アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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【悲報】主人公以外に既出キャラの出番なし


Lesson12 ランナーズ・ハイ 2

 

 

 

「……ハ……ハ……ハスターッ!」

 

 くしゃみです。誰かに噂されてるような気がする。これは知り合いの誰か、多分麗華かりっちゃん辺りだろう。

 

 現在俺は何処に居るのかと言うと、芸能人事務所対抗大運動会会場の、とある芸能人の楽屋前である。伊達眼鏡と帽子を装備中なので途中何人かのスタッフに止められたが、ちょっとお願いしたら快く通してくれた。いやー、人付き合いって大切だね。

 

 さて、この楽屋にいるのは俺の知り合いなので、激励を兼ねて今からサプライズを敢行しようと思う。別にいいよね? 答えは聞いてない!

 

 と言うわけで突貫!

 

 

 

「アァァァダァァァモォォォスゥゥゥテェェェ!!」

 

 

 

「おわぁっ!?」

 

 勢いよくドアを開けて中に入ると、驚き声と共にサプライズ対象の一人が椅子から転げ落ちた。どうやらサプライズは成功したらしい。ヤッタネ!

 

「誰だ!? って、おま、周藤良太郎!?」

 

「やぁやぁ、ジュピターのお三方、久しぶりだね」

 

 この楽屋の主こそ、現在人気うなぎ登りの男三人組ユニット、961プロの『Jupiter(ジュピター)』である。

 

「あ、りょーたろーくんじゃん。イェーイ!」

 

「おぉ、翔太。イェーイ」

 

「チャオ、良太郎君」

 

「おっす、北斗さん。今日もソフトモヒカン決まってるね」

 

 御手洗(みたらい)翔太(しょうた)とハイタッチをし、伊集院(いじゅういん)北斗(ほくと)と挨拶を交わす。何度か同じ番組で共演したこともあり、この二人とは比較的仲がいい。

 

 問題はこっちである。

 

「どうしたんだ、そんな椅子から転げ落ちたような格好で。……えっと、鬼ヶ島(おにがしま)羅刹(らせつ)

 

天ヶ瀬(あまがせ)冬馬(とうま)だ! いい加減覚えろ! 周藤良太郎!」

 

「さんを付けろよでこ助野郎。お前より年も身長も上なんだぞ」

 

「年はともかく学年は同じだし、身長も同じ175cmだろうが!」

 

「プロフィールの数字はサバ読んでるんだ。本当は182cm」

 

「オメーが北斗よりデカイ訳ねーだろ! 意味ねー嘘吐くな!」

 

 ジュピターのリーダー、天ヶ瀬冬馬。デビューした時から突っかかってくる困ったルーキー君だ。折れずに何度も噛みついてくるその姿勢は大変評価しているのだが、流石にそろそろ諦めてくれないだろうか。

 

 いや、噛みついてくること自体はいいんだよ? 麗華だって未だにヤル気満々だし。ただ、ところ構わず噛みついてくるのは少々マナー違反じゃないかとお兄さんは思うのですよ。

 

「それで、りょーたろーくんはどうしてここに?」

 

「ん? いや、暇だったから遊びにきた。知り合い沢山いるし」

 

「そんな理由かよ!?」

 

「わざわざ陣中見舞いに来たんだぞ? 早急なおもてなしを要求する。ほら、お茶くれお茶」

 

「この野郎……!」

 

 等と言いながらしっかりとお茶を用意してくれる冬馬。何だかんだ言って根は素直なんだろう。どうして俺にはこんな刺々しいんだか。

 

 冬馬が淹れてくれたお茶を飲みつつ四人で一息つく。

 

「三人は運動会自体には参加しないんだっけ?」

 

「あぁ。でもお昼のステージにゲストとして呼ばれててね」

 

「女の子達の前で歌うんだー!」

 

 大人気のジュピターなら観客や女性アイドルも大喜びだろう。

 

「本当は普通に出場する予定だったんだけど、社長の方針でこうなってね」

 

 そう苦笑いする北斗さん。

 

 ふむ、留美さんから聞いた事前情報とおんなじだな。……まさか本当に情報をリークしてくるとは思わなかったけど。なんか普通に世間話の流れで「実は社長の方針でうちのジュピターも参加せずに、ステージにだけ立つんですよ」と言われた時は思わず軽く流しかけたが、よくよく考えたらこれって結構不味いことのような気がする。これからはもう少し抑えるようにしてもらおう。

 

「俺は参加しようにもできないからなー。何処ぞの誰かさんが十年以上前にやらかしてくれたせいで、フリーアイドルには声すらかからない」

 

 出場出来たら八面六臂の大活躍間違い無しだったのに。

 

「そう言えばあんまりそういう番組に出てるの見たことないけど、りょーたろーくんって運動得意なの?」

 

「そりゃあもう。友達の家の道場で軽く剣の稽古つけてもらってたからな。体力には自信ありだ」

 

「剣だぁ?」

 

「あ、お前信じてないな。俺の友達の父親が喫茶店のマスターをやってる二刀流剣士でな……」

 

「まずその二刀流剣士っていう肩書の時点で信憑性がないんだよ!」

 

「別に二刀流剣士なんて珍しいもんじゃないだろ? なぁ、翔太」

 

「そこで僕に話を振る理由がよく分からないんだけど」

 

 え、翔太も二刀流剣士じゃなかったっけ? スターバーストなんとかっていうセリフが似合いそうな声をしてるけど。ちなみに冬馬は月まで届くパンチが撃てるロボットに乗ってそうで、北斗さんは……なんだろう、音楽教師の女性が昔ヘヴィメタルを始めるきっかけになった男の人みたいな声をしてる気がする。

 

「とにかく、剣術は教えてもらえなかったが基礎体力と基本的な剣の振り方はしっかりと身に付いたぞ」

 

 あの道場、俺以外の転生者なんじゃないかって思うぐらい身体能力がずば抜けた人達ばっかりだから、指導者に関しては一切事欠かなかった。おかげでそこら辺のダンストレーニングで得られる以上の基礎体力が付いたと思う。ついでにナイフを持った人間三人ぐらいに囲まれても対処できるぐらいにはなった。

 

 ……いや、俺もここまでする必要ないんじゃないかと思ったんだが、今の俺の立場って結構護身術重要だからね。前世にもファンに刺されてお亡くなりになられた有名人とかいたし。今となっては兄貴の方がこの護身術必要……あ、ダメだ、一人拳銃持ってる。

 

「りょーたろーくんがあれだけ激しいダンスを何曲も踊っても全然息切れしない理由はそんなところにあったのか……」

 

「まぁ、最近はあんまり行けてないんだけどな。受験勉強とかしないといけないし」

 

 結局兄貴や先方の方々と話し合った結果、出来るだけ近くてそこそこの偏差値の大学を受験することにした。おかげで受験終了までライブやツアーは一切出来なくなってしまったが。

 

「はっ、そんなことのんびりとやってたら、あっさり俺達が追い抜いちまうぜ」

 

「とーま君のこのセリフ何回目だっけ?」

 

「少なくとも十回は聞いたな」

 

「おめーらよぉ……!?」

 

 仲間からも弄られる冬馬は本当にジュピターの善きリーダーです。

 

「っていうか、お前はどうするんだよ」

 

「………………」

 

 おいこっちを見ろよ高校三年生。

 

「でもまぁ、うかうかしてられないってのは同意かな」

 

「お? ……その感じだと、新しく周藤良太郎のお眼鏡にかかった子でも現れたのかい?」

 

「まぁね。今日もこの後会いに行くつもり」

 

「もしかして『新幹少女(しんかんしょうじょ)』?」

 

「誰?」

 

「あ、うん、何でもない」

 

 聞いたことはある気がするが、いまいち記憶に残ってない。……テレビに映ってた……かな? 竜宮小町が出演する番組に変える前のチャンネルにチラッと映ってたような気がしないでもない。ダメだ、おっぱい大きな娘がいないアイドルグループは一切覚えていない。

 

「うーん、魔王エンジェルは言うまでもなく良太郎君のお気に入りだし……」

 

「他にいたか? 最近出てきた奴らでそんなの」

 

「もちろんいるさ。大粒の原石がゴロゴロと」

 

「原石ねぇ……」

 

 あ、冬馬が信じてない目をしている。

 

「いいか? 原石ってのは磨かないとただの石で、磨くと光る宝石になる」

 

 けどな。

 

「本物の原石ってのはな、宝石なんてちゃちなもんじゃねぇ。一回磨けば、後は自分の力で光り出すんだよ。周りから光を当てなくてもな」

 

 そういうの、何て言うと思う?

 

「……何だよ」

 

 

 

「……偶像(アイドル)じゃなくて、(スター)って言うんだよ」

 

 

 

 

 

 

「……勝てなかったよぉ……」

 

 気合い十分で挑んだ100m走だったが、結局三位。随分と中途半端な順位に終わってしまったため、目立つことすら出来なかった。

 

「ドンマイ、愛ちゃん」

 

「こ、声の大きさじゃ負けてなかったよ」

 

 876プロに宛がわれたスペースに戻ると水谷(みずたに)絵里(えり)さんと秋月(あきづき)(りょう)さんに出迎えられた。

 

「はぁ……少しは予想してたけど、全然テレビに映れませんね……」

 

「仕方がないよ。わたし達よりも有名なアイドルが沢山出てるんだから」

 

「出場出来たこと自体が奇跡だからね」

 

 本来、一定の知名度がなければオファーがかからないこの芸能人事務所対抗大運動会。まだまだ無名もいいところのあたし達が参加できたのは、本当に偶然参加者の空きが出来たから。社長がその枠にツテとコネを利用して無理矢理捩じ込んでくれたお陰である。

 

 社長曰く、一度くらい本物の世界を見てくるといい、とのこと。

 

 折角のチャンスに見るだけではダメだ。出るからには目立たなくては!

 

 あたしは、伝説のアイドルと呼び声高い日高舞の娘だ。とあるオーディションに行けば「あの日高舞の娘」と呼ばれ、別のオーディションに行けば「あの舞さんの娘さん」と呼ばれる。いつでもあたしにはママの名前が付きまとう。別にそれを疎ましく思っているわけじゃないが……それでも、あたしは「日高舞の娘」ではなく「日高愛」になりたいのだ。ママの名前ではなく、あたしはあたしの名前でアイドルになりたいのだ。

 

 

 

 あたしが憧れる、若き頃のママの姿。そして、尊敬するりょーおにーさんのような……。

 

 

 

 ……そう意気込んで出場したにも関わらず、結果はご覧の有り様だ。

 

「それに引き換え、765プロの皆さんは凄いなぁ……」

 

 人気上昇中の竜宮小町の三人を筆頭に、他の皆さんも最近ちょくちょくテレビや様々なメディアで見かけるようになった。この運動会でも様々な場面で目立っており、注目度はこれまた最近人気の新幹少女に負けていない。

 

「愛ちゃん、わたし達もまだまだこれからだよ」

 

「そうそう、みんなで頑張ろう」

 

「……そうですね! まだまだこれからですよね!」

 

 押してもダメなら、押し破っちゃえば何とかなる! こんなところで落ち着こむのは、あたしらしくない!

 

「それで、次の競技はなんですか!?」

 

「あ、次はチアリーディングだけど、お昼のステージの後だからしばらく休憩だね」

 

 早速出鼻を挫かれました……。

 

 

 

 

 

 

 コンコンッ

 

 一分近くジュピターの三人は黙ってしまっていたが、楽屋のドアがノックされたことにより我に返ったようだ。

 

「そろそろ準備お願いしまーす」

 

 外からそんなスタッフの声が聞こえてくる。

 

「おっと、そろそろお仕事の時間だな。是非とも頑張って来てくれ」

 

「……あ、うん。もちろんだよ」

 

「良太郎君も、よかったら僕達のステージ見ていってね」

 

 立ち上がった翔太と北斗さんに向かって手を振って見送る。

 

 しかし、何故か冬馬だけ顔を俯かせたまま立ち上がらない。

 

「どうした?」

 

「……一つ聞きたい」

 

「ん?」

 

「……お前は、どっちなんだ?」

 

 というと?

 

「お前は……アイドルか? ……それともスターか?」

 

 そう尋ねながら顔を上げた冬馬の表情は、いつのも挑戦的なものではなく、久しぶりに見た真っ直ぐで純粋な一人の少年の目だった。

 

「俺はアイドルか、スターか、ね」

 

 

 

 そんなもん、決まっている。

 

 

 

「俺は――」

 

 

 




・ハスターッ!
ここでSANチェックです。さらにアイデアロールで成功してしまうと、このくしゃみに隠された意味に気付いてしまい『一時的な狂気』に陥ってしまうのでご注意ください。

・答えは聞いてない!
この世界の良太郎には常にクライマックスなモモタロスと人の答えを聞かないリュウタロスの両方が憑依しているようです。

・「アァァァダァァァモォォォスゥゥゥテェェェ!!」
ハーニマカセ、ホニマカセー! ペイッ!

・『Jupiter』
アイマスに登場する唯一の男性アイドルグループ。
何か各キャラごとの絡みが原作ではあるみたいなんだけど、原作未プレイな作者は知らないのでそんなこと気にせず行きます。

・鬼ヶ島羅刹
公式ネタ。どう間違えたらこうなるんだか。

・182cm
具体的な数値が欲しかったので既存のモバマスキャラのものを使用。
にょわー。

・喫茶店のマスターをやってる二刀流剣士
Lesson06以来のとらハネタ。この世界の士郎さんもとりあえず強いです。

・え、翔太も二刀流剣士じゃなかったっけ?
所謂『中の人ネタ』
翔太は「ソードアート・オンライン」のキリト。
冬馬は「創聖のアクエリオン」のアポロ。
北斗は「けいおん」のさわちゃんの初恋の男子生徒。
……神原さん、俺の知ってるキャラ全然やってないんだよ。

・『新幹少女』
どうやら主人公の記憶には残っていないようです。

・偶像じゃなくて星
元ネタは「神のみぞ知るセカイ」での桂馬のセリフ。
賛否両論あるセリフだと思いますが、出来れば主人公の答えを聞いてからのご意見をお願いしたいです。

・876プロ
DS版『Dearly Stars』の舞台となるプロダクション。
この世界での愛ちゃん達の年齢は原作通りの年齢となっております。



ちょっとだけシリアスな感じ。今回の話はちっとだけ真面目なテーマで行きます。

メリークリスマス。
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