アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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デレマス編最大の山場、スタート。


Lesson217 Why are you a smile?

 

 

 

 ……憧れていた場所を、私はただ遠くから眺めていました。

 

 

 

 私と一緒に並んで歩いていたはずのみんなは、いつの間にかキラキラ輝くアイドルになっていて……。

 

 

 

 ……私らしさって……なんなんでしょう。

 

 

 

 

 

 

「……さてと」

 

「ん、冬馬、何処か行くのか?」

 

 そろそろお昼だから、事務所にいたジュピターの三人を連れて飯でも食べに行こうとしたら、何やら冬馬が出かける用意をしていた。

 

「とーま君、一緒にお昼行かないのー?」

 

「良太郎君が知り合いにおススメされたっていう親子丼を食べに行くって話になったんだけど」

 

 知り合いというか、外で食事をする際にたまに見かけて顔見知りになったグルメなおじさんなのだが、その人に教えてもらった『ふわとろ親子丼』というのが気になったのだ。おじさん曰くチャージ料なんてものも存在するぐらい意識の高いお店らしいが、それでも味は間違いないと太鼓判を押していた。

 

 しかし翔太と北斗さんの誘いに対しても、冬馬は一瞬悩む素振りを見せた後で首を横に振った。

 

「あー……悪い、この後少しだけ用事がある。次は確かテレビ局で打ち合わせだったよな?」

 

 それには間に合うように戻る、と言い残し、冬馬は自分のリュックを背負ってラウンジを出て行った。

 

「……とーま君、最近一人で何やってるんだろう」

 

「たまにこうして、一人でフラッといなくなるよね?」

 

「……もしかして」

 

「ん、良太郎君、心当たりがあるのかい?」

 

「心当たりって程のものじゃないんだけど……」

 

 以前、士郎さんから聞いた『冬馬が指導のコツを知りたがった』という話。もしかして、今日もその指導に行っている……ということなのだろか。

 

「とーま君が、誰かに何かを教えてるってこと?」

 

「そうなるな」

 

「ふむ……冬馬はあぁ見えて面倒見がいい性格だし、それ自体は別に不思議じゃないね。気になるのは()()ってところかな?」

 

 それは俺も気になっていたところだ。今更春香ちゃんたち765プロ組にレッスンすることもないだろうし、可能性として高いのはバックダンサー組だが……。

 

「……まぁ、気になるなら本人から直接聞けばいいだけでしょ」

 

 ここでどうこうと想像を働かせたところで答えは出ないし、弄るにも本人がいないのであればつまらない。

 

 さぁご飯ご飯と俺たちも出かける準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ――天ヶ瀬さん! 私のレッスンを見てはもらえないでしょうか!?

 

 そんなメッセージが島村の奴から送られてきてから、早一ヶ月が経とうとしていた。

 

 それを読んだ瞬間は「寝言をメッセージとして送信するとは器用な奴だな」とでも返してやろうかと思ったが、話を聞いてみると一応寝言ではなく理由があったらしい。

 

 しかしその理由が『ユニットメンバーが他のことを始めたから、自分も何かしたかった』というものに一瞬だけイラッとしたが……わざわざそれを俺に頼んできたことに、きっとあいつなりに思うところがあったのだろう。そういうことにした。ただ単に頼める相手が俺だけだったとかそんなくだらない理由じゃないだろう、きっと。

 

 結局、俺はその申し出を受けてやることにした。

 

 基本的な流れとしては、俺の空いてる時間を島村に教えてやり、その時間に島村の予定が空いていたらそこでレッスンを見るというもの。俺から空いてる時間を教えてやらないといけないことが疑問だが、空いている時間は明らかに俺の方が少ないので、そうした方が効率がいいので仕方がない。

 

 そしてレッスンを見てやると言っても、当然俺はあいつのトレーナーじゃなければ同じ事務所に所属しているわけでもない。故に根本的な部分を教えてやることは出来ないので、細かい動作や仕草などを指摘してやる程度だ。それでも島村(あいつ)は、俺からの指導を喜んで受けている。いや、向こうからお願いしておいて喜ばなかったらそれはそれで問題だが。

 

 正直に言うと飲み込みはよろしくないが……努力して何とかしようとしている姿勢だけは認めてやろう。『諦めない』ということは、どんなことにおいても重要なことだ。

 

 というわけで今日も島村のレッスンを見てやるために、アイドル養成所のレッスンスタジオへとやって来た。俺と島村の古巣であり、俺たちが初めて出くわした場所でもあるここでレッスンを見てやっている。勿論養成所の先生には許可を貰っているが……あの人、「頑張ってね、天ヶ瀬君!」と何故か俺が頑張ることになっていたから、多分色々な意味で誤解してやがる。

 

 階段を昇り、スタジオの扉を開ける。そこにはいつものように、先に来ていた島村が自主練を――。

 

「………………」

 

 ――始めておらず、ジャージに着替えた姿で何故か床に座り込んで鏡をじっと見ていた。

 

「……よう」

 

「っ!? お、おはようございます!」

 

 俺が入って来たことにも気づいていなかったらしく、声をかけると島村はワタワタと慌てて立ち上がった。一瞬だけそんな島村の様子に違和感を感じたが、もしかしてプライベートなことかもしれないので触れないことにする。

 

「……今日も俺はこの後仕事がある。さっさと初めて早めに終わらせるぞ」

 

「は、はいっ!」

 

 着替えの手間を省くため、俺もすぐに動ける格好で来ている。こいつも俺が来る前には既にアップを終えているので、レッスンはすぐに始められる。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 しかしどうやら今回は違ったようだ。

 

「その、まだアップ終わってません……」

 

「……はぁ。時間少ないって言ってるんだから、それぐらいちゃんとやっとけ」

 

「す、すみません……」

 

 いつもだったら「なにボサッとしてたんだよ!」と言うところだが……先ほどから感じている違和感が気なり、その程度で済ませる。

 

「……オメェもそろそろ忙しくなるんじゃねぇか? そうなったらレッスンも見てやれなくなるんだから、一回一回気合い入れていけ」

 

「は、はい……あの、天ヶ瀬さん……そのこと、なんですけど……」

 

「ん?」

 

 

 

「……私、しばらくお仕事をお休みすることになりました」

 

 

 

「……は?」

 

 準備運動をしながら放った島村のその発言に、思わず呆気に取られた声が出た。

 

「だから、その、天ヶ瀬さんのご予定が空いていて、それでいて無理がないようであれば、私はいつでも時間を作れるようになりましたので、またレッスンを……」

 

「……何かあったのかよ」

 

 プライベートなことかもしれないので踏み込まないと決めたばかりではあるが、これは流石に聞いておかないといけないと感じた。

 

「……プロデューサーさんに『最近ちょっと仕事を頑張りすぎです』って言われちゃいまして……だから、少しだけお休みを貰って、基礎レッスンをやり直して体力をつけようって思ったんです」

 

 開脚前屈をしながらそう答える島村は、俺の位置からは後頭部しか見えないのでどんな表情をしているのかは分からなかった。

 

「このままだと……凛ちゃんや未央ちゃんたちに、迷惑をかけちゃうと思ったから……」

 

「……ふん。その代わり、俺の負担を増やすのは構わない、と?」

 

「えぇ!? あ、いや、違うんです! そういうことじゃなくて!?」

 

 少しだけ意地悪くそう尋ねると、島村は慌ててこちらを振り向こうとする。しかし開脚前屈の最中で体勢的に力を入れることが出来ず、床に倒れたままバタバタともがいていた。

 

「冗談だよ」

 

 とはいえ、仕事を休んでまで基礎レッスン……か。

 

「島村」

 

「は、はい、なんでしょうか!」

 

「その基礎レッスンてのは、本当に仕事を休んでまでやんなきゃいけねぇのか?」

 

「……え」

 

 仕事を頑張りすぎているから少し休むというのは……まぁ分からないでもない。常に能天気にバカみたいな仕事量を何でもないようにこなす良太郎を見ていると分かりづらいが、本来アイドルの仕事量というのは島村ぐらいの年齢の少女がこなすには激務すぎる。平日の仕事が制限されるため、本来の休日が休日として機能していない。今もオフは当然用意されているだろうが、ほんの半年前までは普通に学生をしていた人間にとっては天と地ほどの差の日程だ。

 

 きっとこいつに必要なのは、本当に休みなのではないだろうか。

 

「……でも、私……」

 

 立ち上がった島村は、俯きながら両手の指を弄ぶ。

 

「その、すぐに疲れちゃうのはきっと体力不足ですし……それに私、物覚えも悪いですから、こうしてちゃんと毎日レッスンしないと、すぐに他のみんなから遅れちゃって……」

 

「……はぁ」

 

 初めて会った時はもっとポジティブな奴かと思ったが、この間の一件からそんな気はしていたが、やっぱりこいつも一人で抱え込むタイプだった。

 

「今日の分のレッスンはちゃんと見てやる。……でも、しばらくこれも終わりだ」

 

「……えっ!?」

 

 俺がそう言うと、島村はバッと顔を上げた。驚愕に目を見開き、信じられないといった様子の愕然とした表情をしている。そんな表情に少し罪悪感を抱いたが、これはこいつのためだ。

 

「休むんなら休め。オメェのそれは体力不足じゃねぇ。それは散々レッスン見てやってたんだから分かる。いいか? 今お前がすべきことは――」

 

 ゴッと少し強めに島村の額を人差し指で突く。

 

「――そんな結論に至ってしまった自分自身を、もう一回考え直せ。自分の不調の原因が分かったら、またレッスン見てやる」

 

「……で、でも」

 

「ハイかイエスで返事をしろ」

 

「アイタタタッ!? わ、分かりましたっ!」

 

 まだ口答えをしようとした島村の額を強めにグリグリとやって分からせる。

 

 ……本当ならば、仕事に支障が出る前にレッスンを見てやっている俺がそれを止めるべきだった。結局まだ俺はそれに関してはズブの素人で……その辺りを配慮してやれなかった自分に腹が立つ。

 

 俺はこいつのプロデューサーじゃない。けれど、例えば秋月さんだったら、赤羽根さんだったら……良太郎だったら。そんなことを考えてしまう俺自身も、きっと島村と同じで考えすぎなのかもしれない。

 

「軽く体動かすぐらいは何も言わん。でも何回も言うぞ、お前のそれは体力の問題じゃない。基礎レッスンでどうこうなることでもない」

 

 だから考えろ。そう言って聞かせると、島村はようやく素直に頷いた。

 

「……分かりました。島村卯月、頑張ります!」

 

「だから頑張りすぎるなっつってんだろが……」

 

 けれど、これはこいつの癖みたいなものだし、そこを突っ込むのは今更だ。

 

 

 

「ただでさえ短い時間が今のでまた短くなった。さっさとやるぞ……しばらく俺がレッスンを見てやれない以上、ミッチリとシゴいといてやるからな」

 

「お、お手柔らかに……い、いえ、頑張ります!」

 

 

 




・ふわとろ親子丼
・チャージ料
帝愛というドブラック企業があるかどうかは秘密。

・天ヶ瀬さん! 私のレッスンを見てはもらえないでしょうか!?
実は今まで明言はしていなかったはず。……いやまぁ、みんな気づいてただろうけど。

・「頑張ってね、天ヶ瀬君!」
養成所の先生からもそういう目で見られている天ヶ瀬ぇ……。

・「……私、しばらくお仕事をお休みすることになりました」
物語進行してました。補完は次回。

・島村の額を人差し指で突く。
許せサスケには一本指が足りない。



 ついに始まってしまった島村卯月編ことアニメ23~24話編ですが、初めに言っておきます。

 アニメより酷いことになります。ネタではなくガチ的な意味で。多分何人かから怒られるレベルです。でも書きます。デレマス編を始めた時から考えてた展開ですから。

 ……胃が痛ぇ……。



『どうでもいい小話』

 SS3Aお疲れさまでした! 二日目のみLVで参加しました!

 言いたいことは何個かあるんですが、これだけ。

 ……新人組のキャラ濃すぎぃ!!

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