久々の投稿!自宅待機でエースコンバットやってたら思いついたので上げます。みんなでエースコンバットやろう。アーマードコアもいいぞ。
East Asian Republic. Guangdong
02°139N 113°26’63”E 1580hrs.
July 10, C.E.72——.
東アジア共和国、旧中華人民共和国の広東省奥地。濃霧に包まれる中、隆起上の渓谷がその天辺だけの姿を見せる大自然。
その景色の中を、五機の戦闘機が緩やかな速度で飛行していた。
「まったく、とんでもない仕事を受けたもんだよ」
「ラリーさん、今回ばっかりは、リークさんに同意ですよ」
ムラサメのコクピット中、パイロットスーツに身を包んだリークとキラが、先頭を飛ぶ真っ白なスピアヘッドに乗り込んでいるラリーへと愚痴めいた口調で申し立てた。
「アズラエル理事からの指名なんだ。断れるわけないだろう?」
「そう言っても、この渓谷と霧。こんな中を飛んで、要人を救出しようって言うんだもの。アズラエルさんも無茶いうよ。それを受けたラリーもだけど」
傭兵企業「トランスヴォランサーズ」の最大出資者であり、筆頭株主でもあるムルタ・アズラエルから直々に指名された彼らは、クライアントから貸し出された機体を駆りながら渓谷の中を飛行してゆく。
軽口を叩くキラたちだが、その操縦技術に乱れはなく、濃霧の中を正確な飛行で渓谷の切り立った山々の合間を飛び抜いてゆく。
「借りてきたムラサメがあれば、センサーで目隠ししても飛べるさ。トール、お前は良かったのか?スカイグラスパーで」
「俺はこれが一番なんですよ。ムラサメにも乗ったけど、MS変形運用が前提のそれとは反りが合わなくって」
ラリーの隣にいるトールが操るのは、前大戦のオーブ離脱時に損傷したはずのスカイグラスパーだ。大戦後、オーブ製でもあるスカイグラスパーのスクラップを、ラリーたちトランスヴォランサーズが格安で仕入れて、ハリーやフレイの手によって修復されたのだ。
ついでにと翼面積の見直しも行われ、初期のスカイグラスパーからはあれこれと手を加えられたワンオフ機となってはいるが、気流に左右される地球での運用には、スピアヘッドやムラサメよりも抜き出た性能を発揮することもあった。
「お前を育てた師が良かったのさ。バブルキャノピーで、よくこの渓谷を飛べるものさ」
「ボルドマン大尉か…僕も会ってみたかったな」
リークもトールたちとの話で出てくる「アイザック・ボルドマン」に想いを馳せた。彼はリークと入れ替わる形でアークエンジェルでパイロットとして活躍し、トールの素質を磨き、彼を一流のパイロットへと押し上げた人物でもある。
「最高のパイロットでしたよ。俺にとっては」
渓谷の合間をロールしながら通り抜けたトールは、穏やかな口調で呟く。アイクと共に飛んだ時間は少なかったが、彼の教えがあったからこそ、あの大戦を生き延びることができたし、今があるのだから。
「ケーニヒ教官は風を読むのが最高ですから。俺なんてガタガタ揺れてるのに、教官のスカイグラスパーは揺れてないですよ」
そのトールの機体に追従するのは、現在トールのもとで教導を受けている期待の新人、シン・アスカだ。難なく飛ぶトールの飛行ルートにかじりつくように追従するシンは、その安定した飛行に終始驚くばかりだった。
ラリーの機体制御は洗練された技術の塊であり、トールの機体制御はまるで風と一体になるような懐の深さが感じられた。
「エンジンをこまめに調整して、翼を広げる。風に乗れば、これほど強い味方はいないさ」
そう言ってトールはシンの前でエンジンの出力を落とすと、そのまま風に乗って目の前に迫った岩肌をスルリと躱し、再び出力を上げる。一見すれば簡単そうに見えるが、それが実に難しい。一歩間違えればストールを起こして壁に突っ込むことになりかねない。
シンも迂闊に真似はせずに、スロットルを上げ、フラップとヨーの操作でトールが飛んだルートを切り抜けた。
《エンジンを切って風に乗る、か。戦闘機ならではの発想よね。ムラサメは変形機構のせいで重量がかさむから…あ、そうだ!いっそ変形機構を無くしたムラサメとかさ!!》
閃いたと言わんばかりに言うのは、後方にいるハリー・グリンフィールド技師だ。貴重なムラサメの飛行データを収集するために管制機に乗り込んだ彼女は、興奮したようにアイデアをメモリー端末へと書き込んでゆく。
《はいはい、ウチの技師が変なことを思いつく前にミッションを説明するぞ》
管制機《オービット》で担当を務めるニック・ランドールは、呆れた様子でハリーを見てから各員に通達する。
ミッションの説明をする。
今回の依頼は、東アジア共和国内に囚われているプラント派の要人救出だ。
救出対象である彼はエドモンド・ポルワーズ。東ユーラシアの外交官。彼は首都である台北を視察している際、現地の解放軍によって誘拐された。ポルワーズ氏はアズラエル理事やハルバートン提督とも強いコネクションを持っており、コーディネーターへの融和政策にも尽力してくれている貴重な人物だ。その分、東ユーラシアの反ナチュラル主義者からも狙われている。
我々の目的は、どこの組織がアジアの解放軍をそそのかして彼を誘拐させたかの原因を突き止める事ではない。
君たちの眼前、この岩肌が露出した渓谷地帯にある施設に幽閉されているポルワーズ氏を奪還、救出することが任務の全てだ。
作戦は二段階。
我々は霧に乗じて敵施設へと接近する。濃霧という天候を待った甲斐がある。君たちは対空兵装、対空用のMSの撃破。後続の救出部隊のための道を確保する。
その後、タスク隊が指揮する救出ヘリが上陸。救出部隊がポルワーズ氏を奪還後、離脱エリアまでエスコートできれば、ミッション完了だ。
悪天候のため視界が悪い。各機はセンサーやHUDからの情報を頼ってくれ。
ミッションの説明は以上だ。
君たちの上に流星の輝きがあらんことを。
「おいおい、ニック。解放軍はMSまで所持しているのか?」
渓谷の合間にある少し開けた場所に出たラリーは、通信先にいるAWACS「オービット」のニックへ首を傾げながら問いかける。クライアントの話では、敵はそれほど潤沢な資金は持っていないと聞いているが。
《言っても旧式。だが、かなりカスタマイズされていると聞く。それに、エースパイロットもいるらしい。「梁山泊」と呼ばれているエース集団だ。なんでも、旧式で地球軍の新型機を撃破したとか》
「例のウィンダムか」
《ダガーより高性能機を旧型機で撃破しているんだ。注意しろよ?君たちが落とされれば、俺の報酬は無しになるからな》
大戦時よりも砕けた口調となったニックへ、ラリーも任せろと胸を張って答えた。
「安心しろよ、きっちり仕事はこなしてくるさ」
《期待してるぞ。さて、そろそろ敵勢力エリアだ。無線封鎖。敵レーダー網を掻い潜るために、高度は500フィート以下を保て。次におしゃべりができるのは、敵対空兵装を全滅させてからだ》
了解、とラリーたちは答えると、さらに深い濃霧の中へとその機体を下降させてゆくのだった。
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『ん?何か聞こえないか?』
最初に異変に気がついたのは、周辺を監視する観測所にいる者だった。濃霧で一寸先が見えない状況下。この時期の渓谷はいつもそうだが、それは濃霧の中に施設を紛れ込ませる格好の幻影として役立つ物だ。
この施設が大戦時から不落を誇ったのは、こう言った自然的な要塞性能があったからこそだ。
そんな大自然の要塞中で、不穏な音が響き渡っているのを、周波ヘッドディスプレイを付けていた者が察知したのだ。
『この濃霧の中だぞ。聞き間違いじゃないか?』
『いや、確かに聞こえる。この音はなんだ?』
《こ、こちら観測地点アルファ!敵機確認!繰り返す!敵が来たぞ!》
観測所に飛び込んできた緊急通信。同時に施設内に警報音が鳴り響き、周りは一気に騒がしくなった。
《各対空兵装展開、目標、敵戦闘機群!!》
さっさと対空砲を引っ張り出すんだよ!そう叫ぶ現場指示者に従って対空兵装を展開しながら、解放軍の兵士たちは異常な状況に首を傾げる。
『冗談だろ?この濃霧だ。こんな中でまともに飛べるはずがない』
『それならありがたいものさ。この場所は切り立った渓谷の谷間だ。気流も複雑に入り乱れている上に、濃霧で視界も効かない。こんな中で飛べばあっという間に岩肌とハグができちまうぞ』
彼らは楽観視していた。この濃霧と切り立った渓谷の力を信じていたからこそのものだが、それよりも難攻不落である彼らの施設そのものが、その油断を招き入れたのだ。
そしてその油断は、致命的な打撃を被ることになって覚める。
《各員に通達!ポイントベーターの対空兵装が沈黙した!確認できるものはいないか!》
悲鳴のような通信を聞いて、その場にいる者が戦慄した。ポイントβ〝ベーター〟は、この施設の重要な迎撃エリアを担当する場所だ。
ベーターはこの施設の制空権を担う〝入り口〟だ。
迷宮のような渓谷を抜けて、ノコノコと現れた敵機を対空高射砲や、対空ミサイル(SAM)を用いて迎撃する上で、地理的にも条件でも、おいそれと敵の手に落ちるような場所ではない。
常に厳警戒態勢を維持し続けているポイントが、敵が現れてわずか数分足らずに陥落したと言うのか?信じられないと言った気持ちより、得体の知れない存在に真っ先に浮かんだのは、恐怖だった。
『嘘だろ?ポイントベーターが落ちたのか?!』
《敵、レーダーに反応!だが、霧で何も見えない!》
《SAMもダメだ!熱探知に切り替えても霧の影響で精度が半減だ!なっ…SAM2号機、えっ…1号機も撃破だと!?》
なんなんだアレは!戦闘機の動きなのか!?それを最後に各地に点在する迎撃施設が次々と撃破されてゆく。敵は施設の中心に向かって外側から削り落としてゆくような攻め方をしていた。
まるで縄でじわじわと締め上げられてゆくような…想像を絶する何かが、こちらに向かってきている事だけは、はっきりとわかった。
『この視界の中で正確に撃ち抜いてきている…化け物だ…!!』
こちら側の対空兵装は、霧の影響で精度が半減しているというのに、空をひらりと舞う敵はその悪条件を無い物とするように的確にこちらの武装を撃破してゆく。管制室から程近いSAMが轟音を上げて爆散する。
机の上にあったあらゆるものが揺れで落ちる中、各ポイントマンからの悲鳴のような通信が響き渡った。
《対空兵装、さらに撃破された!くっそー!なんて奴らだ!》
ふと、施設の窓から何かが見えた。濃霧の中でもはっきりとわかるスラスターの光を灯しながら、それは悠々と空を飛んで、再び濃霧の中へと消えてゆく。再び遠くで爆音が轟いた。
『おい、見えたか?今の真っ白な機体…』
『ま、まさか…流星か…?』
真っ白の戦闘機。
それはゲリラ屋や、反政府組織、テロリスト、過激派の間では恐怖の象徴とも言えた。砂漠の流星、メビウスライダー、ネメシス。呼び名は様々あるが、はっきりしていることは、その機体に挑んだどの組織も壊滅に追い込まれていると言う事だけ。
そんな話をハンガーで聞いた年老いたパイロットは、興味深そうに目を閉じてから小さく笑った。
《ほう、面白いことを言うな》
対空兵器の破壊により、ハンガーの中が激しい揺れに襲われるが、その年老いたパイロットは姿勢を一切崩す事なく、使い古したノーマルスーツを着て、撃墜マークがあしらわれたヘルメットを見つめる。
《対空兵装ではラチがあかんようだ。我々が出る》
彼に付き従うパイロットは4名。年老いたパイロットを入れた五機の機体は、濃霧の中で攻撃を受ける施設の中で、ゆっくりと起動シークエンスを進めてゆく。
《砂漠の流星…ついに相見えるか。面白い》
誘導員に従って機体を持ち上げる。過去のデータから再現したものだが、存外扱いやすいと男は思った。MSとも言えず、かと言って戦闘機とも言えない〝衣付き〟の機体であるが、敵を屠り、生き残れることができるのならば、それは間違いなく最強の矛と言えた。
《システムチェック、オッケーです!発進どうぞ!幸運を祈ります!》
モノアイを光らせた機体は、解放されたハッチを見据えながらその出力を最高潮へと押し上げた。
《梁山泊、その力を存分に示せ》
〝知道了(了解)〟と答えた部下たちを引き連れて、年老いた男は空へと上がってゆく。彼にとって残された唯一の居場所へと。
キャラデザイン
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他キャラも見たい
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キャラは脳内イメージするので不要