アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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今回はドーンと豪華六本立て!

キャー! リョウマサンフトッパラー!(裏声)


番外編14 青色の短編集

 

 

 

・八神堂にて(Lesson47後のお話)

 

 

 

 以前買い忘れた小説が何処の書店にも見当たらなかったのではやてちゃんに取り寄せてもらったのだが、八神堂へ受け取りに向かう途中で響ちゃんと出くわした。

 

「はやてちゃんにDVDを返しに?」

 

「あぁ! あとお礼に自分手作りのサーターアンダギーを持ってこうと思って。……あと他にお勧めの恋愛物がないか聞きに……」

 

 どうやら恋愛物に興味が出始めたようだ。その内事務所内で真ちゃんと一緒に少女漫画談議に花を咲かせる響ちゃんの姿が見られるようになったりするのかなぁ。

 

 そんなわけで二人一緒に八神堂へ。

 

 自動ドアを潜って店内に入るとカウンターにはやてちゃんがいたのだが……そのはやてちゃんと話をしていた一人の少女の姿があった。

 

「あ、良太郎さん、響さん、いらっしゃい」

 

 はやてちゃんがこちらに気付いて挨拶をしてくる。

 

 それに釣られて少女もこちらに振り返った。やや長めの前髪に隠れて目元が見辛かったが、僅かに覗く青色の瞳から間違いなく美少女だと確信した。ゆったりとした服装にストールを羽織っているため体の線は分からない。……だが微かに漂う大乳の気配……。

 

「こんにちは、はやてちゃん。……ごめん、取り込み中だった?」

 

「別に大丈夫ですよ。あ、お二人と文香さんはまだ面識ないんやったっけ」

 

 丁度いいから紹介しますね、とはやてちゃん。

 

「こちら鷺沢(さぎさわ)文香(ふみか)さん。サギサワ古書店店主の姪で、私の本好き仲間です。文香さん、こちら私のお友達の周藤良太郎さんと我那覇響さんです」

 

「「ちょ」」

 

 かなりさらりと俺たちの名前を紹介してしまったはやてちゃんに少々焦った声が響ちゃんとハモる。

 

「……初めまして」

 

 しかし鷺沢さんは俺たちの予想に反して全くの無反応だった。気付かれなかったのだろうか、ここまで反応が無いとショックを通り越して逆に驚きなんだが。

 

 響ちゃんと二人ではやてちゃんにコッソリと額を合わせる。

 

(えっと、はやてちゃん?)

 

(文香さん、テレビとか雑誌とか殆ど観ーひんからアイドルとか芸能関係の事柄に疎いんです)

 

(それ、疎いっていうレベルじゃないぞ……)

 

 自分で言うのもアレなんだけど、周藤良太郎を知らないって相当でしょ……。

 

 とりあえず、突然内緒話を始めた俺たちに鷺沢さんが可愛らしく首を傾げているのでこの話は後回し。

 

「えっと、よろしくね、鷺沢さん」

 

「よろしくだぞ!」

 

「……よろしくお願いします。……もしかして、沖縄の方ですか……?」

 

「自分か? 生まれは那覇だぞ」

 

 鷺沢さんが響ちゃんの言葉の訛りに興味を惹かれている間に、俺は自分の用事を済ませておこう。

 

「はやてちゃん、例の頼んでおいた本なんだけど」

 

「あぁ、見本を作ったものの直前で恥ずかしくなって出版中止になったリインの水着写真集ですね」

 

「何それ超見たい」

 

 じゃなくて。いやそれも見たいのは本当だけど。

 

「分かってますよー。はい、新名(しんめい)任太郎(にんたろう)著『探偵左文字』シリーズ最新作の『紅に燃ゆる』下巻です」

 

「ん、ありがとう」

 

 これこれ。人気シリーズだから何処に行っても売り切れで買えなかったんだよ。

 

「……あの……『探偵左文字』、お好きなんですか……?」

 

 代金を支払おうと財布を取り出したところ、後ろから鷺沢さんが覗き込んできていた。

 

 その後、『探偵左文字』シリーズやそれ以外の新名任太郎作品についての話題でそこそこ盛り上がる俺と鷺沢さんだった。

 

「……自分、微妙に蚊帳の外だぞ」

 

「響さんは私と恋愛物の話でもしましょーか」

 

 

 

 

 

 

・喫茶『翠屋』にて(Lesson68後のお話)

 

 

 

「そういえば、新しい学生のアルバイトを雇ったんだったな」

 

「ふーん?」

 

 店内を掃除中の恭也からそんなことが告げられた。どうやらクリスマス戦線に向けて戦力強化を図ったようである。

 

「どんな娘なんだ?」

 

「む? いや、男だぞ」

 

 えー?

 

「話の流れからして普通女の子だろそこは」

 

「お前は一体何を言っているんだ」

 

 男の新キャラとか何処に需要があるんだという謎の電波を受信した。

 

 俺とシフトの交代だからそろそろ来る頃だが、と恭也が呟いた丁度その時、翠屋の入口が開いて一人の男性が入って来た。

 

「おはようございます、恭也君」

 

「あぁ、おはよう。丁度お前の話をしていたところだったんだ」

 

 紹介するよ、と恭也が手で示す男性。細身で身長が高く、本当に前が見えているのかどうか疑問に思うほど目が糸のように細い。何か岩タイプ使ったり高速移動したりしそう。

 

「新しくアルバイトとして入った東雲(しののめ)荘一郎(そういちろう)、俺たちと同じ高校三年だ。荘一郎、こいつはウチの常連で幼馴染の周藤良太郎。名前ぐらいは聞いたことあるだろう」

 

「よろしくー。翠屋で働くなら、フレンドリーに荘一郎と呼ばせてもらうぜ」

 

「はい、では私も良太郎君と。……それにしても驚きました。有名な芸能人も来店すると聞いていましたが、まさかあの周藤良太郎と会えるとは思っていませんでした」

 

 ここにアルバイトに来る人は大体それ言うなー。あとは言葉にならない悲鳴のような黄色い声とか。

 

「にしても高三のこの時期にアルバイト始めるとか、受験しないの?」

 

「いえ。私はパティシエ志望でして、既に専門学校の合格をいただきました。翠屋で働かせていただくのも、高町桃子さんの元で研鑽を積みたいと思いまして」

 

「なるほどね」

 

 流石は桃子さんである。しかしそういう人は結構多く、よっぽどのことが無い限り雇ったりしない筈なんだけど。

 

「私の母が東京に出てくる前の桃子さんと親交がありまして、恥ずかしながらその伝手を使わせていただきました」

 

「えっと、桃子さんの出身っていうと……」

 

目で尋ねてみると「大阪だな」と恭也。

 

 実家は老舗の和菓子屋だそうで、近所に桃子さんが住んでいて荘一郎の母親と仲が良かったらしい。

 

「……ん? 実家が和菓子屋? でもパティシエ志望?」

 

 暗に家は継がないのか聞いてみる。

 

「実はその……餡子が苦手でして……見るのすら苦痛で実家を出てきたんです」

 

「おうふ」

 

 思いの外深刻な悩みだった。

 

(そーいえば)

 

 千代田にある和菓子屋の娘さんも「餡子飽きたー」とか似たようなこと言ってたなぁ。和菓子屋に生まれると逆に餡子嫌いにでもなるのだろうか、とどうでもいいことを考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

・二階堂精肉店にて(Lesson77後のお話)

 

 

 

 差し入れのコロッケを買うために商店街の二階堂精肉店へとやって来たのだが、店内は夕飯の買い物のためにやって来た主婦の方々で賑わっていた。一件時間がかかりそうに見えるが、揚げ物コーナーは別なので臆することなく中へ。

 

「おじさん、こんばんはー」

 

「おぉ、良太郎君、久しぶり」

 

 二階堂のおじさんに話しかけると、久しぶりに顔を出した俺に笑顔で対応してくれた。主婦の方々も「あら良太郎君じゃない」と顔馴染みの対応である。

 

「コロッケ買いたいんですけど」

 

「おう! ……とはいえ俺はこっちで手が離せんから……千鶴ー! 手伝ってくれー!」

 

 おじさんが店の奥に声をかけると「はーい」という声と共にパタパタと小走りにやって来る女性の影。

 

「いらっしゃいませー……げっ」

 

「俺に対してその反応をするのは百歩譲っていいとして、他のお客さんの前でその対応はまずいんじゃないかなぁ」

 

 ボリュームのある茶髪を三角巾で纏めてエプロンを装備した女性――幼馴染と言っても差し支えない昔馴染みである二階堂(にかいどう)千鶴(ちづる)は露骨に顔をしかめた。

 

「わたくしを年上として敬おうとしない不届き者には相応しい対応ですわ」

 

 確かに歳は一つ上だが、そんなもの誤差だろう。

 

 ちなみに千鶴のこの精肉店の長女として似合わないお嬢様口調は、昔お金持ちに憧れて使い出したものがそのまま残ってしまったという残念な慣れの果てに似た何かである。その口調故に大学では本物のお金持ちと誤解されていたりするらしいのだが、まぁ今は関係の無い話だ。

 

「それで? 今日は何の用ですの?」

 

 「買い物以外に何があるのか」と言いたいところではあるが、色々と前科を持っている身なのであえて余計なことは言わないで素直に要件を伝えることにする。

 

「コロッケを……そうだな、三十個ほど見繕ってほしいんだけど」

 

 単位が若干おかしいこの注文に普通の店だったら変な顔をされそうなところではあるが、何度も利用しているこの店は例外である。

 

「また差し入れですの?」

 

「そうそう。ここのコロッケは冷めても美味しいから差し入れにピッタリなんだよ」

 

「お父様が作るコロッケが美味しいのは当然ですわ!」

 

 「おーっほっほっほげほっゴホゴホ!」と咽る千鶴。何年経っても高笑いが板につかない辺り根っからの庶民だなぁとしみじみに思う。いやまぁ、俺も「トップアイドルらしくない」と色んな人に言われるから似た者同士だが。

 

 「ちょっとだけお待ちなさい」と言って千鶴がコロッケを包み始めたので、俺は財布を取り出して支払いの準備をする。

 

「あ、俺が先に食いたいから一個だけ別にしてくんない?」

 

「歩きながら食べるのはお行儀が悪いから許しませんわ」

 

「ちぇ。分かったよおかーさん」

 

「誰がお母さんですのっ!?」

 

 何だかんだ言いながら千鶴って面倒見がいいから、お母さんって感じなんだよなぁ。同年代の子と比べると無駄遣いもしないし料理も上手い。まさに良妻賢母タイプである。

 

「ホント、いい奥さんになれるよ千鶴は」

 

「ぶっ!?」

 

 噴き出す直前に首をグリンと回して壁を向く辺り流石食品を扱う店の娘である。いや、そもそも一体何に噴き出したし。

 

「はっはっはっ! いい奥さんになれるか! ならどうだい良太郎君、ウチの千鶴を嫁に貰う気はないか?」

 

「お父様っ!?」

 

 突然笑い出したおじさんが何故かそんなことを言い出し、顔が真っ赤な千鶴が叫ぶ。

 

「千鶴はちょっと……」

 

「せめて理由は言いなさいな!? ぶちますわよ!?」

 

 渋谷生花店の凛ちゃんと並ぶ商店街の二大看板娘の片割れは今日も元気だった。

 

 

 

 

 

 

・お洒落なバーにて(Lesson83後のお話)

 

 

 

 午後九時。突然だが早苗ねーちゃんを迎えに行くことになった。

 

 何でも同僚と一緒にバーで飲んでいたらしいのだが、その同僚の方から早苗ねーちゃんが酔って寝てしまったから迎えに来てほしいと兄貴の携帯に連絡が入った。しかし兄貴は兄貴で友人と飲みに行ってしまっているので、代わりに俺が迎えに行くことになってしまったという訳だ。

 

 未成年の人気アイドルがこんな時間に酔っぱらった婦警を迎えに行くってどういうことだよと思いつつ、早苗ねーちゃんが飲んでいる店に到着したので近くの路上パーキングに車を停める。

 

「……随分とオシャレな店だなぁ」

 

 早苗ねーちゃんのことだから居酒屋で飲んでいると思ったのだが、そこは夜のネオン賑わう大通りから少し逸れた位置にある少々小さなバーだった。

 

 似合わねぇなぁと思いつつ店の扉を開ける。店内もしっとりとジャズが流れる落ち着いた雰囲気。おいおいこんな店で酔いつぶれたのかよ早苗ねーちゃん。

 

 しかし店内を見回してもそれらしき姿が見当たらないのでカウンターの向こうにいるマスターらしき人に尋ねる。

 

「あの、すみません。酔っぱらった低身長童顔の義姉を迎えに来たんですけど」

 

「お客様でしたら、気持ちが悪いと言ってお手洗いへ。お連れの方も付き添いでそちらに」

 

 ホントに何やってんだと身内の醜態に頭痛が痛い。(重言)

 

「……あら? 良太郎君?」

 

 しょうがないから待つことにしたのだが、突然声をかけられた。今の俺は変装状態なのでバレることはないので、当然知り合い。しかもこの声は……。

 

「楓さん」

 

「お久しぶり、良太郎君」

 

 346プロ所属の高垣楓さんが、一番隅のカウンター席からヒラヒラと手を振っていた。

 

「こんな時間にバーへ来るなんて、良太郎君は不良さんなのかしら?」

 

「まさか。義理の姉を迎えに来ただけですよ。楓さんはお一人ですか?」

 

「えぇ。今日はちょっとカクテルな気分だったの。この店はマスターの口が堅いことで有名だから、芸能人がお忍びでよく来る店なのよ?」

 

 それはいいことを聞いた。俺も飲酒が可能になったら是非来させてもらおう。

 

「ねぇ良太郎君、お姉さんと少しお話ししない? ソフトドリンクぐらいなら奢るわ」

 

 ちょいちょいと手招きする楓さん。なんと美人で年上のお姉さんからお誘いを受けてしまった。どうせ早苗ねーちゃんが出てくるまで待つことになるし、喜んでご一緒させてもらうことにする。

 

 隣のカウンター席に座り、楓さんが別のカクテルを頼むのに合わせて「俺も同じのを」と注文したところ、今の会話を聞いていたマスターから出されたのはジンジャエールだった。うん分かってた。

 

「それじゃあ、乾杯」

 

「はい乾杯」

 

 特に何に対してとは言わず、俺と楓さんはお互いのグラスを軽く合わせた。

 

 クイッとグラスの中の琥珀色の液体を喉に流し込むが、実はウイスキーでしたなんてことはなく普通にジンジャエール。やっぱりこの雰囲気で飲むにはいくらか味気なかった。

 

 チラリと横を見ると、楓さんが優雅にグラスを傾ける姿が目に入って来た。やっぱり美人はお酒を飲む姿も様になるなぁ。

 

「少し小柄で胸の大きな女の人」

 

「へ?」

 

「さっきまでそこのカウンター席で飲んでた人なんだけど……彼女が、良太郎君のお義姉さん?」

 

「あ、はい」

 

 童顔で……と言おうと思ったけど楓さんも大概童顔だった。

 

「俺たち兄弟の幼馴染で元々姉弟みたいなものだったんですけど、今年の春に兄貴と結婚しまして」

 

「そう。……お義姉さん、一緒に来てた人に凄く嬉しそうに旦那さんの話をしてらっしゃったわ」

 

 とても幸せそうで、と話す楓さんは……何故かとても寂しそうに見えた。

 

(……あれ、俺もしかして何か地雷踏んだ?)

 

 何かフォローの言葉を、と口を開きかけたその瞬間。

 

「ちょ、早苗! こんなところで寝ちゃダメだってば!?」

 

 そんな声がトイレの方から聞こえてきた。……多分これ、早苗ねーちゃんと一緒に飲んでた同僚の人の声なんだろうなぁ。

 

「ふふ、行ってあげたら? 一杯だけだけど、付き合ってくれてありがとうね」

 

「え、えっと……ど、どういたしまして」

 

 果たしてこれは地雷回避だったのか微妙なところではあるのだが、早苗ねーちゃんを放っておけないのも確かなので席を外させてもらおう。

 

「ご馳走様でした、楓さん。また俺が成人したらお酒に誘わせてください」

 

「えぇ、待ってるわ」

 

 楓さんの笑みに何か後ろ髪を引っ張られるような気がしないでもなかったのだが、トイレで酔いつぶれた早苗ねーちゃんを回収すべく俺は席を立ったのだった。

 

 

 

 

 

 

・羽田空港にて(Lesson85後のお話)

 

 

 

「……ん?」

 

 恵美ちゃんとまゆちゃん、バックダンサー組の子たちと別れて喫茶店を後にし、さて仕事の現場へと空港ロビーを歩いていたところ、空港の案内板と睨めっこをする一人の少女の姿を発見した。ショートの銀髪碧眼……いくら珍しい髪色が一般的なこの世界でも、一目で外国の子だと分かる見た目だった。

 

 英語には少々自信があるのだが……どーにも英語圏の人じゃないっぽいんだよなぁ……。

 

 まぁいいや。

 

Hey,girl(そこの彼女). Can I help you(何かお困り)?」

 

 話しかけると、少女は驚きながら振り返った。

 

「……アー……Thank you(ありがとうございます)。でも私、日本人です。日本とロシアのハーフ。日本語、喋れます」

 

「あら、そう……」

 

 少々片言ながら、確かに日本語は大丈夫な様子だった。

 

「それで? 案内板と睨めっこしてたけどどうしたの?」

 

「? 睨めっこしていません。カールタ……地図、見ていました」

 

 訂正。日本語は通じるけど、比喩表現は通じづらいみたいだ。

 

「オッケー。それで、何か困ってることはある?」

 

「あ、はい。私、北海道からドゥルーク……友達に会いに来ました。でも、待ち合わせの場所が分からなくて、困っています」

 

 あー、まぁ広いからね、ここ。

 

「で? 何処で待ち合わせなの?」

 

 スッと少女の白い指が指し示したのは、先ほどまで俺もいた展望デッキだった。

 

「ここだったらすぐに……」

 

「でも、友達いませんでした」

 

「え?」

 

 何でも、一度展望デッキへ行ったが友達の姿が見当たらず、運悪く携帯電話の電池も切れてしまって連絡が取れないから一度ここまで降りてきたらしい。

 

「んー……ん? もしかして、第一じゃなくて第二の方とか?」

 

「え?」

 

 羽田空港には第一旅客ターミナルと第二旅客ターミナルがあるのだが、その両方に展望デッキが存在する。この少女は第一旅客ターミナルの展望デッキへ行ったらしいが、もしかしたらその友達は第二旅客ターミナルの展望デッキのことを指していたのかもしれない。

 

「気付きませんでした……スパシーバ! ありがとうございます!」

 

「いや、まだ友達が見つかったわけじゃないからね。一応俺も行くよ」

 

 その後、少女――アナスタシアちゃんというらしい――と共に第二旅客ターミナルの展望デッキへ向かってみると、無事アナスタシアちゃんの友達(金髪碧眼の美少女姉妹)を発見することが出来た。

 

「エリーチカ! アリッサ!」

 

「アーニャ!」

 

「アーニャちゃん! 良かったー!」

 

 三人の美少女から散々お礼を言われ、中々の上機嫌で俺は仕事の現場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

・公園にて(羽田空港にて後のお話)

 

 

 

 三人のハーフ美少女(アナスタシアちゃんの友達はロシアと日本のクォーターらしいが)にお礼を言われて上機嫌で車を走らせていたのだが、とあるものが視界の端に映ったので慌てて車を路肩に停める。

 

 駐禁切られませんよーにと祈りつつ、小走りで『それ』が見えた公園へと向かう。

 

「っと、いた」

 

 視界に映った『それ』は、公園の散歩道で蹲る顔色が悪い少女の姿だった。茶色の髪を二つ結びにした彼女に小走りで近寄りつつ話しかける。

 

「えっと、君、大丈夫?」

 

「っ!? あ、えっと、大丈夫。大丈夫だから……」

 

 うーん、知らない人間に対する遠慮の構え。先ほどのアナスタシアちゃんと比べると実に日本人的な反応だと思いつつ、しかし「そうですか」と見て見ぬ振りも出来ない。

 

 傍にしゃがみ込み、少々失礼しつつ額に手を当てる。

 

「ちょ、何を……!」

 

「ちょっと熱があるかな。……何処か痛む? 気分が悪い?」

 

「……気持ち悪いだけ」

 

 そっけないながらもちゃんと答えてくれた。多分熱射病だろう。

 

 丁度いいことにすぐ傍に自動販売機があったので、そこで適当にジュースを買って少女に渡す。

 

「はい、これ飲めば少しは落ち着くと思うよ」

 

「……あ、ありがとう」

 

「ほら、良い年頃の娘が何時までもこんな地べたに座ってないで」

 

 手を引き、少女を日陰のベンチに座らせる。

 

 少女は最初こそ遠慮する素振りを見せていたものの、缶ジュースを口にするとそのまま一気に中身を飲み干した。

 

「大丈夫? まだ気分が悪いようなら救急車でも……」

 

「だ、大丈夫、もう落ち着いたから。もう救急車はいいから」

 

 そうか。なら……ん? もう?

 

 俺がその言葉に引っかかったことに気が付いたらしく、少女はポツリポツリと話してくれた。

 

「……昔ちょっとだけ……本当にちょっとだけ、体が弱くて。結構頻繁に病院に通ってて……もうこれ以上、みんなに心配かけられないから……」

 

 心配かけられないから言えない、か。ほんのちょっとだけ、なのはちゃんの姿が浮かんだ。

 

「……助けてくれてありがとう。えっと、ジュースのお金を……」

 

 そう言いつつ手提げバッグの中から財布を取り出そうとする少女。別にジュース一本ぐらいどうってことないので止めようとすると、彼女のバッグの中から一枚のCDケースが滑り落ちた。

 

 あわや地面に、というところギリギリでキャッチしたそれは、随分と見覚えのあるものだった。というか俺の記念すべきファーストシングルだった。

 

「あっ! ありがとう! それ大事なCDなんだ!」

 

「いえいえ。……周藤良太郎のファンなの?」

 

「うん。……その、昔は寝込んでることも多くて……そんな時、良太郎君の曲が私に元気をくれたの」

 

 そう言いながらはにかむ少女。随分とまぁ嬉しいことを言ってくれるよ。

 

「ねぇ君、お名前は?」

 

「え? ほ、北条(ほうじょう)加蓮(かれん)……」

 

「ふんふん、いい名前だね」

 

「あ、ありがと……え、何お兄さん、いきなりナンパ?」

 

「まさか」

 

 一応念のためにと持ち歩いているサインペンを取り出す。

 

「サラサラっと」

 

「って、あぁぁぁっ!?」

 

 それだけ大声が出るってことはだいぶ元気になったなぁと思いつつ、手早くCDケースにサインと彼女の名前を書く。

 

「はいどうぞ」

 

「ちょ、はいどうぞじゃないよ! いきなり何すんのさ!? ……って、あ、あれ?」

 

 俺からCDケースを奪うようにひったくり書かれた文字を見る加蓮ちゃん。どうやら気付いてくれたようだ。

 

「ちゃんと元気になったって言うんなら――」

 

 スッとかけていたサングラスを下げる。

 

「――今度は、ライブ会場で会おうね」

 

「っ!? す、すすす、周藤りょ、りょりょりょっ……!?」

 

「じゃあねー。お大事にー」

 

 ワナワナと震えている加蓮ちゃんに手を振り、その場を後にする。

 

 自分の歌がちゃんと人を元気に出来ていると再確認し、先ほどよりも更に上機嫌で俺は仕事場へ向かうのだった。

 

 

 

 ……俺の車が早苗ねーちゃんの手によって駐禁を切られる寸前だったことを除けば。

 

 ちくしょう、恩を仇で返そうとしやがって……。

 

 

 




・鷺沢文香
『アイドルマスターシンデレラガールズ』の登場キャラ。クール。
前髪長め系文学少女。原作では19歳だがこの話の時点では良太郎と同学年。
髪サラサラ肌スベスベに長いまつ毛で化粧いらずらしい(劇場347話より)

・新名任太郎著『探偵左文字』シリーズ
名探偵コナンの劇中の人気小説。
十年前に左文字が炎の中に消えて完結したらしいのでこういうタイトルを勝手につけた。

・岩タイプ使ったり高速移動したりしそう。
「タケシ! こうそくいどうだ!」「おう!」

・東雲荘一郎
『アイドルマスターsideM』の登場キャラ。インテリ。デレマス的に言えば多分クール。
餡子嫌い系パティシエ青年。そこ、男の新キャラなんて求めてないとか言わない。
以前クロスしすぎだと怒られていた時期に考えていたクロスネタを一切省いたVerにて、恭也のポジションに据える予定だったキャラを再利用的に登場させてみた。

・二階堂千鶴
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。Visual。デレマス的に言えば多分クール。
エセレブとか言われちゃう見栄っ張りお嬢様な21歳。この話の時点では19歳。
原作ではどうなのかはもうこの際置いておいて、この小説では実家は精肉店で良太郎と顔馴染み。
……え? クールじゃない? にわかロックがクールなんだから、エセレブもクールでしょ(暴論)

・楓さん
「お前また結局楓さんかよ!」とか言われそうだが気にしない(シレッ)
というかデレステ楓さんイベか……これ売った金で走ればなんとかなるのか……?(神の通告を見つめつつ)

・何故かとても寂しそうに見えた。
作者はたけかえ派と言えば察しのいい読者様はこれがどういう意味なのか分かってくれると思っている。

・アナスタシア
『アイドルマスターシンデレラガールズ』の登場キャラ。クール。
ロシア生まれ北海道育ちの道産子系ハーフ少女。通称アーニャ。
この話の時点で14歳の中学生。アニメだとより片言感がアップしてた気がする。

・千代田にある和菓子屋の娘さん
・「エリーチカ! アリッサ!」
別に回収する予定はないのだが一応ラブライブ編への伏線は撒いておく。

・北条加蓮
『アイドルマスターシンデレラガールズ』の登場キャラ。クール。
元病弱キャラ現今どきギャルの16歳。この話の時点では15歳。
某アニメのキャラに似ていることから『ア○ル』だとか、今は無きコンプガチャで中々出なかったことから『門番』だとか。おい止めてやれよ。
ちなみにこの時点で中学生なのでまだ奈緒とは知り合っていない設定。



 というわけで初の短編集は青色系のキャラでまとめてみました。今後黄色編や赤色編も予定しております。多分時系列や登場タイミングの関係上第三章内で書いておきたい。

 あ、サイドMのキャラ出ましたけど、別にサイドM編をやるつもりはないんで(断言)



『デレマス二十五話を視聴して思った三つのこと』

・上田しゃん輝いてるよ!(太陽的な意味で)

・きょ、響子! しゃべ、しゃべ……喋らねぇえええっ!!(絶望)

・やっぱり一番のシンデレラは武内Pやな(中の人的な意味で)

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