アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

344 / 555
これまでの『ありがとう』を込めて。


Episode62 Grand finale!! 2

 

 

 

 はぁ……というわけで、俺の罰ゲームのコラムは今回のライブの特典として掲載されるぞ。みんな、今回ばかりは無理して買わなくていいからな?

 

 ……買う? やっぱり? だよね、うん、そうだよね、こんな特典映像満載だからね。はいスタッフさん、例の写真ドウゾー。

 

 

 

 おおおぉぉぉっっっ!!!???

 

 

 

 どうよコレ、開演前の舞台裏で全員でやった投げキッス顔。はいチラ見せ終了ー。もっと見たい人は是非円盤買ってね。俺のコラムは捨ててもいいからね。……痛い痛い、志保ちゃんわざわざパンチしに来ないで、一部の人にはご褒美だから。ありがとうございます。

 

 さて……楽しい時間もそろそろ終わりだ。

 

 

 

 えええぇぇぇ!!!???

 

 

 

 俺たちも名残惜しいけど、終わるときはちゃんと終わらせないといけない。

 

 最後に一人ずつ挨拶をさせてもらうけど……それじゃあみんなから向かって左から順番に、美優さんからお願いします。

 

 

 

 

 

 

 ……はい、三船美優です……皆さん、本日はご来場いただき、本当にありがとうございました。

 

 ……えっと、この中で一番新参者の私が一番最初に挨拶をすることになってしまい、とても緊張しています……ついでに言うと、何を話すべきなのか、まだ悩んでいます……。

 

 ……そ、その、ですね。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが……元々私はアイドルとしてこの事務所に入ったわけじゃありませんでした。大学の先輩である事務所の社長と副社長のお誘いを受けて……事務員として123プロダクションに入社しました。

 

 最初は良太郎君やジュピターの三人、ピーチフィズの二人のお仕事を、事務員としてお手伝いしていましたが……社長や副社長の手により、いつの間にかアイドルをすることになってしまいました。

 

 正直に話しますと……最初は、少しだけ嫌でした。元々人前に出るのは苦手で、ましてやアイドルとして歌って踊るなんて、自分には出来るわけがない……そう考えていました。

 

 ですが、良太郎君、冬馬君、北斗君、翔太君、恵美ちゃん、まゆちゃん、志保ちゃん、志希ちゃん……アイドルとして輝いている皆さんの活躍を、近くで見させていただいている内に……私の中で、今までに感じたことのない感情が浮かんでいたんです。

 

 きっとこれが……憧れ、というものだったんだと思います。

 

 今まで着たこともないような可愛らしい衣装に袖を通して、慣れない笑顔でカメラの前に立って、不慣れな歌やダンスに苦労して……私はこうして……皆さんの前に『アイドル』として立っています。

 

 ……えっと、ごめんなさい、言いたいことが全然まとめられませんでした……。

 

 その、ですね……こんな私でも、アイドルになれる……それだけを、皆さんに言いたいんです。どうか、頭の片隅にでも留めておいていただけると、嬉しいです……。

 

 こ、こんな私ですが……これからも、この123プロダクションのアイドルとして恥じないように精進していきますので……どうか皆さん、よろしくお願いします。

 

 改めまして……ほ、本日は! あ、ありがとうございました! み、三船美優でした!

 

 

 

 

 

 

 にゃはは、ガチガチに緊張した美優さんの挨拶可愛かったねー? あれだけ堂々と歌ってたのに、挨拶ってなるとまだ緊張しちゃうんだからさー、この可愛さには反則だよねー?

 

 というわけで、やっほー、一ノ瀬志希だよー。みんな、今日はありがとー。

 

 美優さんがぶっちゃけてたからシキちゃんもぶっちゃけちゃうけど、あたしも最初はアイドルとか興味なかったんだよねー? アイドルなんて、視覚に一過性の刺激を与えて充足させるだけの娯楽ぐらいにしか思ってなかったから。

 

 あーゴメンゴメン、今はそーでもないからそんな声出さないで。……恵美ちゃんとまゆちゃんも、そんな目でこっち見ないでって、大丈夫だから。

 

 あたしは元々、海の向こうの大学にいたんだけどさ。そこでたまたまリョータローに出会った。リョータローに出会って、アイドルっていうものを始めて間近で見た。

 

 間近で直接『アイドル』を見て、聞いて、感じて……何一つとして()()()()()()()()

 

 あたしの心が震えた理由も、原因も、原理も、何も分かんなかったんだ。

 

 ホント、不思議だよねアイドルって。それを理解するためにわざわざ海を越えてリョータローを追いかけてきて、わざわざこうしてアイドルになったっていうのに……まだまだ分からないことだらけ。

 

 でも、一つだけ。……とにかく楽しい! ってことだけは分かった!

 

 だからたまーに「志希ちゃんいなくならないでー!」って言ってくれる人もいるけど、とーぶんいなくならないから安心して。

 

 ……でも、シキちゃんがいなくなっちゃわないよーに、みんな、あたしから目を離しちゃダメだぞー? にゃはは、なんてねー?

 

 それじゃ、今日は楽しかったよー! 一ノ瀬志希でしたー!

 

 

 

 

 

 

 ……はい、北沢志保です。本日は皆さん、ご来場いただきありがとうございます。

 

 美優さんと志希さんがご自身の過去のことに触れていらっしゃったので、私も少しだけ昔の話をしたいと思います。

 

 ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、私は以前、アイドルとしてデビューするより前に765プロダクションのアリーナライブにバックダンサーとして出演させていただいたことがありました。

 

 同じくアイドルとしてデビューする前に、123プロダクションからバックダンサーとして出向されていた恵美さんやまゆさんとお会いして……その縁で、私は良太郎さんやジュピターのお三方ともお会いすることが出来たのですが……。

 

 ……お二人のように、私もぶっちゃけましょう。私はアイドルとしての『周藤良太郎』を、あまり好ましく思っていません。苦手と言っても差し支えありません。

 

 その理由はとても幼稚で理不尽な八つ当たりのようなものです。きっとこんな場所で言うことじゃありません。けれど、私は良太郎さんが苦手だからこそ、このステージに立っています。

 

 123プロダクションは、社長である周藤幸太郎さんの「周藤良太郎を超えて業界の一番二番三番全てを独占する」という壮大な野望を掲げた芸能事務所です。そんな事務所だからこそ……私は『周藤良太郎』を超えるために門戸を叩いたんです。

 

 大それた願望です。まだまだ世間知らずの小娘が抱くには、とても重すぎます。

 

 けれど……長く険しい道の先が必ずあると教えてくれたのは、他ならぬ良太郎さんです。

 

 私は『周藤良太郎』が苦手です。そしてそれと同時に尊敬しています。そんな彼の言葉だからこそ、私は信じているんです。

 

 ……私はこれからも『周藤良太郎』のような高みを目指します。

 

 そしてそんな私の挑戦が皆様の笑顔に繋がるのであれば、私は幸せです。

 

 とても身勝手な願いではありますが……どうか、見守っていてください。

 

 ……本日は本当に、ありがとうございました。北沢志保でした。

 

 

 

 

 

 

 ……えっと、恵美ちゃんが前の三人の挨拶で大変なことになってるので、先に私が挨拶させていただきまぁす。

 

 というわけで、佐久間まゆですよぉ。皆さん、今日はありがとうございまぁす。

 

 どうやら自分の過去に触れていく流れになっているようなので、私もそれに乗っかることにしますねぇ。

 

 そうですねぇ……私の場合、いつも色んなところでお話させていただいているので新鮮味はないと思いますが……私は、周藤良太郎さんに憧れてアイドルになりました。良太郎さんの歌に聞き惚れ、ダンスに見惚れ、その全てに憧れ……少しでも良太郎さんに近付くため、アイドルを目指しました。

 

 ……その頃の私は、それ以外に何もありませんでした。アイドルになりたい、アイドルになりたい、アイドルにならなくちゃいけない。ずっとずっと、それだけを考えて生きていました。

 

 良太郎さんが社長と共に立ち上げた123プロダクションに所属させていただいてからも、その考えは変わりませんでした。ただひたすら良太郎さんのお側でアイドルになることだけを考えていました。

 

 ……そんな私を、恵美ちゃんが変えてくれたんです。そうですよぉ、今そこでグスグス泣いてる恵美ちゃんです。

 

 泣き虫な恵美ちゃん。でもそんな彼女だからこそ、歪んでしまっていた私の心を直してくれたんです。きっと恵美ちゃんに出会わなければ、私はこうして皆さんに応援されるアイドルにはなれなかったと思います。

 

 ……私にとって『周藤良太郎』は特別な存在です。でもそれと同じぐらい、恵美ちゃんも特別な存在なんです。

 

 いい機会ですからねぇ、この場を借りて私も恵美ちゃんに……お礼、を……。

 

 ……あ、アレ? お、おかしいですねぇ……ここで恵美ちゃんに、お礼を、言って、もっと泣かせちゃって、それで、えっと……。

 

 ……こ、こんなはずじゃ、なかったんですけどねぇ……あ、あはは……ぐす……ひっく。

 

 め、恵美ちゃん、だけ、じゃなくて……こんな、自分勝手な私を、アイドルとして、応援してくれた、ファンのみんなに……お礼を、言いたいです……!

 

 ……本当に、ありがとうございます!

 

 

 

 まゆはぁ! ……()()()()()()()()! 本当に嬉しかったです!

 

 

 

 これからもぉ! ()()()()()()()()()をぉ! よろしくお願いしまぁす!

 

 今日は本当に! ありがとうございましたあああぁぁぁ!!

 

 

 

 




・例の写真
Episode28参照。

・三船美優
実はガチでアイドルとして登場させる予定がなかった人。今ではよき大人の女性ポジにして貴重な控えめツッコミポジ。
登場させた当初はまだボイス未実装だったんだよなぁ……(しみじみ)

・一ノ瀬志希
事務所入りさせるのは第四章で既に決まっていたものの、プロジェクトクローネとの絡みを書きたかったために第五章まで登場がお預けになってしまった子。
よきトラブルメーカー。もっと番外編で活躍して()

・北沢志保
気になって書き始めたらどんどん好きになっていって、いつの間にか担当になっていた子パート2(パート1は楓さん)
良太郎へのツッコミ、本当にお疲れ様です。これからも頑張って(無慈悲)

・佐久間まゆ
『周藤良太郎』の熱烈なファン役としての素質が採用理由。勿論今はそれだけじゃない。まゆすき。
最後のまゆの挨拶、今までの作中内で一人称が「私」じゃなくて「まゆ」になっているのは、良太郎の前もしくは良太郎に関する話題だけだった……という情報を元に、ちょっとだけ読み返してもらいたい。あとは好きに解釈するといいよ(丸投げ)



Q 最終回?

A だから違うって言ってるでしょ!

 まぁある意味『最終回』ではあるのですが……まぁその辺りの詳細は外伝の最終話にて。



『どうでもいい小話』

前話にて良太郎が触れていた『SNSで結婚報告をしたカップル』のお話を、ツイッターにて公開中です(宣伝)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。