白き閃光。
それはジンでは無くシグーと呼ばれるジンの後継機たる特殊なモビルスーツ。戦場でも僅かな目撃情報しか無い機体ではあるが、俺たちはその機体を知っている。
グリマルディ戦線から、今日に至るまでの、我が部隊の宿敵。
「くそー!ラウ・ル・クルーゼかっ!」
こんなときに、と叫びそうなムウが高機動戦闘をしながら喘いだ。俺もムウとは違う機動で、クルーゼが操るシグーと接戦する。
「クルーゼ!!今日こそ引導を渡してやる!!」
ムウと共にいる以上、彼と出会うことは必然だった。SEED史上、最悪の戦争を泥沼化させ、人類悪として憎しみに駆られて散った相手。コーディネーターでもなく、ナチュラルだというのに、主人公であるキラ・ヤマトに迫る操縦技術を持つ相手と、俺たちは幾度となく相見えてきた。
「お前はいつでも邪魔だな!ムウ・ラ・フラガに、メビウスライダーたち…!!尤もお前にも私が御同様かな!?」
「戯言を!!」
シグーから放たれるライフル弾を避け、俺とムウはクルーゼとの戦闘に熱中して行く。この機動やメビウス・インターセプターの力を使っても、クルーゼを落とすことは叶わない。せいぜい接戦、互いに消耗戦へ縺れ込ませることしかできない。
いや、もしかすると手加減されているかもしれない。ラウ・ル・クルーゼに。
「フランツの仇ー!!」
「ゲイル!?だめだ!!」
熱中していた戦闘の最中、僚機が無謀にもクルーゼの許へ接近して行く。引き返すように叫ぶが、そうする前に俺の直感が告げる。
「ゲイル!!避けろーーッ!!!」
メビウスの突貫を容易くいなしたクルーゼは、腰に携えた重斬刀を抜き、すれ違ったメビウスのコアブロックーーコクピットへ無情に突き刺す。
通信機越しに、くぐもった声が聞こえた。
斬撃を受けたメビウスは、黒煙を上げることなくしばらく宙を漂い、そして爆発した。
「ゲイル!!くそが!!馬鹿野郎!!リーク!!俺とエレメントを組め!!勝手な行動はするなよ!!」
『りょ、了解!!』
クルーゼをバルカン砲で牽制しつつ、俺は乱れた編隊を再編する。フランツ、ミハエル、リョウ、ーーそしてゲイル。
メビウスライダー隊で戦死した仲間の名前がまた増えた。その全てがクルーゼによって落とされている。
許しはしない…!!!確実に、ここで殺す!!!
その時の俺もまた、戦争の憎しみによって、未来を見ることができなかった。
クルーゼが操るシグーは、ムウのガンバレルのオールレンジ攻撃を難なく避けて、ヘリオポリスの中へと侵入して行く。
「ええーい!ヘリオポリスの中にっ!追うぞ!!各機、続け!!」
それを追うように、メビウス・ゼロを先頭に三機の編隊がヘリオポリスの中へと突入してゆくーー。
////
「やはりムウは居たか。そして奴も…」
複雑なヘリオポリス内部へ続くトンネルを飛びながら、クルーゼは過去、そしてグリマルディ戦線から続く因縁の相手に思いを馳せていた。
ムウ・ラ・フラガ。
言うまでもなく、自分の因縁、憎しみの源とも言える相手の一端だ。彼との決着は付ける時は来るが、まだその時では無い。
問題は、だ。
グリマルディ戦線から突如として現れたメビウス乗り。ジン一機にモビルアーマー三機という絶対条件を覆し、それどころかメビウス一機に多くのジンが撃破されるという、偉業を成し遂げたパイロット。
ムウを感じる時、必ずそのパイロットがいる。
部下を落とし、自分をも喰らおうとする「流星」。その脅威と出会うたびに、クルーゼは歓喜した。
絶望しかない世界に光が灯ったような気がした。
自分のような「成り損ない」でも、「誰もが願った理想像」でもなく、己が力だけでその極地へと至った存在。命を削る戦いを重ねるたびに、その高ぶりは憎しみではない、別の何かに変わっていくようだった。
「全く…厄介な相手だよ…流星は…」
その呟きに応えるように、クルーゼの背後からムウを先頭にメビウス隊が迫る。
////
「この野郎!!もう逃がさないぞ…!!」
シグーとメビウスが、通気トンネルを抜けてヘリオポリス内部に入った瞬間だった。
眼下に、ランチャーパックを装備したG兵器、ストライク。そしてそれを確認したと同時。
外壁をビームが穿ち、白い巨船が姿を現して行く。
《今のうちに沈んでもらう!》
「うわぁぁ!ビーム兵器!?」
味方の通信が混線する中、白いシグーがこちらを狙ってくる。下にいるストライクは、巨船が放ったであろうビーム兵器にたじろぐばかりだ。
「させるか!!」
俺は少なくなったエネルギーをフル活用して、シグーに接敵する。もつれ合うように飛びながらも、クルーゼの意識は眼下のストライクに向いていた。
「ん?新型か!仕留め損ねたか!?」
「戦艦?コロニーの中にか!」
クルーゼも、そしてムウも、目の前で起こる展開について行けていない。その中で唯一、状況を把握しているマリューが、空に姿を現した巨艦を見て叫んだ。
「アークエンジェル!」