ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

204 / 205
 


番外編 4 宇宙の彼方から贈る2

 

 

 

『おい、本当にやるのか?』

 

ヘリオポリス宙域に侵入したザフト軍のジンとゲイツ。しかし、彼らは軍属ではない。

 

弱々しい声で言うゲイツのパイロットへ、長年着込んだノーマルスーツで苛立ち気にスロットルを指で叩いていたパイロットが、勇足な声で応答する。

 

『当たり前だ。我々の大義のために、これは必要なことなのだ!』

 

ザラ議長が行方不明となってからと言うもの、今のプラントはシーゲルの政策に則り、地球との協調姿勢を示す、なんとも弱腰な外交となってしまった。

 

コーディネーターの気高さ。コーディネーターの種族としての優位性。そして世界を導く存在としてあまりにも低弱で、見るに耐えない所行だ。

 

故に彼らは軍を離れ、ザラ議長が思い描いたコーディネーターの在り方を示すために、決起の時をじっと待っているのだ。

 

『しかし、こんな略奪のような真似を…』

 

『奴らはコーディネーターの尊厳とザラ議長の思いを裏切った者共だ!我々の大義を理解できぬ愚か者たちを…』

 

そんな中、つぎはぎだらけのジンのモーションセンサーが何かを捉えた。

 

『なんだ?』

 

『前方に反応!ヘリオポリスから出てきたのか…?』

 

僚機のゲイツも反応を捉えたようだ。感知する間は短く、先の対戦で浮遊するデブリの合間を縫うように、その反応はこちらへと近づいてきている。

 

ーーそれも信じがたい速度で。

 

『ふざけるな!奴らは中立国だぞ!』

 

《その中立国に海賊行為をする者の言葉かな?》

 

『なっ…』

 

公開音声で飛んできた声。すると、目の前には純白のモビルスーツが一機現れて、ジンとゲイツの行く先を遮った。特徴的な頭部のモノアイセンサーが光り、その存在を際立たせる純白が宇宙の光を反射しているようにも見えた。

 

《大人しく引き下がれば見逃してやる。口恋しいなら、食料を分けてやってもいい。だが、抵抗するならば…!!》

 

『なんだ、あの機体は…』

 

『データにないぞ。旧型か?』

 

ゲイツのパイロットがコンソールに指を走らせる。

 

ライブラリーにも登録されていない存在。

 

まさかヘリオポリスが自衛のために用意した機体だろうか?しかし、腕部や頭部はザフト軍の機体の特徴がある。おそらく旧型機を改修したオリジナルモデルなのか…?

 

『旧型ごときに…!!』

 

そんな疑問に満ちるゲイツを放って、真っ先にジンが対艦斬刀を抜いて目の前にいる純白の機体へと襲い掛かった。

 

 

交渉決裂だな。

 

 

小さく呟いたクラウドは機体を鋭く反応させると、放たれた一閃を躱して距離を取る。なるほど、相手も相応の手練れというわけか。反応できなければコクピットを潰されていただろう。

 

冷静に相手の動きを分析しながら、クラウドは機体を手足のように操作していく。

 

「ふっ、前は崩壊させても致し方なしと思っていた場所を守る立場になるとはな…」

 

相手の技量をさらに測るため、クラウドは機体を旋回させていく。腕部に内蔵されたバルカン砲を使って、ジンやゲイツを小突きつつ、反撃してくる相手の出方を見る。

 

『は、早い…!!なんだ、こいつは!』

 

「遅すぎるのだよ、君たちがね」

 

『二機で挟むぞ!』

 

「無理だな」

 

ある程度、交差をすれば相手が何をしようとしてくるかの判断材料が揃うものだ。ジンとゲイツが挟撃してこようとするのは火を見るよりも明らかであり、クラウドはその戦略を呆気なくいなし、さらに距離を置いた。

 

『くっそ…!!なんだ、あの動きは!!』

 

「さすがだな、相変わらず私によく馴染む」

 

ホワイトグリント。

 

彼女がこの機体とセラフを持ち帰ったことを知った時は驚いたものだ。

 

ラリーへ渡す前、もともとこの機体の初期設定や最終調整を行なったのも彼女だ。いわく、隊長が流星に貸していたもの。返してもらっても文句はないはず、なんて理由で宇宙に浮遊するこの機体をサルベージしてきたらしい。

 

セラフはギルバートへ渡し、決戦で失われたホワイトグリントの腕部や頭部には、ザフトやヘリオポリスから融通してもらった部品を組み込んで修復している。

 

『な、なんだこれは…や、奴は…なんだ!?』

 

その機動性はあの時と何ら変わらない。

 

自分が見た白い流星と同じ光を放ちながら、クラウドは2機を蹂躙する。

 

さて。

 

底は知れた。

 

あとは狩るだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『白い悪魔だ…真っ白な…悪魔…!!』

 

 

頭部と両腕を切り落としたゲイツを背に、ジンの武装と機体性能を奪い去ったクラウドは、息を乱さずに公開音声で言葉を告げる。

 

《死にはしてないだろう。直にパトロール艦も来る。その時まで生きていればーーだがね》

 

襲ってきた彼らを助ける義理はない。そんな契約もヘリオポリスとは結んでいないので、クラウドは機体を反転させてヘリオポリスへと進路を取った。

 

彼がヘリオポリスに住むことの条件。

 

それはヘリオポリス政府からの要請に応えた自衛のための戦闘行為であった。中立を謳っている以上、表立った戦力を有するわけにもいかないヘリオポリス政府にとって、クラウドは用心棒的な存在だ。近々、オーブ軍がこちらの防衛網を構築するという話もあるが、港も復旧できていないため、万全な防衛は期待できない。

 

クラウド自身も、こう言った略奪や海賊行為からヘリオポリスを守るためにすでに数回出撃を経験している。

 

《隊長、お見事です》

 

ヘリオポリスの指揮管制官から映像通信が流れてくる。そこにはよく見知った顔が映し出されていた。

 

「すまないな、アデス」

 

《構いませんよ。私としても、軍を辞してからいい余生の過ごし方です》

 

ヴェサリウスの艦長であった彼もまた、クラウドと同じく軍を辞して、このヘリオポリスへと移り住んでいた。彼自身、クラウドには偶然と伝えているが、実際のところギルバートからの要請や自身の思いもあったが故に、彼のいるヘリオポリスへと住まいを移した経緯もあった。

 

「ふっ、では戻り次第、私の家に来るがいい。美味いシチューが待っているはずさ」

 

《では、お言葉に甘えますよ》

 

妻も連れて行きます、そう答えて通信を切ったアデス 。クラウドは一度、宇宙を見つめた。

 

絶望と損失感しかなかった宇宙だったが、今は輝いて見える。その光を教えてくれたのは、互いの生き様をかけて戦った流星との日々があったからこそだ。

 

 

 

「ホワイトグリントよりヘリオポリスへ。クラウド・バーデンラウス。帰還するぞ」

 

 

 

だからこそ、彼は歩み続ける。

 

もう迷うことはない。

 

憎しみも悲しみも全てを心に受け止めて歩いてゆく。

 

流星がマシにしてくれた、この未来を。

 

 

 

 

 

 

 




この小説のもう一人の主人公であるクルーゼさん。

彼を本当にどうするかシナオリを組む上で凄く悩みました。しかし、こうやって皆さんに認めてもらえる姿を描けたことに、すごく満足しております。SEEDを視聴していた時から、彼の悲しみがどうやったらマシにできたのだろうと考えていた一つの答えを、ここで出せたのが僕にとってこの小説を続けていた中で得られた宝物の一つです。

デスティニーでは果たして彼は出てくるのでしょうか…?

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。