アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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久しぶりに四話で収まらなかった(ここまでテンプレ)


Episode40 Like a storm!? 4

 

 

 

 正直に言うと、俺は慢心していた。

 

 『周藤良太郎』の背中を追いかけると決めてから、レッスンやトレーニングを欠かしたことはない。それは同じ事務所に所属するようになってからも変わらず、高町家で世話になるようになってからは最早鍛錬と言っても過言ではないほどにレベルアップした。

 

 そんな『周藤良太郎』の原点と言っても過言ではないであろう鍛錬をこなしてきた俺ならば、翔太や北斗には遅れをとらず、寧ろ圧倒的に有利だろう。

 

 ……そう、考えていた。

 

 

 

 ――ちなみにですが、音量やスピードの基準値はそれぞれ個別に設定されております。

 

 

 

(先に言えええぇぇぇ!?)

 

 全力で口と足を動かしながら、心の中で天の声に向かって絶叫する。

 

 同時にランニングマシーンをスタートさせ同時に歌い始めたにもかからず、あからさまにスピードが違ったのだ。

 

 翔太と北斗はそれなりに早いジョグ程度のスピードだが、俺だけほぼ全力を出さなければ追い付けそうにない。

 

 ――天ヶ瀬さんは唯一特別なトレーニングを積んでいるため、基準のスピードと音量はお二人よりも難易度が高めに設定されています。

 

(裏目ってるじゃねぇかあああぁぁぁ!?)

 

 いや、多分それぞれがギリギリこなせる程度の難易度設定になっているはずなので、条件としてはきっと翔太や北斗とも同じはずなのだ。

 

 ならば、俺は絶対に負けない。

 

 『周藤良太郎』に立ち向かうと心に決めた以上、それ以外の奴に負けるつもりはない。

 

 例えそれが、これまで共にアイドルの道を歩んできた翔太と北斗の二人だったとしても。

 

 

 

 俺はもう、負けるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 ――それでは結果発表に参りましょう。

 

 ――今回のミニゲームにおいてもっとも基準を満たすことが出来なかったのは。

 

 

 

 ――天ヶ瀬冬馬さんです。

 

 知ってたよおおおぉぉぉ!! こういうオチだってことぐらいよおおおぉぉぉ!!

 

 

 

 

 

 

「あれ絶対私に投げキッスした」

 

「あーはいはい、そーだな」

 

 呆けるような表情で先ほどからブツブツと同じことを繰り返す加蓮に、そろそろ面倒くさくなった奈緒が適当な相槌を繰り返す。

 

 先ほどの僅かな時間で、良太郎さんが見切れ席の観客に行ったファンサービス。見切れ席は右と左に分かれているのだが、偶然にも良太郎さんは私たちがいる向かって左側の見切れ席の方へとやって来た。

 

 そして見切れ席へと顔を覗かせると、軽く手を振ってからなんと投げキッスををしてきたのだ。

 

 これには見切れ席にいた観客たち全員から歓声が上がった。カメラには良太郎さんが何をしていたのか映っていなかったため、まさしくこの観客席にいた人だけに対して行われた超限定的なファンサービスになったのだ。

 

 そしてそんな過激なファンサービスの結果、りょーいん患者の加蓮がノックアウトされてしまった次第である。

 

 ちなみに加蓮が言っているのはファン特有の勘違いとかではなく、アレは実際に加蓮に向かって……というか私たちをしっかりと認識した上で投げキッスをしていたと思う。これだけの人数しかおらず、かなり距離が近いこの状況で良太郎さんが知り合いを見落とすはずがない。

 

 さて、そんな良太郎さんのファンサービスのアレコレは一先ず置いておこう。

 

「冬馬さん……大丈夫でしょうか……」

 

 かなり過酷なミニゲームをさせられステージの隅で息も絶え絶えな天ヶ瀬さんを見ながら、心配そうに卯月が呟く。ミニゲーム中も必死に天ヶ瀬さんに声援を送り、彼の声量やスピードが基準値を下回るたびに「あぁっ!?」とリアクションをしていただけあって、彼が最下位だと宣告されたときはまるで自分のことのようにショックを受けていた。

 

「まぁ、流石に罰ゲームとはいえライブ中だから、そんなにひどいことはしないはずだって」

 

「というか、既にこのミニゲームが罰ゲームみたいなものだし」

 

「でも、これですら罰ゲームじゃないってことは、本当の罰ゲームはもっとひどんじゃない?」

 

「「………………」」

 

 卯月に対して「心配ない」と声をかけた私と未央だったが、先ほどから何度も話して仲良くなった後ろの席の少女、甘奈の言葉に思わず押し黙ってしまった。折角考えないようにしてたのに……。

 

「ま、まぁ良太郎さん一人が考えたわけじゃなさそうだし。幸太郎さんがちゃんと監修してるから」

 

「そ、そうですよね!」

 

 むしろその言葉は自分自身に言い聞かせているところもあったが、卯月もようやく納得してくれた。

 

「……ん? 幸太郎さんって良太郎さんのお兄さん? 随分フレンドリーな呼び方するね」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

 未央が視線で(しぶりーんっ!?)と非難してくるので、私はサッと視線を逸らす。

 

 仲良くなったことで完全に気が抜けていた。再び訪れてしまったピンチに背筋に冷たいものが流れるのを感じる。

 

「そ、その……」

 

「?」

 

「……私、社長の周藤幸太郎さんのファンでもあるから」

 

「社長のファン!?」

 

「そうそう。良太郎さんだけじゃなくて、そのお兄さんでありプロデューサーでもある幸太郎さんも応援するっていうのが、りょーいん患者の中では()なんだよ」

 

(しぶりん、それは言い訳として苦しいんじゃ……?)

 

(いや、あながち嘘ってわけじゃないし……)

 

(本当かよ加蓮!?)

 

 実は私の言ったことは完全に嘘というわけではなく、『周藤良太郎』のデビューからずっと彼を支え続けている名プロデューサーである『周藤幸太郎』も、一定数のファンがいたりするのだ。

 

 勿論、社長である彼が表立って活動することは稀であるが、123プロダクションの社長としてメディアに登場することは少なくなく、『周藤良太郎』に似ているのに『周藤良太郎』とはまた別の雰囲気を持つ彼は、下手な芸能人よりも人気があるのだ。

 

 尤も幸太郎さん自身は芸能活動に興味を持っていないからデビューはしないと言っているので、これ以上のファンが増えることはないだろう。

 

「はぁ……そんなガチガチのTシャツ着てるから相当だとは思ってたけど、凛ってすごいんだね」

 

「それほどでもないよ」

 

(今のしぶりんの言葉、謙遜だと思う?)

 

(謙遜だと思う。内心では滅茶苦茶「それほどでもあるけど」って思ってる)

 

 さて、今回も無事に誤魔化せたし、意識をステージの上に戻そう。

 

 ルームランナーが撤去され、そろそろ次のミニゲームが始まりそうだった。

 

 

 

 

 

 

 順当に冬馬が負けたようだな……奴は我ら123男性アイドル四天王最弱。……と言いたいところだが、ぶっちゃけ内心では焦っていたりする。

 

 何せジュピターの三人の中で一番身体能力が高いのは議論の余地なく冬馬だ。それにも関わらず最下位となった。これが意味することはなんだろうかと考えると、結論は一つ。

 

 

 

 ……すなわち、このコーナーがギャグ展開で進行していくということだっ!

 

 

 

 ふざけた電波な内容ではあるが、正直これはマズい。何故ならギャグ展開的で進む以上、どう考えても()()()()()()()()()()だということだ。

 

 やべぇよ……やべぇよ……恐ろしくなったよ……と言ってる場合でもない。いや、よっぽど理不尽な内容じゃない限りは大丈夫だろうが、最後のミニゲームは俺も知らず兄貴が監修しているだろうということを考えると楽観視も出来ない。

 

 果たして何をやらされるのか……。

 

 ――それでは、続いてのミニゲームを始めていきましょう。

 

 ――所さん、佐久間さん、北沢さん、一ノ瀬さん、三船さん、前へお願いします。

 

『まぁそうなるよねぇ』

 

『良太郎さんにいいところをお見せします!』

 

『あまり気は乗りませんが』

 

『何やるんだろーねー』

 

『不安です……』

 

 俺を除いた残りのメンバー、すなわち123プロの女性陣が留美さんに呼ばれて一歩前に出る。気合い十分なまゆちゃんや罰ゲームに対してなんとも思っていなさそうな志希はともかく、他の三人は不安そうな表情を浮かべていた。

 

 しかしまぁ、一応企画段階から参加している身としては、次のミニゲームほど楽なものはないと思っている。兄貴の手が加わったことでどう変わったのかは保証出来ないが、少なくとも先程の『ランニングボイスレッスン』よりは楽なはずだ。

 

 ――先程はアイドルとしての歌とダンスの両立を目的としたレッスンをミニゲームとさせていただきました。

 

 ――次はアイドルとしての『演技力』を競っていただきたいと思います。

 

『っ!』

 

 その言葉を聞いた途端、志保ちゃんがグッと小さくガッツポーズをしたのを見逃さなかった。女性陣の中において『演技』という分野では彼女が有利なので当然だろう。無論、それは他の子たちも分かっているので、恵美ちゃんや志希が『ズルいズルいー!』『贔屓だ贔屓だー!』と不平不満を漏らすのは無理もないことだ。

 

 ――その名も『I love you』選手権です。

 

 しかし志保ちゃんの余裕そうな表情は、留美さんから告げられたミニゲームのタイトルによってそのまま固まることになる。

 

 観客たちが「おおっ!?」と期待を高める中、留美さんから詳しい説明が入る。

 

 ――今から皆さんには、皆さんの名前が書かれたくじを引いていただきます。

 

 ――そして書かれていた名前の方の演技をしながら『I love you』……すなわち『愛の告白』をしていただきます。

 

 ――観客の皆さんの反応とスタッフによる厳正な審査のもと、それぞれの演技に採点をさせていただきます。

 

 ――残念ながら最も点数が低かった方が、次の最終ゲームへ進出となります。

 

 半ば想像していた内容に、観客たち……特に男性ファンたちのボルテージが一気に高まった。

 

『……絶対に、良太郎さんが考えたゲームでしょうコレ……!?』

 

 射抜くような視線でこちらを睨んでくる志保ちゃん。

 

『いや、需要あると思って……』

 

 観客席に向かって『あるよねー?』と語り掛けると、それは大歓声という形で肯定された。

 

『うーん、告白はいいんだけど、演技は苦手だなぁ……』

 

『告白はいいんですか……!?』

 

 恵美ちゃんの言葉に驚愕する美優さん。まゆちゃんと志希も比較的ケロッとした表情をしており、恐らくネックなのは『演技』という一点だろう。

 

 そうこうしている間に、スタッフの手によってステージの上にくじ引きの箱が用意された。

 

 

 

 ――それでは皆さん、早速くじを引いていただきましょう。

 

 

 




・慢心
慢心といえば慢心王。
慢心しない慢心王が見れるアニメ『Fate Grand Order-絶対魔獣戦線バビロニア-』は絶賛放映中!(ダイマ)

・音量やスピードの基準値はそれぞれ個別に設定
贔屓なんてしない心優しい設定(すっとぼけ)

・周藤幸太郎さんのファン
『周藤良太郎』に似ていて笑顔になれる、というだけで一定層の需要はある。

・このコーナーがギャグ展開で進行
・最終的に負けるのは俺
たぶんみんな最初からそう思ってる()

・『I love you』選手権
もしかしなくてもデレ5th福岡公演での『すいとーよ』選手権が元ネタ。



 というわけで、まず最初の敗者は冬馬です。……知ってた? うん、だろうね。

 そして次の敗者は志保ちゃんだろうって? ……うん、そうだね!(ニッコリ)

 久々に五話目に突入です。



『どうでもいい小話』

 なんかハーメルンの運営が頑張ってくれたらしく、なんと小説内で楽曲の歌詞が使用可能になったとのこと。

 折角アイドルアニメという楽曲と関係性の深い二次小説を書いているので、是非とも有効活用していきたい。

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