アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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とりとめもないお話のお話。


Episode15 リハーサルのお時間です 3

 

 

 

「えっ、美優さんポップの経験なかったんですか?」

 

「はい、実は……」

 

「あたしもないー」

 

 オープニングの確認も終わり、一旦舞台上から捌けるというタイミングで美優さんと志希からそんなカミングアウトがあった。

 

 それぞれの配置についていたメンバーが「なんだなんだ」と集まってくる。

 

「二人ともポップ未経験なんだってさ」

 

「へーそうだったんだー」

 

「大きな箱でのステージじゃないとないからねー」

 

 恵美ちゃんと翔太が「不思議じゃないねー」と頷く。

 

「それじゃあ、ちょっと練習しておいた方がいいんじゃないですかぁ?」

 

「そうだね。これって意外と難しいし」

 

「そ、そうなんですか?」

 

 まゆちゃんと北斗さんの言う通り。要するに急速上昇する一人用エレベーターなのだが、直前まで身を隠さなければいけない都合上、上昇中にしゃがんでる状態から立ち上がらなければならない。そのときにバランスを崩しやすいのだ。

 

「試しに一回やってみましょうか。……JANGOさーん?」

 

『大丈夫ですよー』

 

 JANGOさんの許可も得たので、急遽美優さんと志希のポップ練習の時間となった。

 

「それじゃあまずはお手本を……ヘイスタッフっ!」

 

 真ん中のポップの位置に立ってパチンと指を鳴らすと、そのまま下で待機してくれていたスタッフがガラガラとポップを下ろしてくれた。

 

「何仕込んでんだよ」

 

「いや俺もノリでやっただけだからこんなに素早く対応してくれて驚いてる」

 

 今回のスタッフも優秀な人が揃っているようで何よりだ。これなら俺がいくら無茶ぶりしても大丈夫だな!

 

「そのための優秀さじゃねぇよ」

 

 ともあれ、まずは基本的な解説から始めていこう。

 

「正式名称は『ポップアップリフター』。電動式や油圧式もあるけど、安全面への考慮から大体手動で動かしてるよ」

 

 手動の方が勢いとかスピードとか自由に変えやすいからね。

 

「ポップに乗ったらちゃんとしゃがむこと」

 

 危ないというのもあるが、身を屈めておかないと二階席からの角度の問題で頭が見えてしまうのだ。

 

「ん」

 

 チョイチョイとスタッフに指で指示を出すと「いちにさんしーにーにっさんしー」とカウントが始まる。

 

「ゴーッ!」

 

 二人がかりでポップが急激に持ち上げられ、クイッと上からの力がかかる。そして頂点に到達すると同時に――。

 

 

 

「ヘーイッ!」

 

 

 

 ――大ジャンプからのインディーグラブ! メソッドグラブ! 右膝と右の拳をステージに打ち付けるように着地!

 

「……とまぁこんな感じに」

 

「参考にさせる気ねぇだろお前。スーパーヒーロー着地は膝に悪いぞ」

 

「エンドゲーム、26日公開!」

 

「俺も楽しみにしてる……じゃなくて」

 

「展開としては、まぁその後にファーフロムホームの公開が決まってる時点でお察しだよな」

 

「マズい方向に話を広げるんじゃねぇ」

 

 調子に乗って全く参考にならなかった俺のポップテクは置いておいて、代わりに今度は恵美ちゃんからお手本を見せてもらうことになった。

 

「それじゃあ行くよー!」

 

 上から見下ろす恵美ちゃんの胸の谷間を堪能した後、ポップの位置から二歩三歩と下がる。

 

 再び聞こえてきたスタッフのカウントと共に、恵美ちゃんが勢いよくポップからせり上がって来た。勢いのままに恵美ちゃんも立ち上がりながら少しだけジャンプし、そのまま難なく着地してタタッとステップを踏む。

 

「……イエイッ!」

 

「可愛い!」

 

「褒めるとこそこじゃねぇだろ」

 

 おまけでギャルピースを決めてくれた恵美ちゃんに拍手を送る。それを抜きにしたとしても、ポップでの登場は完璧だった。

 

「まぁ美優さんの場合はキャラ的にゆっくりポップしても問題ないでしょうし、ゆっくりやってもらいましょう」

 

「わ、分かりました」

 

 お手本を見終えたので、次は美優さんの実践である。

 

「というわけでスタッフさん方、俺や恵美ちゃんのときよりもゆっくりでお願いしまーす」

 

 上からスタッフに指示を出しつつ美優さんの胸を上から見下ろす。うーむ流石恵美ちゃんの88に続く85……普段はゆったりした服が多いから分かりづらいけど、今はレッスン用のジャージだからその大きさをしっかりと把握することが出来た。

 

「お前イチイチ寄ってる理由丸わかりだからな」

 

「寧ろ分からない奴いるの?」

 

「コイツ開き直りやがった……」

 

 スタッフを含め、この場に『周藤良太郎』の性癖を把握していない人が今更いるとは思えなかった。なんならオススメのグラビアアイドルを教えてくれるスタッフがいるぐらいだ。スタッフとの結束も強いぞ!

 

「ねーねー、まゆちゃん的にあーいうリョータローはありなの?」

 

「ない良太郎さんなんてありませぇん♡」

 

 そんな志希とまゆちゃんの会話を聞き流しつつ、改めて美優さんのポップ初体験である。

 

「それじゃあスタッフ方、お願いします」

 

 俺が合図を出すと、見えないステージの下から再びスタッフのカウントが聞こえてきた。

 

 俺や恵美ちゃんよりだいぶゆっくりと美優さんがせり上がって来る。そしてそのスピードと同じぐらいゆっくりと美優さんはしゃがんだ状態から立ち上がり……。

 

「きゃっ」

 

 頂点に達してガタッと揺れたことでバランスを崩してしまった美優さん。

 

「おっと」

 

 そんな美優さんを助けたのは、いつの間にか近付いていた北斗さんだった。前のめりに倒れそうになった美優さんの横から右手で右手を取り、左手は彼女の肩を支えていた。

 

「気を付けてくださいね、美優さん」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 ……なんだろう、すっごい主人公ムーブを見せつけられた。あぁいうのを自然と出来るからイケメンなんだろうなー。

 

「今『それに比べてお前は』とか思っただろ!?」

 

「いきなりなんだ!?」

 

 なんか別次元からの電波を感じてイラッとした。

 

 ヘーン! いいもんねー! 俺は恵美ちゃんやまゆちゃんたちと同じ次元で生きてるもんねー!

 

 

 

 ちなみに、志希の奴は一発で成功させた上に見事なジャンプまで披露してみせた。天才が体力と体幹鍛えればそりゃこうなるよなぁ……とジャンプで揺れた胸を見ながらそう思った。

 

 

 

 

 

 

 ポップの練習が終わったところでリハーサルを再開。セットリストの順番に確認をしていき、今はステージ上でまゆちゃんが『アムリタ』を歌っている。この曲はまゆちゃんがピアノを演奏ながらの弾き語りをするので、彼女の歌声と共にピアノの音色も聞こえてきた。

 

「良太郎さん狂いの上に、最近はさらにハイスペックな志希さんが来たことで隠れがちですけど、まゆさんもかなりのハイスペックなんですよね」

 

 一番最初のそれがマイナス点として扱われているのが若干不服であるが、まぁ確かに志保ちゃんの言うことには一理あった。

 

「基本的になんでもそつなくこなす子だからねぇ。本当は初めて出来た後輩だからもうちょっと色々と面倒見てあげたかったんだけど、すぐにその必要もなくなったから」

 

 バックダンサー組時代にレッスンを見ては上げたけど、あくまでレッスンだけ。アイドルとしての基礎をしっかりと持っていたので、まさしくアイドルになるべくしてなった子だなぁと思ったのを覚えている。

 

「……まゆ、アンタも知らないところで色々とフラグ折ってたんだねぇ……」

 

「ん? 恵美ちゃん何か言った?」

 

「いえ、なんにもー」

 

 いや、実際には聞こえていたんだけど、内容がイマイチ……まゆちゃんが一体なんのフラグを折っていたというのだろうか……恵美ちゃんとのフラグ? えっ、なにそれお兄さんすっごい興味が湧いたんだけど!?

 

「でも弾き語りだったら、りょーたろー君も出来るでしょ? シャイニーフェスタでやってたじゃん」

 

「あぁ。俺はギターだけどな」

 

 123プロ所属アイドルになった直後に招かれた南の島で『Re:birthday』の生演奏&弾き語りを披露したことを思い出した。

 

「そうだ! リョータローさんもギターの弾き語りしたら!?」

 

 恵美ちゃんが「これは名案!」と言わんばかりにパチンと手を叩いた。

 

 確かに盛り上がる要素にはなると思うが。

 

「あれ以来、めっきりギターなんて弾いてないからなぁ」

 

 もしかして忘れてるかもしれない。

 

「えー?」

 

「でもまぁ、案外触ってるうちに思い出すかも」

 

 恵美ちゃんが残念そうな声を出したので、女の子の願いを無下にするわけにはいかないとチャレンジしてみることにする。

 

「って、ギターなんて何処にあるんだよ」

 

「ヘイスタッフっ!」

 

 再びパチンと指を鳴らすと、何処からともなく現れたスタッフが一台のエレキギターを持ってきた。

 

「……って、あるのかよ!? 何処から持ってきたんだよ!?」

 

 冬馬のツッコミはもっともで、俺も冗談のつもりだったから普通に驚いている。

 

 スタッフに話を聞くと、セットリスト内にバックバンドによる生演奏をする曲があり、そのバンドのものを借りてきてくれたらしいのだが……。

 

「対応が早すぎるだろ……」

 

「まさか『周藤良太郎』のライブは裏方まで優秀(へんたい)な人材が揃っているとは……」

 

 志保ちゃんが何やら失礼なルビを振っていたが、残念ながらこれには俺もぐうの音も出なかった。

 

 気を取り直して、早速ギターに触ってみることにする。スタッフがギターと一緒に持ってきた小型アンプにプラグを挿して軽く音を確認する。

 

「あれ、良太郎君、絶対音感とか持ってたっけ?」

 

「持ってないですよ、北斗さん。そんな大層なものじゃなくて、あくまで音が俺の感覚と違わないかどうか確認してるだけです」

 

「それを絶対音感って言うんじゃ……?」

 

 どうやらあらかじめチューニングを終えているギターを持ってきてくれていたようで、チューニングをし直す必要はなかった。

 

「それじゃあ適当に一曲……」

 

「「わーい!」」

 

 恵美ちゃんと志希がパチパチと拍手をくれた。

 

 えっと、そうだなぁ……と悩みながらジャカジャカと掻き鳴らす。

 

「……ん? おい良太郎、コレって」

 

 

 

「街を包む、ミッドナイト――」

 

「コブラじゃねーかっ!」

 

 

 

 まぁそんなやり取りがあったものの、とりあえずまだギターは弾けることが判明。JANGOさんにお願いして急遽俺も弾き語りパートを設けてもらうことになったとさ。

 

 

 

 

 

 

おまけ『いや待て、この孤独なシルエットは……?』

 

 

 

「ところで良太郎、オープニングで映す予定のあのシルエット……左手を真上に持ち上げて右手を添えてるポーズは一体なんだ?」

 

「当ててみな、ハワイへご招待するぜ」

 

「やっぱりコブラじゃねーかっ!」

 

 

 




・ポップアップ
アニメでもニュージェネが飛び出したりしてたアレ。
デレのライブの円盤の舞台裏特典が参考資料です。

・インディーグラブ
・メソッドグラブ
ともにスノボーのテクの名称で、簡単に言うと空中で足に触る技。

・スーパーヒーロー着地
本当は『三点着地』というらしいけど、実写版デップーさんがこう呼んだことでこっちが定着してしまった感がある。

・エンドゲーム
・ファーフロムホーム
ともにアベンジャーズとスパイダーマンの最新作。今から超楽しみ。

・88に続く85
恵美(88)美優(85)志希(83)志保(83)まゆ(78)
……こうして並べると本当に志保ってすげぇ(小並感)

・『アムリタ』
まゆの中の人のファーストシングルで劇場版ツバサクロニクルの主題歌。
雪歩がカバーしてるから、実質アイマス曲だよね!(暴論)

・「コブラじゃねーかっ!」
これも実質アイマスだから(暴論)

・おまけ『いや待て、この孤独なシルエットは……?』
コブラネタが分からない場合は『アイドルマスター(コブラ)』で検索しよう!



 リハーサル中の舞台裏のとりとめもないお話でしたとさ。

 次回はちょっとだけ真面目な話をしてから、リハーサルの締めになります。



『どうでもよくない小話』

 4月15日は恵美の誕生日でした! おめでとうめぐみぃ!

 そして一年書き続けてきた『ころめぐといっしょ』最終話の公開日でもありますので、もしよろしければそちらもどうぞ!

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