アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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ラブライブ見ようかなぁと考え始めた今日この頃。


Lesson27 地獄のレッスン!? 3

 

 

 

「……一人……は、出来……こと……」

 

「……仲間……なら……る……と……」

 

「……乗り……られる……は」

 

「……ユニティー……ストレングス……」

 

「ほらほら、みんな声出てないぞ。普段のステージでもそんな声でやってるのか?」

 

「うわぁ……」

 

 思わずそんな声が出てしまう。「ちゃんと声が出てないなー、じゃあもう一回」と良太郎さんの声と共に繰り返される曲のリピートは既に三回目。一回目はまだマシだったと言えたが、二回目、三回目と回数を重ねるごとに息も絶え絶えになり歌詞も途切れ途切れになっていった。

 

 一方良太郎さんは四人よりもさらに速いペースで走りながらも普段と変わらぬ声量で歌いつつ、一切息を切らしていない。というか、自分達の『The world is all one!!』を完璧に歌えることに対しても驚いた。自分達の歌をちゃんと練習してくれたことが若干嬉しかったりする。

 

「よーし、じゃああと一曲歌ったら休憩にするよ。最後だからちゃんとお腹から声出していこう」

 

 

 

 

 

 

「四人とも、お疲れ様」

 

「「「「………………」」」」

 

 床に倒れ伏した四人から返事の言葉は無い。比較的真ちゃんはマシみたいだけど、春香ちゃんと雪歩ちゃんはもう満身創痍といった感じだ。美希ちゃんも辛そうに仰向けに倒れている。いやぁ、息が荒い女の子って何かエロいね! 呼吸に合わせて上下するおっぱいが大変眼福です。……真ちゃんはまぁ、うん。

 

「それじゃあ、次は残りの五人ね。見てたからどんな感じかは分かったよね?」

 

「は、はい……」

 

 あれー? ダンスが得意で運動も大丈夫そうな響ちゃんの顔が引きつってるぞー? 他のみんなの表情も似たり寄ったり。貴音ちゃんの苦々しい表情ってのも新鮮だな。

 

「………………」

 

「踊らなかったとしても歌うのだって体力いるし、肺活量が上がれば声量だって上がるでしょ? 千早ちゃん」

 

「っ! わ、分かっています!」

 

 そっぽを向いてランニングマシーンに向かう千早ちゃん。……個人的には気遣ってるつもりなんだけど、どうにもいい感情を持たれている感じがしない。この間のゲロゲロキッチンを見る限りでは何と言うか千早ちゃんはお堅い性格っぽいから、多分俺が遅刻して来たことに対しても内心では激おこぷんぷん丸だったんだろう。いやまぁ、表情からして凄い怖い顔してたけど。フォローしようとボイスレッスンもあることを伝えておいたけど、効果無かったみたいだし。言葉だけ聞けばツンな女の子がデレた一場面だったんだけど、実際には凄いジト目だったし。

 

 以前も言ったように、千早ちゃんは薄い。何度も言うが体つきのことではない。『歌う』ことに対して固執し過ぎているというか、まるでそれが全てみたいというか。その思いは彼女の中でとても大きいのだろう。けれど薄すぎる。多分プライベートで何かしらがあったんだろうけど、そこに踏み込む訳にはいかないし。うぅむ、こういうフォローはしたことがないから勝手が分からない。誰かに相談した方がいいんだろうか。いやでも、余計なお世話だよなぁ……。

 

(ままならねえなぁ……)

 

 

 

 

 

 

 周藤良太郎。本家の歌手にも勝る歌唱力を持つ実力派アイドル。そんな彼と共にレッスンが受けられることが決まり、始めは嬉しかった。あの周藤良太郎の歌に少しでも近付くことが出来る。歌うことしか残されていない私が今一番に望むこと。

 

 けれど今日、彼に対する見方が変わった。トラブルに巻き込まれたからとはいえ、何の連絡も寄越さないまま三十分も平気で遅刻するような人だとは思わなかった。

 

 本当に、今日この合同レッスンに意味があるのだろうか……。

 

 

 

「よーし、それじゃあ後半のみんなも同じ曲で行ってみようか。ちゃんと声出てなかったらやり直しだから最初からちゃんと声出していこうねー」

 

 

 

 ……別に、今から走ることに対して文句があるわけでは、ない。

 

 

 

 

 

 

「はーい、みんなお疲れ。十分間休憩するから、しっかりと体休めてねー」

 

『………………』

 

(返事がない、ただの屍のようだ)

 

 じゃなくて。

 

 前半後半に分けて九人のランニングボイスレッスンが終了した。後半の五人も四回連続で歌い、その後今度は『GO MY WAY!!』を再び四回ずつ走りながら歌ってもらった。

 

 終わった頃には当然のように全員満身創痍を通り越して死屍累々といった感じだった。特にヤバそうなのが雪歩ちゃんとやよいちゃん。この二人だけはほんの少しだけ他のみんなよりスピードを落としてあげたけど、それでもやはりキツいものはキツかったらしい。なお俺の視覚的にヤバそうなのは美希ちゃんと貴音ちゃん。二人の呼吸に合わせて大乳が動く動く。あと貴音ちゃんの荒い呼吸エロすぎぃ!

 

 っとと、ちゃんと水分補給させなきゃいかんな。ここで用意しておいた飲み物をさっと出せたらカッコ良かったんだけど、来る途中のトラブルで買ってくる暇がなくなっちゃったし。自販機でスポーツドリンクでも買ってくるか。

 

 九人に体を冷やさないように言った後、トレーニング室を出て自販機コーナーに向かう。何か最近女の子に物を奢ってばかりのような気もするが、女の子だから問題ない。

 

「さて、スポーツドリンクを九本っと……」

 

「りょーたろーさん」

 

「ん?」

 

 財布からお札を取り出して自販機に入れたところで声を掛けられたので振りかえると、そこには笑顔の美希ちゃんがいた。汗を拭ってから来たようだが、それでも薄っすらと汗が滲んでいる。

 

「美希ちゃん、もう大丈夫なの?」

 

「はい! だからりょーたろーさんのお手伝いに来たの!」

 

「それはありがたい」

 

 よくよく考えたら九本もペットボトルを持っていくのは大変だったし。なので美希ちゃんの好意をありがたく受け取ることにする。

 

「それにしても、美希ちゃん頑張ってるね」

 

 ガコンガコンと排出されるペットボトルを取り出し口から出しては美希ちゃんに手渡していく。

 

「うん! 竜宮小町に入るために頑張ってるの!」

 

 ふーん、向上心があることはいい事……うん?

 

「竜宮小町に?」

 

「プロデューサーが、頑張ったら美希も竜宮小町に入れてくれるって約束してくれたの!」

 

「へー……」

 

 美希ちゃんを、竜宮小町に? 本当に、そんなことを約束したのだろうか?

 

 竜宮小町は今の三人で完成されているユニットだと思う。こう言ってはアレだが、あの三人の中に入れるには美希ちゃんは『色』が強すぎてバランスが悪くなる。それが分からないりっちゃんじゃないと思うんだが……。

 

「よし、人数分買えたな。美希ちゃん、ちょっとだけ先に戻ってくれる?」

 

「うん!」

 

 四つだけペットボトルを持たせて美希ちゃんを先に戻らせる。

 

「……さてと」

 

 別に美希ちゃんの言葉を疑う訳じゃないけど、少し気になったから確認を取っておこう。携帯電話を取り出して、りっちゃんに電話をかける。

 

 コールを聞きながら、先ほどのレッスンを思い出す。やよいちゃんは年齢的にまだこれからだろうが、他のみんなはもう少し体力をつけた方がいいと思う。ライブとて常に全力で動き続けるわけではないが、それでもあれだけ動いても平気な体力と根性は欲しいところである。やはりあのメンバーだと真ちゃん、響ちゃん、美希ちゃん辺りが有望だろう。こう、ダンサブルな曲が似合いそうである。特に響ちゃんと美希ちゃんの大乳! こう、リズムに合わせて……。

 

『もしもし、良太郎? 何の用よ? レッスンはちゃんと進んでるの?』

 

「大乳の縦揺れって素晴らしいよね!」

 

 あ、声に出ちった。

 

『ブツッ』

 

「あ」

 

 切られたでござる。いやまぁ当然の反応と言えば当然の反応だが。リダイヤルリダイヤル。

 

『おかけになった電話番号への通話は、お客様のご希望によりお繋ぎできません』

 

 着信拒否された!? 自業自得だとは理解してるけど対応が早いよりっちゃん!

 

 むむむ、しょうがない。りっちゃんには後で直接謝りに行こう。今回ばっかりは俺が全面的に悪いし。

 

 残りの五本のペットボトルを抱えてレッスン場へと戻る。

 

 ただ……何となく気になるんだよなぁ。りっちゃんのことだから何の考えもなしに竜宮小町に入れるって言ったわけじゃないだろうけど……大丈夫、だよな? フラグとかじゃないよな?

 

 

 

 

 

 

「ったく……」

 

「どうしたのよ律子、良太郎からの電話だったんでしょ?」

 

「口に出すのも嫌なぐらいくだらない悪戯電話だったわ」

 

「へ?」

 

 麗華にそう返しながら向かい側の椅子に座る。とりあえず着信拒否したけど、後で殴る。グーで殴る。今までの鬱憤も含めて殴る。アイドルであることを考慮して顔はやめるが、三十六連続で釘のように殴る。

 

 竜宮小町の番組収録に来たテレビ局にて、同じく収録に来ていた魔王エンジェルの三人と会った。今は空き時間なので、魔王エンジェルの控室にお邪魔して一緒に休憩中だ。私達の控室と比べるとややグレードが高い控室である。確か良太郎もいつもこのレベルの控室が宛がわれていたはず。……こんな些細なところでもトップアイドルとの違いを見せつけられた気分だ。

 

「ったく、あんな調子で本当にちゃんとしたレッスン出来てるのかしら……」

 

「ん? どういうこと?」

 

「今日、うちの事務所の他のアイドルが良太郎と合同レッスンをしてるのよ」

 

「えー! りょーくんと一緒にレッスンとかアタシもやりたかったー」

 

「また今度リョウに頼めばいいよ」

 

 ブーブーと文句を言うりんの頭をともみが撫でる。

 

「それにしても、よく駆け出しアイドルに良太郎と一緒のレッスンなんてさせる気になったわね。現役の中堅アイドルでも折れちゃうかもしれないのに」

 

「えっと……それは、良太郎のレッスンがキツイっていう意味で、よね?」

 

「……あれ、律子、あんた良太郎の『アレ』知らなかったっけ?」

 

 え?

 

「そういえば、りっちゃんは『アレ』未体験だっけ」

 

 あ、『アレ』?

 

「……律子は『アレ』の前にアイドルを辞めちゃったから」

 

「あぁ、そっか」

 

「ね、ねぇ、『アレ』って何? すっごい不安を掻き立てられるんだけど」

 

「んー……まぁ、簡単に言うと……」

 

 溜息を一つ挟んでから、麗華は言った。

 

 

 

「……私達『覇王世代』のアイドルが極端に少ない理由、かしらね」

 

 

 




・『The world is all one!!』
前回のラストに出た曲の正式名称。何やら曲名だったら大丈夫みたいだったので。その代わり歌詞は途切れ途切れにして対策させていただきました。

・呼吸に合わせて上下するおっぱいが大変眼福です。
81あるのに自分のことをちんちくりんと称す雪歩は他の小さな子を侮辱しています(憤慨)

・千早の心情
今回で一番頭を使った場面。こんなの千早じゃないという声も聞こえてきそうですが、そこら辺はご容赦ください。

・『GO MY WAY!!』
ノンストップで行ってみましょう(物理)

・あと貴音ちゃんの荒い呼吸エロすぎぃ!
はらみーはエロイ(確信)

・「大乳の縦揺れって素晴らしいよね!」
口から欲望が漏れ出てしまった図。

・着信拒否された!?
ある意味当然の結果である。しかしそのためりっちゃんに伝えることができず、良太郎の予想通りフラグになりました。

・三十六連続で釘のように殴る。
置鮎さん、ぬ~べ~役も一緒にJスターズビクトリーバーサスにご出演おめでとうございます。



 前話の投稿した後に劇場版を見に行きました。公開終了間際の滑り込みセーフでした。感想は活動報告で書きましたので省きますが、おかげで劇場版編の構成が練れそうです。アニメ本編終了後の話になりますが、そこまでは絶対に書きたいと思います。

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