ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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番外編 雷神vs流星(2)

 

 

 

「残念だったな!!私が解説だ!!」

 

 

飛び上がった二機の戦闘機。

 

その滑走路がある島の中央あたりにある解説席には、古くから流星を知る人物が解説役を務めていた。

 

クラウド・バーデンラウス。

またの名をラウ・ル・クルーゼ。

 

アデス夫妻と共に、観光がてら嫁と娘を連れて地球に降りてきたところ、とある伝で流星が模擬戦をやることを聞きつけて爽快と会場入りしたのだった。

 

出会い頭、ラリーとムウから「ゲェッ!?クルーゼ!!?」と心底嫌そうな顔をされたが心外である。

 

そんなこんなで。

 

集まった海賊などなどの太平洋中の犯罪者たち相手に飛び立った二機の凄まじい空戦を解説する予定だったのだが、その戦闘機動は素人から見ても常軌を逸していた。

 

 

「トールが上を取った!!」

「やはり風を読むのはトールの方が上手いな」

 

 

そう言って双眼鏡を覗くサイと、隣にいるのは操舵手の補佐をしていた頃、トールの面倒を見ていたアーノルド・ノイマン。手に汗握るミリアリアがサイの双眼鏡を引ったくって戦況を見た。

 

 

「ラリー機は海面にべったり張り付いてるぞ!!」

 

「今高度を取ったら狙い撃ちだからな。海面スレスレの方が上をとる相手からしたら狙い難いのさ」

 

 

たしかにトールから見たらラリーの上を押さえられたことは戦況を有利に進めるポイントではあった。だが、決定打を入れるには波間を縫うように海面上をスレスレに飛ぶラリー機を上に引き剥がさなければならない。

 

射角を取ろうと距離を取れば、あっという間に変態機動で旋回し始め、すぐさま背後を取られるというイメージが何となくできてしまっていたからだ。

 

 

(上をとる作戦は大成功…!あとはラリーさんの動き次第だけれど…)

 

 

その思考の途端、ラリーの機体はとんでもない行動に出た。

 

急上昇ではなく、推力のセッティングを保ったまま、最大仰角を取ったのだ。

 

海面スレスレでまさかのコブラマニューバーである。失速すれば即座に機体が海面に叩きつけられるというのに、ラリーは躊躇なく機首を飛行方向にたいしてほぼ垂直に起立させた。

 

機体がいきなり立ち上がったことにより、トールはそれを避けるしか選択肢を選べなかった。

 

急激に減速させた後、再び機首を水平に倒し、高い推力セッティングのままオーバーシュートしたトールの機体を追撃する。

 

 

「攻守が入れ替わった!!」

 

「トール!!」

 

 

途端、海面スレスレで繰り広げられていた無音の駆け引きから一変。トールが機体を上昇させ、一気に戦闘機動の幅が増えた。

 

あとは二人の背後の取り合いだ。

 

 

「さぁて、実力の見せ所だぞ」

 

 

解説役のクラウドがにこやかに言うと、二機の動きは更に加速する。変速マニューバーの応酬だ。クルビットからポストストール、コブラにシザース、インメルマンターンからの更なる機動。

 

誰もが思った。

 

飛行機が成せる動きじゃない、と。

 

 

「凄まじい戦闘機動だな。中に乗ってるのは本当に人間か?」

 

 

ひらりと戦闘機が機首を上げたと思ったら真横に滑るように動き、そのままひらりと機体を振り回す。まるで空を舞う葉。動きが変速的すぎて常識という尺で測れたものじゃなかった。

 

しかも二機とも、その類稀なる機動を何の苦もなく繰り出し、挙句追従しているのだ。

 

少しでも空力学に詳しいものがいたら、二人の動きを見て卒倒するだろう。

 

 

「コーディネーターならこれくらい耐えれるんだろうけどな」

 

「馬鹿言うな、あんなのやって平気なのは流星くらいだ」

 

 

そう言う反コーディネーターを掲げるゲリラ屋の言葉に解説のクラウドや、流星を知る者たちはにっこりと笑った。

 

ある時、カガリがラリーの動きを見て、キラとアスランなら着いていけるんじゃない?と言ったら真顔で「着いていけたとしても降りてきた頃には死んでるよ」と返されたとか。

 

試しにマユラたちや、オルガたちが後部座席に座って試しの相乗りをしたが、二日間は医務室から出て来れなくなるほどの有様だったらしい。

 

 

「まぁ、ラリーとトールは昔からああだから」

 

 

そう言って困ったように笑うリークだが、そんな二人に平然と着いていける彼も相当おかしいと思う。

 

師と教官の二人の動きを目に焼き付けるシンだが、実際にあの動きをやろうとすれば技術が追いついてないが故に機体が空中分解するのは明白だった。

 

背後の取り合いを繰り広げるが、進展は芳しくなかった。

 

エンジンをぶん回して機動するラリー。

 

エンジンと風を巧みに扱って機体を翻すトール。

 

どちらの動きも一進一退でキリがない。すると、今度はトールが出力セッティングを維持したまま背後に回ろうとするラリーの前で機首を上に向けた。

 

 

「コブラか!面白い!!」

 

 

応じるようにラリーも機体を上に向ける。

 

二機揃ってコブラという異様な光景。

 

出力を維持しているが機体が大幅な空気抵抗を受けているため、次第に二機は失速。エンジンを吹かしたままひらひらと歪な軌跡を描いたまま空から海めがけて落ち始めた。

 

 

「おいおいおい!!」

 

「このままじゃ二機とも落ちるぞ!!」

 

 

観客たちが響めき出す。そんなこと機にもしないで、ラリーとトールは射線が被ったと同時にバルカンを放ちあっている。海面まで100メートルを切ったあたりで、いよいよ響めきが悲鳴に変わり始めた。

 

 

「馬鹿!!意地張ってないでさっさとエンジン吹かせ!!」

 

 

あわや海面に叩きつけられるかと思った瞬間、二機は合わせたように出力を上げて海面スレスレで止まったのだ。

 

飛沫をあげて停滞する二機は、高度を維持したまま睨み合う。

 

ヒュッ、とエンジンが空気を吸い込む音が響いた同時、二人は同時に機体のエンジンを最大出力にした。ノズルから吹き出す推力が海面を叩きつけて、巨大な水柱を立てる。

 

湧き上がった観客からの歓声を置き去りにしたら二機は高速度でぐんぐんと上昇して再び交差した。

 

 

「まだまだ…ですよぉ!!隊長ぉおお!!」

 

「ぐうぅうぁああっ…!!腕を上げたな…トール!!」

 

 

ここからは持久戦だな。

 

空を見上げたまま、クラウドは空戦機動を再開した二機を見つめてそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

キャラデザイン

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