ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第156話 勢力のフルーツバスケット

 

 

『貴様っ!よくも…よくも!ジュール様の機体でっ!』

 

苦しむような、呻くような声を発しながら、自制心を失ったシホ・ハーネンフースは、目の前にいるデュエルへと飛びかかっていた。

 

二連装ビームクローを閃光と化して、デュエルの装甲を食い破らんと蒼いゲイツは何度も何度もその腕を振るうが、デュエルを操るイザークは巧みにその刃をひらりと避ける。

 

「青い機体…鳳仙花!?ハーネンフースか!?」

 

シホ・ハーネンフース。

 

ザフトの赤服の一人であり、訓練学校時代では、イザークが彼女の戦闘技術と蒼い機体を好んでいることについて、彼女の特徴を鳳仙花の種に例えたことがあった。

 

その後、イザークは赤服として数々の任務に従事することになり、ソロモン海峡の戦いを経て、デュエルを再受領した際に、運んできたメンバーの中にシホの姿があり、それっきり連絡も取れずにオーブへと渡ることになったのだった。

 

もともと実験機であるシグー・ディープアームズを与えられていた彼女の腕前は本物であり、新型であるゲイツの攻撃を避けることにイザークは全神経を総動員しなければならないほどの技量であった。

 

「イザーク!!」

 

気がつけばシホとイザークも、突貫していったクルーゼのセラフ・ヴィクトリアと同じように港口へと流れ込んでしまい、ヒメラギを護衛するディアッカの言葉で、背後から漆黒のダガー隊が近づいてきているのがわかった。

 

『こんのぉおおおーー!!』

 

「ちぃい!こんなところでぇ!!」

 

シホの咆哮と共に振り下ろされたビームクローをシールドでいなしたイザークは、そのままシホを傷つけないようにシールドバッシュで弾き飛ばすと、後ろから迫るダガー隊へビームライフルを放った。

 

《そうか、メビウスライダー隊が揃い踏みか!!ここでこうして戦えるとはな!はっはっは!!私も嬉しいよ、ラリー!!》

 

そんなイザークたちに見向きもしないで、クルーゼはセラフ・ヴィクトリアに備わる大口径砲塔を展開して、宇宙に驚愕して浮かぶラリーのホワイトグリントへ狙いを定めた。

 

ヴィクトリアユニットに備わるのは、単純な火力だ。多武装なプロヴィデンス・セラフに加えて、200mmサイズの巨大な砲弾を多連装式に詰め込んだ装備であり、その姿はまさに悪魔の翼だ。

 

しかもその大型弾頭は、ラリーたち流星とクルーゼ隊の戦いで集められたデータから導き出されたHEIAP弾の技術が応用されており、直撃時は摂氏3000度の高温と、180mmのタングステン弾核がモビルスーツのフレームごと食いちぎると言ったものだった。

 

それを多連装で両翼からバカスカと撃ってくる上に、セラフに元々備わる垂直ミサイルや、チェーンビームガンに、ビームキャノン砲まで襲いかかってくる鬼畜仕様だ。しかも弾のほとんどがラリーの元へと撃ち込まれている。

 

『よそ見をしている暇があると思っているか!流星!!』

 

そして目を離せば鼻先まで迫ってきては、ビームブレードを煌めかせてスライスしてこようとする奴と、逃げようものなら中近距離のライフルで牽制し、隙があればそれで突き刺そうとしてくる黄色部隊のモビルスーツ二機。

 

オーブで相手をした機体だったら、クルーゼのセラフ・ヴィクトリアの砲撃と波状攻撃に巻き込まれてやられているだろうが、この二機は別格に強い。ちゃんとクルーゼの攻撃を掻い潜った上で、隙があったら容赦なく攻撃を叩き込んでくる猛者だ。

 

「右も左も敵だらけだ!!」

 

付け加えるように攻撃を放ってくるダガー隊の攻撃をなんとか凌ぎながら、リークはオルガたちを指揮しながら悲鳴のような声でそう叫んだ。

 

右を向けばザフト、前を向けば黄色部隊、左を向けば地球軍の艦船とダガーの群れ。こちらもアストレイ隊とキラやアスランたちも対応しているものの、現場は完全な混乱状態に陥っていた。

 

『はぁああ!!』

 

「くっそー!!ハーネンフースならよせ!!」

 

ゲイツから放たれるビームライフル、背後のダガー隊からくるビームの嵐。その中でディアッカのバスターと背中合わせをしながら、イザークは思考を高速で回していた。

 

「イザーク!こうも敵が多いと!」

 

わかっていると、ディアッカの泣き言のような声を黙らせる。こうも混戦状態では、シホに気を使いながら戦闘をするなんて不可能だ。

 

しかし、ここで彼女を撃ってしまうことになるのは、イザークにとってはどうしても許せないことだった。敵だからと、知らぬから撃ててしまうことを考え直さなければならない。その答えを探すためにここにいるというのに、ここでシホを撃ってしまったら、ここに残った意味が消えて無くなってしまいそうな気がした。

 

彼は知っている。彼女の女性らしい笑顔を。それを敵だからと言って撃つのはーーー。

 

「ボサッとすんなよ!!邪魔!!」

 

二人の回線に声を割り込ませながら現れたのは、クロトのレイダーガンダムだった。

 

鉄球を高速で回転させ、アンチビームコーティングされたワイヤーでシホからのビームを防ぎながら、迷っているイザークの前に滑り込んだのだ。

 

「なにをぉ!?」

 

邪魔と言われて怒りを露わにするイザークを尻目に、クロトはビームの嵐の隙間を見極めると鉄球を一度戻して大きく息を吸い込んだ。

 

「でりゃあああ!!撃滅!!」

 

振り抜かれた腕から放たれる鉄球は、驚くほど早くシホのゲイツへと叩き込まれた。

 

『きゃあああー!!』

 

鉄球の当たりどころが良かったのか、シホのゲイツは片腕を大きくひしゃげさせて、コロニーメンデルとは別方向へと吹き飛んでいく。

 

「貴様…」

 

「アレ、撃ちたくなかったんだろ?邪魔だったからね」

 

それだけ言葉を交わすと、クロトはモビルアーマー形態へ変形し、すぐさまオルガたちとのフォーメーションへ戻っていく。

 

ぶっきらぼうな物言いではあったが、クロトの行動は足が早いレイダーを巧みに使い、戦場を観察、解析できている証拠だった。

 

レイダーは、その基本設計も対艦戦を重視したイージスに比べ、対MS戦を重視したものとなっている。

 

後期GAT-X機のフォビドゥン同様に、MS形態においても機動戦闘を行え、可変機構と機体特性を生かし、MAの機動性で敵を撹乱しつつ接近、瞬時にMSに変形して打撃を与え、再びMAに変形して離脱するという、レイダー(襲撃者)の名の通りの一撃離脱戦法を基本戦術としている。

 

加えて、リークの教導の中で見出された戦場での情報収集能力の向上も、パイロットであるクロトによって付加されており、その収集された情報はリアルタイムでドミニオン、AWACSであるスカイキーパーへと伝達される仕組みになっていた。

 

クロトがデュエルに加勢したのも、情報収集の中でシホのゲイツに困惑しているイザークの姿を目撃したからだろう。わざわざオルガの指示を無視し、隊列を離れて援護に来たほどだ。

 

そんなクロトの後ろ姿を見つめて、イザークはアラスカやパナマで見た、ナチュラルもコーディネーターも関係ない、人の善意による心の通じ合った瞬間を思い出した。

 

ーーきっと、彼もまた善意で動いたのだろう。

 

そう思いながら、イザークはディアッカと共にダガーをあしらい、中破したシホのゲイツを回収するべく動き始めた。

 

 

////

 

 

まさにめちゃくちゃだ。

 

前からはクルーゼ。気を抜けば新しく出てきた新型モビルスーツたち。そして距離をおけば湧いたように現れたダガー隊が襲いかかってくる。

 

ラリーは針の穴に糸を通すような作業を何十も繰り返すように、枝垂れ桜のような弾幕の合間を掻い潜りながら額から汗を流れさせる。

 

リークやオルガたちも応戦はしているが、目まぐるしく相手が入れ替わり、立ち代わり、攻守と機動戦と砲撃戦と、迎撃に追撃に、撃ち、撃ち、撃ち撃ち撃ち。

 

「くそー!!少しは落ち着けよ!お前らぁあ!!」

 

幾分か軽くなったホワイトグリントの驚異的な機動力に物を言わせて、クルーゼの背後に回り込んだラリーは、ビームサーベルを引き抜きながら、絶望的なまでに混迷する乱闘状況に声を上げる。

 

『よし、ここでーーッ!?』

 

そんなラリーの背後から近づいていたオルレアは、ビームブレードを構えながら襲い掛かろうとしていたところ、頭上から放たれた大型のミサイルの閃光によって行手を阻まれることになる。

 

「スレッジハマー、もう二発持って行け!!」

 

乱闘と化した戦場の遥か頭上。ラリーたちが捕捉できる範囲外から現れた機体は、ニコルのブリッツを懸架しながら、両翼のオプションに備わる4つのスレッジハマーの残りを更に吐き出した。

 

「間に合ったか!!ニコル!」

 

クルーゼとの切り結びから距離を開けたラリーは、上から降りてきたトールのメビウス・ハイクロスを見つめながら笑みを浮かべた。

 

「パージを!ここまでくれば!!」

 

ニコルの言葉通りに、トールは偵察のために懸架していたブリッツをミサイルのようにパージして離脱する。

 

ニコルのブリッツは、複合武装であるトリケロスを失った代わりに両手の改造が可能になり、そこに目をつけたハリーによって、高火力支援効果が期待できるガトリング砲と、180mm無反動砲を二問ずつ搭載することになった。

 

両手にガトリングと無反動砲を一門ずつ固定武装として取り付けられたブリッツは、トールのメビウスから離れると、群のように向かってきているダガー隊へ、その砲火の矛先を向けた。

 

「でえええい!!」

 

腰と脚部にも追加装備された小型ミサイルポッドも展開して、弾丸の嵐をお見舞いするブリッツに、ダガー隊はたまらずと言った様子で隊列を乱していく。

 

「トール!!時間通りだな!」

 

「遅れました!トール・ケーニヒ、メビウス・ハイクロス、ニコル・アマルフィ、ブリッツ・アサルトシフト、これより戦線に参加します!!」

 

アストレイ隊によってアークエンジェルへ運び込まれていくストライクの中にいるムウに、トールは敬礼をしながら答えた。

 

トールとニコルは、隠密性があるブリッツと共に偵察任務に出ており、メンデルが攻撃されている一報を受けて大急ぎで帰還を果たしたのだった。

 

偵察行動用の増槽をパージしたトールのメビウスの前に、黄色部隊の二機のモビルスーツが立ちふさがる。

 

『メビウス…つまり、奴が流星ーーモビルアーマーで戦い抜いてきた伝説か!!』

 

シュープリスから発せられた言葉と共に、トールは操縦桿を操り、モビルアーマー独特の機動を描いて二機と接敵していく。

 

面白い。伝説と呼ばれた流星ーーどれほどの力か、身をもって体感しようではないか!!

 

 

////

 

 

「うわぁ!」

 

「距離20、オレンジ15マーク1アルファ!アガメムノン級、来ます!」

 

シンファクシから放たれるゴットフリートが脇を掠める。アークエンジェルとドミニオン、クサナギは隊列を組んで、迫る黄色部隊の母艦との艦戦へ突入していた。

 

「ゴットフリート照準!3番から6番、ヘルダート、てぇ!!この距離では対モビルスーツ戦闘

だ!弾幕!!ラミアス艦長!!」

 

素早く指示を出すナタルの言葉に頷きながらマリューも艦の行く先を的確に指示していく。その後ろでは、クサナギを指揮するキサカもシンファクシに対して攻撃を放っていた。

 

《ゴットフリート、1番2番、てぇ!》

 

《しかし、敵の数が…!!ブルー52、アルファにドレイク級!二隻!》

 

向こうの艦長もやり手だ。ゴットフリートの予想を的確にした回避を見せるシンファクシを見つめながら、マリューは嫌な汗を流す。

 

加えて右から挟撃するようにドレイク級も追加されているとなると、長期戦になればこちらが不利になることも明白だ。

 

《やれやれ、サザーランド大佐め。本格的にすり潰しに来たようですね!!》

 

ドレイク級から放たれてくる対艦ミサイルを迎撃するドミニオンの中で、アズラエルは顔をややしかめながらそんなことを口走る。

 

どうやら、地球本部はナチュラルとコーディネーターでは飽き足らず、ナチュラルの中でも、ナチュラル至上主義者と二分したいようだ。

 

そんな愚かな思考にマリューは歯を噛みしめながら、後手に回り始めた状況の中、懸命な迎撃行動を仕掛ける。

 

そんな時だ。

 

「あっ、新たな反応多数!!イエロー45!我々のーー後ろ!?」

 

サイの報告にマリューとナタルは目を見開く。後ろから敵が来るということは、まさか別の艦隊がーーー!?

 

そんな焦りに飲み込まれそうになっているマリューを横目に、アズラエルは待ってましたと言わんばかりに顔に笑みを浮かべる。

 

《来ましたね、待機依頼をしていて正解でした》

 

そう静かに呟くアズラエル。

 

その反応は後部モニターにはっきりと写るほど近づいてくる。星の大海を横一列に飛ぶ無数の光。その光は徐々に煌き、はっきりとした輪郭を持ってアークエンジェルやドミニオンの後方から戦場に向かって飛び立っていった。

 

「アズラエル理事!彼らは?」

 

《ーーレジスタンス、ですよ。我々とハルバートン提督が用意した、ね》

 

マリューの声に、アズラエルはにこやかに答える。

 

飛び立っていったのは無数のメビウス。

 

それもただのメビウスじゃない。

 

ラリーのメビウス・インターセプターのデータを用いて、アズラエル財団と宇宙の第八艦隊の力をもってして作り上げ、教導にはリークが作ったカリキュラムと、オルガたちを育てた教育データ、そしてOSもまた、リークのメビウスのデータを用いたものを使用している。

 

彼らはもう弱小のモビルアーマー部隊ではない。

 

彼らは、アズラエルが作り上げた。

 

もう一つの流星隊だった。

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要
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