アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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イベント無課金勢には二千位の壁は超えれなかったゾ……(デレステ並感)


Lesson146 Go on without fear! 4

 

 

 

 何やら言動があずささんレベルで迷子になってしまった混乱状態の美嘉ちゃん。いくら自傷確率が三分の一に低下したからとはいえこのままでは会話が成立しないので、落ち着かせてから詳しい事情を一から説明してもらうことに。

 

「……ん? 今『自傷』と『事情』が上手いこと掛かったな」

 

「どうでもいい」

 

 

 

 次のステージへの移動中、時間があったので街中の散策を開始した三人と武内さん。クレープを食べたりしながら歩いていると突然武内さんがいなくなり、莉嘉ちゃんが美嘉ちゃんに連絡。原宿駅まで出てきてから再び莉嘉ちゃんに連絡をすると、どうやら武内さんは警察に連れていかれてしまった模様。その後、莉嘉ちゃん側で何かしらのトラブルが発生して連絡が取れなくなってしまった。

 

「大体こんな感じ?」

 

「はい……」

 

「……そのプロデューサー、どんだけ見た目が不審者なんだよ……」

 

 冬馬は呆れ顔だが、武内さんを知っている身としては『またか』ぐらいの感覚である。まぁあの見た目の大男が少女たちと一緒に歩いていたり写真を撮っていたりしていたら警察だって声をかけざるを得ないだろう。彼らは自らの職務を全うしただけなのである。

 

「というか、警察なら身内にいるんだから聞けば早いんじゃねーか?」

 

「いや、多分聞くまでもないだろ。この辺で連れてかれたなら多分交番のお巡りさんだし」

 

 そもそもこの辺りは早苗ねーちゃんの管轄じゃないし。

 

 スマホで調べてみるとこの近辺の交番は二つ。多分どちらかにいるだろう。

 

「ちょうど人数がいることだし、三手に分かれよう。俺と冬馬で交番を当たってみるから、美嘉ちゃんはそのまま莉嘉ちゃんたちを探して」

 

「わ、分かりました!」

 

「って、普通に俺まで頭数に入ってるし」

 

「可愛い女の子の役に立つのが不満と申すか」

 

「……別に嫌とは言ってねーよ」

 

 はいはいツンデレ乙。

 

「よし、それじゃあ……」

 

 その時である。若者集いし原宿の街に一陣の風が吹き、我が魔眼を襲う……!

 

「イイッ↑タイ↓メガァァァ↑」

 

「嘘つけ絶対痛くないぞ」

 

 いやまぁ言ってみたかっただけが、目にゴミが入ったことは事実である。

 

「あ、割と痛い。誰か目薬持ってない?」

 

「泣け」

 

 着実に冬馬の対応が恭也のそれになりつつある。元々塩対応に近かったのに、さらに塩分増し増しで高血圧を危惧するレベル。

 

「あ、良太郎さん、あんまり目は擦らない方が……」

 

 そう言いながら目薬を取り出す美嘉ちゃん。妹がいるだけあって、ギャルな見た目とは裏腹に意外な面倒見の良さを見せてくれた。

 

「ありがと、美嘉ちゃん」

 

 伊達眼鏡を外し、美嘉ちゃんから受け取った目薬を……。

 

「……ん? 良太郎、おめー帽子どうしたよ」

 

「え?」

 

「あっ、あれじゃないですか?」

 

 美嘉ちゃんが指差す先には、ガードレールに引っかかった愛用の中折帽が。どうやら先ほどの突風で飛んだらしい。道理で頭が軽いと――。

 

「――ん?」

 

「……って、オイ……!?」

 

「あ、あわわわ……!?」

 

 何やら周囲からの視線が一気に増えたような感覚を覚えながら、冬馬と美嘉ちゃんの焦った声が耳に届く。

 

 ふと目に入ったすぐ側の喫茶店、そこの窓ガラス。

 

 

 

 変装状態が解かれた『周藤良太郎』が、そこに映っていた。

 

 

 

『………………』

 

 見られてる。めっちゃ見られてる。すっごい見られてる。

 

「………………」

 

 とりあえず落ち着いて目薬を差して伊達眼鏡をかけると、帽子を拾って頭の上に乗せる。

 

「……周藤家には、伝統的な戦いの発想法が――」

 

 

 

『……周藤良太郎おおおぉぉぉ!!??』

 

 

 

 最後まで言い切る前に、その場にいた大勢の人たちの絶叫にかき消されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 さて、三週間かけてようやく冒頭の回想に戻って来たわけである。

 

「にしてもこれどーすっかな……」

 

 あれだけガッツリ見られておいて未だに『周藤良太郎かもしれない』という曖昧な認識しかされていないのは、多分改めて変装状態に戻ったことで遅まきながら認識阻害的な何かの効果が適応されたからだろう。

 

「つーか、お前一人残ればいいだけの話だろ。んで俺が仕事に行く、城ヶ崎は妹たちを探しに行く。それで完結だろ」

 

「……まぁ、誰か一人が泥を被らないといけないのは間違いない」

 

「はぁ、はぁ、良太郎さん……」

 

 群衆から逃げながらこの現状を打破する方法を考えるが、やはりそれしかないだろう。

 

「というわけで、そーい!」

 

 スパーンッと。

 

「……はっ!?」

 

 我ながら器用に隣を走る冬馬に足払いを成功させる。

 

「さようなら天さん、どうか死なないで」

 

「それ犠牲になる側のセリフだろうがあああぁぁぁ!?」

 

「あ、天ヶ瀬さぁぁぁん!?」

 

 

 

「……んん? 何かすっごい騒ぎだにぃ?」

 

「って、今のお姉ちゃん!? それに良太郎さんも!?」

 

「……あ、そうだ! これだよ! きらりちゃん、莉嘉ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 さて、冬馬の「ここは俺に任せて、先に行け!」という尊い犠牲により俺と美嘉ちゃんは無事に逃げおおせた。まぁ先ほどから恨み言のメッセージが連続して届いているところを見ると、冬馬も無事に逃げ切れたようである。良かった良かった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 しかしいくら一度撒いたことで俺の身バレの心配は無くなったものの、美嘉ちゃんの体力も限界っぽいしこのまま足で莉嘉ちゃんたちを探すのは辛いだろう。

 

「しょうがない。ちょっと早いけど最終手段を使うことにしよう」

 

「はぁ、はぁ、さ、最終手段、ですか……?」

 

 スマホを取り出してポパピプペっと。

 

「もしもし良太郎です。はい、お久しぶりです幹也(みきや)さん。今ちょっといいですかね……はい、ちょっと人探しをしてまして、原宿駅周辺にいるはずの城ヶ崎莉嘉・赤城みりあ・諸星きらりっていう三人の女の子の居場所を教えてもらいたくて。写真はメールで送ります。……大丈夫ですか? ありがとうございます。……はい、また未那(まな)ちゃんの誕生日に是非。……はい、お願いします」

 

 幹也さんの携帯に三人のジャケ絵の画像を送って……っと。

 

「これでオッケー。捜索範囲限られてるし、名前と姿も分かってるからすぐに分かると思うよ」

 

「えっ!? い、いや、いくら何でもそれは……」

 

「あ、メール来た。もう分かったって」

 

「何者ですか!?」

 

「一言で言うなら『物探しのプロフェッショナル』かな」

 

 何々、『百メートル先の交差点を左折』っと。

 

 俺の現在地を把握している点に関しては幹也さんなので深く触れない。

 

 幹也さんのメールに従い少し歩いた先の交差点を左に曲がると――。

 

「……えっ!?」

 

 

 

 ――ステージ衣装を身に纏い、自分たちのデビュー曲を歌いながら大勢の人を引き連れた莉嘉ちゃんたちの姿が、そこにはあった。

 

 

 

 何故か莉嘉ちゃんはきらりちゃんに肩車された状態ではあるが、それがさらに彼女たちへの注目が増える要因になっていた。

 

「何々?」

「何かイベント?」

「あの子たちカワイー!」

 

 興味を示した街の通行人が次々に足を止め、あるいは彼女たちの後を付いていく。まるでハーメルンの笛吹を見ているようだった。

 

 彼女たちが歌い終わると、見物人たちが一斉に歓声を上げる。

 

「ありがとうございまーす!」

 

「アタシたちに興味有る人、付いてきてねー!」

 

「『凸レーション』でーす! よろしくおにゃーしゃーっす!」

 

 手を振り、周りに対するサービスを忘れない辺りしっかりとアイドルだった。

 

「……なるほどね」

 

 どうやらこれが彼女たちなりの『もっとお客さんを巻き込むにはどうしたらよいか』という問いに対する解答のようだ。

 

 確かにこれは観客を巻き込む手っ取り早い手段で、そして何より()()()()()()()()にしか出来ない荒業でもあった。

 

 例えば今の俺が同じようなことをやった場合、結果は先ほどのように『盛り上がり』を通り越して『混乱』になってしまい、多方面に迷惑がかかる。しかし今の彼女たちならば知名度はそれほど高くなく、通行人に対して『一体何をやっているのだろう』という絶妙な興味を引く。デビュー間もない彼女たちだからこそ出来る妙手と言えた。

 

「あの子たち……!」

 

 隣の美嘉ちゃんも感心した様子で莉嘉ちゃんたちのことを眺めていた。うっすらとその瞳に涙が浮かんでいる辺り、ようやく見つけることが出来た安堵感も合わさっている様子だった。

 

「どうやら三人とも、次のイベント会場の方に向かってるみたいだ。俺たちはそっちに先回りしよう。勿論、きっちりと身バレしないように、ね」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

「莉嘉っ!」

 

「っ!? お姉ちゃーんっ!」

 

 どうやら無事に警察から解放されて三人を探していた武内さんとも合流し、先回りしたイベント会場の舞台裏の楽屋テント前で三人を待つ。そして彼女たちが到着するなり美嘉ちゃんが莉嘉ちゃんに勢いよく抱き着いた。

 

「全く、この馬鹿……! 心配かけて……!」

 

「ご、ごめんなさい……!」

 

 姉妹の再会には水を差さず、俺は俺でみりあちゃんときらりちゃんの元へ。

 

「色々心配だったけど、何事も無くて良かったよ」

 

「にょわぁ、ごめんなさいにぃ……」

 

「ごめんね、りょうお兄ちゃん……」

 

 やや落ち込み気味の二人の頭をポンポンと撫でる。きらりちゃんは俺より背が高いので若干不格好な形になってしまったが、それでもきらりちゃんは嬉しそうに「えへへ」と笑ってくれた。

 

「それにしても、さっきのアレはよく思いついたね」

 

「ううん。アレ思いついたの、りょうお兄ちゃんと美嘉ちゃんのおかげなんだよ!」

 

 ……なぬ?

 

「さっきりょうお兄ちゃん、美嘉ちゃんと一緒に沢山の人に追っかけられてたでしょ? それを見て思いついたの! だからりょうお兄ちゃんと美嘉ちゃんのおかげ!」

 

「……そっか」

 

 一応、図らずとも彼女たちの力になれたようである。

 

 落ち着いたところで三人が武内さんに「勝手に動き回ってごめんなさい」と謝り、武内さんも「こちらこそ申し訳ありませんでした」と謝ったところで一旦お互いへの謝罪は終了。これからすぐにステージが始まるので、三人はその準備のためにテントの中へ――。

 

「三人とも来た!?」

 

「良かった……間に合ったのね」

 

「我が友よ、よくぞ舞い戻った!」

 

 ――入っていこうとしたら、逆に凛ちゃん・新田さん・蘭子ちゃんの三人が楽屋のテントの中から飛び出してきた。……何故か三人とも、凸レーションの三人のようなフリフリでポップな衣装に身を包んだ状態で。

 

「……プッ」

 

「って、良太郎さん!? 何でここに……っていうか、今笑ったでしょ!?」

 

「何を言っているんだい凛ちゃん。ホラ見てよこの真面目な顔」

 

「良太郎さんの表情は判断材料にならないから! さっき思いっきり『ぷっ』って笑ったでしょー!?」

 

 別に似合っていないわけではないのだが、何というか普段とのギャップがありすぎて笑わざるを得なかった。

 

 そんな俺の反応に顔を真っ赤に染める凛ちゃん、同じく俺の存在に気付いて羞恥なのか嫌悪なのかは分からないが顔を赤くする新田さん。一方で蘭子ちゃんは普段の服装と比べて色合いが違うだけなので割と気に入った様子だった。

 

「とりあえず記念に一枚……」

 

「写メろうとするな!」

 

 そんなやり取りは、ステージの方から『凸レーションでーすっ!』という三人の元気な声に続いて上がった歓声が聞こえてくるまで続けられるのだった。

 

 

 




・自傷確率が三分の一に低下
ちなみに作者のポケモンはびびりチェイン中に出現した色違いAロコンをゲットしたら満足してしまってストーリーが第三の島で止まっております。

・「イイッ↑タイ↓メガァァァ↑」
アニメは見てなくてもちゃんとネタは拾う。

・ギャルな見た目とは裏腹に意外な面倒見の良さ
それに加えて劇場831話でなんとおせち料理まで作れることが判明。ちょっとこのカリスマJK、嫁力高すぎない……?

・「……周藤家には、伝統的な戦いの発想法が――」
よくよく考えたら仗助がいるんだからジョースター家もあるんだよなぁって思ったけど深く考えないことにする。

・「さようなら天さん、どうか死なないで」
「ギョウザアアアァァァ!!」

・物探しのプロフェッショナルな幹也さん
ついに型月世界まで浸食し始めた模様。どうなってんだこの世界(他人事)

・「全く、この馬鹿……! 心配かけて……!」
(感想でも言われとったけど)ふひひなお姉ちゃんなんていなかったんや……!



 なんとか四話で収まったゾ……。

 てなわけで、割と原作通り過ぎて良太郎の出番が少なかったが故にネタ多めでお送りした(誰が何と言おうと)凸レ回でした。

 次回からは猫岩石……じゃなくて、アスタリスク回が始まります。こちらは凸レ回とは逆にオリ展開中心に進む……予定です。

 それでは……作者は今日の十五時までお祈りしてますので(スカチケ五枚欲しい並感)

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