ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第163話 閃光の狭間

 

 

 

「急げ急げ!エンジンが焼き切れても構わん!」

 

フリーダム、ジャスティスの隣に同等の速度で並んで飛ぶホワイトグリントの中で、ラリーはのしかかる加速の重圧を奥歯で食いしばりながら声を出した。それはフリーダムの中のキラたちも同じく、トールの脇に捕まるイザークたち、ムウやPJたちも同じような状況だ。

 

そんな中、なんとかレーザー回線内で付いてきているエターナルより、アイシャの声が響く。

 

《エターナル、AWACS「スカイウォーカー」より、各機へ!VOBの挙動に留意しなさい!目標まであと6000!》

 

「くっう…!さすがに堪えるな…これは!」

 

メビウス・ハイブラストのコクピットの中で耐えるトール。コーディネーターのキラたちも辛さを感じるほど。ムウやナチュラルであるアサギたちも、軽口ひとつ叩けないほどにその重圧に苦痛を感じていた。

 

「気張れトール!核が撃たれれば、世界は終わるぞ!」

 

そんなトールの声を励ますように返すラリー。ここで間に合わなければーー1発でも核がプラントを貫いたら、本当に人は取り返しのつかない領域へと足を踏み入れることになる。

 

そうなってしまっては、たとえハルバートンやシーゲルが手を結ぼうとも、世論がそれを許しはしないだろうし、ザフトも地球軍も、核による応酬を開始して、世界は審判の日も真っ青になるほどの終末的な戦いに転がり落ちていく。

 

「間に合え…間に合ええーー!!」

 

今はただ、この手がそれを防ぐことに間に合うことを。どうかーー神よーーそんなものがこの世界にいるというならーーどうかーー。

 

この手をどうか、間に合わさせてください。

 

 

////

 

 

《ピースメーカー隊、目標まであと400》

 

悪魔の兵器を抱えたメビウスの大軍が、空いたボアズの防衛網から続々と侵入していく。モビルスーツが混ざっていない、明らかに不審なモビルアーマーの部隊に気がついた防衛部隊の一機が、最大望遠にしてメビウスの詳細を調べようとした。

 

「なんだ…あれは!?」

 

そのデータを友軍機へ送信しようとした瞬間、パイロットは背後から差し込まれたビームの閃光によって、断末魔の叫びを上げる間も無く、その身を宇宙へ蒸発させていった。

 

『すまないな、あれに近づけるなというお達しでね』

 

そう言ってメビウスに近づこうとするモビルスーツを次々と撃破していくシュープリスや黄色部隊。メビウスはそのまま前進し、ついにボアズを射程圏内へ捉えた。

 

《安全装置解除、信管、起動を確認》

 

冷たい声でそう告げたオペレーターに、メビウスに乗るブルーコスモス派のパイロットたちは、卑しくその顔を狂気に歪ませた。なんの躊躇いも、迷いも、葛藤もなく、憎しみに囚われた彼らはトリガーに指をかけた。

 

『おおし!くたばれ!宇宙の化け物!』

 

『青き清浄なる世界の為に!』

 

煙と対放射能性のケースから光を照らしながら飛び出した無数のミサイル。その光をとらえたザフト観測員たちは、思わず息を呑んだ。

 

「くっそーあれは!?核か!?」

 

はっきりと刻印された核物質を示すマークを見て、ジンと数機のゲイツが、ダガー隊の封鎖線を突破し、飛来するミサイル群へと一直線に向かった。

 

「あのミサイルを落とせ!ボアズが!核に焼かれる!!!!」

 

その刹那、隣にいた僚機が、頭上から降り注いだビームの雨に穿たれて爆散する。自分の目の前にも雨が降り注ぎ、ザフトのパイロットは煮湯を飲み込むごとく、その場で急制動に応じるしかない。見上げると四機の新型機がこちらに向かってきているのが見えた。

 

なんとか応戦するものの、相手の方が反応がいい。こちらの攻撃はことごとく躱されて、仲間が次々と打ち落とされていく。横目で見えるのは、ボアズへと向かっていくミサイル群。

 

くそ…ナチュラルどもめ…!

 

その恨み言を呟きながら、最後に残ったゲイツのパイロットは閃光に溶けていった。

 

もう直ぐだ。もうあと少し。鼻先一つで届く。

 

届く。

 

届く届く届く届く!!

 

憎きのコーディネーターどもを駆逐する、人類の叡智の光が、あの蛮族どもを抹消するのだ!!サザーランドは今にも上げたくなる笑い声を必死に堪えながら、悠然とブリッジの座席に肘を置いて、その光景を愉悦を覚えながら眺めていてーーー。

 

 

 

 

そして、光がはじけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光は、サザーランドの予想よりも早かった。着弾までまだ時間があるというのにーーまさか誤作動?

 

そんな憶測が脳裏をかすめたと同時に、今度は横並びに光がはじけていく。

 

なんだ?なにがおきているーー!?

 

「艦長!高熱源体、多数接近!この速度は…速すぎます!!」

 

「なに!?」

 

そう言ってサザーランドは立ち上がると、顔を怒りで充満させながら、オペレーターを押し除けてレーダー網を見つめた。そこには、明らかにモビルスーツ、モビルアーマーから逸脱した速度で接近してくる機影が無数にあった。

 

ハッとして正面を見つめると、自分たちのちょうど直上にあたる場所から、ミサイルとビームの雨が降り注ぎ、先程の比ではない数の核ミサイルが、ボアズにたどり着く前に弾けていく。

 

「発射された核ミサイル…すべて迎撃されました!」

 

なっーー。サザーランドは声を発することなく、喉を唸らせることしかできなかった。なぜだ?あと少しで届いたというものをーー!!

 

「モニターに出ます!」

 

ギロリと、サザーランドが怒りに染まった目をモニターに向けると、そこには幾つもの影が映し出されておりーーー偶然にも、太陽光が差し込んだことで、闇からその姿が一気に照らされる。

 

まさしくそれは、純白。

 

星光と見間違えそうな白。

 

その機体を先頭に、憎きオーブのモビルスーツと、見たこともないユニットを装備した機体が、その姿を露わにした。

 

「あの機体は…!!」

 

知っている。私は知っているぞーー。

 

あれは、流星ーーー!!

 

 

////

 

 

「各機、VOBパージ!!」

 

間に合った!!ひとまずは安堵を胸に押し留めたラリーは、起爆剤を仕込んだVOBの残骸を、目の前に展開するダガー隊へ降り注ぐようにパージした。重圧から解放されたトールや、ムウたちも次々とVOBをパージし、機体の残骸をダガー隊へと叩きつけていく。

 

《地球軍は直ちに攻撃を中止して下さい。繰り返します。地球軍は直ちに、核による攻撃の中止、一切の戦闘行為を停止しなさい!》

 

次に響いたのは、後方からフリーダムやジャスティスを中継して発せられるエターナルからの声だった。ザフトにいる誰でも、その声には聞き覚えがあった。

 

「この声!?」

 

「ラクス様!?」

 

その戸惑いで、ザフト側の動きが鈍る。VOBをパージし、敵対する地球軍モビルスーツを一蹴するラリーたち、メビウスライダー隊の背後より、エターナルもその姿を二勢力の前に表した。

 

《あなた方は、その手で何を撃とうとしているのか本当にお解りですか!?》

 

そう言って地球軍に止まれというラクス。その声と言葉に、耳を傾けていたザフトのパイロットは混乱する。

 

「どういうつもりだ、ラクス・クライン!」

 

我々を裏切っておきながらーーー何を今更!!

 

ただ、そんな声はどこにも届かない。広大な宇宙で繰り広げられた暗黒の思惑を前にしては、一個人の意思など、無意味に等しい。

 

故に、ラクスは用意したのだ。苦しみに喘ぐ人々の声を、届けさせるためにーー。

 

《もう一度言います。地球軍は直ちに攻撃を中止して下さい!これはもはや、戦争などではありません!!》

 

その放送を聞いていたサザーランドは、モニターへ何度も拳を打ち付ける。液晶は割れ、サザーランドの手が鮮血に染まろうとも、彼の怒りと憎悪は留まる先を知らない。

 

「おのれ、おのれぇ…!どこまでも我々の邪魔をすると言うか…!丁度いい!一緒に消えて貰おうか!!プラントと共に!!」

 

そして同時刻ーーー。プラント最高評議会も、最悪の方向へと動き始めた。

 

「こ…この熱量は…核…!!」

 

観測手の言葉を聞いていたパトリックもまた、怒りの形相に表情を染め上げていた。ダンッと机を叩いて立ち上がったパトリックは、モニターを憤怒の目で睨みつけた。

 

「おのれ…おのれ、おのれナチュラル共!」

 

「議長閣下!」

 

エザリアの声にも耳をかさず、パトリックは次の指示をザフトの高官たちへと伝えた。

 

「直ちに防衛戦を張れ!クルーゼ隊を呼び戻せ!私はヤキン・ドゥーエへ上がる!」

 

ハッと誰もがパトリックに敬礼する。その背中を見て、エザリアは何か言い表せない悪寒ーー寒気を感じ取った。彼はーー何をするつもりなのだ?

 

そんな声に出ない疑問。

 

だが、その寒気は正しかった。

 

ザフトの高官たちを連れて宙を進むパトリックは、怒りの形相のままシャトルに乗り込むと、すぐに通信回線を開いた。

 

「愚かなナチュラルどもめ…思い知らせてくれる!ジェネシスを使うぞ!」

 

彼もまた、憎悪の闇に染まりつつあった。

 

 

////

 

 

「サザーランドめ…なんという愚かなことを…!」

 

エターナルのブリッジでバルトフェルドが思わず顔を覆いたくなる惨状を目の当たりにしていた。核がボアズにたどり着く前に阻止したとは言え、ボアズ近域にいた防衛隊の被害も甚大だった。鼻先一つで阻止できたとはいえーーこれではボアズの戦力は維持できない!!

 

「各機!攻撃開始!これ以上、奴らに、一発たりとも核を撃たせるな!敵ミサイル搭載艦を叩く!」

 

ラリーの言葉に了解して、メビウスライダー隊で特に足が速いトールのメビウス・ハイブラスト、ミーティアのフリーダム、ジャスティス、そしてレイダーが密集体型をとって地球軍艦隊の中へと切り込んでいく。

 

『なにをやっているか!さっさと打ち落とせ!!落とせぇええ!!』

 

誰の怒号かわからない声が聞こえる。だが、宇宙に出て日も浅い地球軍の対空防御に捕まるはずもなく、ラリーたちはミサイル艦へ当たりを付けていく。

 

「核搭載艦は…あれか!ハッ!?」

 

咄嗟に、ラリーが機体を傾けるとさっきまでいた場所にライフルの閃光が走った。それと同時に、四機の機影が足を止めたラリーたちの前に、まるで幽鬼のように通り過ぎようとしていたドレイク級の影から飛び出してくる。

 

『いかせんよ、流星!』

 

『君たちが流星か。なるほど、噂通り…だが、残念。君たちの闘いもここまでだ!』

 

ビームライフルとミサイル、そして蹴り。矢継ぎ早に打ち出される攻撃を巧みに躱しながら、ラリーは予想よりも早く現れた手練れに舌打ちをした。

 

「ちぃ!!サザーランドの部隊のやつか!!」

 

そうこうしているうちに、キラやレイダーを駆るクロトも、黄色部隊のモビルスーツに捕まり、すぐに乱戦へと突入していく。

 

そして、トールの操るメビウスの前に現れたのはーーーシュープリスだ。

 

『メビウス…ふっ、面白い…行くぞ!』

 

特徴的な複眼を煌めかせながら突貫してくるシュープリスをあしらいながら、トールは操縦桿を握る手を強めた。まだ誰にもーーミリアリアにすら言っていない疑問。その答えを、目の前にいる機体は持っている。

 

「あの機体…ボルドマン大尉…なのか!!」

 

信じたくはないが、シュープリスの動きをつぶさに観察していると嫌でもその予想が現実味を帯びているような気がした。交差するたびに、優しかったアイクの顔が、トールの中でリフレインする。

 

「…くっ!くっそおおおーー!!」

 

それでもトールは操縦桿に込める力を緩めない。たとえ、たとえ目の前にいるのがアイクだとしても、自分は戦わなければならない。使命を受け継いだから。使命を引き受けたから。

 

だからーーー俺はーーー!!

 

その先では、手練れのモビルスーツと、ダガー隊を相手取るラリーが苦しげに相棒へ声を出した。

 

「キラ!リーク!」

 

「もうやめろ!本当に撃つのか!こんな兵器をー!!」

 

ミーティアに備わる大型ビームサーベルを繰り出すキラ。その一刀と打ち出されるビーム兵器、ミサイルに、幾つものダガー隊がその四肢をもがれていく。

 

「わかってる!このぉ!!」

 

リークも同じようにリベリオンを操り、ダガー隊をあしらうと、新型機に取り付かれたレイダーを援護するように態勢を整えていく。

 

「クロト!」

 

「わかってるよ!!」

 

背後につかれていたクロトは、モビルアーマー形態からモビルスーツ形態へ変形し、急制動をかける。

 

『なんと!?』

 

クロトを追いかけていた黄色部隊のパイロットは、その思い切りの良さに目を剥き、迂闊にクロトたちの前へと躍り出てしまう。

 

「おらぁあああ!!落ちろぉお!!」

 

「うらぁああああ!!」

 

「てりゃあああ!!滅殺!!」

 

『ちぃいい!アズラエルのおもちゃどもがぁ!』

 

狙い定めたカラミティとフォビドゥンの閃光、そしてクロトが放った鉄球を高速マニューバで躱した敵は、イーゲルシュテルンで牽制しながら四人から距離を置いていく。

 

ムウたちも戦線に加わるが、ダガー隊に行く手を遮られて、肝心のミサイル艦に届かない。ひとまずは食い止めれたかとサザーランドが一息つくのも束の間。

 

「熱源接近!これはーー艦隊です!」

 

「別方向から!?おのれ、ハルバートンめ!!」

 

サザーランドが振り向いた先には、アークエンジェル、ドミニオンを先頭にした先鋒艦隊が、はるか先から姿を見せようとこちらに近付いてきていたー。

 

 

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
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