アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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話が進まないのは割といつものこと。


Lesson242 足の踏み出し方 2

 

 

 

「……なにかあった?」

 

 電話から戻って来たら休憩室の空気が微妙に変わっているような気がした。

 

 りんと冬馬二人きりだったら多少険悪になっていてもおかしくないが、翔太と北斗さんがいるのでそれもないだろう。そもそも口喧嘩したところで冬馬がりんに勝てるはずなかった。コイツ基本的に魔王エンジェルの三人が苦手だからな。

 

「なにかって?」

 

「……いや、何でもない」

 

 気のせいではないだろうが、はぐらかす以上俺に聞かれたくない何かを話していたのだろう。ならば無理に聞き出すのも野暮ってものだろう。

 

 関係ないけど今の首コテンってやったりん可愛かった。

 

「ちょっと昔話をしてただけだよ。冬馬が小学校の頃に近所に住んでいた憧れてたお姉さんが引っ越したときの話とか」

 

「ヤメロォ!」

 

「アイドルなり始めの頃にクラスの女の子に色紙渡されて自分のサイン書いたら実は他のアイドルのサイン貰ってきて欲しかったっていう話とか」

 

「だからヤメロっつってんだろぉぉぉ!」

 

 何それめっちゃ聞きたい。こいつにもそんな愉快なゲフンゲフン純朴な少年時代があったのか。

 

「ちくしょう、人が折角忘れかけてたっつーのに……くそったれな記憶が領空侵犯してきやがる……!」

 

 そりゃ、めくるめく走馬灯だ! やばいぞ!

 

「僕としてはリョータロー君の昔話とか、たまには聞いてみたいんだけどー」

 

「……ん、俺の?」

 

「そうそう。リョータロー君にはそーいうのなかった?」

 

「甘酸っぱい初恋の話、とかさ。身が固まった今だからこそ出来る話って言うのもあると思うよ?」

 

 翔太と北斗さんはそんなことを言うが、いやいや恋人の目の前でそーいうのはちょっと……と言いたいところだったが、当のりんは目がキラキラと輝いていた。え、俺の初恋話に期待してるの? うっそぉ。

 

「あーいや、俺の初恋は小学校の枠に収まらなかったから」

 

「どーいうことだよ」

 

 俺の初恋については外伝を参照してほしい。別次元の話? ナンノコッタヨ。

 

「……ついでに、俺の小学校の頃は()()()あったからな」

 

「「「「っ」」」」

 

 思い出したくない過去とは言わない。二度目の俺の人生に不必要だった過去は何一つとして存在しない。けれどこれは、口に出したくない過去なのだ。

 

 ……違うな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()があってる、うん。

 

 

 

「さて、そろそろご馳走様だな」

 

 既にお弁当も残りわずか。次の仕事までの時間も残り僅かなので、ちゃんと味わいつつも手早く食べ終わる。

 

「ご馳走様。りん、お弁当ありがとう、美味しかった」

 

「……うん、どういたしまして」

 

「それじゃ、次の現場まで車で送るよ」

 

 弁当箱を片付けて(後で俺が洗う)、この後収録があるりんを送ろうと立ち上がる。

 

「あ、良太郎君、朝比奈さん送って来たら事務所に戻ってくる?」

 

「そろそろフェスの話がしたいから、時間あるかなって思って」

 

「ん? ……最近黒タイツにローファーとかいいなって思ってる」

 

「誰がテメェの性的嗜好(フェチ)の話をしろっつったよ!? フェスだフェス! シャイニーフェスタ!」

 

 そうか、そういえばそんな時期だったな。去年は不参加だったから、今回こそは是非と運営から参加するようにお願いされていたんだっけ。

 

「いや、今日はこのまま出る予定だ。打ち合わせだったらまた後日でいい?」

 

「それなら大丈夫だよ」

 

「黒タイツにローファー……って、あれ? りょーくん、このあと予定あったっけ?」

 

 俺の予定を把握しているりんが再び可愛らしく小首を傾げる。

 

「なかったけど、たった今出来たんだよ」

 

「もしかしてさっきの電話?」

 

「そうそう。面白そうな()()()()()()があったんだ」

 

 スマホを振りながらそう応えると、りんが疑問符を浮かべて翔太と北斗さんが苦笑して冬馬が思いっきり苦い顔をした。

 

「まぁたテメェは碌でもねぇことやらかそうとしてんのかよ」

 

「碌でもないとは失敬な。今回は比較的まともな部類の悪戯だ。ちゃんとサプライズと呼んでも過言ではないぞ」

 

「まともな悪戯って何だよ……」

 

「楽しみにしとけって、悪いようにはならんから」

 

 とはいえ、その内容を知ったら目ん玉引ん剝きながら「バカじゃねぇの!?」って罵られるんだろうなぁ。

 

 

 

 何せ、しっかりと出る所に出れば()()()()()()()()()レベルのことをやらかそうとしているのだから。

 

 

 

 

 

 

「……さっきのどう思う?」

 

「うーん、確かに昔のことを話すの、躊躇した感じがあったね」

 

「……そうか? ありゃ話せないことがあるっつーか話すのが『バツが悪い』って感じじゃねぇか?」

 

「「……つまり?」」

 

「ただの惚気だ。俺たちが気にすることじゃねーよ」

 

 

 

 

 

 

 きょっ! うっ! はっ!

 

「初レッスンの日だー!」

 

 階段の真ん中ぐらいからジャンプする。そんな軽やかな動作をしてしまうぐらい、今の私は心が軽かった。

 

 今日は私のアイドルとしての初レッスンの日。つい先日劇場の事務所の案内を終え、スタッフさんたちへの挨拶を経て、ようやく私はアイドルになったのだ! ……静香ちゃん曰く『まだまだ私たちはアイドルの卵』らしいのだが、卵だろうが雛だろうが鶏だろうがアイドルはアイドルでしょ!

 

 というわけで同じ学校の静香ちゃんと一緒にレッスンへ行く予定になっているので、放課後に迎えにいっているわけである。

 

「静香ちゃーん! お待たせー! 今日からレッスンだね! ここが私、春日未来のアイドルとしての第一歩になるのかな!? いやぁずっと楽しみに――」

 

 

 

「結構です!!」

 

 

 

「ぴえん」

 

 静香ちゃんが怖い……。

 

「小さい子どもじゃないんですから。……はい、未来は私に任せてください。それでは。……未来? 何してるの?」

 

「し、静香ちゃん……お、怒ってる……?」

 

 柱の影からそっと静香ちゃんの様子を窺う。スマホに向かって怒鳴ってたみたいだけど、何かあったのかな……?

 

「……別に怒ってたわけじゃないわ。ちょっとプロデューサーと電話してただけ」

 

「プロデューサーさんと?」

 

「……あんまり学校(ここ)でそういう話をしたくないから、行きましょう」

 

 既に帰宅準備を終えて鞄を手にしていた静香ちゃんの背中を追って校舎の外へ。

 

「……未来は、プロデューサーともう会ったことあるのよね?」

 

「うん! 色々と聞かれたよ! どんなことが好きなのかーとか、どんなことをやってみたいのかーとか!」

 

 優しそうな人で「これから一緒に頑張ろう!」と力強く言ってくれた。

 

「そもそもプロデューサーさんって、どんなお仕事をする人なの? 曲作ったり衣装作ったりダンス作ったり芋を掘ったりポテトを揚げたり?」

 

「そんなわけないでしょ……特に最後の二つはなんなのよ」

 

「ほら、そこのお店のポテトが美味しそうだったから……」

 

 ファーストフードの有名チェーン店で女子高生と思わしきお姉さん二人が美味しそうにポテトを食べていた。……なんか、焦げ茶でふわふわした髪のお姉さんが明るい茶色のおさげのお姉さんに怒っていたようにも見えたけど、二人とも楽しそうに笑っていたので多分凄く仲が良いんだろうなぁ。

 

「……ねぇ、静香ちゃん」

 

「寄らないわよ」

 

 ちぇー。

 

「……あれ? なんの話してたっけ?」

 

「……プロデューサーと電話で話してたって話よ」

 

「そうだった! えっと、プロデューサーさんに怒ってたの?」

 

「だから怒ってないって。プロデューサーが『今日のレッスンに付き合う』とか言い出して聞かないから」

 

「えー? 別に来てくれるぐらいいいんじゃない?」

 

「来てもやることなんてないんだから、邪魔になるだけよ」

 

「………………」

 

 辛辣な静香ちゃんの物言いに思わず口を噤んでしまった。

 

 なんとなくこのままでは静香ちゃんのイライラがこちらにまで波及してしまうような気がして、慌てて話題の転換を図る。

 

「そ、そうだ静香ちゃん! 今日のレッスンってボーカルトレーニングなんだよね!?」

 

「えぇ、そうよ」

 

「つまり歌の修行でしょ! だから私、あらかじめ練習してきたんだ!」

 

「……どういうこと? トレーニングの練習?」

 

 鞄の中から先日の休日の成果を書き記したメモを取り出して静香ちゃんに渡す。

 

「私の持ち歌高得点ランキング! カラオケで頑張って歌って調べてきたの!」

 

 これが私の練習の成果! いやぁ、五時間ぐらいかかっちゃったけど、我ながらいい成果が出せたと自負してるよ!

 

「私、水蓮寺ルカちゃんの曲が全体的に歌いやすくて得意でね! ほらほらコレ! 九十八点!」

 

「……ホント、色々と勘違いしてるみたいね」

 

 え?

 

 

 

 

 

 

「あ゛~……! あ゛~っ……! あ゛ぁっ~……!」

 

 背後から聞こえてくる亡者のような声を聞き流しながら、私は私のストレッチを続ける。

 

「貴女、体硬いわねぇ……本当に運動部だったの?」

 

「殆どマネージャーでしたぁ~……!」

 

 未来の背中を押している先生の声が呆れを通り越して逆に感心しているように聞こえてしまった。

 

 そんな先生のポケットの中のスマホから着信を告げる音が聞こえてきた。

 

「……っと、来たみたいね。最上さん、春日さんのウォームアップお願いね」

 

「はい、分かりました」

 

 先生が退室してしまったので、私が代わりに未来の手伝いをすることになった。

 

「ほらシャンとしなさい未来。次は腹筋よ」

 

「ふえぇ~!? そもそもなんで歌うのに体育やんなきゃいけないの~!?」

 

「体育じゃなくてストレッチ。体をほぐしてウォームアップするの」

 

 歌うのだって体力がいる。そもそもアイドルというのは基礎体力がものを言う世界で、あの『周藤良太郎』だって「アイドルに体力と持久力は必須」と常日頃からトレーニングを重ねているのだ。

 

「ほら、次は腹筋。やり方ぐらい知ってるでしょ?」

 

「世の中には知ってても出来ないことがあってですね……」

 

「つべこべ言わない」

 

「はぁい……」

 

 床に横になった未来の足を抱えるように抑える。

 

「はい、テンポよく続けるのよ?」

 

「……ねぇ、静香ちゃん」

 

「なに?」

 

 

 

「……ビックリするぐらい()()()()()ね」

 

「……それが遺言でいいのね……?」

 

 

 




・小学校の頃に近所に住んでいた憧れてたお姉さん
・クラスの女の子
あやふやにすることで、後にどんなキャラでもテコ入れさせることが出来るようにしておくスタイル。
良太郎は√確定しちゃったが、今後もハーレム野郎役は冬馬が続投。ガンバレー

・「くそったれな記憶が領空侵犯してきやがる……!」
・そりゃ、めくるめく走馬灯だ! やばいぞ!
ネタを知ったのはシンフォギアだけど、元ネタはワイルドアームズっていうゲームらしいです。

・性的嗜好の話
最近脚回りにも興味が(爆)

・ぴえん
……え、ぴえん超えてぱおんってのはもう古いの?

・女子高生と思わしきお姉さん二人が美味しそうにポテトを食べていた。
最近大活躍の担当をテコ入れしていくスタイル。

・水蓮寺ルカ
未来と中の人が一緒だったのか……。



 話が進んでないけど、次回は進むから許して。

 良太郎の過去話はちょっとずつ進めてきます。まぁ色々とあるからね、コイツにも。



『どうでもいい小話』

 デレステ二十四時間生放送お疲れ様でしたー!

 二十時間しか見れませんでしたが、久々に歌って踊るななみんとまいまいが見れて大満足です……!
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