アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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※良太郎はまだ散歩中


Episode22 恵美とまゆの舞台裏リポート! 2

 

 

 

 留美さんとの死闘を終えた恵美ちゃんと共に舞台裏から移動する。カメラを構え、すれ違うスタッフさんに「お疲れ様でーす」と挨拶をしながら廊下を進む。

 

「まずは……ステージと観客席からかなー」

 

「本邦初公開……と言いたいところですけど、生憎この映像を皆さんがお目にする頃にはライブ終了してますものねぇ」

 

 それでも現地にもLVにも来ることが出来なかった人は大勢いるだろうし、これが初見という人もいるだろう。そうだとしても、特典映像から見る人は流石にいないだろうが。

 

「……あっ! いいこと思い付いた!」

 

「いいことですかぁ?」

 

 突然「閃いた!」といった様子で恵美ちゃんがパチンと指を鳴らした。

 

「どうせステージと観客席見てもらうんだからさ、ポップアップでメインステージに上がるアタシたちの視点で見てもらおうよ!」

 

「おぉ、それは本当に妙案ですねぇ!」

 

「でっしょー!?」

 

 留美さんに視線で確認を取るとウインクと共に快い許可を得ること出来た。というわけでただステージに向かうのではなく、ステージの下側からステージへ上がる私たちアイドルの視点で撮影することになった。

 

 

 

「ここからステージ下になってまーす。薄暗いでーす」

 

 カメラの向こうに向かって恵美ちゃんが語り掛ける。

 

 基本的にここは一切部外者の目に映らない場所のため、ステージを下から支える文字通りの『縁の下の力持ち』である骨組みがむき出しのままになっている。明かりも必要最低限に絞られているために薄暗い上に、天井も低い。歩くときには細心の注意が必要だ。

 

「アイドルになって初めてこーいうステージ下に連れてきてもらった時のこと覚えてる?」

 

「はい。デビュー前に、良太郎さんのライブへ連れていってもらったんですよねぇ」

 

「そーそー! そのときさ、アタシたちを案内してくれたリョータローさんがよそ見してて骨組みで頭ぶつけちゃって『アイターッ!?』って! すっごい真面目な話してる途中だったから、思わず笑っちゃったよー!」

 

「えぇ、自分の身を挺してまで私たちの緊張を解そうとしてくれた良太郎さんの優しさが心に染みましたぁ……」

 

「あっ、まゆ的にはそう見えてたんだ……どーりで何故か一人だけ感極まったような表情をしてたと思ったよ……」

 

 まゆの中の美しい思い出に浸っていると、何故か恵美ちゃんは「まさか今になってあのときの謎が解けるとは思わなった……」と疲れた表情をしていた。自分で持っているカメラには映らないとはいえ、後ろから撮ってるカメラもあるんだから、気を抜いちゃダメよぉ?

 

「あれ、なんだか賑やかだと思ったら」

 

 辿り着いたメインステージ中央のポップアップには先客として御手洗さんがいた。

 

「あっ! 第一村人発見!」

 

「うん、所さん違いだね」

 

「怒られない程度にしましょうねぇ」

 

 笑顔はいいけど笑うのはコラえましょうねぇ?

 

「それでカメラ持ってどーしたの? 後ろもゾロゾロと連れて来てるみたいだけど」

 

「これはねー」

 

 首を傾げる御手洗さんに説明をする恵美ちゃん。アイドルとしては大先輩であるジュピターの御手洗さんだが年齢は私たちよりも年下ということで、恵美ちゃんは割と気さくに接している。

 

 今も尚カメラは回り続けているが、ファンにとっては恵美ちゃんと御手洗さんの会話風景というのもきっと珍しいものだろう。

 

「翔太君は?」

 

「ソロ曲のときの僕もこのポップから飛び上がるから、それの最終チェック」

 

 御手洗さんは狭い通路の端によって道を譲ると「お先にどーぞ」とポップを私たちに譲ってくれた。

 

「それじゃあ、アタシたちが先に上がって、後から上がってくる翔太君を撮っておくね!」

 

「おっと、それじゃあ下手なものは見せられないかなー」

 

 口ではそう言って笑っているものの、御手洗さんは自信で満ち溢れた目をしていた。良太郎さんが認める()()()()()を持つが故の自信だろう。私の中で良太郎さんが一番であることは例え世界が終焉を迎えたとしても揺るがないが、そんな良太郎さんに立ち向かおうとする彼らの姿勢は本当に尊敬に値すると思っている。

 

 ……尤も天ヶ瀬さんは少々調子に乗りすぎているから、痛い目に遭ってもいいとも思っている。そろそろ春香さんか卯月ちゃんに刺されて……しまっては二人の手が汚れてしまうので、自分で自分のお腹に刃物でも突き刺せばいいのに。

 

「ん? まゆ、どーかした?」

 

「いいえぇ、別に興味ない素振りを見せつつ女の子をその気にさせようとしているイキリヘタレのことなんて考えてませんよぉ?」

 

「「……お、おう」」

 

 何故か恵美ちゃんと御手洗さんが引いていた。

 

 

 

(……まゆ、今の言葉が微妙にリョータローさんにもブーメランになってるってこと気付いてるのかな?)

 

(というかこれ、ラブコメ的に考えるとまゆちゃんがとーま君とくっつくフラグなんじゃ……?)

 

 

 

 

 

 

「っ!? な、なんだ……今、凄まじい悪寒が……」

 

「お前はお前でそーいうネガティブな気配を察知すること多いよな。もっと人生ポジティブに生きようぜ!」

 

「そういうオメーはもう少しぐらいネガティブに生きてもいいんじゃねーか」

 

「昔々、偉い聖帝は言いました」

 

「引いて媚びて顧みろ」

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、お願いしまーす」

 

 若干暗黒面に堕ちかけていたまゆがこちらに戻ってきたことで撮影を再開。いや、カメラ自体はずっと回ってたんだけど、先ほどからの留美さんの表情を見る限り今のところは全面的にカットになるだろう。

 

 カメラを手にしたアタシがポップの上にしゃがみ込むと、前と左右の三方向からスタッフさんがポップを持ち上げる取っ手に手をかけた。

 

「それじゃー皆さん、ご覧ください。これがアタシたちアイドルがステージに出るときに見る光景です」

 

「いちにっさんしー、にーにっさんしー……ゴーッ!」

 

 ポップアップが押し上げられ、急速に視界が変わっていく。

 

 薄暗い舞台裏の世界から――。

 

 

 

 ――明るく輝く、ステージの上に。

 

 

 

「イエーイッ」

 

 思わず叫んでしまい、周りにいたスタッフさんたちの視線が集まるのを感じた。

 

「はぁー……やっぱりこの瞬間が一番気持ちいーなぁ……」

 

 まだ誰一人としてファンは入っていないがガランとしたドーム内。ステージの下と比べれば明るいとはいえ、まだまだ絞られている照明。少々煌びやかと称するには物足りないステージではあるものの……この瞬間が一番アイドルとしての実感を得ることが出来た。

 

「分かりますよぉ、恵美ちゃん」

 

 続いてポップから上がってきたまゆが、アタシの言葉に同意を示してくれた。

 

「ステージの脇から出てくるときも、勿論いいんですけど……こうしてポップで上がってくると、こう、自分が昇華するような感覚になるんですよねぇ」

 

「そう! そんな感じ! 自分がレベルアップしたような快感が、すーっごい気持ちいいんだよねぇ~」

 

 

 

「……和久井さん、恵美ちゃんの言葉のチョイス、あれいいの?」

 

「……多分ファンも良太郎君も喜ぶだろうから」

 

 

 

 何か下で翔太君と留美さんの声が聞こえたような気がしたけど、流石に開いているとはいえポップの下の会話は詳しく聞き取れなかった。何やら翔太君が半目でこちらを指さしていたが、何かマズいことでも言ってしまったのだろうか。

 

 その後、ポップの上昇に合わせてその場で宙返りをするという翔太君のアクロバティックな登場をしっかりとカメラに収めてから、改めて会場全体を撮っていく。

 

「ほんっとここ大きいよね~。初めてここのステージに立たせてもらったときも思わず圧倒されちゃったもん」

 

「五万人以上が入るらしいですからねぇ。周藤良太郎の立つステージとなると、それぐらいは妥当なんでしょうね」

 

「こんなにおっきなところに立たせてもらっちゃって気持ちよくさせてもらって……ホントーに、ファンのみんなには感謝しかないよー!」

 

 

 

「……留美さん」

 

「喜ぶだろうから」

 

「投げやりにならないでよ!? こーいうボケを拾うのは僕の役割じゃないんだからね!?」

 

 

 

 また後ろで翔太君と留美さんが何かを話していた。ストップがかからないところから何か撮影に不備があったわけじゃないとは思うんだけど……。

 

 少々後ろが気になるものの、このまままゆと二人で撮影を続けていこう。

 

 次はステージを降り、所謂『アリーナ席』と呼ばれる観客席部分を歩く。

 

 綺麗に並べてあるパイプ椅子の間を抜け、センターステージに一番近い下手側の椅子にまゆと並んで腰を下ろした。

 

「おぉー、こうして座ってみるとステージ超近いね」

 

 一緒についてきてくれた翔太君がセンターステージからピースをしてくれたので、カメラに収める。

 

 すると何かに気付いた様子の翔太君は、しゃがみ込んでこちらのカメラに向かって喋りかけてきた。

 

「今回のライブでセンターステージの近くに座ったであろうそこの君たちー! 君たちすっごい近くで僕たちを観れてラッキーだったって思ってるだろうけど、実はそこ、開演前に恵美ちゃんとまゆちゃんが座った椅子でもあるから、そういう意味でも超絶ラッキーだったね」

 

「「あっ」」

 

 翔太君に言われて気が付いた。確かにファンにとっては『アイドルが座った椅子』というだけでも十分に価値があるものになるのだろう。

 

「これは思いがけずにサプライズプレゼントをしちゃった形になるのかな?」

 

「ふふっ、気付いてもらえるのは大分先になっちゃうプレゼントねぇ」

 

 クスクスと笑うまゆの笑顔を映してから、立ち上がってアタシたちが座っていたパイプ椅子を映す。

 

「はい、このパイプ椅子だからねー! 左がアタシで、右がまゆ」

 

「ライブ中の記憶が飛んじゃう人も多いですけど、頑張って思い出してくださいねぇ?」

 

 確かにライブ中に盛り上がると『楽しかった』という印象ばかりが強く残りすぎて、細かい記憶が飛んでしまうのはアタシも何度か経験済みだ。

 

 

 

 ――でもまぁ、()()があるから今回のライブに限ってそれはあり得ないだろうけど。

 

 

 

 

 

 

「……ん? なんか今『パイプ椅子になりたい』っていう邪念が届いたんだが」

 

「どっから何の電波を拾ってるんだオメーは」

 

 

 




・第一村人
・笑うのはコラえましょう
正直所さんって呼び方を使うとそっちが頭を過る。

・恵美と翔太
あまりにも絡み少なすぎてお互いの呼び方忘れてた。

・自分で自分のお腹に刃物でも突き刺せばいいのに。
ダークまゆ(冬馬限定)

・ラブコメ的に考えるとまゆちゃんがとーま君とくっつくフラグ
古典ラブコメ学的観点から考えると、良太郎はりっちゃんか麗華、冬馬は千早かまゆ辺りとくっつくのが王道だと思う。

・「偉い聖帝は言いました」
未だに定期的に再翻訳北斗見て笑ってる。

・「すーっごい気持ちいいんだよねぇ~」
・「こんなにおっきなところに立たせてもらっちゃって気持ちよくさせてもらって」
(意味深)



 特に大きな山場もない二話目でした。

 次回辺りで、志保か美優さん辺りを出して色々と災難に見舞わせたい(迫真)

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