラエル。彼の一族が築き上げたアズラエル財団とはいえ、流星に対する財団の私的利用に、その無茶な要望を聞く財団関係者の中にも不満を持つ者はいるわけで。

 

財団の運営を牛耳るアズラエルが居なくなれば、都合がいい財団関係者とは、すでに契約は交わしてある。彼が居なくなれば、財団はブルーコスモスが望む形へと立ち戻ることになるだろう。

 

『ロベルタ隊、発進。目撃者は全て抹消せよとのオーダーだ!』

 

そう命令を発し、黄色部隊の機体の他に搭載されていた、特殊攻撃用の漆黒のダガー隊が発進していく。すぐに後援の部隊も合流する。

 

彼は邪魔なのだよ、我々が望む青き清浄なる世界にはな。そう言ったサザーランドを思い返しながら、艦長は飛び立っていく部隊を見つめた。

 

そうだとも。

 

すでに我々は戸口に立っている。

 

青き清浄なる世界へ連なる道筋に。

 

 

////

 

 

 

「このぉ!」

 

降って湧いたように現れた黄色部隊とダガーの軍勢に、出撃したアサギとマユラは苦戦を強いられていた。

 

まだM1アストレイも整備が完全じゃないというのに。R型を先行して整備していたおかげで、なんとか出撃できた二人だが、こうも数を投じられると戦いにくい。それに数機相手にしただけだが、アサギには理解できた。

 

このパイロットたちは、相当の手練れだ。

 

「アサギ!」

 

そんな思考が頭を掠めた最中、アサギの前に一機のダガーが迫る。ジュリの悲鳴のような叫びに目を見開く。向けられた銃口が物語る自分の死ーー指が、あれだけ訓練したというのに、まるで石になったかのように動かない。

 

固まったアサギの前に光が広がっていく。迫る死の恐怖にギュッと目を瞑ったアサギだったが、身を包むような熱さや苦痛は、いつまで経ってもやってはこなかった。

 

《よく持ち堪えた、グリフィス隊!これよりアンタレス隊も合流する!!》

 

その通信音声にアサギが目を開くと、目の前にいたはずのダガーはコクピットに大穴を上げて宇宙を漂っていて、やがて爆発した。

 

入れ替わるように現れたのは、宇宙用のOSに書き換えられたM1アストレイの編隊を連れた、PJの機体だ。

 

《各機、敵機をメンデル港に近づけるな!!連携して撃破しろ!》

 

自身たちの後ろからは、搬入作業を終えたヒメラギが、ハインズの指揮のもと港から出ては、戦線に加わっている。デブリのワイヤーから脱したクサナギも合流した。

 

中規模の三隻からなる艦隊編成によって、戦況の混乱は少しずつではあるが回復の兆しを見せ始めていた。

 

「リーク!どういうことだ!?」

 

キラたちとは離れた場所で切り結んでいたラリーとリークも、突如として現れた新型機の対応に回ることになる。

 

地球軍はお前の管轄だろ!?と叫ぶラリーに、リークも怒声のような声で言い返した。

 

《詳しい説明はあとだ!ラリー!とにかくエレメントを!オルガ!プラン4を適用!すぐにフリーダムたちと連携をとって!》

 

《了解!おらぁ!聞こえたか!戦闘はやめだ!》

 

そう言ってメビウスライダー隊の通信回線へ割り込んだリークとオルガたちも、さきほどまで散々キラたちを苦しめていた戦闘をやめて、隣に並び立つように向かってくる黄色部隊とダガーの軍勢を前に体制を立て直した。

 

「そんなの信じられーーキラ!?」

 

突然のことに動揺するアスランを他所に、キラのフリーダムはオルガたちのもとへ戻ってきたリベリオンの元へと向かう。

 

咄嗟にオルガがフリーダムから守るようにリベリオンの前へと出ようとしたが、リークはそれをシールドを使って柔らかく制した。

 

「ベルモンド大尉!」

 

《キラくん…》

 

「僕らは、メビウスライダー隊。ですよね」

 

リークと別れてから起こったこと、まるで今までのことを全て話すような声色で、キラは瞳を潤ませながらリークへと言葉を紡ぐ。

 

それを聞いたリークは少し口を開いて声を潜めてから、優しく笑みを浮かべて頷いた。

 

《ああ、そうだ。僕らはメビウスライダー隊。生きて、生き延びて、使命を果たす…!だから!》

 

リークの言葉を聞いて、キラも納得したのか、すぐに踵を返してアスランのジャスティスの隣へと並んだ。

 

「アスラン!エレメントを!新しくきた相手を叩く!」

 

「ああもう!どうなってもーーー」

 

乱戦状態へと陥り始めた戦場で、アスランが全くと言った様子で前を見据えた時だった。

 

背後にあるメンデルのコロニー外壁部で爆発が起き、その爆煙と炎を突き抜いた光が真っ直ぐとこちらに向かって飛び込んできた。

 

「ぐわあああぁーーー!!!」

 

通信機越しに聞こえたのは、ムウの苦しげな声だ。高速でやってきた光が押し出すように連れてきたのは、片足と腕を吹き飛ばされたランチャーストライクだ。

 

「隊長!?」

 

《ストライク!?被弾してる…!はっ!》

 

誰もが戸惑う中、ボロボロになったランチャーストライクの頭部をアイアンクローのように持ちながら、一機のモビルスーツが星空の海を背に、ラリーのホワイトグリントを見下ろしている。

 

その輪郭はまるで悪魔のような翼を広げたバケモノのように、その場にいる誰の目にも見えた。

 

《やぁ、会いたかったぞ、ラリー…!!》

 

「げぇ!!クルーゼ!!!」

 

そう言ってプロヴィデンス・セラフ・ヴィクトリアのコクピットの中で、クルーゼはニヤリと笑みを浮かべた。

 

さて、前菜は終わった。ここからがお楽しみだ…!!!

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要
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