俺は、神様から『転生する世界で最も武器となる能力』を貰って転生した転生者である。
我ながら随分と曖昧な特典を貰ってしまったなぁ、と後悔したものの、その特典の内容は転生五年目にあっさりと気付くことが出来た。
――お、良太郎君も興味があるかい?
――まだ五才なのに有能だねぇ。
――それじゃあ、おじさん達と一緒に打ってみようか。
俺が貰った特典は『麻雀の才能』だったようだ。
五才で初めて親戚と卓を囲み、結果東三局で全員を飛ばして俺がトップとなった。これだけだったら、まぁビギナーズラックで済ませたことだろう。だが、これが十回、二十回と続けば信じざるを得ないだろう。
加えて、この世界だ。
『中学生達の熱い夏! 全国中学生麻雀大会!』
前世の世界では考えられない、この麻雀という遊戯に対する認知度と認識の違い。麻雀と言ったら大人の男性の遊戯といったイメージで、こんな中学生がインターミドルで競い合うようなものじゃなかったはずである。
こんな世界なんだ、俺の『転生する世界で最も武器となる能力』が『麻雀の才能』だったとしても何の疑問もない。
こんな世界でこんな能力を貰ったなら、使わない手はないだろう。
『決まったぁぁぁ! 男子個人戦優勝者は! 突如現れた超新星! 横浜第二中学一年! 周藤良太郎だぁぁぁ!』
で、使った結果がこれである。
流石に連続天和や役満連発とかは無かったものの、なんとなく次の牌が感じ取れたり、なんとなく相手の当たり牌が分かったり、『あること』をすると格段に運が良くなったり。あれよあれよと勝ち続け、気付けば男子中学生で日本一になってしまった。サクセスストーリーもあったものじゃない、ただ俺が麻雀に強かったという結果しか残らなかった。
だからなのかは分からないが、『さめる』のも早かった。それが『冷める』なのか『醒める』なのかは分からないが。
あぁ、自分の才能はこんなものか。こんな才能なのか。
『それでは! 優勝者の周藤君にインタビューをしてみたいと思います! 周藤君! 今のお気持ちは!』
こんな才能のせいで『涙を流す』人がいるのか、と。
『……自分は』
自分というイレギュラーがいるせいで、涙を流す羽目になる人がいるならば。
『周藤良太郎は、今日をもって普通の男の子に戻ります!』
『……え?』
俺の才能は、もう充分だ。
初のインターミドルで優勝を果たした俺は、両親に頼み込んで転校することにした。麻雀から離れ、普通の生活を送りたかったのだ。
転校した先は、長野県の片田舎。最初こそ騒がれたものの、たった一度優勝したことがあるだけの若造は、あっという間に騒がれなくなった。ありがたいことだ。
その後、何事もなく中学の三年間が終わり、俺は高校生となった。
そして現在。
「リョーくん、はい、あーん!」
「あーん」
周藤良太郎。リア充街道まっしぐらである。
「どうっすか? リョーくん」
「うん、旨い」
「へへ、頑張ったっす」
テレテレと笑う美少女、
何故このようなことになっているのか簡単に説明すると。
1.友達とどんな乳が好みかという話になる。
2.これだ! と思うクラスメイトの乳を話すと、誰それ? という反応をされる。
3.ほらここにいるだろ! と肩を叩くと、酷く驚かれ、泣かれる。
4.お友達になってください! と懇願され、友達になる。←今ここ
3の部分が何のこっちゃといった感じだが、実際にこうだったのだから仕方がない。
何でも彼女は影が薄く、周囲の人間からほとんど認識されないらしい。こんなナイスな乳を持つ美少女を認識出来ないとは、人生の八割は損してるな。
「リョーくん、今度一緒に遊びに行きたいっす」
「ん、じゃあ電車で街まで出ますか」
「うん!」
いやぁ、友達とはいえ、こんなリア充でいいのだろうか。高校の三年も、こんな感じで過ごせたらいいなぁ。
なんて考えてた時期が、俺にもありました。
「昼休み中失礼する。三年の
一度は閉じた筈の麻雀の扉は、どうやら向こう側から勝手に開けられてしまったようだ。
「君には、是非私達の監督になってもらいたい」
「学生なんですが」
「頑張るっすよ、リョーくん!」
「ワハハー、頼んだぞ、提督君」
「監督です。そっちはマジ門外漢なんで」
「……提督?」
「……自分も影が薄いんだが」
「人生相談されても……」
「私よりマシだと思うんすけど?」
「みっつずつみっつずつ……えっと、こうですか?」
「すごく……
「無知って怖いっす……」
そして再び始まる、俺と麻雀の繋がり。
「ピンク髪に大乳……だと……!?」
「な、なんですか?」
「リョ、リョーくんは自分の胸を見てればいいっす!」
「リョータローリョータロー!」
「何? 衣先輩」
(リョーくんと子供がいたら、こんな感じなんすかね……)
「うわ、おっきいっす」
「周藤君、ちょーファンだよー! サイン欲しいよー!」
「俺のでよければ」
「私は高校百年生!」
「じゃあ俺五百年生ー」
(変なところで張り合うリョーくん可愛いっす)
「だ、大乳リアル巫女……だと……!?」
「?」
「だ、だからリョーくんは自分の胸を見てればいいっす!」
「乳だ!」
「太ももや!」
「不毛な言い争いっすねぇ……」
「ときぃ……」
「おねーちゃんのおもちに目を付けるとは……なかなか見所がありますね!」
「男として当然のことだ」
「……もう何も言わないっす。最後に帰ってきてくれればそれでいいっす」
「さむーい……」
「久しぶりだねぇ、良太郎。知らんけど」
「……知り合いの方っすか」
「従姉のねーちゃん」
「近寄らないでください。アラフォーが移ります」
「移らないよ!? っていうかアラサーだよ!?」
「……そこは否定しなくていいんすか?」
そして。
「良太郎も山登りに行こう!」
「……えっと、今から?」
(……あのジャージの下、本当に……履いてる……んすよね?)
「麻雀って楽しいよね!」
「……否定はしないけどさ」
「リョーくん……」
これは転生した少年と、麻雀に青春をかける少女達の物語。
『麻雀の世界に転生したようです。』
「……じゃあ、俺もちょっとだけ頑張ってみようかな」
「私も一緒にっすよ、リョーくん!」
もちろん嘘です(キリッ
すみません、明日には本編上げるんで今日のところはこれでご勘弁を……。
現在更新停止中の咲小説の代わりに考えたこんな妄想ネタ。こんな感じのストーリーにすれば対局シーンを考えなくて済むのではなかろうか。
セリフのみの場所で誰が誰なのかは皆さんで考えてみてください。何この知らない人に優しくない番外編。
しかし、ただ番外編を上げるだけではアレなので、皆さんの感想欄で聞かれたこと+αを改めてここで記載したいと思います。
Q 主人公のプロフィールは?
A 簡単なものですが。
名前 周藤良太郎 男 AB型 18歳(Lesson25時点) 四月二日生まれ
身長 175cm 体重 未設定 体脂肪率は一桁
容姿 皆さんのご想像にお任せします。作者はギャルゲのように前髪で目が隠れた男をイメージして書いています。
裏話 最近視力が落ち気味なため、コンタクトレンズの購入を検討している。
Q 色んなアニメのキャラがいるけどなんで「転生した世界で最も武器となる能力」が「アイドルの才能」なの?
A 実は一度も「この世界はアイドルマスターの世界だ」とは言っておりません。言ってないはずです。あくまで「アニメに似たキャラがいる世界」というだけです。神様も「アニメの世界に転生させる」とは言っておりません。では何故「アイドルの才能」が最も武器となるのかというと、神様が捉えた世界とは「自分が転生した人生」という意味での世界だからです。この世界は「兄によってアイドルデビューさせられる」という世界線であったために最も武器となる能力が「アイドルとしての才能」となりました。もし「士郎や恭也と共に真剣に剣術を納める」という世界線であったら、最も武器となる能力は「剣術の才能」となっていました。つまり自分に関係する事柄にしか能力は変化せず、例え良太郎の知らない場所で異能力バトルが始まっていたとしても、良太郎が関わる世界線でない限りそれらは良太郎の世界には含まれない、ということです。
良太郎は「物語」に転生したのではなく、「世界」に転生したのですから。
Q 普通の神様転生でよかったのに、なんでこんなめんどくさい設定にしたの?
A 主人公に「アイドルマスターの原作知識を持っていない」という設定をつぎ込むためです。「あいどるますたー? アイドルの世界かな? じゃあアイドルの才能を」という主人公にしたくなかった、という理由です。あとついでに、幼女女神や老人神様の土下座から始まるテンプレ描写を書きたくなかったというのもありました。
Q 最近クロスネタが多すぎるけど。
A 調子に乗りすぎました。すみません。ただ自分としては「折角の二次創作なんだからオリジナルキャラをあまり出しくない」と考えており、「オリジナルキャラを作るぐらいだったら既存のキャラクターをサブキャラとして採用しよう」と思い至ったためこうなりました。気になる方がいらっしゃれば全員チョイ役のオリキャラ程度の認識で読んでいただけると幸いです。
Q 更新遅くない?
A マジですみません。登校時間が無くなったことにより逆に執筆に向かう時間が減ってしまっていました。出来るだけ早い更新を心がけます。
Q 劇場版はやるの?
A 一応ストーリー上には組み込んであります。……しかし結局見に行けていなかったという罠。もし上映終了までに間に合わなかったらDVDが出る構成も出来ない状況に……。
こんな感じですかね。他にも質問があればご感想で個別に返信しておりますのでよろしかったらどうぞ。
先ほども書いたとおり、明日には本編を更新したいと思います。
それでは。