ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第84話 海と戦闘機とモビルスーツと

 

 

 

あー今回の任務だが、あくまで機体性能テストだ。

 

場所はインド洋南西部、任務内容は「スピアヘッド・フローター」の性能実験だ。くれぐれも空戦機動は控えるようにとハンガーの作業員たちからの要望を受けている。

 

ライトニング1は発進後に速やかにストライクとのドッキングモードに切り替えてくれ。ライトニング1にはドッキングシークエンスの補佐として、複座に対応可能な人員を搭乗させる。無茶な操縦はしないことだな。

 

ライトニング1のスピアヘッドが発進したのちに、ストライクも発進する。今回のストライクのパックは、「エールストライカー・ローニン」。エールストライカーの大型翼はないが、フレキシブルスラスターでの短時間のホバー機動は可能だ。

 

ストライクは発進後に、レーザー通信でのドッキングシークエンスに移行、そのあとはストライクを乗せた状態での飛行テストに移り、データ収集を行う。

 

いいか?今回はデータ収集が目的だ。空戦機動は原則として禁ずる。わかってるな?空戦機動は禁止だ。

 

今回はライトニング2もいる。これ以上やると作業員が発作を起こしかねん。とにかく無傷と燃料消費くらいで戻ってきてくれ。

 

無事の性能テストを祈るよ。メビウスライダー隊、発進!

 

 

 

////

 

 

 

《ラリー機、発艦位置へ!》

 

可変翼だったエールストライカーの補助ウイングは、低速域で飛行するスピアヘッド・フローターに合わせて翼角度は固定化されている。

 

追加ブースターは機体下部に設けられており、本体のエンジンチューンはスーパースピアヘッドと同等の値をとりあえず設定されているため、低速域での飛行とはいえ、通常時の20%増しという性能に変わりはない。

 

そして、コクピットの中で機体の各部チェックを行うラリーの複座に座るのは、地球軍のノーマルスーツを着たバルトフェルドだった。

 

「お手柔らかに頼むよ、流星殿?」

 

バルトフェルドがラリーの機体に同乗することに、マリューやナタルは当初は難色を示していたものの、ハリー曰く、ストライクとのドッキングシークエンスには相対速度の調整や機体制御の補佐が必須であり、その項目を見た段階でムウやアイク、トールも搭乗拒否をしたため、コーディネーターであり、ラゴゥのパイロット経験があるバルトフェルドが起用されるに至った。

 

そして、ラリーの監視下から放たれたバルトフェルドのフリーダムっぷりを聞いて、ナタルが早々にサジを投げたのも、バルトフェルド搭乗の要因だったりする。

 

「気をつけてね、ラリー!まだ調整は完全じゃないんだから!」

 

「ラリーさん、無茶はしないでくださいね!」

 

「もうエンジンのオーバーホールは勘弁ですからね!」

 

ハリーの忠告と、作業員たちからのクレームに、はいはいと敬礼で返しながらラリーは操縦桿を強く握った。

 

「とにかく、安全操縦を心がけますよ!ラリー・レイレナード、アンドリュー・バルトフェルド。スピアヘッド・フローター、ライトニング1、発進する!」

 

スピアヘッドと補助ブースターを唸らせて、ラリーの機体もアークエンジェルから飛び出していく。

 

続いて入ってくるのは歪なエールストライカーを背負ったストライクだ。

 

《APU起動。カタパルト、接続。ストライカーパックはエールを装備します。エールストライカー・ローニン、スタンバイ》

 

ミリアリアのアナウンスがハンガーに響き渡り、戦闘時の緊張感がない中で、サイやフレイがストライクの発進を見守っている。

 

エールストライカー・ローニンは、文字通り大型翼と上部エンジンが外されたエールストライカーだ。下部のフレキシブルスラスターにストライクの出力が集中するため、機体制御は困難を極める上に、用途としてもホバー機動が限界だろう。

 

念のためにビームではなく、実弾兵装であるモビルスーツ用のバズーカとシールドを装備したストライクがカタパルトへと運ばれる。

 

それを操るキラは、あまり乗り気ではなかった。これはあくまでも性能テスト。それを頭に叩き込んでストライクの操縦桿を握る。

 

《システム、オールグリーン。続いてストライク、どうぞ!》

 

「キラ・ヤマト、ストライク、ライトニング2、行きます!」

 

 

/////

 

 

「相対速度、200、180、160ーー相対速度クリア」

 

飛び立っていったスピアヘッドが、ぐるりとアークエンジェルを一周したタイミングでストライクがハンガーからホバーで飛び出していく。

 

バルトフェルドからリアルタイムで送られてくる情報を見ながら、トーリャことAWACSであるエンジェルハートが、スピアヘッドとストライクの状況をブリッジの各員に知らせていく。

 

「ストライク、スピアヘッドに着地します」

 

その言葉と同時に、ブリッジの前でレーザー誘導を行いながら、ストライクがスピアヘッドの上に着地した。ストライクが乗ったことで、スピアヘッドはやや揺れたものの、すぐに体勢を立て直してストライクを乗せたままアークエンジェルの外周を飛行し始める。

 

その様子を見ていたブリッジのメンバーから「おぉー」と小さな歓声が響いた。

 

「バルトフェルドさん、状況は?」

 

マリューがスピアヘッドの通信に問いかけると、前のモニターにはキラ、ラリー、そしてバルトフェルドの顔が映像通信で映し出される。

 

《快適な物だよ。現地改修でこれほどの物を作るとは恐れ入ったな》

 

戦闘機にモビルスーツを載せようというのだから、耐久性に疑問はあったものの、実際にやってみればハリーの計算通り、安定した出力を維持してスピアヘッドは飛行を続けていた。

 

「よーし、次はフローターのテストだ。機体姿勢を維持したままストライクをーー」

 

「レ、レーダーに反応!」

 

全員が安堵し、エンジェルハートが次のテスト項目に移ろうとした時、モニターを監視していたカズイが大声をあげた。

 

「また民間機とかじゃないのか?」

 

そう言って他のオペレーターがモニターを監視すると、その異変にすぐ気がついた。捉えた反応が民間機にしては異常に速いのだ。

 

「これは!攪乱酷く、特定できませんが、これは民間機ではありません!」

 

その異変に対して、マリューは素早く反応する。

 

「総員、第二戦闘配備!機種特定急いで!」

 

その瞬間に、ナタルが慌ただしく対空迎撃の準備を始め、ミリアリアが艦内へ放送を流した。

 

《総員、第二戦闘配備!繰り返す!第二戦闘配備!》

 

その声に、さきほどまでスピアヘッドを見送り穏やかな時間が流れていたハンガーが、一気に慌ただしくなった。

 

「戦闘配備だ!さっさと準備だ!急げよ!」

 

マードック指揮の元、スカイグラスパーの発進準備が大急ぎで行われていく。更衣室へ駆け込んだムウとアイクも、軍服からパイロットスーツに着替えながら思わず毒づいた。

 

「ザフトは居ないんじゃなかったのか!?」

 

 

////

 

 

「よーし!足つきを確認した!グーン隊、発進準備!」

 

指揮官仕様のディンから、潜水母艦クストーヘ指示を出すのは、マルコ・モラシムだ。彼らはアークエンジェルのソナー範囲外まで潜水母艦で近づき、機会を窺っていたのだ。

 

海を進むアークエンジェルを睨みつけながらモラシムは呟く。

 

「足つきめ、悠々と航海ができると思うなよ?」

 

なにせ、この紅海の鯱である自分に見つけられたのだからなーー。

 

 

 

 

 

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