ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

173 / 213
第165話 いくつもの光を重ねて 1

戦場はまさに乱戦の有り様だった。

 

右を向けば地球軍、左を向けばザフト、自身の周辺や背後には僚機やオーブ軍のモビルスーツ。

 

遅れてやってきたアークエンジェル、ドミニオン筆頭の艦隊は、サザーランド指揮下の艦隊と激戦を繰り広げ、運良くザザーランドの艦隊から離脱した船も転身、後退しつつ陣形に加わろうとしている。

 

「アンタレス4!ミサイル接近!ブレイク!ブレイク!」

 

《ブラックスワン8!三時の方向に2機!敵機〝ボギー!〟》

 

《躱してみせる!くぅ…!》

 

《援護するぜ、ミューディ!》

 

「右も左も敵だらけだ!!」

 

その周りには地球軍、ザフト軍のモビルスーツと出撃したモビルアーマー部隊が飛びかい、アストレイ隊も戦闘に加わるという非常に混乱した戦場と化していた。

 

『くそ!回線が混線してるぞ!!』

 

《地球軍、ザフト軍は直ちに戦闘をやめ、退きなさい!核を撃ってはなりません!貴方はその手で、再び取り返しのつかないことを行おうと言うのですか!?》

 

「ラクス様を騙る偽物を打て!!正義は我々、ザフト軍にある!」

 

《ブラックスワン2、被弾!ダメだ、敵艦にぶつかーー!!》

 

混乱、騒乱、戦い。

 

光っては消える命の灯火。それが幾十にもなって戦況をより混沌としたものへと変えていく。

 

しかし、現れたメビウスライダー隊の目的に変わりはない。ラリーたちは横槍を入れるザフトや地球軍のモビルスーツを蹴散らしながら、核ミサイルを腹に抱えたアガメノムン級戦艦へと進路を急ぐ。

 

「くっそー!!こいつらぁ!!」

 

「どけよ!!この野郎!!」

 

複雑に勢力が絡み合う戦いの最中。

 

黄色部隊と地球軍のダガー隊が、ミサイル艦への行く手を遮る。メビウスライダー隊がひしめく艦船と対空砲を潜り抜け、たどり着くための露払いとして躍り出たのはオルガたちだった。

 

ダガー隊をことごとく撃墜していく彼らの前に、両腕に高火力を誇るランチャーとガトリング砲を備えた黄色部隊の機体「フィードバック」が立ち塞がった。

 

《アズラエルの玩具どもがよく吠えたものだ!!》

 

ビーム兵装とバズーカを装備するカラミティと同じ高火力兵装のフィードバックであるが、その巨体に似合わない高速性を持ち、装備するシールドにもリベリオンと同じく高耐久ビームコーティングが施されている機体だ。

 

実弾兵装のガトリングを唸らせながら、フィードバックはカラミティとフォビドゥンへ距離を詰めていく。

 

《所詮、貴様らも俺たちと同じ穴のムジナよ!弄ばれて生きてきた命だ!だが、それ以外の生き方を知らん哀れな人形め!!》

 

黄色部隊に属する人間も、元を辿ればオルガたちと同郷の人間だ。洗脳、投薬ーーただ、オルガたちはアズラエルに拾われ、黄色部隊はサザーランドに拾われた。それだけの違い。だが、それが決定的な違いでもあった。

 

《戦争の道具になる道すら拒んだ貴様ら模造品に、私が負ける道理など、ありはしない!》

 

絶え間ない実弾の嵐に晒されるフォビドゥンに狙いを定めたフィードバックは、さらに距離を詰めてシャニの動きを磔にしていく。

 

「くぅう!!」

 

《ビームを弾くのだな?それが命取りだ!!》

 

片腕の連射を止めず、空いた手でアーマーシュナイダーを鉈形状に大型化させた物を腰から取り出したフィードバックは、防戦一方のフォビドゥンの特殊装備「ゲシュマイディッヒ・パンツァー」へ叩きつけた。

 

「シャニ!!」

 

「ぐうぅ!!」

 

火花を散らしながら装備を断ち切っていくフィードバックへ、モビルアーマーから人型へと変形したレイダーが突撃する。

 

「このぉ!!落ちろぉおお!!」

 

《所詮はこの世は弱肉強食!貴様らのような玩具ではなぁあ!!》

 

飛来した鉄球をシールドで受け流し、フォビドゥンを足蹴にしたフィードバックは、全武装で三機を捉えながら高笑いして叫ぶ。

 

そうだとも、この世界は残酷なのだ。故に力がなければ生き残れない。苛烈な生の中にいる自分が、兵器の道具にもなれなかった三人に負けるはずがない!!

 

その憎悪に似た砲火の中で、オルガは衝撃に耐えながら前を見据えた。

 

「それでも…!俺たちは…玩具でも、人形じゃねぇ!!」

 

「僕らは…僕はね!!兄貴に!!」

 

「俺たちは、兄さんにーーリーク・ベルモンドのお陰で、人間になれた!!」

 

砲火を潜り、背部の胸部のビーム砲を吐き出しながら、オルガたちは雄叫びを上げてフィードバックと交差し、接近戦を繰り広げていく。

 

《はん!書き加えられた偽りの記憶など!!》

 

「ああ!そうさ!俺たちは知ってるさ!あの人が本当の兄じゃないことくらい!!」

 

知っているとも…オルガは薄れていた記憶を思い返す。兄という刷り込みを施されてーー本当の兄だとは思ったことはなかった。

 

きっとそれも、研究所や偉そうな高官たち、喚くしか能がない教官の気まぐれに違いないと、すべてを諦めていた。

 

けれど、リークは、今まで見てきたどんな大人よりもずっと違っていた。

 

「あの人は、俺たちを人として扱ってくれた!!」

 

「優しくしてくれた…楽しいことも、苦しいこともともに乗り越えてくれた!!」

 

共に笑い、共に飯を囲み、共に困難に立ち向かい、立ち止まったら共に考えてくれた。リーク・ベルモンドという人格者に、オルガたちがどれだけ救われてきたか。その恩は計り切れない。

 

「家族としてーー俺たちを大切にしてくれた!それに答えられなくて、何が強化人間だよ!!笑わせんな!!」

 

リークは自分たちを信じてここに共に来たのだ。共に地球軍の暴虐を止めるために。そのために、何もできなくてーーーあの人の弟を名乗る資格などありはしない!!

 

「俺たちは、もう人形なんかじゃない!!」

 

《何を甘っちょろい戯言をぉ!!》

 

そんな幻想など、この世界にありはしない!あってたまるものか!!フィードバックはレイダーの火線を避けて、大鎌を構えるフォビドゥンへ再び距離を詰める。

 

「シャニ!?」

 

オルガが反応した頃には手遅れだった。振り払わられた鉈型のアーマーシュナイダーが、フォビドゥンの特殊装備の駆動部へ深々と突き刺さっていた。

 

《獲った!!ここで死ね!!模造品が!!》

 

火花を走らせて爆散するフォビドゥン。オルガの顔が絶望に染まりそうになった刹那ーー。

 

「うらぁあああ!!」

 

咄嗟に特殊装備をパージしたフォビドゥンが、爆煙の中から姿を現し、近接武器を失ったフィードバックの懐へと飛び込んだのだ。

 

超接近戦の間合いでは不利が生じると、リークの提案で備わったビームナイフを引き抜き、シャニはそのままフィードバックのコクピットへ刃を深く突き立てる。

 

《ごっ…な…にぃ!?》

 

ナイフで腹部を貫かれたフィードバックは、その出来事を理解できないまま血を吐き出し、機能停止した機体とともに漂流し始める。しばらく漂ったのち、フィードバックはどの陣営が放ったかわからないビーム砲の光に包まれ、宇宙へと散った。

 

「シャニ!!おい、シャニ!!」

 

背部の特殊装備を失ったフォビドゥンに触れながら、オルガは接触回線でシャニへ呼びかけた。

 

「大丈夫、まだ戦える」

 

さっきの雄叫びとは打って変わった感情のこもってない声で返事をしたシャニは、地球軍の残骸からビームライフルとシールドを拾って応急処置でフォビドゥンに装備していく。

 

「オルガ!兄貴がやべぇ!」

 

ハッとしてオルガは地球軍艦隊を見た。そこには、対空砲とモビルスーツの攻撃を避けながら突破口を探すリークたちの姿がある。

 

「よし!いくぞ、お前ら!!」

 

オルガの声に二人が頷くと、三機は光の尾を作ってリークたちのもとへと飛んでいく。戦いはまだ終わっていないーー。

 

 

 

////

 

 

 

「ラクス様を騙る偽物が!核を撃ったことには変わりはないぞ!この蛮族どもめ!!」

 

地球軍のダガー隊でも手強いというのに!!そう思いながら、イザークは無闇矢鱈と突撃してくるザフトのゲイツやジンの脚部や武装、頭部を打ち抜き、戦闘不能へ追いやる。

 

「くっそー!!ザフト軍まで!!」

 

その後ろではダガー隊を砲線でなぎ払うバスターと、高火力支援で敵を一掃していくブリッツの姿がある。

 

「地球軍もザフトも、相手にはできねぇぞ!!」

 

「イザーク!ここは分かれましょう!ザフト隊を引き受けます!」

 

たしかに、このままでは足止めしようとしている敵の思う壺だ。それに敵艦隊の中でどの船に核が搭載されているのか判明もしていない。現状のまま、核が再び放たれでもしたら、今度こそアウトだ。

 

「ジュール隊長!核搭載艦は俺たちが!」

 

そう声を上げたのは、ガルーダ隊に属する地球軍、ザフト軍のパイロットたちだった。彼らもヒメラギからアストレイを駆り、先行していたイザークたちに合流していたのだ。

 

「お前たち…!」

 

核搭載艦となれば、防衛網の戦力も大きいはずだ。そんな相手に部下たちだけを行かせるわけにはーーそんな葛藤をするイザークに、ガルーダ隊の隊員たちはにこやかに声を紡ぐ。

 

「任せてくださいよ、隊長!」

 

「ガツンとやっつけてきますって!」

 

そう答える隊員たちに、イザークは一瞬唇を噛み締めてからーーゆっくりと言葉を出した。

 

「ーー死ぬなよ!これは命令だ!」

 

「アイアイ!」

 

「お任せあれ!」

 

見えないはずなのに、彼らはイザークへ敬礼して艦隊へと飛翔していく。それをレーダーで見送ったイザークは、接近してきたダガーをビームライフルで穿つ。

 

彼らが向かうというなら、自分たちにできることを果たす。ディアッカもニコルも同じ気持ちだった。

 

「かかってこい、この馬鹿どもが!!ここから先へは一歩も通さんぞ!!」

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。