アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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初めて歌詞使用やってみた!

……あれ、なんか最後シリアス……?


Episode44 Like a thunder! 2

 

 

 

「オイテメェ良太郎! さっきのはなんだゴラァッ!?」

 

 ジュピターとのステージを終え、舞台裏に戻ってくるなり冬馬に胸ぐらを掴まれた。

 

「何って、勿論ファンサービスだよファンサービス。需要がある以上、それに応えるのがプロってもんだろ?」

 

 君も俺のファンになったのかな? と問いたいところだったが、きっとコイツの口から「忘れたのか! お前の一番のファンの顔を!」というセリフは出てこない。

 

 どーどーと手のひらを向けながら冬馬を諫めようとするが、残念ながら勿論それで治まるようであれば最初から怒っていないだろう。

 

「需要だぁ!?」

 

「………………」

 

 無言でちょいちょいと指さすと、そちらに視線を向ける冬馬。

 

『………………』

 

 そこには、とても良い笑顔で親指を立てるスタッフのお姉様方の姿があった。

 

「……チクショウ……なんだって……こんなことに……」

 

 まるで大切な何かを護れなかったキャラのようなことを言いながらその場に膝を着く冬馬。

 

 いやまぁ、俺だって比べるまでもなく男よりも女の子の方が好きだから、言いたいことは分かる。しかし間違いなく一定層の需要がある以上、例え重箱の隙間を突くようなことになろうとも、俺はその『ファン』も喜ばせたいのだ。

 

「ははっ、冬馬君の負けだよ――」

 

 そう言いつつポンッと北斗の肩を叩く翔太。

 

「――と言いつつ本当のところは?」

 

「本番前に恵美ちゃんのカメラを借りる際の手回しとしてちょっとした取引を……」

 

「アレがここに繋がるのかい!?」

 

「雑な伏線だね!?」

 

「っていうか、んな個人的なことに俺は付き合わされたってのかぁ!?」

 

 冬馬は憤慨していますが、会場は盛り上がったのでオッケーです。

 

 というか、そろそろこんなところで駄弁ってないで待機所に戻らないかと提案しようとしたが――。

 

 

 

「りょーくん! さっきのアレ、おいくらぐらいでアタシにもやってもらえるのかな!?」

 

 

 

 ――それは突然現れた興奮気味のりんによって遮られてしまった。

 

 それはもう勢い良くズイッと詰め寄ってきたので思わず一歩後ろに下がってしまったのだが、下がらなければりんの大乳がムギュッと押し付けられていたことに気が付いてしまい盛大に後悔すると共に自分を叱咤する。馬鹿野郎良太郎! お前何年この小説の主人公やってると思ってんだよ!

 

「りん、落ち着きなって」

 

「落ち着いてられないよ! 付き合いの長さならアタシの方が長いんだよ!? 男になんて負けてられないよ!」

 

「お金を払ってまでやってもらっても勝てないんじゃ……」

 

 距離感そのままで、一緒にやって来たともみと言い合いを初めてしまったりん。これコッソリと立ち位置を戻せば、まだワンチャンあるか……?

 

「あっ、良太郎君。りんちゃんの左の顎の下辺り、何かついてない?」

 

「え?」

 

 突然北斗さんに言われて思わずりんの顎の下を見ようとするが、身長差的に俺からは見えそうにない。そこで「ちょっとゴメン」と一言断ってからりんの左顎に人差し指で触れてクイッと持ち上げる。

 

「……何もないですけど」

 

「うん、俺の見間違いだったみたい」

 

 いつものように爽やかな笑みで「ゴメンゴメン」と謝る北斗さんだが、考えてみれば角度的に北斗さんも見えない位置だったのでは……?

 

「あぁ、いきなり悪かったな、りん」

 

「イイエ、アリガトウゴザイマシタ」

 

「?」

 

 何故か顔が赤い上に片言だった。

 

(サポートぢからが強い)

 

(さて、なんのことやら)

 

 何やら視線で会話してるっぽいともみと北斗さんなら何か知っていそうだが……まぁいいか、可愛い顔を間近で見れて役得だったし。

 

「ところで何でここに?」

 

「アンタ、まさか自分でゲストに呼んでおいて忘れてたなんて言うつもりないでしょうね……!?」

 

「そんなまさか」

 

 純粋に「ここ待機場所じゃないんだけど」という意味だったのだが、何故か麗華のこめかみに青筋が浮かんでいた。そんな折角俺が頭を下げてサプライズゲストとして出演依頼を出した『魔王エンジェル』の存在を忘れる奴がいるわけないでしょーに。

 

 ねぇ!?

 

「りんが『りょーくんに一言物申す!』って息巻いて飛び出したから、しょうがなく来てやっただけよ」

 

「? そういえばりん、俺に何か用だったのか?」

 

「イエ、モウジュウブンデス」

 

 よく分からないが、図らずもりんの望みを叶えることが出来たようでなによりだ。

 

「良太郎さん、そろそろ……」

 

 それじゃあついでにりんたちも一緒に待機場所に戻るかと思ったら、スタッフから次のスタンバイを促されてしまった。

 

 今ステージの上でソロのピアノ弾き語りを披露してくれているまゆちゃんに続き、俺も次はソロでギター弾き語り。このままの衣装ではジャラジャラしていてギターが弾きづらいので、今からサッと着替えなければならない。

 

「そんじゃ俺は行くぞ。冬馬たちは体冷やさねーよーに。麗華たちはそろそろ準備頼むぞ」

 

「言われるまでもねーっつーの……」

 

「また後でねー」

 

「ギターソロ、楽しみにしてるよ」

 

「りょーくん頑張ってねー!」

 

「期待してるよー」

 

「ふんっ」

 

 ジュピターと魔王エンジェルという世間的に見たら豪華すぎるアイドルたちに見送られ、俺は上着を脱ぎながら次のスタンバイへと向かうのだった。

 

 

 

「こふっ」

 

(りんが今のリョウの上着脱ぐ動作にダメージを受けてる)

 

(うーん、進展しないのは彼女にも問題がありそうだなぁ)

 

 

 

 

 

 

『聴かせて懐かしい歌を』

 

『遠くで口ずさんで』

 

 

 

 メインステージの中央には、先ほど暗転している僅かな間に用意されたグランドピアノが鎮座している。

 

 そしてその前に座ったまゆさんが、彼女のソロ三曲目『アムリタ』を見事な弾き語りで披露していた。ソロ一曲目や二曲目とはまた違った少しだけ寂しげな曲に、周りからは時々すすり泣くような声も聞こえてくる。

 

「……どう?」

 

「まだダメっぽいですなぁ……」

 

 そんな中、良太郎さんと冬馬さんのアレを目撃した卯月がフリーズしていた。先ほどから未央がペチペチと軽く頬を叩いているが、目を見開いて口を半開きにしたままの状態から動く気配を見せない。

 

「やっぱり冬馬さんのファンであるしまむーには、さっきのは衝撃的すぎる光景だったのかなぁ……」

 

「冬馬さん云々じゃなくて、純粋に卯月には刺激的すぎたんじゃ……」

 

 そんな小学生じゃあるまいし……と言いたいところだが、冬馬さんのちょっとだけ服が肌蹴たブロマイドを「ひゃー!?」とか言いながら指の隙間から見ていた卯月ならば、あるいはあり得るかもしれない話だった。

 

 

 

『銀色の雨が降ってきたら、私だと思って』

 

『涙を拭いて』

 

 

 

 サビに差し掛かり盛り上がっている最中、こちらはこんなことになってしまっていて少々申し訳ない気持ちになってくるが、元はと言えば良太郎さんの責任だから勘弁してもらいたい。

 

「放っておくしかないでしょ? 私たちまでライブを聞かない方が失礼だし」

 

「……まぁ」

 

 見捨てるようなことにはなってしまうが、加蓮の言い分ももっともだ。

 

 とりあえず何かあると危ないので、そっと卯月の肩に力をかけると彼女はそのままスッと自分の席に座ってくれた。あとは自然に意識が戻ってくることを期待しよう。

 

 

 

『降り続けて』

 

『その肩に蜜雨(アムリタ)

 

 

 

 

 

 

 うーん、やっぱりまゆちゃんの弾き語りは凄いなぁ。

 

 次は俺がバックステージから登場する予定なので舞台下で待機しているのだが、しっかりとここまで音が届いている。流石にドームという広い会場故に音響機器を使っているとはいえ、それでもちゃんと『ピアノの音』を響かせているのは流石と言っていいだろう。

 

 知り合いのピアニストが『プロのピアニストはマイクも何も使わずに音をホール内に響かせることが出来る』みたいなことを言っていたので、もしかしたらまゆちゃんにはそっちの方面での才能があるのかもしれない。

 

 そう考えると、やっぱりアイドルというのは面白い。まゆちゃんはピアノで、美優さんは歌で『聴かせる』タイプ。志保ちゃんと志希は演技で、恵美ちゃんはモデルで『魅せる』タイプ。アイドルそれぞれで特色が違う。

 

 ……今度『各アイドルが保有する属性について』みたいな論文でも書いてみようかな。

 

「その場合、良太郎君は全ての属性持ちということになりますね」

 

「俺ですか?」

 

 そんな俺の軽い雑談を聞いてくれていた留美さん(偶然こちらのスタッフと打ち合わせがあった)にそんなことを言われた。

 

「あらゆることに特化していないにも関わらず、あらゆる面で他の追随を許さない。私は『周藤良太郎』とはそういうアイドルだと思っています」

 

 なんかすっごい褒められている。いや、評価されること自体にはありがたいことに慣れているが、こうして素直に褒められるのは珍しかった。

 

「しいて言うなら、素行が弱点でしょうか」

 

 落とすのヤメテ。

 

「……一つだけ、貴方に聞いてみたいことがありました」

 

「ん?」

 

 留美さんが俺に聞きたいこととな。

 

 いつもならば「体重は事務所を通して」みたいなヒトネタを挟むところだが、生憎留美さん自身が俺のプロフィール全てを管理している事務所側の人間である。

 

「これは、きっとこんなときに聞くようなことではないのかもしれませんが」

 

「なんですか?」

 

 ジャカジャカとギターをかき鳴らすフリをしながら留美さんの言葉を待つ。

 

 

 

「……良太郎君。貴方は――」

 

 

 

 ――本当に()()()()()()()

 

 

 

「……はい?」

 

 なんかスゲェこと聞かれた。

 

「私は、貴方のお兄さんを知っています。弟の良太郎君ほどではありませんが、それなりに長い時間あの人のことを……()()と呼ばれる存在を傍で見てきたつもりです」

 

 兄貴の後輩であり、現在は兄貴の秘書でもある留美さん。確かにそろそろ俺よりも兄貴と接している時間は長くなっているかもしれない。

 

良太郎君(あなた)幸太郎さん(あのひと)は、何かが違うんです。きっとこんなあやふやなことで何を言っているのかと言われてしまえばそれまでです」

 

 留美さんは「だからこそ」と首を振った。

 

「直接聞いてみたかったんです。例え失礼な質問になってしまったとしても――」

 

 

 

 ――()()()()()()()()()? と。

 

 

 




・君も俺のファンになったのかな?
・「忘れたのか! お前の一番のファンの顔を!」
『ファンサービス』という単語にかけられた呪い。

・とても良い笑顔で親指を立てるスタッフのお姉様方
本当はゆりゆりにこの辺りの役割を担ってもらおうと思ってたけど、彼女確か生ものはそんなに好きじゃないらしいので却下になりました。

・『魔王エンジェル』の存在を忘れる奴がいるわけないでしょーに。
ねぇ!?(威圧)

・『アムリタ』歌詞使用
しかしわざわざ使う必要はそんなに(げふんげふん)

・フリーズ卯月
(まだ比較的)ピュアな卯月には情報量が多すぎた。

・『プロのピアニストはマイクも何も使わずに(ry
確か『スパイラル』のカノン編で言ってたような。

・『各アイドルが保有する属性について』
Visual Vocal Dance

・――貴方は誰なんですか? と。
意外! 良太郎の正体に切り込んだのは、まさかの留美さん!



 なんかシリアスっぽいけど、そんなに重いことにはなりませんのでご安心を。



『どうでもいい小話』

 デレ7th名古屋公演二日間お疲れ様でした!

 色々と言いたいことが多い神公演でしたが、ここでは一つだけ。



 ……冗談抜きに、目の前にななみんがいたよ……声が届くような距離にななみんがいたよ……めっちゃ可愛くて号泣しちゃったよ……。

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