アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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完全オリジナルの新章開始!

※注意!
今回から始まるお話は『時系列を完全に無視した外伝』になります。
本編の展開や設定と矛盾する点が存在する可能性がありますが、あくまでもこれは外伝であるということをご留意ください。

『これはいつ頃のお話?』
『つまりこのあとこういう展開になるってこと?』

などといったご質問には一切答えかねますので、あらかじめご了承ください。


外伝『Days of Glory!!』
Episode01 その日、世界が震撼した。


 

 

 

 ――ぴ、ぴよおおおぉぉぉおおおおぉぉぉっ!!??

 

 事の始まりは、私たち765プロの事務所内に響いた小鳥さんの叫び声だった。いや、本当はもう少し違うタイミングだったのかもしれないが、少なくともこの事務所にいる人間にとってはそれが始まりだった。

 

「こ、小鳥さん!?」

 

「どうかしたんですか!?」

 

 その日、たまたま事務所にいた私と律子さんが叫び声が聞こえてきた方に駆け寄ると、小鳥さんはあんぐりと口を大きく広げながらわなわなと震えていた。その視線は机の上に乗ったパソコンの画面へ釘付けになっている。

 

「ふわぁ~……もうちょっと静かにして欲しいの……」

 

 ソファーで寝ていた美希も騒ぎを聞きつけて起きてきた。

 

「春香ちゃん! 律子さん! 美希ちゃん! おおお落ち着いて!」

 

「至って落ち着いてますが」

 

「特に美希ちゃん! 本当に落ち着いてね!」

 

「「「?」」」

 

 小鳥さんから名指しされた美希が首を傾げる。というか私や律子さんも一体何のことなのか分からず首を傾げている。むしろ落ち着いていないのは小鳥さんの方ではないか。

 

「こ、これ!」

 

 小鳥さんがパソコンの画面を指差すので、三人でそれを覗き込み――。

 

「「「……えっ!?」」」

 

 ――そこに表示された文字に驚愕した。

 

「こ、これは……!?」

 

 それはまさしく、私たちを驚愕させるに値する出来事だった。

 

「つ、ついに……!」

 

 それはまさしく日本を……いや、世界を揺るがす大事件だった。

 

「そ、そんな……!?」

 

 

 

 

 

 

『123プロダクション感謝祭ライブ! ドーム公演開催決定!』

 

 

 

 

 

 

「大事件なのおおおぉぉぉおおおぉぉぉ!!??」

 

 とても寝起きとは思えないような声量だった。重症りょーいん患者の美希にとっては、それはもう一大事なのだろう。早速小鳥さんを押しのけて「先行予約! 先行予約は!? 前売り券はいつなのおおおぉぉぉ!?」とパソコンを操作していた。

 

「……いやぁ、ついに来ちゃいましたね、この時が」

 

「来ちゃったわね……」

 

 そんな美希の様子を見ながらボソリと呟くと、隣の律子さんが同意した。

 

 確かにこれは大事件である。いきなりドーム公演というのも驚きではあるのだが、何より『123プロ』として初めてのライブである。元々『頭がおかしい倍率』として有名な周藤良太郎に加え、ジュピターの三人やピーチフィズの二人、志保ちゃんや志希ちゃんや美優さんといった人気アイドルが勢揃いするのだ。きっと今頃美希と同じように、全国のファンが血眼になっていることだろう。

 

「あぁ!?」

 

 美希の叫び声が聞こえてきた。どうやら告知ページが落ちたらしい。やはりファンはみんな同じことをしていたようだ。

 

「これは色々と荒れそうね……ん?」

 

 ポケットからスマホを取り出した律子さん。画面を見るなり突然眉根を潜めて嫌そうな顔になった。律子さんがこういう表情をするときは、大体良太郎さん関係である。

 

「はぁ……ちょっと美希、落ち着きなさい」

 

「落ち着けるわけないの! これは戦争なの! 律子は黙ってて!」

 

「……へぇ、そう。なら――」

 

 ニタリと暗い笑みを浮かべながら律子さんは自身のスマホを横に振った。

 

「――良太郎から『765プロにもチケットあげるよー』っていうメッセージが来たんだけど、断ればいいのかしら?」

 

「律子さんごめんなさいっ!!」

 

 真っ先に美希が取った行動は、土下座だった。いやまぁ確かに、確実にチケットを手に入れることが出来るのであれば、ファンならば同じような行動を取ることだろう。

 

 しかし、一つだけ懸念事項……というか気になることがあった。

 

「律子さん……それって何枚いただけるんですか?」

 

 ピクリと土下座中の美希の肩が動いた。

 

 私たち765プロは他の事務所と比べて所属アイドルが少ないとはいえ、それでもアイドルだけで十二人。律子さんたちスタッフを含めても十六人。劇場のアイドルやスタッフも含めると五十人は余裕で超える。いくら知り合いだとはいえ、全員分は流石に無いだろう。

 

 案の定、私の質問に律子さんは気まずそうに目を逸らした。

 

「……四枚、らしいわ」

 

「四枚ですか……」

 

 いや、普通は二枚ぐらいだから多いと言えば多い。しかし、周藤良太郎のライブのチケットだ。りょーいん患者の美希や真美は勿論、そんなの私だって欲しいに決まっている。

 

「………………」

 

 無言のまま、美希がユラリと立ち上がった。

 

「み、美希……?」

 

「春香……私は、今から修羅になる。チケットを手に入れるまで……私とアナタは敵同士だ」

 

「いつもと口調が違うよ!?」

 

「アナタを倒し、私は楽園(エデン)へと至ってみせる……!」

 

「なにその本気の憎しみの目線は!?」

 

 みんなで撮影した『眠り姫』での敵の役を演じたときでさえ見せなかったような表情に、美希の本気を垣間見た気がした。

 

 

 

「はぁ……これはしばらく、色々なところが荒れそうね……」

 

 

 

 

 

 

「な、なんてこと……なんてことにゃ!?」

 

 シンデレラプロジェクトでのレッスンの休憩中、スマホを弄っていたみくが突然ワナワナと震え出した。

 

「みくちゃん、どーしたの? ……え」

 

「なにかあったのー? ……あ」

 

 そんな様子に興味を持った莉嘉とみりあが背後からみくのスマホを覗き込んだ。すると莉嘉は固まり、みりあは驚いたような表情になった。

 

「「123プロの感謝祭ライブ!?」にゃ!?」

 

『えぇっ!?』

 

 みくと莉嘉の叫び声に、その場にいた全員が反応した。

 

「みくちゃん、それホント!?」

 

「うっきゃー! しゅごーい!」

 

 李衣菜やきらりを始めとしたプロジェクトメンバー全員がその話題に興味を示す。

 

 まぁ普通に考えれば、当然の反応と言える。基本的に『周藤良太郎』のライブというのはそれだけで話題性が抜群なのに、それに加えて今回は()()()()()()()()()()()なのだ。

 

「……あれ?」

 

 美波が「詳細は? 詳細は!?」とガラにもなく興奮している一方で、プロジェクトメンバーの中でも驚いていないメンツがいた。私を含め、みりあと卯月、そして未央だった。

 

「……驚いてないの?」

 

「そーいうしぶりんこそ。しまむーとみりあちゃんも」

 

「わ、私は、その……冬馬さんが先に教えてくれたので……」

 

「みりあも、りょうお兄ちゃんが教えてくれた!」

 

「……まぁ、私も同じだよ」

 

 そういえばこの四人の共通点は『123プロにプライベートでの知り合いがいる』ということだった。私が良太郎さんに教えてもらったように、三人もあらかじめ知っていたから別段驚かなかったということか……いや、教えてもらった直後はみくたちみたいに驚いたのはきっと私だけじゃないだろうけど。

 

 

 

「……もしかして、そこの四人……誰かチケット貰ってたりする……!?」

 

 

 

 それは誰のつぶやきだったか。

 

『なにぃっ!?』

 

 グリンッとみくの周りに集まっていたみんなの首が一斉にこっちに向いた。

 

「うわっ!?」

 

「ひいっ!?」

 

「わ、なになに!?」

 

 それはさながらホラー映画のワンシーンのような光景だった。未央は驚き卯月に至っては完全に怯えていた。……みりあがそれほど驚いていないのは、まぁいつも通りだろう。

 

「……餌を食べるのに夢中になっていた化物が音に反応して一斉にこちらへ意識を向けるシーンが、あんな感じだったなぁ……」

 

「……い、今……ほ、ホラー映画の話、した……?」

 

「してないよー」

 

「そ、そっか……」

 

 杏が誰かと話をしていたような気がしたが、今はそれどころではない。

 

 亡者のような目でこちらにジリジリとにじり寄ってくるみんなに、思わず未央を盾にする形で距離を取る。

 

「ちょっとしぶりん!?」

 

「安心して、骨は拾うよ」

 

「そこを配慮するぐらいなら骨にならないような気遣いが欲しいかな!?」

 

「だから骨が残ってるじゃん」

 

「えっ!? しぶりんの配慮が無かったら私、チリも残らないの!?」

 

浄破滅焼闇(じょうはめっしょうえん)!」

 

「らんらんは闇の炎に抱かれて黙ってて!」

 

「というか、私はチケット貰ってないよ」

 

「……え?」

 

 その私の一言に、みんなの動きが止まった。

 

「わ、私も貰ってません!」

 

「みりあもー」

 

「私も貰ってないよ!」

 

「え、そうなの?」

 

 我に返ったらしい李衣菜の問いかけに、四人を代表してみりあが「うん」と頷いた。

 

「『346プロには、シンデレラプロジェクトに二枚、プロジェクトクローネに二枚あげる』って良太郎さんが」

 

 なんでも知り合いの事務所には四枚ずつチケットを配っているらしい。いつもだったら身内のチケットがあるので、正直に言えばそれを期待していたのだが……どうやら今回はそれも別の誰かにあげる予定らしい。

 

「って、二枚だけ!?」

 

「少ないにゃ!」

 

「むしろ何もせずに二枚もチケットが手に入るだけでも、凄いことだと思うけど……」

 

 莉嘉とみくが文句を言うが、美波の言うとおり、これだけでも破格である。

 

 なにせ、あの『周藤良太郎』のライブのチケットが無条件で手に入るのだ。IEを経て世界からも注目を浴びるようになってから初めてのライブ。しかも日本を牽引するトップアイドルであるジュピターやピーチフィズまで出演するのだから……当選倍率が何倍になるのか、想像もしたくない。

 

『………………』

 

 だからみんな、どうしてもこのチケットを手に入れたいのだろう。二枚のチケットを得るために、今度は全員が全員をけん制し始める。

 

「……そ、それじゃあこうしましょうか」

 

 流石にこのままではいままで築き上げてきたプロジェクトメンバーの絆にヒビが入りそうだと感じた美波がパチンと手を叩いた。

 

「まずはみんなでちゃんと抽選に申し込んで、それに外れちゃった人の中でこの貰ったチケットを貰うか決めるの」

 

「……そうだね、もしかしたら普通に抽選で当たるかもしれないし……」

 

 良太郎さんのライブのチケットの抽選は『彼の事務所のファンクラブのアカウント一つにつき一度応募できる』という制限がある。他のライブのように何枚もCDを買って応募券を集めるということをする必要がないものの、一人で多数応募するということが出来ないのだ。

 

 だからまずは全員でしっかりと応募して、外れてしまった人がチケットを受け取れば、少しでも多くの人がライブに参加できる……というのが、美波の考えだろう。

 

「それに、こーいうときは結構ご都合主義が発動するもんだから、意外と全員当たったりするんじゃなーい?」

 

 一人だけ輪の外でソファーに身を沈めていた杏の言葉。

 

「……そ、それもそうだね!」

 

「よーし! みんなで『周藤良太郎』のライブに行くぞー!」

 

『おーっ!』

 

 みんなは希望を見出し、揃って拳を突きあげる。

 

 そうだ、私たちはいつだって希望を胸にアイドルとしての道を歩き続けてきたのだ。

 

 今回だってきっと大丈夫……そう信じているのだ。

 

「………………」

 

 だから、私は言い出せなかった。

 

 

 

 ――ちなみに今回のライブに参加できる人なんだけど。

 

 ――神様(さくしゃ)()()()()()()()()()つもりらしいから。

 

 ――……健闘を祈るよ!

 

 

 

 良太郎さんがそんな不穏(でんぱ)なことを言っていたことを……。

 

 

 




・『123プロダクション感謝祭ライブ! ドーム公演開催決定!』
……あれ、良太郎のライブを真面目に書くの、これが初……?

・『頭がおかしい倍率』
外伝時空の話にはなりますが、123プロの年末ライブは180倍でした。

・美優さん
この世界では既にデビュー済です。

・「……い、今……ほ、ホラー映画の話、した……?」
チラ小梅。

・「浄破滅焼闇!」
テイルズコラボにて。6thの告知でこれ聞いたときは本気で爆笑してました。

・神様は本当に抽選で決めるつもり
はい、抽選します。
方法はまた後日……たぶんツイッター辺りで発表しますが、ガチで抽選します。765も346もその他のアイドルも、この結果次第でライブ参加が決まります。
……まぁ流石に可愛そうなので、落選したアイドルもビューイング参加はさせてあげる予定です。



 ついに始まりました、長編外伝『123プロ感謝祭ライブ編』!デレマス編はほぼアニメ準拠だったので、完全オリジナル展開を書くのは久しぶりです。

 元ネタというか書くきっかけとなったのは、ライブBDでよくある舞台裏の特典映像です。良太郎たちにあーいう感じのことをさせていきたいと思います。

 正直どれだけの長さになるのか、未だに不透明ではありますが……皆さま、しばらくお付き合いいただけると幸いです。



『どうでもいい小話』

 楓さん四枚目のSSRが……ついにキタアアアァァァ!

 そして引いたあああぁぁぁ!(辛勝)

 (残念ながら今回は記念短編とかは)ないです。

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