ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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誰が解説役は戦ってはいけないと言った?


番外編 雷神vs流星(3)

 

 

 

カーン!!

 

渾身の右ストレートと左フックが両者に突き刺さったところで、海辺に集まった海賊たちが出店でかっぱらってきたフライパンを、逆さに持ったハンドガンで叩いた。

 

もう何ラウンド目かわからない。

 

両者、ボコボコになった体をセコンド役が引きずって簡易的に設けられたコーナーへと戻っていった。

 

 

「あの野郎…見たか、リーク。今の右ストレートむぐぅ」

 

 

顔中アザとタンコブにまみれたラリーの口に、リークは問答無用で栓を抜いたラム酒をぶち込む。

 

 

「存外しぶといな…それでこそ、私のライバル…」

 

 

反対コーナーでは焦点が定まらない目でうわ言のように呟くクルーゼ。セコンド役になってしまったアデス が海水で冷やしたタオルを凸凹になったかつての隊長の顔に乗せた。

 

着陸した二機の戦闘機を尻目に、賭けの対象がラリーとクルーゼのステゴロボクシング対決となって数刻。

 

海賊や犯罪者たちが白熱する中、キラやアスランたちは買い込んだ屋台の品々を食べながらトランプなどのカードゲームに興じている。

 

もはや興味がない様子だ。

 

ことの発端は、ラリーとトールの空戦が長期化したことにあった。

 

熾烈な優勢争いを繰り返しているうちに燃料切れになった両者が一度給油のために着陸したのだが、荒唐無稽なラリーの空戦に食らい付いていたトールが、コクピットから降りたと同時に気絶。

 

トールの操る機体が離陸不可能となったことで、明確な決着がつくことなく勝敗が決したのだった。

 

主催のアズラエルからしたら、空戦機動のデータやら出力データやらなどの有益な情報が手に入ったことと、太平洋中の犯罪者元締めとのコネクションもできたので、ここらで切り上げても利益は出たのだが、海賊たちからすれば納得できない終わり方。

 

ブーイングの嵐が起ころうとした時。

 

解説席から降りてきたクルーゼが「流星との勝敗は白黒付けなくてはな!!」と叫び声を上げながら、困惑するラリーの背中にドロップキックを炸裂。

 

売り言葉に買い言葉。

 

ラリーもにこやかに笑うクルーゼに反撃。

 

そんなこんなで、アズラエル主催の模擬戦そっちのけで、二人はヤキンドゥーエ戦で決した戦いのリターンマッチと相なったわけだ。

 

どっちが強いか勝負するならステゴロだろ!と、ラリーとクルーゼも躊躇いなしのパンチやキック、投げ技や関節技などの応酬を繰り広げてゆく。

 

太平洋の荒くれ者たちからしたら、知名度がないクルーゼとの単なる喧嘩だと思っていたが、ところがどっこい。この男、前大戦で最初から最後まで流星とタメを張り続けた男。

 

ラリーが圧倒すると思われていた喧嘩はまさに互角の戦い。生死をかけ、雌雄を決するような戦いぶりに、さすがは太平洋の荒くれ者。

 

速攻で賭場が成立し、流星が勝つか解説が勝つかのトトカルチョが始まった。

 

どっかの誰かが持ってきたフライパンが奏でるゴングの音と、ラウンドが重なるごとにレートがどんどん上がってゆく。

 

ミリアリアに介抱され、気絶していたトールが目を覚ました頃には二人の模擬戦並みの熱狂に溢れかえっていた。

 

 

「やはり、貴様との戦いは胸が躍るな!!ラリー!!」

 

「お前はいい加減にしつこいんだよ!!この野郎!!さっさと倒れろ!!」

 

「あーっはっはっはっ!!その程度では折れぬさ!!あの時みたいには!!」

 

 

疲労困憊ながらも出す手数は変わらず。

 

矢吹ジョーと戦った力石みたいになってるが、お互い避けることもせずにパンチの応酬する。

 

ラッシュ!!ラッシュ!!ラッシュ!!ポタポタと鼻血を滴らせながら、ぶん殴り合う二人。

 

 

「アスラン。それダウト」

 

「くっそ…!このゲーム、キラが強すぎる」

 

「表情が割と平坦だからな、弟くんは」

 

「そういう妹ちゃんは表情わかりやすいよね」

 

「なんだとぉ!?」

 

「はいはい、喧嘩しない喧嘩しない」

 

 

そこから離れたところで机を囲みながらダウトに興じる流星メンバーたち。あんまりの対応である。シン?マユに連れられてプライベートビーチで遊んでます。

 

 

「おーい、馬鹿ども!!そろそろ引き上げんと連合の保安局が来るぞー!!」

 

 

主催であるアズラエルや、プライベートビーチで遊んでいるキラたちはいいが、集まるのは太平洋の荒くれ者たち。

 

片田舎にくる定期巡回を知らせてくれた住人の言葉に全員が振り返ってると、鈍い音を鳴らして殴り合っていたラリーとクルーゼが、渾身のクロスカウンターを放ってぶっ倒れた。

 

 

「どっちが先に立つ!?」

 

「先に立ったやつの勝ちだ!!」

 

 

ピクリとも動かない二人を固唾を飲んで見守る荒くれ者たち。そんな張り詰めた空気の中だった。

 

 

「ちょっとすいません。通してください」

 

 

まだ小さな子供を抱いた女性が荒くれ者たちの合間を縫ってぶっ倒れているクルーゼの元へとやってきた。

 

 

「隊長、また流星に負けるんですか?たまには勝ったらどうです?」

 

 

そう笑顔で言うのは、クルーゼこと、クラウドの嫁であった。嫁の声に反応するように、ボコボコになった顔と口から血を垂れ流し、クルーゼは雄叫びを上げて立ち上がった。

 

この勝負、クルーゼの勝利であった。

 

そしてほとぼりが覚めた後、クルーゼは嫁の前で正座したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、配当金をわけ終わった荒くれ者たちは早々に島から撤退していった。

 

南国の海に夕日が映る。全員が絶景を堪能してある中で、やっとラリーが目を覚ました。

 

その後、アズラエルが用意したバーベキューを堪能することになったが、ラリーとクルーゼは口の中がキレすぎていて味わうことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要
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