アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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今回はちょっとだけ短め。


Episode12 審判ノ刻、来タレリ 4

 

 

 

(人によっては)悪夢のような瞬間から一夜明け、メッセージでの報告やSNSでの発言で、知り合いの結果がだんだんと判明してきた。

 

 どうやら765プロオールスター組やシンデレラプロジェクト組やプロジェクトクローネ組を含めた知り合いは全滅してしまったようだ。特に美希ちゃんと真美の荒れようが酷く、春香ちゃんから連絡を受けて俺が直々に宥めたぐらいである。

 

 逆に知り合いの中でチケットを手に入れたのは、346プロの川島さん、そしてなんと765プロシアター組の亜利沙ちゃんだ。こっちはこっちで相当アレだったんだろうなぁと、送られてきた『あたりました』というシンプルなメッセージから察することが出来た。

 

 それ以外にも外れた知り合いから「チケット融通してくれ~!」「お慈悲を~!」といった旨のメッセージが送られてくるが、残念ながら慈悲はない。一応二次募集……という名の()()()()の募集があるので、そちらで我慢してもらいたい。もしくはライブビューイング。

 

 だからそちらの応募が始まるまでに気になることと言えば……各事務所に配った関係者チケットの行方だろう。

 

 

 

 

 

 

「おはよう諸君。唐突だがプロジェクトクローネ会議を始める」

 

 その日、朝から事務所に集められた私たちクローネメンバーを会議室で待っていたのは美城専務だった。

 

「本当に突然ですね……」

 

「今日は一体なんなんですか?」

 

 昨日から全く使い物になっていない加蓮を引きずってきたので既に疲れている私と奈緒が尋ねると、専務は「いやなに」と肩を竦めた。

 

「周藤君から預かっている関係者チケットについての話だよ」

 

「ほら凛と奈緒も早く座って」

 

「「おい」」

 

 普段でも見せないような俊敏さで着席した加蓮に、思わず奈緒と声が揃ってしまった。

 

 仕方がないので他のクローネメンバーと共に席に座ると、それを見届けてから専務は口を開いた。

 

「さて、昨日は大変な一日だったようだな」

 

(……ん?)

 

 なんとなく専務の口調に違和感を覚えた。事務所内において筆頭りょーいん患者である彼女にしては、やけに落ち着いているような……もしや彼女も当選したのだろうか。

 

「一応確認しておくが、チケットが当選した者は素直に手を挙げたまえ……ありがとう」

 

 誰も手を挙げなかったということは、やっぱり誰も当選しなかったようだ。フレデリカさんや周子さんはそれほどでもないが、他のメンバーは大なり小なり悔しそうな表情していた。

 

「残念ながら誰も当選しなかったようなので、改めてこの関係者チケットの抽選をしようと思う。……あぁ、安心したまえ、()()()()()()()()()ので、君たちだけでの抽選だ」

 

 そうか、それならば十一分の二の確率で……って。

 

『えぇぇぇっ!?』

 

 驚愕の声が会議室に響く。恐らく、というか間違いなく、専務が既に関係者チケットを貰っているということに対しての驚愕だ。

 

「なんで!?」

 

「ズルーイ!」

 

「諸事情により、あらかじめ123プロから融通されていたのだ。何も不正はしていない」

 

 加蓮と唯からの抗議の声を専務は余裕の表情で受け流す。

 

 私も専務に対する不満は抱いていたが、先ほどから感じていた余裕の理由が分かり一人納得する。

 

(……でも1()2()3()()()()()、か……)

 

 しかし今度はそこが気になった。いや、ただの言葉の綾なのかもしれないが。

 

「というわけで、公平にくじを引いてもらう。言うまでもなく当たりは二枚で、引いた者が関係者チケットを手に入れる……至ってシンプルなくじだ」

 

 そう言って専務は傍らからよく見るくじ引きの箱を取り出した。……これを専務自ら用意したのかと思うと、なんだか微妙な気持ちになった。

 

 しかしこれで感謝祭ライブに参加できるかどうかが決まる重要なくじだ。ここは一つ神頼み……いや良太郎さん頼み……それもイマイチ不安だなぁ。

 

「あぁ、一つだけ注意点がある。……渋谷、アナスタシア」

 

「え?」

 

「?」

 

 突然名前を呼ばれた私とアーニャが思わず顔を見合わせる。

 

「君たちはプロジェクトクローネと同時にシンデレラプロジェクトにも参加しているわけだが……残念ながら関係者チケットの抽選はこちらのみだ。こちらが外れたからといってシンデレラプロジェクトでの抽選には参加できないということを覚えておきたまえ」

 

「ダー、分かりました」

 

「………………はいワカリマシタ」

 

「おい凛、なんだその返事」

 

 まさか本当にそのつもりだったんじゃないだろうな……という奈緒の視線を無視する。そんなわけないじゃない、失礼だな。

 

 

 

「それでは……引きたまえ」

 

 

 

 

 

 

「と、ゆーわけで凛ちゃんとアーニャちゃんはクローネの方で抽選するらしいから、こっちは残りのメンバーで抽選するよー」

 

「あ、杏ちゃんが仕切ってる……!?」

 

「し、仕事をしてる……!?」

 

 みくちゃんと李衣菜ちゃんが信じられないものを見るような目で杏を見てくる。いやまぁ確かに杏のガラじゃないってことぐらい自分でも理解してるけどさ。

 

「杏ちゃんはこの中で唯一関係者チケットを貰ってるからだにぃ」

 

 きらりのその注釈の通り(不本意ながら)仁奈ちゃんから関係者チケットを貰い、現状シンデレラプロジェクト内で唯一感謝祭ライブに参加が決定してしまっているので、こうしてまとめ役をさせられているというわけである。

 

 だから断じて杏は自分の立場を自慢したいわけじゃないからな!? さっきちょっと舌打ちが聞こえた気がしたけど、これは杏の被害妄想だっていうことにしておくからな!?

 

「えっと、杏ちゃんと凛ちゃんとアーニャちゃんがいないから……十一分の二?」

 

「うん。プロジェクトクローネと同じで、18.18%の確率だよ」

 

 偶然にも向こうと同じ人数で同じ確率になっていた。倍率ウン百倍と言われている一般応募のチケットと比べると破格の当選確率である。

 

 ちなみにこちらの関係者チケットの対象者にはプロデューサーも含まれていたのだが、彼は「皆さんでどうぞ……」と言って辞退した。なんだかんだ言って彼も相当な周藤良太郎ファンであるはずなのに……なんとも出来た大人である。

 

「というわけで早速くじ引きするわけだけど、みんな覚悟出来てるね?」

 

 プロデューサーが用意してくれたくじ引きの箱をみんなに向かって差し出す。

 

「え、ちょっ!? 早い早い!」

 

「心の準備出来てないよー!?」

 

「心の準備したところで別に引けるようになるわけじゃないんだから。ほらさっさと引いて」

 

 そして早くこの仕事を終わらせてほしい。今丁度無料十連ガチャの期間だから、今の内にリセマラを終わらせたいんだ。『スタンバイオッケー』は何回も出てるのに『アクアリウム』はなんで一向に出ないんだよー!?

 

 

 

「はいみんな早く引く引く」

 

 

 

 

 

 

「遅くなりました……って、うわぁ!?」

 

 良太郎さんから貰った関係者チケットの抽選をするということで仕事場から事務所に戻ってくると、そこには異様な光景が広がっていた。

 

「え、なに……? これ何の儀式……?」

 

 事務所の真ん中に謎の魔法陣が描かれ、その周りを『周藤良太郎』のグッズで取り囲んでいるその光景は、頭の中で『周藤良太郎を召喚するための儀式』という謎のワードを思う浮かべさせるには十分すぎた。ついでに黒いローブを着て虚ろな目で何やら呪文を唱えている美希と真美の姿もあったので、それが黒魔術の類いであることは一目瞭然だった。

 

「シアター組の亜利沙がチケットを当てたっていう話は、春香聞いてる?」

 

「え、うん」

 

 真からの問いかけに頷く。アイドル好きで基本的にいつもハイテンションな亜利沙ちゃんにしては珍しい、とても簡潔な『あたってしまいました』というSNSの文面がとても印象的だった。

 

「なんでも亜利沙、昨日シアターの事務所に良太郎さんの祭壇を作ってずーっとお祈りしてたんだって。それでその話を聞いた美希と真美がそれを真似して……」

 

「あぁなった、と……」

 

 あれでチケットが召喚されるのであればいいが、なんというか悪魔が召喚されそうな勢いである。「あー、俺、デーモンになっちまったよー」とか言いながら角が生えた良太郎さんが現れたらどうするつもりだろうか。そうなったら最後、この小説ごと終焉を迎える羽目になりそうだ。

 

「ちなみに生贄とか用意してたりするの?」

 

「別に本当に悪魔を召喚したいわけじゃないんだから……って言いたいところなんだけど、さっきあずささんと風花さんの水着グラビアの生写真を真ん中に置いてたよ」

 

 それは生贄というか触媒のような気もする。そして自分たちではなくその二人をチョイスしている辺り、なんというかガチだった。

 

「っと、春香も来たことだし、そろそろ始めようよ」

 

「あぁ、そうだな」

 

 真の言葉に、プロデューサーさんが頷いた。

 

 これから事務所に配られた関係者チケットの行方を決める抽選会が始まる。私たちの場合は人数も多いため、この抽選から辞退してくれた社長とプロデューサーさんがビンゴマシーン(忘年会などで度々使用していた)を使って当選者を決めるのだ。

 

 抽選の対象者はここにいる人で全員でなく、また翼ちゃんのように辞退をした子もいるため正確な人数は分からない。けれどオールスター組やシアター組も全て含めた抽選になるため、一般応募のようなウン百倍とまではいかないもののそれなりの確率になっていることだろう。

 

 ……とりあえず、関係者チケットまで外れてしまった場合に美希と真美がどんな行動を起こすか分からないので、二人にもしっかりと注意を向けておいて。

 

 

 

「よし、それじゃあ抽選始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

 さて、今回のお話はここまで。

 

 事の顛末も何もなく、残るは関係者チケットを誰が手に入れたのかという結末のみ。

 

 

 

 あとは、本番までのお楽しみ……ということで。

 

 

 




・リアル当選者
自分が把握している中では、川島さんと亜利沙が本当に当選していました。他にも何人か当たっている人がいるという報告もあったのですが、多分ストーリーに登場してくるのはこの辺りだけです。

・見切れ席
微妙にステージが見えない席なのだが、場合によっては神席になる可能性を秘めた運試しの席でもある。

・美城専務
具体的なタイミングは不明ですが、この時期には既に常務から専務になっているはず。

・ミッシー関係者チケットゲット
実は彼女も貰っていたのだが、とある理由が……?

・十一分の二
・18.18%
合ってるよね……?(確率の計算をした記憶は遥か彼方)

・リセマラ
杏の独白はちょうどここを書いていたときの作者の本音。
しかしその後、作者は無事に引けた模様(どうでもいい小話に続く)

・「あー、俺、デーモンになっちまったよー」
もはやある意味原作よりも有名な実写版。

・本番までのお楽しみ
別にまだ決まってないわけじゃないよ?(目逸らし)



 というわけで、これにてチケット抽選編終わりです。関係者チケットで誰がライブに参加できるのかは、ライブ当日編までのお楽しみです。

 ……まぁツイッター見てた人には()()()()分かると思いますが。

 次回からは(おそらく)リハーサル編になります。



『どうでもいい小話』

 杏の発言から察している人もいたでしょうが、ようやくシャニマスのリセマラを終わらせました。

 というわけで、新たな担当『大崎甘奈』ちゃんと共にシャニマススタートだ!
(なおかなりのんびりプレイになる模様)

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