アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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楓さんイベに触れない辺り結果はご察し。


Lesson97 この空は青く遠く 2

 

 

 

「……はっ!?」

 

 東豪寺本社にていつも通りの打ち合わせをしている最中、突然りんが立ち上がった。

 

「どうしたのよ、りん。いきなり立ち上がって」

 

「約五か月ぶりの出番だから浮かれてる?」

 

「約半年ぶりのともみたちに言われたくないよ!」

 

 いやそうじゃなくて、とりんは何か電波を受信したようにこめかみを人差し指で押さえる。

 

「何か……何処かでりょーくんがラブコメしてたような気がするの」

 

「アンタはまたそれか……」

 

 呆れたように麗華がため息を吐く。最近は少なくなってきたけど、割といつものことである。

 

「夏休みになっちゃったから大学でも会えないし……何故か最近りょーくんとの仕事少ないし……」

 

「ついでに現在進行形で福井へ撮影に行ってて東京にいないしね」

 

「りょーくん不足感が否めないよ……」

 

 着席したかと思うとそのままグデーッとりんは机に突っ伏す。ムニッとはみ出るりんの横乳に麗華の目が険しくなるところまでテンプレ。

 

「ったく、シャキッとしなさいよ。こっちはこっちで重要な打ち合わせの最中なのよ?」

 

「……分かってるけどー……」

 

 麗華がパンパンと手の甲で書類を叩くと、口を尖らせながらりんは顔を上げる。

 

「お茶入れてきましたー」

 

 そんなやり取りをしていると会議室の扉が開き、こちらは下手すると一年近く出番が無かった我ら魔王エンジェルのマネージャーが人数分のマグカップをお盆に乗せて持ってきた。それぞれコーヒーや紅茶やココアなど、冷房がかかった会議室内でも体が冷えないように温かい飲み物である。

 

 ……みたいな話を以前翠屋で一緒になった765プロの子たちに話したら大変羨ましがられた。一体あの事務所の冷房は何回壊れれば気が済むのだろうか。

 

「飲み物も来たことだし、休憩にする?」

 

「……全く、タイミングがいいんだか悪いんだか……」

 

「え? えっ?」

 

「あぁ、別に何でもないから」

 

「は、はぁ……」

 

 疑問符を頭に浮かべながらわたしたちの前にマグカップを置くマネージャー。相変らず仕事の大半を麗華がこなしてしまうために基本的にこういった雑用を担うことになってしまっているが、本人も逆に気が楽そうなのでまぁいいだろう。

 

「それにしても……」

 

 ずずずっと紅茶を飲みながら手元の書類に改めて視線を落とす。

 

「こういう話は『わたしたちはまだまだ』とか『良太郎を天辺から引きずり下ろしてから』とか言ってたのにね」

 

「その話だって一年近く前の話でしょ? 事情なんていくらでも変わるのよ」

 

 魔王エンジェルのリーダーにしてプロデューサーも兼任している麗華は事も無げにそう言い切った。

 

 別にこの話自体に不満があるわけではないのだが、しばらくリョウと会えなかっただけで今のような状況になってしまっているりんが果たして耐えられるのかどうか些か疑問である。

 

(……リョウに話したらどんな反応するのかな)

 

 そんなことを考えながら、手にしていた書類を机の上に戻す。

 

 

 

 書類の一番上では『海外進出』の四文字が小さく自己主張をしていた。

 

 

 

 

 

 

「はーい、終了ー!」

 

 律子さんの言葉で全員が動きを止める。三十分の休憩を挟んだ後に再開されたレッスンは、レッスンの開始が十五分遅れだったにも関わらず予定時間通りに終了した。律子さん曰く「みんなの上達が予定以上に早かったから」らしい。

 

「それも良太郎さんと冬馬さんが来てくれたおかげですね!」

 

「ありがとーなの! りょーたろーさん!」

 

「どういたしましてー」

 

「冬馬さんも、ありがとうございます」

 

「……お、おう」

 

 真さんと美希さんの感謝の言葉に普通に返すリョータローさんに対し、天海さんの感謝の言葉に少し戸惑った様子の冬馬さん。相変らずぶっきらぼうというか何と言うか。……多分二人の背後の怖い目つきの如月さんは関係無いと思う。

 

「ちゃんと汗拭いて、風邪ひかないようにするのよー!」

 

『はーい!』

 

 律子さんの言葉を背に受けつつ、アタシたちは運動場を出た。

 

「はぁ……」

 

「ん? どうしたの、百合子」

 

 ため息を吐いた百合子に声をかける。

 

「あ、いや、その……折角良太郎さんと一緒のレッスンだったのに、一回も教えてもらえなかったなって……」

 

「あー、それ私も思ったわぁ……」

 

「私は、冬馬さんにすら教えてもらえませんでした……」

 

 百合子に追従するように、奈緒と星梨花も同じようにため息を吐く。志保を除いた他のメンバーも、どうやら同じようなことを考えていたらしい。

 

 うーん、確かに言われてみれば、結局バックダンサー組で良太郎さんとレッスンしたのってアタシとまゆだけだったし。

 

 この場合、何て言ってフォローするべきか……。

 

「みんな、お疲れ様」

 

 そんなことを考えていると、背後からそのリョータローさんがアタシたちに声をかけてきた。

 

『お、お疲れ様ですっ!』

 

 突然声をかけられたことで、全員が背筋を伸ばしながら挨拶を返す。

 

「さっきはゴメンね。みんなの練習を見に来たって言うのに、面倒見れなかった子もいて」

 

 先ほどのアタシたちの会話が聞こえていたのか聞こえていなかったのかは分からないが、タイミングのいい話題だった。

 

「い、いえそんな!」

 

「べ、別に私たち如きに良太郎さんの手を煩わせるわけには……!」

 

「一応合宿の最終日にももう一回顔を出すし、合宿が終わった後の練習にも何回か顔を出すつもりだから、その時には改めて全員の練習を見させてもらうよ」

 

 それで許してくれないかな? と片手を挙げてゴメンねと謝るリョータローさん。

 

「い、いえ許すだなんてそんな!」

 

「そこまで気にかけていただいてありがとうございます!」

 

 どうやらアタシがフォローするまでもなくリョータローさんが解決してくれたようで一安心だ。

 

「それで話は変わるんだけど、これからみんな夕飯の時間まで自由時間みたいだけど、何か予定あったりするのかな?」

 

「え?」

 

 話題を変えてきたリョータローさんはアタシたちにそんなことを尋ねてきた。

 

「実はこれから765の子たちと散歩がてらアイスでも買いに行こうかって話をしてたんだけど、みんなも来ないかなって思って。お兄さん奢っちゃうよ?」

 

「ご、ご一緒していいんですか!?」

 

「ご一緒って、そんなに硬くならなくても」

 

 などとリョータローさんは言うものの、彼女たちはほんの数日前までただのアイドル候補生だったのだ。トップアイドルたるリョータローさんからそんな誘いを受ければ緊張するのは当たり前なのだ。アタシも似たような感じだったからよく分かる。

 

「私は遠慮させていただきます」

 

 そんな中、案の定と言うか何と言うか、ペコリと一礼してから志保は一足先に民宿へと戻っていってしまった。うーん、相変らずリョータローさんと相容れないというかなんというか。個人的には一緒に行って少しでも仲良くなりたかったんだけど。

 

(うーん、一番距離を縮めようと思ってた子に真っ先に拒否られちゃったなー……まぁ何となくそんな気はしてたけど)

 

 多分、リョータローさんも同じようなことを考えていたと思う。表情は変わらないけどほんの少し残念そうな雰囲気を醸し出していた。

 

「それじゃあ着替えとかあるだろうし、一緒に行く子は民宿の入口に集合ね」

 

 

 

 

 

 

 先ほどの休憩で大変素晴らしくありがたいものをお目にかかることが出来て大満足なのだが、色々と乙女的にアウトだった伊織ちゃんたちにアイスを奢ることになった。いやまぁそれぐらいで許されるのであれば全然構わないのだが。

 

 ……逆に考えてみよう。例えばハーゲンダッツを奢れば水着姿ぐらいお目にかかれるのではないか?

 

「お前無表情をいいことに何か碌でもないこと考えてないか?」

 

「まさかそんな」

 

 何故バレたし。ははーん、冬馬も同じこと考えてたな?

 

 という訳で俺と冬馬、765プロからは先ほどの水浴びメンバーに加えてやよいちゃんと貴音ちゃん、それに志保ちゃんを除くバックダンサー組八人をプラスして合計十六人の大所帯である。いや本当に多いなぁ。

 

「ねーねー! 今日はりょーにーちゃんたち何時までいるのー?」

 

 近所の雑貨屋へと続く木漏れ日溢れる山道をみんなでゾロゾロと歩いていると、少し前を歩いていた亜美ちゃんが振り返りながらそんなことを尋ねてきた。

 

「んー、夕飯もこっちでご馳走になる予定だから九時ぐらいかな」

 

 既に高木社長を通して食事代を先払いしているので問題はない。抜かりはないぜ。

 

「じゃあ夕ご飯食べた後にりょーたろーさんも一緒に花火やるの!」

 

「みんなで花火大会だー!」

 

「えー……マジかよ、そんな遅くまでいんの?」

 

 はしゃぐ美希ちゃんと真美を余所に、一人うんざりした様子の冬馬。

 

「ええんやで? 冬馬一人で先に早く行っても」

 

 宿泊予定のホテルは既にスタッフがチェックインを済ませて待機してくれているので、ホテルに行く時間は割と緩くて問題無いのだ。

 

「……いや別に嫌とは言ってねーよ」

 

「冬馬、男のツンデレは需要が少ないから、そういうのは伊織ちゃんに一任しとこーぜ?」

 

「どういう意味だ!?」

 

「どういう意味よ!?」

 

 そんな会話をしながら近くの雑貨屋に到着。店先にアイスの冷蔵庫とコーラのロゴが入ったベンチが並ぶ、随分と昔からある感じのする雑貨屋だった。看板に随分と年季が入ってるなぁ。

 

「よーし、それじゃあアイスでもジュースでも何でも三百円以内だったら好きに買っていいぞー」

 

「やったー!」

 

「良太郎さん太っ腹ー!」

 

「え、えっと、ありがとうございます!」

 

 ひゃっほう! と喜び勇んで冷蔵庫を覗いたり店内に入っていったりするアイドル諸君。まぁこういう店ならそんなに高い物ないし、三百円でも十分だろう。

 

 ……まぁ単純計算で総額五千円近くなるけど、べ、別に自分のために使った訳じゃないから散財ではないし(震え声)。……経費で落ちないかなー……交際費とか。

 

「あ、冬馬」

 

「俺は自分で買えって言うんだろ。分かってるっつーの」

 

「いや、たまには奢ってやろうかと思って。何だかんだ言ってお前も一応後輩だし、今回結構強行軍に付き合わせちまったし」

 

「………………」

 

 おい何だよその信じられないものを見るような目は。

 

「俺だって弱者に物を恵む慈しみの心は持っているんだよ」

 

「弱者って言うな」

 

「今日の俺は特に寛大な心を持っている。そう、例えるならば正義のヒーロー……デカパン○ンだす!」

 

「アウトアウトッ! どーしてよりによってそれチョイスした!?」

 

「色合いがダメだったと言うのであればどうしてデカパン○ンはダメでワンパン○ンは許されたのか」

 

「第一話の時点で『死んでるから大丈夫だよ』とかぬかすアニメに慈悲なんかねーんだよ!」

 

 そんなやり取りをしつつ、俺たちも買うものを決めるために店内に入っていくのだった。

 

 

 




・五か月ぶり 半年ぶり
過去話である外伝を除けば更に前に。出番無さすぎぃ!

・海外進出
別に出番が無いから外国に飛ばそうとかそういう意味ではない(重要)

・怖い目つきの如月さん
半目になっているので9393ではない。

・例えばハーゲンダッツを奢れば
相変らず思考が少々アレな主人公ですが平常運転です。

・「デカパン○ンだす!」
作者的に今季覇権アニメの一角だと思う。チョロ松推し。
デレマスがやってた月曜日に見れるし、穴埋めには丁度いいね!(大混乱)



 正直触れることも少ない所謂『繋ぎ回』。次回もらしいっすよ?

 途中で反応が無くなってライブ失敗を繰り返し既にイベント始まって300以上はライフを無駄にしてますが作者はデレステ楽しんでおります(白目)

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