アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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唯ちゃあああぁぁぁん!(フライング挨拶)


Lesson193 Project:Krone 3

 

 

 

「リョータロー、知り合い、だったのですか?」

 

 鷺沢さんが広告に写っているアイドルだということに気付いているアーニャちゃんは、俺と鷺沢さんのやり取りに首を傾げていた。

 

「あぁ、まぁ、プライベートの方で少しだけ。……まさか鷺沢さんがアイドルになってるとは思わなかったよ」

 

「……ご、ご存知、だったのですか……?」

 

「ご存知だったというか、存じ上げたというか」

 

 美城さんに見せてもらった資料のおかげなので、知ったのはつい最近である。

 

 すると鷺沢さんは持っていた本で恥ずかしそうに顔を隠してしまった。

 

「その……慣れたつもりではあったのですが……知り合いにアイドルになったということを知られるのは……は、恥ずかしいです……」

 

 何この子超カワイイ。

 

「……えっと、それより……私としては、周藤さんがこの事務所にいらっしゃることも疑問なのですが……」

 

「……あー、うん、そうだねー……」

 

 一体どういう経緯でアイドルになったのかが凄い気になったので聞こうと思ったら、先に話題を変えられてしまった。

 

 どうやら、まだ俺がアイドルだということには気づいていないらしい。名前が同じだけの他人と思っているのか、はたまた未だにアイドル『周藤良太郎』という存在そのものを知らないのか……。

 

「おーい、文香ー! どーしたのー?」

 

 どう返したものかと考えていると、鷺沢さんの名前を呼ぶそんな声が聞こえてきた。声の聞こえてきた方に視線を向けると、一人の少女がこちらに向かって駆けてくるのが見えた。

 

 ウェーブがかった長い金髪の少女。ギャルメイクは別として、やや広めの胸元が少しだけ美希ちゃんを彷彿とさせたが、瞳の色が翠色の美希ちゃんに対して彼女は青色。美城さんに見せてもらった資料に載っていたアイドルの一人で、今も見上げれば宣材写真が飾られている大槻唯ちゃんだった。

 

「あーっ! ラブライカのアナスタシアちゃん!?」

 

 そんな唯ちゃんは、来るなりアーニャちゃんの存在に気付いて驚きの声を上げた。

 

「だ、ダー」

 

「わー! やっと会えた! アタシ、大槻唯!」

 

 突然のことに目を白黒させるアーニャちゃんの手を取ると、唯ちゃんは上下にブンブンと振った。

 

「これからよろしく……って、あっ、ゴメン! 無視するつもりはなかったんだけど……おにーさんは誰?」

 

 そこでようやく俺の存在に気付いたらしい唯ちゃん。ギャルギャルした見た目とは裏腹に、周りに対する気遣いが出来るいい子である。というか、俺の知り合いのギャルっぽい子は基本的にみんないい子たちばかりである。

 

 さて、彼女もクローネの一員である以上これから関わりが増えていくだろうし、ちゃんと挨拶をしておいた方がいいだろう。

 

 そう判断して、俺は変装状態を解除した。恒例の正体バラシタイムである。

 

「初めまして。周藤良太郎です」

 

「……え、えええぇぇぇ!? 周藤良太郎っ!? リョータローくんっ!? え、マジ!? 本物!? 最近ウチの事務所に出入りしてるっていう噂が流れてたけど、あれってホントだったんだ!?」

 

 まぁそんな噂が流れてたとしても、普通は信じられないよなぁ。

 

「? 大槻さん……?」

 

 お馴染みのリアクションをしてくれた唯ちゃんだが、そんな唯ちゃんのリアクションに対して鷺沢さんは首を傾げていた。あれ、これもしかして本当にアイドル『周藤良太郎』のことを存じ上げていないパターンなのでは……?

 

「どうなされたのですか……?」

 

「どーしたもこーしたもないよ文香! あのリョータローくんだよ!? トップアイドルの周藤良太郎だよ!?」

 

「トップアイドルの……?」

 

 唯ちゃんの言葉の意味を理解したらしい鷺沢さんは、前髪に隠れた目を少しだけ見開いてこちらを見た。

 

「……周藤さんも、アイドルになられていたのですか……?」

 

「……そう来るかー……」

 

 どうやら微妙に理解していないというか、若干天然の気があるらしい鷺沢さんに、思わず脱力してしまう。

 

「……?」

 

 話の流れが分からず、一人首を傾げているアーニャちゃんが大変可愛らしかった。

 

 

 

 

 

 

「……ということは、八神堂でお会いしたときには……既に周藤さんは、高名なアイドルだったということなのですね……」

 

「まぁ、そーいうこと」

 

 その場で立ったまま話すのもアレなので、一先ずロビーの片隅に設置されたソファーにまで移動し、一先ず鷺沢さんに対して『自分がアイドルであること』『出会った時には既にアイドルだったこと』をザックリと説明する。

 

「ちなみに、そのとき一緒にいた響ちゃんもアイドルだよ」

 

「なんと……!」

 

「えっ!? ってことは文香、リョータローくんだけじゃなくて、765プロの我那覇響ちゃんとも知り合いだったってこと!?」

 

 いいなー! と本気で羨ましがっている様子の唯ちゃん。三人がアーニャちゃんを中心にしてソファーに座り、俺が三人の前に立っているという位置関係なので、唯ちゃんが鷺沢さんへと身を乗り出したことでその深い胸元をご拝謁賜ることが出来た。ありがたやありがたや……。

 

「……私は、本当に世間知らずだったのですね……アイドルになってから、改めて思い知らされました……」

 

「ホントだよー! 周藤良太郎知らないって、相当世間知らずだよ!」

 

「……やっぱり……そうですか……」

 

 あぁ、何気ない無邪気な唯ちゃんの一言が、鷺沢さんを傷付けてしまう……!

 

「それよりも! どーしてリョータローくん……じゃなかった、リョータローさんが346の事務所にいるの? しかもアナスタシアちゃんと一緒に」

 

「あぁ……まぁちょっとね」

 

 ズーンと落ち込む鷺沢さんを「元気、出してください」と慰めているアーニャちゃんの姿を横目に、唯ちゃんの質問に相槌を打つ。

 

「実はウチの事務所の新人が一人、君たちと同じクローネに参加させてもらうことになっててね。その関係で最近はよくこの事務所に出入りさせてもらってるんだよ」

 

 もっとも、それより前にも散々出入りしているわけなのだが、わざわざ言う必要もないだろう。そのときはまだ凛ちゃんの様子を見たり友紀たちに会いに来たりと完全にプライベートだったから。

 

 ……プライベートで他事務所に訪れるっていうのもアレかと思ったが、それを言ったら765や876や1054にだって遊びに行ってるし今さらである。

 

「そーいえば常務が他の事務所から……シュッコー? してくるアイドルがいるって言ってた気がする」

 

 まぁ、出向扱いで間違いはないだろう。

 

「一ノ瀬志希って言うんだけど、実はまだアイドルデビューもしてないド新人でね。こっちで面倒を見てもらう代わりに、俺もクローネの面倒を見ることになったんだ。だから、これから君たちのレッスンを見てあげる機会があるかもしれないね」

 

「え、えぇっ!? それマジっ!? ……ですか!?」

 

 なんか美希ちゃんがりっちゃんに対して使っていた無理のある敬語を彷彿とさせた。

 

「マジマジ。でもやるからには優しくはしてあげられないから、覚悟しといてね?」

 

 765プロのみんなや旧バックダンサー組……現シアター組のみんなをしごき上げたかつての腕前を見せるときが再びやって来たようだな……!

 

「すっごーい! まさかあの周藤良太郎にレッスン見てもらえるなんて! アタシたち超ラッキーだね、文香! アナスタシアちゃん!」

 

「え?」

 

「……え?」

 

 興奮気味にアーニャちゃんに話を振った唯ちゃんだったが、当のアーニャちゃんはキョトン顔だった。確かに先ほどまで鷺沢さんを慰めてはいたが、ちゃんとこちらの話は聞いているようだったので、話の流れが分かっていないというわけではないだろう。

 

 となると……。

 

「あれ? アナスタシアちゃんも、プロジェクトクローネに選ばれたんでしょ?」

 

「……その……私は、まだ……参加、決めてません……」

 

 アーニャちゃんは力なく笑いながら首を横に振った。やっぱりそのことで悩んでいたらしい。

 

「……え、えぇ~!? 何で何で~!?」

 

「突然、だったので……」

 

「一緒にやろうよ~! 衣装もキメキメでカッコイイしさ~! 迷うことなんてないって~!」

 

 ね~ね~とアーニャちゃんを軽く掴んでゆさゆさと揺れる唯ちゃん。こんな可愛らしいおねだりのされ方をされたら、俺だったら一発で落ちている自信がある。

 

 なんというかさー最近はあぁやって露骨におねだりしてくる子が減っちゃったんだよなーアレはアレで嬉しいというか楽しいんだけどなー。『毒も喰らう。栄養も喰らう。両方を共に美味いと感じ、血肉に変える度量こそが食には肝要』って誰かが言ってたし。あ、でも美人局(つつもたせ)とかは勘弁ね。

 

「文香もそう思うでしょ?」

 

「……はい」

 

 鷺沢さんはコクリと頷いてから「ですが」と続けた。

 

「アナスタシアさんが悩む気持ちも……よく分かります。私は、スカウトされるまではアイドルというものに興味がなくて……」

 

「そりゃあ周藤良太郎を知らないぐらいだから、アイドルなんて興味ないだろうねー」

 

「……はい……」

 

 あぁ、また唯ちゃんの何気ない一言に鷺沢さんがダメージを受けておられる!

 

「……なので、アイドルをすると決心するまで、だいぶ時間がかかりました」

 

「でも、やってみたら楽しかったっしょ?」

 

 しかし次の唯ちゃんからの一言に、鷺沢さんはしっかりと微笑みながら頷いた。

 

「初めてのことばかりで、戸惑うこともありますけど……それが、読んだことのない本のページを捲るみたいに、ドキドキして……」

 

 鷺沢さんは、自身の膝の上に置いた本の表紙を優しく撫でる。

 

「だから今回のプロジェクトも……やってみれば、また新しいページが開けるんじゃないかと思って……」

 

 文学少女らしい、随分と詩的で……とても素晴らしい言葉だった。

 

「………………」

 

 そんな鷺沢さんの言葉に何か思うことがあったらしく、アーニャちゃんはハッとした表情になっていた。

 

「現にこうして……私は、また新しいことを一つ知ることが出来ましたから」

 

 そう言いながら俺を見上げてくる鷺沢さん。

 

「……そうだね、()()()()()はもうちょっと色々なことを知るといいかもね。少なくとも、周藤良太郎ぐらいは知ってて欲しかったかな?」

 

「えっ……あ、その……はい……」

 

「文香照れてる~カワイー!」

 

 その呼び方が少しだけ気恥ずかしかったらしく、唯ちゃんに囃し立てられて文香ちゃんは俯いてしまった。

 

 

 

 ……さて、アーニャちゃんと同じ悩みを抱えているであろうもう一人の少女は、今頃どんなことを考えているのやら。

 

 

 




・今も見上げれば宣材写真が飾られている大槻唯ちゃんだった。
あああぁぁぁあああぁぁぁ!!(作者暴走中)

・少しだけ美希ちゃんを彷彿とさせた
放送当時も散々言われてたよなぁ……。

・俺の知り合いのギャルっぽい子は基本的にみんないい子
寧ろガチギャルになると逆に苦手なので(書くのが)

・何気ない無邪気な唯ちゃんの一言が、鷺沢さんを傷付けてしまう……!
いつはやみーが被害者になるかと戦々恐々としてる。

・『毒も喰らう。栄養も喰らう』
一度バキ全巻読んでみたいけど、一体どこから読めば……。



 まだだ……まだ唯ちゃん分が全然足りない……! 今後絶対メイン回書いちゃるけんのぅ……!

 というわけで、ほぼ原作通りに進んだアーニャサイド。次回はもう一人の悩める少女、凛ちゃんサイドです。



『どうでもいい小話』

 シャニマスの情報がちょっとずつ出てきてますね。

 今の段階で一番気になっているのは白瀬咲耶ちゃんです。
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