ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第168話 いくつもの光を重ねて 4

 

アガメノムン級ワシントンの轟沈により、消極的な動きを見せていた地球軍の艦隊であったが、なにかの通信を受けた境に、ハルバートン指揮下の部隊を足止めするダガー隊と、ある宙域へと飛び立つ部隊の二分に分かれて動きを活発化させた。

 

「奴ら何をするつもりだ!?」

 

部下を失った焦燥感を噛み締める暇もなく戦い続けるイザークが見たのは、無理やり発進させようとしたピースメーカー隊の残骸。そこに浮かぶ未使用の核弾頭に群がるダガー隊の姿だった。

 

その光景を見て、イザーク背筋にゾッとするような冷たさが走る。

 

「核を回収している…!まさか!」

 

モニターを望遠モードにして確認すると、奴らはモビルスーツのマニピュレーターで核の発射シークエンスを行なっていたのだ。メビウスでの発射が困難である故に外付けの起爆シークエンスをしようとしているのかーー!

 

「止めろ!奴らを止めるんだ!ふざけやがって!」

 

イザークの怒りは限界を超えていた。帰れないと分かりながらワシントンの情報を収集しに向かった部下たち。彼らの命がけの戦い。そんな姿を見てもなお、プラントを討たんとする敵に、イザークは言葉にならない怒りを持って、デュエルの出力を上げていく。

 

「そんなに滅ぼしたいのか!!そんなに、そこまでなのか!!くそーーっ!!」

 

ディアッカとニコルも随伴して核を構えるダガー隊に迫る。だが、事態はすでに間に合わない場面まで来ていた。

 

『そらぁ行け!青き清浄なる世界のためにーー!!』

 

射出機から放たれる数十発の核弾頭。イザークが放ったビームライフルの閃光は、それをプラントに向けていたダガーのコクピットを穿つが、すでに核は発射されている。

 

この混戦状態。ザフトも地球軍も敵も味方も入り乱れた戦場の中を、幾つもの光がプラントに向かって伸びていく。

 

「ラリー!核が!プラントに!」

 

それを捕捉したのはラリーたちだった。オルガたちと共に二勢力を相手取って大立ち回りを演じるリークが、眼下を過ぎ去っていく核弾頭を目にして驚愕したように声を上げた。

 

「キラ!アスラン!!」

 

ダガーとゲイツの四肢を達磨にしたラリーは、火力支援で艦隊を相手にしているキラ達へ呼びかける。彼らも核を補足したのだろう。ミーティアに備わる大型ビームサーベルでネルソン級のブリッジを断ち切り、そのままプラントに前進する核をロックしていく。

 

「当たれぇええ!!」

 

全身武器庫とも言えるミーティアの一斉射撃によって、核は艦隊とプラントの間で大きな光となった。サザーランド指揮下の船も何隻かが核に巻き込まれ沈んでいく。しかしーー。

 

「何発か抜けるぞ!くそ!」

 

先程のピースメーカー隊の斉射とは違って、今回は時差の攻撃もある。遅れて飛んでいた数発の核が生き残り、それらは閃光をくぐり抜けてプラントへと飛来し続けていた。

 

ラリーが持てる機動力を持って抜けた核を追おうとしたが、その前に黄色部隊の一機であるヒエラリスが立ち塞がった。

 

『待て!流星!貴様は私がーー』

 

「馬鹿野郎どもが!核がプラントに行ってるんだぞ!さっさと退け!!ぶち殺すぞ!!」

 

相手に聞こえるわけもない咆哮をあげるラリーに、ヒエラリスは退きさがることもなく向かっていく。

 

ラリーはすぐに行動を起こした。

 

片手に備わる小型シールドを腕を振るった遠心力を使ってヒエラリスに向けて投擲。そんなコケ脅しなどーー!ヒエラリスは飛んできたシールドを腕で弾くつもりだった。

 

そして、彼女が目にしたのは眼前に迫った閃光。

 

『がっーー!!』

 

ラリーが行ったのは至極単純。

 

シールドを投擲したことで相手の視界を封じ、その上でビームサーベルを引き抜いて投げたシールドごと相手を刺し殺すという戦術。

 

目の前に迫ったシールドを貫いた光は、何が起こったかわからないヒエラリスのコクピットを容易く貫き、パイロットは断末魔の声をあげる間も無く宇宙の藻屑へ消えた。

 

「少佐!!」

 

ラリー達とは違う後方で、アークエンジェルやドミニオンに取り付こうとするダガー隊を蹴散らしていたムウ率いるグリフィス隊は、前線から飛来する物体をとらえた。

 

アサギが困惑した声で叫び、ムウが飛来する物体をモニターで確認する。それは、邪魔をされたことに恨みを覚えた地球軍パイロットが放った一発の核弾頭。そのミサイルは弾幕やモビルスーツの乱戦の合間をすり抜けて、真っ直ぐにアークエンジェルに向かっている。

 

「なっ…アークエンジェル!!」

 

ムウは戦慄した。この乱戦だ。反応が多すぎてアークエンジェルは核を察知していない。サイが核の飛来物を補足したときには、すでに目と鼻の先に核が接近している時だった。

 

「核が!?」

 

「回避!面舵!!」

 

「間に合わない!!」

 

真っ直ぐと突っ込んでくる核ミサイル。誰かが叫ぶ声が聞こえる。オーブやハルバートン提督からの通信が飛んできていたが、アークエンジェルは無限と思えるような時の中にあった。全てがスローモーションに見える。

 

ブリッジ正面に迫る一つの光。

 

決定的な死をもたらす光を前にして、マリューは恐怖で喉を引きつらせた。

 

そんな光景に、一機のモビルスーツが飛び込んでくる。

 

「マリュー!!アークエンジェルはやらせん!!」

 

ガンバレルストライカーを展開したムウのストライクだ。彼はガンバレルを四方へ飛ばして、亜音速で飛来する核ミサイルを捕らえる。

 

「当たれえええ!!」

 

オールレンジで放たれた弾丸は核ミサイルを的確に捉えた。即座に広がる光の玉。その広がっていく余波の範囲にーーームウは入ってしまっていたのだ。

 

「へへ…やっぱり…俺は不可能を可能に…!」

 

ムウはアークエンジェルを肩越しに振り返りながらそう笑みを浮かべる。逆光の中、輪郭を保っていたムウのストライクは、広がっていく光に飲まれーーその姿を消した。

 

「ムウ…ムウゥウゥーー!!」

 

アークエンジェルの中でマリューの悲鳴が響き渡った。無重力に涙がこぼれ落ちていく。

 

ドミニオンからその光景を目にしたドレイクも、普段は冷静さを保ってあるその表情を悲しみと困惑に満ちさせていた。

 

「こちらアンタレス隊!展開している部隊で核を食い止める!!」

 

状況は最悪だ。抜けた核を追うキラたちであったが、ほかの核の爆発によってミサイルを捕捉することが叶わなかった。そんな中で、前衛に展開していたPJ率いるアンタレス隊がスラスターを最大に吹かして何とか核ミサイル群へ追いつく。

 

《出力を上げろ!核でプラントを焼かせるな!!》

 

《撃て撃て撃て!!》

 

追いついたM1アストレイ隊がそれぞれの武器でなんとか撃ち落とそうとするが、核の余波範囲外の攻撃を行おうにもM1アストレイの性能では捕捉が不可能だ。ビームライフルを放つが、そのどれもが当たらない。

 

その時、長年PJの相棒として戦場を駆けていた二機のアストレイがさらに速度を上げて核へと追いつく。しかし、その距離はあまりにも近い。核を撃ち落とせたとしても、余波に巻き込まれて自身の機体が保たない間合いだった。

 

「キース!ダメだ!その距離じゃ核の余波に巻き込まれる!間に合わなーー」

 

《パトリック!お前の下で働けて俺は満足だったぞ》

 

音声通信で答えた僚機は、満足そうに言葉を伝えて躊躇わずに核を穿った。パッと広がった閃光は、僚機の影を飲み込み跡形も無く消し去るーー。

 

《キース!ーーすまん!》

 

それを見届けたアンタレス隊は突っ込んだ機体に倣って核へと追いつき、ビームライフルで穿っていく。アンタレス隊の反応は核を食い止めるたびに減っていった。

 

《隊長、お先に!》

 

《プラントを守れ!俺の故郷は…焼かせはーーー》

 

核と運命を共にする隊員達。彼らの勇気。彼らの生き様。彼らの殉じた使命ーーー。PJもまた、抜けた核弾頭へ取り付く。覚悟は決まっていた。

 

《うおおお!!》

 

「PJ!!」

 

《プラントは、やらせん!!》

 

ハインズの声が聞こえる。ビームサーベルで核弾頭の側面を切り裂いたPJの目の前に光が広がった。

 

「PJさん!!」

 

「パトリック!!」

 

皆んなの声が聞こえる。PJは後ろを振り返る。そこには、青く美しく聳えるプラントがあった。自分の故郷ーーーそして、その場所には愛する家族がいる。

 

PJの唯一の心残りは、残してしまった家族への想いだった。

 

《ルナ…メイリン…》

 

二人の愛娘の名を呟きながら、PJの機体は核の光へ飲み込まれーーーーそして宇宙へと帰った。

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要
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