アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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僕たちは天使だった(落下)


番外編59 七周年特別企画 その5

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

 ついに今回の旅の目的であるバンジージャンプ直前です……!

 

 良太郎君……! 冬馬君……! 恵美ちゃん……! りあむちゃん……! 四人とも、頑張ってくださいね……!

 

 

 

 

 

 

 PM 1:20

 

 岐阜県 バンジージパング岐阜

 

 

 

 はい、というわけでいよいよ我々はジャンプ台までやってきました。本来ならばここまでカメラを持ち込むことは出来ないそうなのですが、今回は特別に許可を貰っております。

 

 ……いや、ホントに高いなぁ。何メートルでしたっけ?

 

『215メートルです。ビルだとおおよそ40~50階ほどの高さになります』

 

「つまり今からぼくたちはビルからの投身自(ピー)をする人と同じ体験をするんだ……」

 

「りあむ!? 発言がめっちゃネガってるよ!?」

 

 これは流石に修正案件かなぁ……多分ピー音入ってると思う。

 

「まさかこの動画初の修正音がコイツとはな。俺はお前だと思ってたけど」

 

 失敬な。

 

 

 

『りあむちゃんのやむポイント その14』

 はじめてのピー

 

 

 

 さて、それじゃあトップバッターとなった恵美ちゃん! 準備はいい?

 

「は、はい! めっちゃ緊張してるけど、頑張るね!」

 

 よしその意気だ! ちなみに恵美ちゃんは最初ということで、オプション無しだから。

 

「ちょっと待て」

 

「オプション!? えっ、なにそれぼく聞いてないよ!?」

 

 うん、冬馬とりあむちゃんがスタンバイする直前に言うつもりだったからね。

 

 いやぁ、オプションのことを俺にだけこっそり教えてくれる辺り、ここのスタッフさんは動画企画というものをよく理解していらっしゃる。あとで個人的にサインをあげよう。

 

「おいお前! スタッフ! オプションってのは何があるのかすぐに教えろ!」

 

「ないよね!? 紐なしバンジーとかないよねっ!?」

 

 はいはい、変なオプションはないし、俺もオプション付けて飛ぶから公平だろ?

 

「お前は自分で楽しみたいだけだろぉがよぉ!」

 

 はいはい、それじゃあ俺たちがワチャワチャやってる間にスタッフさんの手によって後は飛ぶだけの段階に準備が進んでる恵美ちゃん、飛ぶ前に一言お願いします。

 

「あ、アハハッ……うーんと、確かこーいうときなんて言うんだっけ……」

 

 ん?

 

「あっ、そうだ! 『アタシ、このバンジーが終わったらりあむと一緒に遊びに行くんだ』っ!」

 

 死亡フラグー!?

 

「おい夢見ぃ!」

 

「教えたのぼくじゃないよぉ!?」

 

 

 

『123プロのここが凄い! その19』

 所恵美の死亡フラグ

 

 

 

 恵美ちゃんに変なことを教えた下手人を探すのはまた後にして……。

 

「冷静になって考えてみると、第一容疑者オメェじゃねぇか?」

 

 後にして! それじゃあスタッフさん、カウントダウンお願いします!

 

『はい、いきますよー! ごー! よん!』

 

「さん」

 

「にー……!」

 

 いちっ!

 

 

 

 ――バンジィィィッ!!!

 

 

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 

 

 おー……恵美ちゃんが落っこちてった。

 

「間違ってないが間違ってる」

 

「あわわわっ……!?」

 

 

 

「アハハハッ、たっのしー!」

 

 

 

 宙づりになりながらめっちゃ笑ってる。どうやら恵美ちゃんはお気に召したみたいだね。

 

「まぁなんとなくそんな気はしてた」

 

「す、すごいなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 というわけで先鋒の恵美ちゃん、どうだった?

 

「飛び出す瞬間はめっちゃ怖かったんですけど、決心してジャンプしてみたらすっごい爽快! リョータローさん! 連れてきてくれてありがとーございます!」

 

 企画したのは兄貴だけど、まぁ喜んでもらえたようで何よりだよ。

 

「ほ、ホントに……? ホントに楽しかったの、恵美ちゃん……?」

 

「楽しかったってー! りあむも怖くても飛べば変わるってー!」

 

「そ、そうかな……」

 

 うーん、りあむちゃんが怖がらなくなっちゃったら、それはそれで撮れ高が……。

 

「ちょっとぉ!?」

 

 さて、次鋒と書いてネクストジャンパーと読む冬馬、準備はいいか?

 

「……物理的に準備は出来ちまってるけどとりあえず目隠し外せぇぇぇ!」

 

 

 

『123プロのここが凄い! その20』

 天ヶ瀬冬馬のオプション:目隠し

 

 

 

「もう恥も外聞も投げ捨てるけどコレめっちゃ怖ぇってマジで!」

 

 えー? 下が見えないんだから怖くないだろ?

 

「何も見えない方が怖ぇに決まってんだろ! 真の恐怖とは完全なる暗闇の中に潜んでんだよっ!」

 

「なんか346の蘭子ちゃんが喜びそーなこと叫び出しましたよ、冬馬さん……」

 

 アイツがあぁいう風に慌てふためく姿を見てるのも楽しいが、そろそろカウントダウンお願いしまーす。

 

「ちょっ、まっ、せめて風景を見せろ……!」

 

『ごー! よん!』

 

「さんっ!」

 

「にー……!」

 

 いちっ!

 

 

 

 ――バンジィィィッ!!!

 

 

 

「クソがあああああああああああああああ!」

 

 

 

 アイドルらしからぬ叫びと共に落ちていった。

 

「なんかすっごい恨みが込められた叫びだった……」

 

「はわわわっ……!?」

 

 

 

「クソッ! こんなんでも結構爽快なのが腹立つ!」

 

 

 

 なんだかんだ言ってアイツも楽しんでるみたいだな。

 

「ほらほら、やっぱり爽快なんだってー!」

 

「うぅ……着実にぼくの順番が近づいてきてる……」

 

 

 

 

 

 

 はい! 次鋒の冬馬さん! お疲れ様でした!

 

「おう……とりあえず、癪だが面白かったことは認めてやるよ。目隠しでスリル倍増した代わりに絶景は見逃したけどな」

 

 次やるときはアタシもそっちでやってみたいなー!

 

「恵美ちゃん、陽キャな上につよつよメンタル……」

 

 さて、次はリョータローさんの番です! リョータローさーん! 今のお気分どうですかー!?

 

「気分的には、人生最期の瞬間を迎えるような気分。『あぁ、刑が執行される人ってこんな感じなんだなぁ……』って」

 

「めっちゃネガティブ!?」

 

 ま、まぁ気持ちはなんとなく分かります……。

 

 

 

『123プロのここが凄い! その21』

 周藤良太郎のオプション:目隠し+椅子に座ったまま後ろ向き

 

 

 

「色々と迷惑かけた自覚はあるが、まさか本当にこんな形で罰を受けるとは思わなかった」

 

 でも意外と平気そーですね。

 

「いや、自分が想定していた恐怖よりも格上の恐怖に身を晒されていてめっちゃビビってる。え、俺マジでこのまま落ちるの?」

 

「周藤良太郎、最期に言い残したことはあるか」

 

「今回の視聴者プレゼントか? 欲しけりゃくれてやる! 応募しろ! 詳細は動画の最後に置いてきた!」

 

「えっ、それってぼくも応募していいやつ!?」

 

 してもいいとは思うけど、後でサインあげるってこと忘れてない?

 

「おいスタッフ、さっさとこのバカ突き落せ」

 

『いきまーす! ごー! よん!』

 

「さ、さん……!」

 

「にー」

 

 いーちっ!

 

 

 

 ――バンジィィィッ!!!

 

 

 

「ぎゃあああああああああああああああ!」

 

 

 

 リョータローさんにしては珍しいガチ叫びで落ちてった……!

 

「りょ、良太郎くぅぅぅん!?」

 

「ははっ、ざまぁ」

 

 

 

「チクショウ! 冬馬の癖に生意気な! 後で色んなところにあることないこと適当に言いふらしまくってやる!」

 

 

 

「おい馬鹿ヤメロ変な報復しようとすんな!」

 

 なんだかんだ言って、リョータローさんと冬馬さんってホントに仲良しだよね。

 

「このやり取りが生で見れただけで、ぼくの人生一回分の価値がある……!」

 

 

 

 

 

 

 はい! 副将のリョータローさん! どうでしたか!

 

「ぶっちゃけ普通のバンジーを想定してたから滅茶苦茶怖かった。ほら、子どもの頃に教室で椅子を後ろに傾ける奴あるじゃん? あのまま奈落に落ちていく感じ。こう両足が浮いて、フワッと意識も浮くんだよ。そんで『あっ、まずっ』って思った次の瞬間に背中に痛みが走るはずが、一切何も感じない。浮遊感がそのまま永遠に続くような感覚が……」

 

 ちょっとこっちまで怖くなってきたんで中断してもらっていいですか!?

 

「ただ今になって思い返してみるとそのゾクゾク感が堪らないから、リピーターになる可能性大だわ……」

 

「また新たな沼の開拓か」

 

 

 

 

 

 

 さてと、カメラを恵美ちゃんから受け取ってっと。

 

 さぁ、今回の大将、オオトリのりあむちゃん。NDK?

 

「せめて略さずに聞いてっ! 今はこんなところに来ちゃったことを絶賛後悔してるところだよぉぉぉ!」

 

 炎上が得意なりあむちゃんなら吊るされるのも得意じゃない?

 

「なにそれすっごい暴言じゃない!?」

 

「なんかリョータローさんの発言に棘があるような……」

 

「もしかして、さっきの地味に怒ってんのか……?」

 

 

 

『りあむちゃんのやむポイント その15』

 夢見りあむのオプション:宙づり

 

 

 

「ねぇこれ本当に大丈夫な奴!? 絶対に安全な奴!?」

 

 お亡くなりになった方から苦情は来てないと思うよー。

 

「それ苦情言えない奴ぅぅぅ!」

 

 ※死傷者は一切出ておりません。

 

 まぁ俺も鬼じゃない。今から言う条件をりあむちゃんが飲んでくれたら、普通のバンジーで勘弁してあげよう。

 

「条件飲んでも飛ぶことには変わらないのかよぉ!」

 

「それで、その条件ってのは?」

 

 ……東京を出発してからまだ半日も経ってないけど、今回の旅は本当に楽しかったと思わない?

 

「え? ……はいっ! アタシもそう思います!」

 

「え? このタイミングでもう締めに入るのか?」

 

「そーいう長くなりそうな話、せめてぼくを吊るす前にやってもらえますぅー!?」

 

 きっとこれは、俺や恵美ちゃんや冬馬だけじゃなくて、りあむちゃんがいたからこそ成立したと思う。この四人だからこその楽しさが、きっとあった。

 

 そう考えると、今回志希が失踪したのも不幸中の幸いだったのかもしれん。

 

「いや、それとこれとは普通に別の話だろ」

 

 うん、やっぱり後でお仕置きしておく。

 

「あのー! 話が見えない上にそろそろ頭に血ぃ昇って来たんだけどぉぉぉ!?」

 

 ごめんごめん、本題に入るよ。

 

 

 

 ――りあむちゃん、ウチの事務所に来てみない?

 

 

 

「………………え」

 

 歌もダンスも拙いけど、君はしっかりと磨けばちゃんと光るタイプだと思ってる。向上心という点が余りにも欠落しすぎてるような気もするけど、それでもウチの事務所の人間と仲良くやっていけると思う。

 

 だからりあむちゃん。

 

 123プロに、来ないか?

 

「……え、えっと」

 

 うん。

 

 

 

「……ぼ、ぼく、Pサマに声をかけてもらって、アイドルになって……いつの間にか、プロジェクトのメンバーとして活動するようになって……」

 

「そこで、プロジェクトのメンバーに会って」

 

「みんながみんな、優しくしてくれるわけじゃないし、なんだったらいつも睨んでくる怖い子もいるけど……」

 

「……でも、ぼく……今、すっごく楽しいんだ」

 

「あかりちゃんと、あきらちゃんと、三人でユニット組んで」

 

「まだ全然活動出来てないし、アイドルとしても全然知られてないし」

 

「ぼくだったらぼくみたいなアイドル絶対に推さないし、ぼくはぼくが推したいようなアイドルになれるなんて思ってない」

 

「でも」

 

「ぼくは」

 

 

 

「……346プロで、シンデレラプロジェクトで、アイドルを続けたい!」

 

 

 

「……ぐすっ、りあむぅ……!」

 

「……まさか夢見にフラれるとはな?」

 

 いや、俺はりあむちゃんのその言葉を待っていたよ。

 

 

 

「……あぁぁぁでもちょっと待って待って! 掛け持ちとか! 掛け持ちとかどうかな!?」

 

 

 

「……りあむぅ……」

 

「台無しだよ」

 

 はーいスタッフさーん、もうカウントダウンとかいいから落としちゃってー。

 

 

 

 ――バンジィィィッ!!!

 

 

 

「ぎょえええええええええええええええ!?」

 

 

 

「……まさか本当に『ぎょえええ』なんて叫び声をあげる奴がいるとはな」

 

「さっきのを含めて、りあむらしいオチだったね」

 

 文字通り落っこちたからね。

 

 さて、それじゃあそろそろ一応最後の挨拶しておこうか。

 

「えっ、もう終わんのかよ」

 

 編集点ってやつ。ほら、もしかして帰りの道中に撮れ高がないかもしれないし。

 

「下でまだりあむが宙ぶらりんですけど……」

 

 一旦後で。

 

「今更だが、他事務所のアイドルの扱いこれでいいのか……」

 

 

 

『123プロのここが凄い! その22』

 私は一向に構わん(美城敦子・346プロ専務)

 

 

 

 各々の感想はいつも通り動画の最後に入れるとして……よっと。

 

 それじゃあみんな、また次の動画で会おうな!

 

「それじゃあねー!」

 

「次は大人しい動画にしてもらいたいもんだぜ」

 

 

 

「「「ばいばーい!」」」

 

 

 

「誰かぁぁぁ助けてぇぇぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 最後に色々あったみたいですが……皆さん、ちゃんと飛べましたね……凄いです……!

 

 この後、良太郎君たちは帰路につき、途中渋滞に巻き込まれたものの無事に次のお仕事に間に合ったそうです……。

 

 車内での会話のノーカット版は、ブルーレイorDVDの特典となります……皆さん、とても楽しく会話をされていましたので、是非そちらもご覧いただければ幸いです……。

 

 それでは皆さん、次の動画でお会いいたしましょう……。

 

 ナレーションは私、三船美優がお送りしました……。

 

 

 

 

 

 

 ……あ、良太郎君、お疲れ様です……え? この後ですか? ……はい、お食事、ですか……構いませんが……。

 

 いえ、お酒を飲みに行くのはいいのですが……。

 

 ……ど、どうして良太郎君は、カメラを構えているんですか……!?

 

 も、もしかして、次の動画って……!?

 

 

 

 

 

 

 次回!

 

 良太郎・美優・楓・あずさの放浪記!

 

『123どうでしょう~How do you like 123?~』

 

 朝まで梯子酒! トップアイドル飲酒奇譚! ~どうか吐かないで~

 

 乞うご期待!

 

 

 




・215メートル
前までは茨城県の竜神バンジーが日本一でしたが、それでも100メートルです。

・バンジーのオプション
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
※岐阜県でバンジーしても、このようなオプションは存在しません。

・所恵美の死亡フラグ
※実は346のキュート眉毛ちゃんが教えました。

・「詳細は動画の最後に置いてきた!」
ゴールド・良太ロジャー

・りあむちゃん、ウチの事務所に来てみない?
実は作者の望みでもあったりする。今更引っ張ってこれないけど、初期の頃だったら間違いなくりあむは123入りしてた。

・その言葉を待っていたよ
BJ先生、良太郎にだったらどんだけふっかけるんだろうなぁ……。

・私は一向に構わん
誰が本当に烈さん異世界転生するって思うよ……。

・朝まで梯子酒!
所さんの番組のアレ。



 というわけでりあむ編でした! 間違えた! 七周年記念123どうでしょう編でした!

 ……いやホントりあむズルいは、書いててすっげぇ楽しいんだもん。次何か新作書くとしたらこの子レギュラー確定だわ。

 というわけで、長らく続いてしまいましたが、七周年記念でした! これからの一年もまたよろしくお願いします!

 次回は新春恒例の恋仲○○です! もうちょっとだけ、もうちょっとだけ番外編にお付き合いください!

 それでは皆さん、良いお年を!

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