アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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感想で指摘されて凸レ編でのちっひの出番をカットしていたことを思い出しました。

恐らく彼女の出番は第五章まで持ち越しに……許してちっひ。


Lesson149 My favorite one 3

 

 

 

 さて、あまりにも予想外な場所に固まってしまったみくたちだが、いつまでもここに立っているわけには行かないのでとりあえず中に入ることに。

 

 門の脇にあったインターホンを押すと(カメラ付きだったので不審者と誤解されないようにPチャンの代わりにみくが押した)スピーカーから聞こえてきたのは落ち着いた大人の女性の声。こちらが周藤良太郎さんの紹介で来たことを伝えるとすんなりと中へ通してくれた。

 

 自動で開いた門を潜り、奥に見える屋敷に辿り着いたみくたちを待っていたのは――。

 

 

 

「ようこそお越しくださいました。月村家メイド、ノエル・K・エーアリヒカイトと申します」

 

 

 

(め、メイドさんにゃ!?)

 

(め、メイドさんだ!?)

 

 ――メイドさんだった。正真正銘、紛れもなくメイドさんだった。それもサブカルチャー的な意味合いのメイドさんではなく、使用人という意味合いの本物のメイドさんだった。

 

「前川みく様、多田李衣菜様、武内駿輔(しゅんすけ)様、お話は伺っております。良太郎様も既にお越しになられておりますので、ご案内させていただきます」

 

 どうぞこちらへ、と先立って歩くメイドさんについて屋敷の中に入っていく。

 

 

 

「……それはそうとPチャン、駿輔って名前だったんだにゃ」

 

「は、はい、そうですが……」

 

 別にどうということではないのだが、何となく気になった。

 

 

 

「……な、ななな……!?」

 

 メイドさんの案内でみくたちが連れてこられたのは中庭だった。そこに置かれた白い机でみくたちをここに呼んだ良太郎さんが三人の少女と一緒にお茶を飲んでいたのだが、そんなことどうでもよかった。

 

 

 

「なんにゃこの猫チャン天国は!?」

 

 

 

 クロ・三毛猫・ロシアンブルー・茶トラ・ブチ・アメショーetc……色んな猫チャンたちが遊んだり日向ぼっこしたり自由を謳歌していた。

 

「ふにゃあ……! ここが楽園(エデン)だったんだにゃ……!」

 

 よく猫カフェに足を運ぶが、ここまで沢山の猫チャンは見たことが無かった。

 

「おーい、みくちゃーん、戻っておいでー」

 

「ちょっとみくちゃん!」

 

「……はっ!?」

 

 良太郎さんと李衣菜チャンに呼ばれ、ようやくみくの意識は猫チャンたちから現実へ戻って来た。

 

「流石のみくちゃんもこの猫天国の前ではイチコロだったか。圧倒的じゃないか、我が軍は」

 

「何でアンタの猫たちみたいになってるのよ。すずかに失礼でしょ」

 

「あ、アリサちゃん、私は気にしてないから……」

 

「にゃはは……」

 

 白い椅子に腰かけて、膝の上で丸まった茶トラの背中を撫でながら紅茶のカップを口元に運ぶ良太郎さん。優雅というよりはなんというか、威風堂々とした様子がまるで王様のようで意外と様になっていた。

 

 そんな良太郎さんと一緒のテーブルに着く三人の少女。良太郎さんに対して強気な口調の金髪ロングちゃん、彼女を宥める藤色の髪のロングちゃん、そんな彼女たちを見ながら苦笑する茶髪ツインサイドアップちゃん。恐らくこの三人の内の一人がこの屋敷の住人なのだろうと考える。

 

「さて、とりあえず俺から紹介させてもらうかな。こちら、この屋敷の住人の月村(つきむら)すずかちゃん、小学四年生」

 

「初めまして、月村すずかです」

 

 椅子から立ち上がった藤色ロングちゃんがこちらに向かってペコリと頭を下げるので、みくたちも慌てて「初めまして」と頭を下げる。

 

「こっちのツンデレチックな子はアリサ・バニングスちゃん、同じく小学四年生」

 

「誰がツンデレよ!?」

 

 良太郎さんの紹介に反応して噛みついたのは金髪ロングちゃん。

 

「そしてこっちが『翠屋』の看板娘、高町なのはちゃん、同じく小学四年生」

 

「は、初めまして!」

 

 茶髪ツインサイドアップちゃんも椅子から飛び降りペコリと頭を下げる。先ほどのすずかちゃんと比べると、反応がやや年相応な感じだった。

 

「それでこっちが、346プロダクションに所属するアイドルの前川みくちゃんと多田李衣菜ちゃんで、後ろの人がプロデューサーの武内駿輔さん。顔はちょっと怖いけど、すごくいい人だから怖がらないであげてね」

 

「ま、前川みくにゃ」

 

「た、多田李衣菜です」

 

「……よろしくお願いします」

 

「さて、すずかちゃんたちにはもう説明済みで、みくちゃんたちも……まぁ、説明しなくても分かるよね? 俺が君たちをここに呼んだワケ」

 

 そりゃもう、これだけ猫チャンが沢山いる場所に連れてこられれば嫌でも分かる。要するにこれが良太郎さんの言っていた『本当の猫の魅力』が分かる場所だということだろう。

 

「ここは有名な猫屋敷だからね。そこら辺の猫カフェなんかよりも猫と触れ合える絶好のスポットだよ。タダでお茶も飲めるし」

 

「すずか、やっぱりコイツからはお金取った方がいいと思うわよ」

 

「月村家婿入り予定の恭也にツケといて」

 

「自分で払いなさいよ!」

 

「お、落ち着いてアリサちゃん、別にお金取ったりしないから……」

 

 小学生相手に同レベルなやり取りをする良太郎さんは、果たして良太郎さんのレベルが低いのかアリサちゃんたちのレベルが高いのか……あるいはその両方か。

 

 しかしそんなことよりも、今は目の前の猫チャンたちである。最近は忙しくて猫カフェにも行けてなかったから、猫チャン禁断症状が~……!

 

「ほーらこっちにゃ~、煮干しあるにゃ~、雉羽根もあるにゃ~」

 

「みくちゃん、普段から煮干しとか猫の遊び道具持ち歩いてるの……?」

 

「俺の知り合いのピアニストもたまにポケットから煮干し出てくるし、そういう時もあるんじゃないかな」

 

「どういうことなの……」

 

 

 

 

 

 

 俺の中で『猫と言えば』という問いに対する答えは、迷うことなくここ月村家だった。高校に入学し恭也経由で月村との交友が出来、初めてこの屋敷に招待された時はまさしく『猫屋敷』という有様に驚いたものだ。

 

 そんなわけで今回『本当の猫の魅力』を知ってもらうためにこの月村家へみくちゃんたちを連れてこようと思ったわけなのだが、生憎月村は恭也とのデートで本日は不在。しかし月村の妹であるすずかちゃんとその友達であるなのはちゃんとアリサちゃんが放課後のお茶会をするという話だったので、こうしてお邪魔させてもらった次第である。

 

 ちなみになのはちゃんは言わずもがな、すずかちゃんやアリサちゃんとも月村家や翠屋で何度も会っているので顔馴染。個人的には年の離れた友人といったところである。

 

 さて、すっかりみくちゃんが月村猫軍団によって骨抜きにされてしまったが、本題は李衣菜ちゃんの方である。

 

「はい、李衣菜ちゃん」

 

 俺の膝の上で丸まっていた茶トラを抱えながら立ち上がり、李衣菜ちゃんに受け渡す。しかし李衣菜ちゃんが手を伸ばしたところで茶トラは俺の腕からスルリと抜け出して逃げてしまった。

 

 李衣菜ちゃんも両膝を付いて足元にいたブチに触れようとするがこれもまたヒラリと器用に躱されてしまう。

 

 しかしそんな彼女の足元ではアメショーが構ってほしそうにすり寄ってきており、李衣菜ちゃんは恐る恐る手を近づける。

 

「喉の下を優しく掻くように撫でるといいよ」

 

「わ、分かりました」

 

 指示通りに李衣菜ちゃんが喉を撫でると、アメショーは気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らした。一番いいのは尻尾の付け根らしいが、難易度高めで猫上級者向けなのでオススメ出来なかった。

 

「……えへへ、可愛いかも。って、あ……」

 

 しかしそんなアメショーも李衣菜ちゃんの手を逃れ、先ほどから煮干しや雉羽根や紐を駆使して猫無双中のみくちゃんの方へと行ってしまった。

 

「ほれほれ~、みんないい子だにゃ~」

 

「………………」

 

「いやまぁ、みくちゃんは猫の達人みたいなものだから、しょうがないって」

 

 ことごとく猫が自分から離れていき、微妙に悔しかったのか若干涙目になりつつみくちゃんを指差しながら無言のまま訴えてくる李衣菜ちゃんの頭を撫でる。

 

 ポンッ

 

「……ん?」

 

 そんな李衣菜ちゃんに見るに見かねたのかどうかは知らないが、先ほど俺の腕からすり抜けていった茶トラが「まぁ嬢ちゃん元気出せや」といった感じで李衣菜ちゃんの膝に前足を乗せた。

 

「……ありがとー!」

 

 そんな茶トラの優しさ(?)に感極まって抱き上げて頬擦りをする李衣菜ちゃん。普通は過度なスキンシップを嫌がるのだが、どうやらこの茶トラは空気を読めるらしく大人しくされるがままであった。

 

「猫は犬と違って基本的に人には懐かないからね。本当に気まぐれで、だからこうしてたまに来ると可愛いんだよ」

 

 伝わり切ったかどうかは微妙なところではあるが、李衣菜ちゃんにも猫の魅力を分かってもらえたようで何よりである。

 

 

 

「……アイドルってのは、良太郎を筆頭に変な人が多いのね」

 

「あ、アリサちゃん」

 

「りょ、良太郎お兄さんはテレビの中だとすっごいカッコイイんだよ!?」

 

「なのはちゃん、それ微妙にフォローになってないけど……」

 

「……あの、少しいいでしょうか」

 

「ん? 何よ」

 

「えっと、武内さん……ですよね?」

 

「何かご用ですか?」

 

「はい。……アイドルに、興味はありませんか?」

 

「「「……えっ」」」

 

 

 

 

 

 

「まさかあの子たちをスカウトし始めるとは流石のみくも予想外にゃ……」

 

「ビックリしたよ……」

 

「本当に申し訳ありませんでした……」

 

「寧ろあの三人に目を付けるとは、流石の慧眼ですね」

 

 プロデューサーがいきなりすずかちゃんたちをスカウトし始めた時には本当にびっくりした。

 

 それ以外にも私たちの分の紅茶を持ってきてくれたノエルさんとは別のメイドさんが躓いて宙を舞ったカップやポットを良太郎さんやすずかちゃんがキャッチするファインプレーが飛び出したりもしたが、無事にお茶会(という名の猫交流会)は幕を閉じた。

 

 突然訪れてただひたすら猫と戯れさせてくれたすずかちゃん他お茶会に参加させてくれたアリサちゃんとなのはちゃんには大変感謝である。

 

 さて、そんな月村家を離れ、次に良太郎さんの案内でやって来たのは少し離れた駅前だった。時間的にすっかり日は暮れ、駅前は仕事帰りの人たちで割と混雑している。

 

「それで、流れ的に次は『本当のロックの魅力』を教えてくれる人に会いに行くんですよね?」

 

「うん。連絡は取ってないんだけど、この時間帯ならいるはずだから」

 

「「「?」」」

 

 何やら随分と曖昧な良太郎さんに首を傾げる。

 

「っと、()()()()()()。いるみたいだ」

 

「?」

 

 それは一体どういう意味なのかと良太郎さんに尋ねる前に、確かにそれは()()()()()()

 

「……歌?」

 

「あと……ギター?」

 

 歌声とギターの音。誰かがギターの音に乗せて歌っている。

 

 見ると何やら人混みが出来ており、その向こう側からそれは聞こえてきていた。

 

 

 

「――――――っ!!」

 

 

 

「……っ!?」

 

 思わず息を呑んでしまった。

 

 『彼女』は路上の端、車道を背に歌っていた。マイクは無く、エレキギターが繋がれたアンプは小さなもので音は大きくない。しかし、その歌声とギターの音はビリビリと空気を震わしているように錯覚してしまうほど力強い。

 

 そして街を歩く人たちが思わず足を止めてしまうような、そんな引き寄せられる何かを感じた。

 

「……これが本物かどうかは別として……こいつが、俺の考える中でもトップクラスの『ロック』だよ」

 

「………………」

 

 良太郎さんの言葉に、私は思わず拳を強く握りしめた。

 

 

 




・ノエル・K・エーアリヒカイト
とらハ3におけるヒロインの一人で、月村家でメイドを務める女性(ここ重要)
クールビューティーだがちゃんと笑うし感情あるよ!

・武内駿輔
今さらながらフルネーム。4thにてその姿を生で目撃したが、やっぱり日産のディーラーにしか見えなかった。

・クロ・三毛猫・ロシアンブルー・茶トラ・ブチ・アメショー
ネコにゃんダンス。

・「圧倒的じゃないか、我が軍は」
CV:銀河○丈

・月村すずか
『魔法少女リリカルなのは』に登場した、忍の妹。かわいい。
見た目は可憐な文学系少女だが、実はアグレッシブな体育会系でもある。かわいい。

・アリサ・バニングス
『魔法少女リリカルなのは』に登場した、くぎゅボイスツンデレお嬢様。
彼女のとらハでの元ネタ調べた時は若干鬱になったゾ……。

・ポケットから煮干しが出てくるピアニスト
???「そういう日もある」

・ノエルさんとは別のメイドさん(ドジッ娘)
この人実はとらハでの○○○○だったという説を知ったときはビックリしたゾ……。



 というわけで猫屋敷こと月村家でした。寧ろこの小説的にそこ以外にあるのだろうか……。

 そして最後はロック担当のエントリー。基本的にアニメ準拠なので当然『彼女』ではありません。しかしプロデューサーならば候補は二人ほど上がると思います。

 果たして『長髪』の方か『短髪』の方か。

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