ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第187話 宇宙へ

 

 

地球圏から遥か。

 

L3宙域を航行する一隻の船。

 

先の大戦から復旧したカグヤのマスドライバーから打ち上げられたクサナギから離脱し、ヘリオポリスとの連絡船として使われていたそれは、今はプラントを目指して星の大海を進んでいる。

 

「しかし、アズラエルも無茶を言うよな。私に着いてって世界を見てこいだなんて」

 

旅客機のような部屋の中で、オーブの首脳陣が着る正装姿のまま、だらしなく無重力の中で寛ぐのはカガリだった。2年前から容姿は変わってはいないが、今の彼女は父から引き継いだオーブの国政という務めを担う重要人物でもある。

 

アプリリウス市の演説後、影ながら地球圏の傷ついた国や政府の立て直しに奔走した父、ウズミ・ナラ・アスハは、その激務の為か、オーブが落ち着きを取り戻し始めた頃に体を悪くして今は療養中だった。

 

そんな父の隣で激務を共にこなしていたカガリが、次期オーブの心臓部になることは誰から見ても明らかであり、今回の件も父や他の士族からの推薦もあって彼女が選ばれたのだ。

 

「けど、こういうのってワクワクしない?」

 

そんなカガリの隣で、普段は民間軍事会社でツナギとメカと油に塗れているフレイが、綺麗なビジネススタイルで船に同乗していた。

 

彼女は大戦時に父を失っている。

 

フレイは年齢としても、まだ若い。それにブルーコスモスの重役であった父の一人娘だ。そんな使いやすい駒を他のメンバーが黙ってあるはずもなくーーーそう言った政治の闇に彼女を晒さないため、それとジョージ・アルスターからの最期の願いとしてフレイを託されたこともあって、その後見人として、アズラエルがフレイを引き取ったのだ。

 

フレイの拠点はオーブ。

 

大戦後、地球軍からもザフトからも溢れた者達の受け皿としてアズラエル財団や各方面の支援者の協力もあり、アフリカで出会った民間軍事会社をオーブに据え置いたのだ。

 

もともと古株であるタスク隊や、オペレーターであるモニカ・マスタングも、彼らが提示した条件と金額を見てすぐさま了承してくれたのが救いだった。

 

「そうかぁ?私は窮屈だよ。そっちよりは幾分かマシだけど。しっかし、似合わないよなぁ、フレイがスーツなんて」

 

「やめて、自分でも自覚してるからそれ」

 

普段は民間軍事会社でオーブのモビルスーツをはじめ、さまざまな機器の整備や調整を行なっているフレイだが、たまにやってきたアズラエルが、「将来の勉強」と称して会議や商談、立食パーティーなどにフレイを連れ回している。

 

アズラエル自身の考えもあってだろうが、今回一人でプラントに行って情報を聞き出して来いと言うのはあまりにも大それた任務でもあった。

 

「まもなく、プラントの防衛圏内に入りますよ。お二人さん」

 

「お疲れ様、ベルモンドさん」

 

そう言ってコクピットルームから出てきたのは、民間軍事会社特製のノーマルスーツを着るリークだ。

 

「理事からの依頼だからね。オルガたちはお留守番さ」

 

そう言って肩をすくめる。リーク自身、地球軍を退役するつもりだったが、アズラエルが提示した個人契約を見てすぐに鞍替えとなったらしい。

 

理事曰く、「僕の好きな時に動かせる最強の剣とか最高じゃありません?」とのこと。

 

もともとアズラエル財団にいたオルガ達の声もあったこともあり、今はオルガ達と東アジア共和国にいた妹達と共にオーブで緩やかな生活を送っており、アズラエルの要請優先の傭兵として戦いの空を飛んでいる。

 

しかし、普段はオーブ陣営で構築される視察ではあるはずが、今回はアズラエルの口が効くリークやフレイ、そして護衛に選ばれた面々も強者揃いだ。

 

「プラントへの視察、か。やはり…」

 

「作ってるだろうな。新たなモビルスーツ」

 

カガリの呟きに答えたのは、彼女の護衛をウズミ直々に依頼されたアスランこと、アレックス・ディノだ。ヤキンドゥーエ戦役の後、混乱するプラントの火種に巻き込まれるアスランを放っておけなかったカガリが、オーブへも匿うことを決意した結果が今の彼だった。

 

最初はアスランも難色を示したが、戻ろうとするたびに涙目になるカガリに根負けし、オーブの保護を受けることにしたようだ。

 

「全く、抑止力とは言え、作るべきものなのですかね」

 

そういうフレイも不満げな表情だった。たしかに地球の今は、過激ブルーコスモス派と、ハルバートン提督指揮の新生地球軍の間で小競り合いは起きているものの、プラントとの戦闘行為は全面的に禁止されているはずだ。

 

にも関わらず、プラントは新型のモビルスーツを開発し続けている。

 

「全くだな、先の戦争でプラントにも影響は及んでいる。モビルスーツを作るくらいならそちらの修繕の方が先だろうに」

 

「そうもいかないんですよ、このご時世は」

 

いかにもなことを言うリークに、三人は似たように天井を仰ぐ。世界は未だに戦争状態のままーーいつか、フレイが言った言葉は、まだ終わりは見えていない。

 

すると、コクピットシートに座る副官からの通信が入った。

 

「ザフト軍機確認、ブルー25、アルファ。予定より早いな…数も合ってない」

 

後方から現れた三機の熱源。予定では自分たちが良く知る人物が迎えにくるはずだったのだがーーそう言ってコクピットに戻ったリークは、その機体の妙な動きを感知する。

 

明らかに戦闘姿勢をもって近づいているのだ。

 

《ーーどうやら、そういうことらしいな》

 

それを同じく見ていたであろう人物が、後方にある物資コンテナの中からリークに音声通信で声を紡ぐ。

 

「みんな、シートベルトを。ラリー、編成は?」

 

そう言ってシートベルトを取り付けたリークは、声の主であるラリーにどうするかを問いかける。さっきまで薄暗かった物資コンテナの内部に灯が灯ると、うまく偽造されたハンガーが姿を見せた。

 

《まずは俺とトールとキラで出る。三機相手だが、まさか来賓の船から機体が出てくるとは思うまいよ》

 

《ケーニヒ機、準備よし!キラ!》

 

《ヤマト機、準備完了です!》

 

そう言ってすでに機体の中に待機していた二人。今回のカガリとフレイの護衛に選ばれた強者たちは、手慣れた様子で機体を立ち上げながら、迎撃準備に入っていく。

 

後ろではマードックとハリーがせかせかと点検工具や邪魔になるものを片付けて行っていた。

 

ラリーは外していたノーマルスーツのヘルメットを被ると、よしっと気合を入れて床を蹴った。

 

《よぉし、軽く蹴散らすぞ!ライトニング隊、出撃!!》

 

 

 

 

 

キャラデザイン

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