アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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主人公不在にも関わらずアイ転らしくなってまいりました。


Lesson239 私、アイドルになりました! 3

 

 

 

 つまり。

 

「このみさんは薬を飲まされたことも、不思議な龍の玉で間違った願いを叶えられたこともないと」

 

「当り前じゃない! ついでに魔法のコンパクトも使ってないわよ!」

 

「魔法のコンパクト?」

 

「ナンデモナイワ」

 

 プリプリと腰に手を当てて怒りを露にするこのみさん。改めて実年齢(24さい)を知っても私より年下にしか見えず、免許証を見せられてもイマイチ信じられなかったが、一升瓶を抱えて寝ている写真を見せられたことでようやく納得することが出来た。

 

 その際、このみさんは「なんでこんなところまでリョウタロウ君と同じなのよ……!」と苦虫を噛んだような表情を浮かべていた。本当にリョウタロウ君とは何者なのだろうか。

 

「コホン……改めて、765プロ所属シアター組二期生の馬場このみよ! 貴女も私みたいなセクシーアイドルを目指したいなら何でも聞きなさい! このみお姉さんが大人の魅力全開でレッスンしてあげるわ!」

 

「……セクシー」

 

「やめなさい、そんな澄んだ目で美希ちゃんと見比べないで」

 

 何も言っていないのにこのみさんは悲しそうに目を伏せてしまった。

 

 ともあれ、これ以上ここで話し続けていると美希ちゃんが起きてしまいそうなので少々場所移動。

 

 

 

「あっ、でもその前に一枚だけ美希ちゃんの写真を……!」

 

「ダメに決まってるでしょ!」

 

「十三年前からずっとファンなんです!」

 

「貴女と美希ちゃんは何歳なのよ!?」

 

 ダメだった。

 

 

 

「それじゃあお姉さんはこれから仕事だから、大人しく待ってるのよ?」

 

「はーい……あ、そうだこのみさん、今日は静香ちゃんいないんですか?」」

 

 再びソファーに座りジュースを飲みながらこのみさんに問いかける。

 

「実は私、同じ学校なんです!」

 

「静香ちゃんって……最上静香ちゃん? それじゃあ、案内は静香ちゃんに頼んだ方がいいわね。メッセージ送っておいてあげるわ」

 

 そう言ってスマホを取り出すこのみさん。

 

「えっ!? 静香ちゃんもいるんですか!? こんな狭い事務所の何処に隠れて!?」

 

「狭い言わない!」

 

 スパンッと後頭部を引っ叩かれた。

 

「静香ちゃんはここにいないわよ。私は用事があったからたまたま立ち寄っただけで、基本的にシアター組は劇場よ」

 

 ……そういえば、さっきこのみさんも言っていたけど。

 

「しあたーぐみってなんですか?」

 

「……貴女、本当にちゃんと調べて765プロの劇場アイドルのオーディションを受けたのよね?」

 

「はい! 全然調べてません!」

 

 正直に答えると、このみさんは頭が痛そうにこめかみを押さえた。

 

「……えぇい! この際だから765プロのことを教えてあげるわよ! そこに座りなさい!」

 

「座ってます!」

 

 何処からか眼鏡を取り出したこのみさんは、それをかけると壁にかけられたホワイトボードを指差した。

 

「まず、ここは765プロダクション。事務所は小さいけど、そこで寝てる星井美希ちゃんの他に、天海春香ちゃんや如月千早ちゃんといったトップアイドルが所属している芸能事務所よ」

 

 このみさんが指し示した先、ホワイトボードに貼られた写真には美希ちゃんや春香ちゃんや千早ちゃん、全員で十二人のアイドルが映っていた。おぉ、パッと名前は思い浮かばないけどみんな見たことある子たちだ……!

 

「それじゃあもしかして、このみさんもトップアイドルなんですか!?」

 

「……トップアイドル自体を自称するほどではないけど、勿論アイドルよ。ただし美希ちゃんたち通称『AS(オールスター)組』とは違って、主に劇場で活動する『シアター組』。私や静香ちゃんが所属していて、これから貴女が所属するのもこの『シアター組』よ」

 

「なるほど……つまり主な活動場所が異なる二つの所属に分かれていて、こっちはその『AS組』の事務所だから美希ちゃんがお昼寝してたんですね!」

 

「お、おっと、何故いきなり理解度がマックスに……」

 

 何故か口元が引くついているこのみさんが眼鏡を外す。

 

「ともあれ『シアター組』は765プロの新たなチャレンジ! 専用のライブ劇場で毎月の公演を行う新たなタイプのアイドルの集まり! それが私たちなのよ!」

 

「新しいチャレンジ……!」

 

 な、なんかすっごいカッコいい!

 

 

 

「……この試みが成功するか、失敗するか、それは君たちにかかっている」

 

 

 

 突然聞こえてきた男性の声に振り返る。

 

「やぁ、ようこそ春日未来君。私は765プロ社長の高木だ」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 咄嗟に立ち上がり、頭を下げる。

 

「うんうん、元気がいい。さて、それでは早速聞かせてもらうかな」

 

 朗らかに笑う男性が、私に向かって手を差し伸ばした。

 

 

 

「アイドルになる決心は、ついているかね?」

 

 

 

「……はいっ!」

 

 

 

 

 

 

「それにしても、本当に765プロに入るとは思ってなかったわ。私にチケットを強請ったときもそうだけど、相変わらず凄い行動力ね」

 

「でへへ~そうかな~」

 

 劇場の駐輪場に自転車を停めながら照れ笑いをする春日さん。個人的には褒めたつもりはなかったのだが……本人が喜んでいるので別にいいか。

 

 さて、このみさんから連絡を受けて事務所へと春日さんを迎えに行った私は、彼女を連れて劇場までやって来た。

 

「……これだけは言わせてほしいけど、これは部活じゃない」

 

 今流行りのスクールアイドルなんかとは違う。自分たちが満足するためのアイドルじゃない。誰かのために、劇場へ来てくれる人のために歌って踊るアイドルなのだ。

 

()()じゃないんだから……真剣にね」

 

「うん! 勿論!」

 

 元気よく返事をする春日さんだか……何処まで本気で分かっているのやら。

 

「……それじゃあ、劇場を案内するわ」

 

「よろしくお願いしまーす!」

 

 劇場の裏口、私たちアイドルがいつも利用している入口から春日さんを伴って中へ――。

 

 

 

 「はいほー!」

 

 

 

 ――入ろうとしたら、春日さん共々中から出てきた白馬に突き飛ばされた。

 

 うん、我ながら『白馬に突き飛ばされた』という状況がよく分からないが、事実なのだから頭が痛い。ついでに尻もちをついたからお尻も痛い。

 

 そんな私と春日さんに、『白馬の模型』の大道具に腰をかけた女性(おひめさま)がニッコリと微笑みかけた。

 

「新しい王国民さんはじめまして、まつり姫のお城にようこそ! なのですー!」

 

「えっ、お祭り姫!?」

 

「それだと『お祭り男』的なニュアンスになりそうだから、頭に『お』を付けるのはメッなのですよー」

 

 若干衝撃を受けてはいるものの、それでも尚自分のペースを崩さずに()()徳川(とくがわ)まつりさんと普通に会話をしている春日さんに内心で驚愕する。

 

 そして()()に気付いた私は、スカートのまま尻もちをついた状態で固まっている春日さんの前に体を割り込ませた。

 

 次の瞬間、数回のフラッシュとシャッター音。

 

「あぁ!? 折角新人アイドルちゃんのセクシーシャッターチャンスが……けれど静香ちゃんのその苦々し気な表情もまたグッドですねー! もっと蔑むような視線でもいいですよー!」

 

「亜利沙さん! 写真を撮るならちゃんと断ってからと言ってるじゃないですか!」

 

「ご安心を! 劇場のみんなの写真はありさの胸に留めるだけではなく、思い出を共有するために月に一度アルバム形式でみんなで楽しめるようにしておきますから!」

 

「そんな心配はしていません!」

 

 というかそれは『個人で楽しむだけ』よりもタチが悪いじゃないですか!?

 

「と、冗談はさておき……未来ちゃん、ですよね?」

 

 アイドルに夢中になっているときの緩み切った表情から、スッと年上感を感じさせる微笑みに変わった亜利沙さんが春日さんに手を伸ばす。

 

「リョーさんから話は聞いていますよ」

 

「リョーさんですか!? 私のこと、なんて言ってました!? もしかして、将来のビッグアイドルとか……」

 

「はい」

 

「「……え?」」

 

 でへへ~と相変わらず調子のいいことを宣う春日さん。この世界はそんなに甘くないと苦言を呈そうとするが、それを亜利沙さんがハッキリと肯定してしまった。私と一緒になって春日さんも驚きの声を出す。

 

「流石にビッグアイドルとは言っていませんでしたが、リョーさんはハッキリと『将来有望な子』と言いました。彼のアイドルちゃんを見る目は確かですから、きっと未来ちゃんも凄いアイドルちゃんになれますよ」

 

 亜利沙さんにしては珍しく真面目な声色。そこにいつも劇場アイドルたちのお宝ショットを求めて劇場内を這いまわっている彼女の姿はなく、まるで何年もこの道を歩いている先輩のような風格を漂わせていた。……いやまぁ、アイドルの追っかけをしていた経歴を考えれば、下手なアイドルよりもその道に詳しいのかもしれないが。

 

「……で、でへへ~そうですか~」

 

 そしてそんな亜利沙さんの実情を知らないであろう春日さんは素直に褒められたことを喜んでいた。まだ付き合いの浅い私でも分かる、珍しい本気の照れ笑いを浮かべながら春日さんは人差し指で頬を掻き――。

 

「その表情いただきましたあああぁぁぁ!」

 

 ――そんな彼女を、亜利沙さんは目の前で連写したのだった。

 

「ちょっと亜利沙さん!?」

 

「いやぁこれは最高の一枚ができましたよ! 是非()()にお見せせねば!」

 

 なんかもう色々と台無しだった。いや最初から台無し以前の問題だった気もするが。

 

 そんな感じに全く悪びれる様子のない亜利沙さん、そして「姫を放ったままにするつもりなのですかー?」とまつりさんもマイペースな様子。これには流石の私にも少々イラッとしてしまい、息を大きく吸い込むと――。

 

 

 

「千鶴さーん! また亜利沙さんとまつりさんがあああぁぁぁ!」

 

「「ちょっ」」

 

 

 

 ――『シアター組のお母さん』に全力でチクるのだった。

 

「……亜利沙あああぁぁぁ! まつりいいいぃぃぃ!」

 

「わわわっ、お母さん来ちゃいましたよ!?」

 

「静香ちゃん!? もっと穏便にするつもりはなかったのです!?」

 

「知りません! 今日来たばかりの新人アイドルが変な事務所だって誤解したらどうするんですか!?」

 

 

 

(……アイドルの事務所って、面白そうなところだなぁ!)

 

 

 




・不思議な龍の玉で間違った願いを叶えられたこと
多分瞬間移動が使えなくなる。

・魔法のコンパクト
てくまくまやこん。

・「十三年前からずっとファンなんです!」
中の人が滲み出てくるのがアイ転クオリティー。

・お祭り男
わっしょーい!

・徳川まつり
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。
やや独特な雰囲気の不思議なお姫様な19歳。ほ?
良太郎と組ませると面白い化学反応を起こすミリアイドルその1。
あっ、マシュマロとか大好物らしいっすよ?

・「是非先生にお見せせねば!」
我々も普段お世話になっているあのお方です。

・『シアター組のお母さん』
委員長以上の抑止力が定着した模様。



 劇場には良太郎以外のお騒がせムーブしてくれる子が多くて楽しいなぁ。

 だから良太郎がいなくても沢山『お母さん』出来るよ! やったね千鶴!(にっこり)
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