緊急事態だ。
ザフトの要塞、ヤキンドゥーエは降伏。現在、シーゴブリンや手隙のモビルスーツ部隊が、敵残存兵の投降、および離脱の救助に向かっている。
だが、更に悪い知らせもある。
突入したシーゴブリン隊とオメガ1、アスハ機の報告から、ヤキンドゥーエは自爆シークエンスに入り、自爆と同時にジェネシスが発射されるプログラムが作動しているということだ。
くそっ、どうあっても地球を壊したいわけかよ!
はいはい。怒るのは後にして、とにかく、今はそれをなんとかするしかないでしょ?バーフォード艦長
その通りです、アズラエル理事。ジェネシスの目標は地球、大西洋連邦首都のワシントンだ。もし撃たれれば、文字通り地球の終わりとなる。だが、我々にはまだチャンスがある。
ヤキンドゥーエ内部にあったジェネシスの内部構造図を入手した。シモンズ女史が言うには、内部は二重構造となっており、ジェネシスの核動力炉と、そのエネルギーを変換するメインリアクターの部分に分かれているようだ。
メインリアクターユニットには、核動力炉区画から更に狭い隙間へと侵入することができる。七つのリアクターを破壊すれば、ジェネシスの機能を無効化できるようだ。
ただし、すでに核動力の準備が始まっている。リアクターを破壊すれば、行き場を失った核エネルギーが内部暴走する危険がある。
それにリアクターを破壊しても核動力炉は健在することになる。暴走したときに起こる被害は想像できん。なんとか融合炉も破壊したいが…今はリアクターを破壊することだけに集中しよう。
時間にして残り15分。その間に内部へ突入し、リアクターを破壊して脱出しなければならない。かなり危険な作戦だ。
相変わらず無茶な作戦だな。
けど、やらなきゃ世界が終わる。
ーーライトニング隊。この速度で任務を達成できるのは君たちしかいない。
すまない。君たちにばかり負担をかけてしまって、申し訳なく思う。だが、対応できるのはライトニング隊、君たちしかいない。
これが最後の任務だ。
頼む。地球をーー世界を滅ぼさないためにも、君たちの手でジェネシスをーーこの戦争に終止符を打ってくれ!!
全員、生きてここを突破し、必ず故郷へ帰ろう。
以上、ブリーフィングを終了する。ライトニング隊の健闘を祈る。
メビウスライダー隊、出撃!!
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《一緒に行けなくて残念だよ、メビウスライダー隊》
アガメノムン級戦艦、ケストレルの上で見つめるブラックスワン隊のシャムスは、アークエンジェルとドミニオン、クサナギとヒメラギ、そしてエターナルに囲まれる形で、待機しているメビウス二機を見つめながらそう呟く。
ここにいる全員の通信が一つの回線を通じて行われていた。隣に腰を下ろしていたミューディーは呆れたような笑みを浮かべて、シャムスを見上げた。
《ばぁか。アンタじゃ中に入る前に壁にぶつかって死んじゃうわよ》
《なにをぉ!?》
そんな二人を横目に、スウェンとブラックスワン隊の隊長であるカルロスも、ラリーとリーク、そしてムウが乗り込むメビウス隊を見つめた。
《ライトニング隊へ、俺は元ワルキューレ隊のカルロス・バーン大尉だ。低軌道会戦では君たちに命を救われた恩がある。まだ俺は貴官らに何も返せていない。だから帰ってきて欲しい。最高の酒を用意して待っている》
カルロスは低軌道会戦時に、隊長を失ったところをムウのメビウスゼロに助けられていた。あの戦いで自分の母艦が沈まなかったのは、メビウスライダー隊の活躍があったおかげだ。
地球から持ってきた最高級のワインを持って、彼らの帰還を祈るとしよう。
《兄貴!今回もばっちり決めて帰ってきてくれよ!》
ドミニオンからはブリッジに移動したクロトたちがマイクでリークへ呼びかける。
《新作の映画を一緒に見る約束、忘れんなよ?》
《ライブツアーもね》
「はいはい、おしゃべりは大概にね」
急かすよう、まるで子供のような声でいうオルガたちを宥めると、マイクを横から取り上げたアズラエルがスゥと息を吸い込む。
《ベルモンド上級大尉…いや、リーク。落とされるのは認めませんよ?わかっていると思いますが》
僕は心配してませんので、そう言って手早くマイクを下ろしたアズラエルに、リークは敬礼を打って答える。
「ラリーさん!ベルモンド大尉!」
待機していたのは、別エリアにいたキラとトールの合流を待っていたからだ。フリーダムとメビウスがサブスラスターを吹かして、ライトニング隊の編隊へ加わる。
「トール!キラも来たな?」
そう言ってから、ラリーはもう一人の隊員であるアスランへ通信をつなげようとした時だ。遠くからシーゴブリン隊の救助艇と共に戻ってきたカガリのストライクルージュが切羽詰まったように、こちらに向かってくる。
「アスランが居ないんだ!」
応答の有無を待たずにカガリが声を上げ、キラたちの顔が驚愕に染まる。
「なんだって!?」
「たぶん、アイツ…責任を感じて…」
きっと何かーージェネシスを止めるために一人で。思い詰めるカガリを見て、ラリーが声を荒げる。
「馬鹿野郎!あのハツカネズミめ!」
ジャスティスを核爆発させるつもりだとしても、ジェネシスの照射が食い止められなかったら射線上にいる地球軍艦隊に被害が及ぶ可能性がある。
ここでまた損害を出せば、今度は地球軍が狂気的な攻めをしてくる危険もあった。
「キラ!」
「アスランは僕らが必ず連れて帰る!だからカガリは待っていて!」
頷いて答えるキラに、カガリはわずかに身動ぎするが、落ち着きを取り戻したのかキラの言葉に頷いて答える。
「ーーわかった。弟のことを信用するのも姉の務めだ」
「弟?キラが?」
カガリの言葉にトールが首を傾げると、ラリーはにやりと笑みを浮かべた。
「どう見てもカガリが妹だろ?わんぱくシスター」
「なんだとぉ!?」
突っかかる勢いでルージュを前に出そうとするが、まぁまぁとリークがいつものように仲裁に入る。うむ、いつものメビウスライダー隊だ。
「続きは帰ってから、だよね?ラリー」
「ああ、そうだな」
そう言ってリークに笑みを向けるラリー。そうだとも、すべては帰ってきてから始まるのだ。
《みんな!》
通信が入った先は、アークエンジェルだ。フレイやサイ、多くの人がモニター越しにこちらへ声をかけてくれる。
「フレイ!みんなも…!」
《必ず、戻ってきて。私たちの思いが、皆んなを守るから》
《ムウ…》
「大丈夫さ、マリュー。必ず戻る。なんたって俺は…いや、俺たちは不可能を可能にする男たちだからな!」
《ええ、そうね》
不安げに微笑むマリュー。ムウもまた力強く腕を掲げた。
《帰ってこいよ!キラ!トール!》
《帰還率は100%だ。それ未満は認めんぞ?》
《トールも、気をつけてね》
《君たちの管制官ができなくなるのは、ひどく退屈だからな》
サイやナタル、ミリアリアからも言葉が続くと、アークエンジェルへ着艦していたデュエルからも通信が届いた。
《シエラアンタレス1より、ライトニング隊へ。あの馬鹿者を連れ戻してきてくれ。説教は俺がする》
ぶっきらぼうにいうイザークに、隣に立つディアッカがやれやれと言ったように肩を竦めた。
《ったく、イザークは素直じゃねーんだから。頼んだぜ、キラ》
《アスランを頼みます。どうか皆さん、ご無事で!!》
ニコルの言葉に、キラもうなずく。せっかくの共有の友達だ。彼が迎えに行けない分、自分が声を繋げなければならない。エターナルのバルドフェルドも、アイシャを横に抱きながらサムズアップで笑みを浮かべた。
《戻ってこいよ、少年!》
《いい男になるんだから、死んじゃダメだからね?》
《後ろは任せておけ!!君たちは信じた道を行けよ!!》
クサナギやヒメラギーーー多くの船からの言葉が溢れる。そうだとも。これが、僕が守りたかったものだ。守りたい明日がここにある。
《キラ…信じてます。貴方が帰ってくることを》
ラクスの声が響く。そんな中で、ラリーへ個人回線からのレーザー通信が届く。顔は映らない言葉だけの通信であったが、ラリーはその送り主が誰か容易に想像できた。
《ラリー!機体もアンタも、無事に帰ってくるのよ!》
声は掠れていて、どこか震えていたが、しっかりとしたいつもの口調で、ハリーは言葉を紡ぐ。
ああ、何も心配はない。ラリーは拳を握りしめて答えた。
「ああ、必ず!!帰ってくる!!」
《よし、スカイキーパー改め、オービットより!メビウスライダー隊、進路クリア。行ってこい!!》
ニックの言葉を受けて、ラリー、リーク、キラ、トール、ムウーーー全員が前を向いた。
これが、最後の出撃だ。
「さぁ、いくぞ!!メビウスライダー隊、発進!!」
全てを止めるため。
生き残る、使命を果たすためにーー!!
キャラデザイン
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他キャラも見たい
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キャラは脳内イメージするので不要