アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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765組、久しぶりの登場!


Lesson264 Aisle for AISLE 2

 

 

 

「おっ、みんな盛り上がってるな」

 

 亜利沙さんから今回のツアーの見どころを熱く語られていると、プロデューサーがやってきた。

 

「あっ! プロデューサーさん! 私と静香ちゃんにもこのライブのチケットください!」

 

「やっぱりその話題か」

 

 早速チケットを強請ってくる未来に苦笑するプロデューサー。

 

「でもな、いつまでもお客様気分じゃ困るぞ」

 

「? どーいうこと?」

 

 

 

「お前たちもバックダンサーとしてステージに立ってもらうってことだよ」

 

 

 

『……えええぇぇぇっ!?』

 

 プロデューサーの口から告げられた突然の言葉に、その場の全員が驚愕の声を上げた。

 

「せ、先輩方と全国ツアーに出られるってことですか!?」

 

「大きい会場で踊れるの!?」

 

「私、シアター以外でライブするの初めて!」

 

「何人出れるの!? 全員出れるの!?」

 

「勿論旅費は出るんだよね!? もしかして地元の美味しいものとか食べれる!?」

 

「ついでに観光とかできませんか!?」

 

「えぇい静まれぃ!」

 

 ワラワラと詰め寄るアイドルたちにプロデューサーが一喝すると、全員が大人しく聞く姿勢になった。

 

「勿論全員出られるわけじゃない。メンバーはオーディションで決める」

 

「旅費は?」

 

「美味しいものは?」

 

「観光は?」

 

「その辺りは一旦忘れなさい」

 

「「「えー!?」」」

 

 プロデューサーが『お静かに』という看板を掲げると、再び全員が大人しく聞く姿勢になった。

 

「審査はツアーメンバーである『フェアリー』の三人が直接行う。だからこそダンスの技術だけで選ばれるとは言えないぞ。『コイツに自分のバックダンサーを任せたい!』と思わせるようなアピールをするんだ」

 

 つまり、通常のアイドルのオーディションと同じ……ということだろうか。

 

 ダンスだけで、歌は歌えない。しかしバックダンサーと侮るなかれ。シアター組一期生である美奈子さんたちも始まりはバックダンサーだったのだから、きっとこれは765プロなりの登竜門なのだろう。

 

(……絶対に出たい……!)

 

 そう意気込んで顔を上げた先に――。

 

 

 

「……へぇ、美希先輩出るんだ……」

 

 

 

 ――ニヤリと笑う翼が立っていた。

 

 

 

「……じゃあ、絶対わたしが出るよ」

 

 

 

 

 

 

「というわけで改めて。自分、『フェアリー』の我那覇響だぞ」

 

「同じく四条貴音です」

 

 そしてやってきてしまったオーディション当日。いつものレッスン室に姿を現したオールスター組の二人に、シアター組の全員が緊張しているのが手に取るように分かった。

 

「美希は仕事で遅れるから、まずは自分たち二人で審査を進めていくぞ」

 

「どうぞよろしくお願いします」

 

『よ、よろしくお願いします!』

 

 二人が準備を進める間、みんなはストレッチや振り付けの最後の確認を始める。

 

「いよいよね……」

 

「ねぇねぇ静香ちゃん」

 

「なに?」

 

「響ちゃんと貴音さん、テレビで見るより綺麗だねー」

 

「……そうね」

 

「あと二人ともテレビで見るよりお胸大きいね……!」

 

「未来?」

 

「特に響さんは身長の低さも相まって……!」

 

「未来」

 

 相変わらず緊張のきの字も見せようとしない未来のメンタルが本当に羨ましくなる。

 

 私以外にも緊張している様子のシアター組のメンバーは多く、基本的に私たちのまとめ役になってくれている琴葉さんでさえも「リリリリラックスしまひょ!」とかなりテンパっている様子だった。

 

 ちなみに今回のオーディションに参加しているのはシアター組はシアター組でも二期生のみで、一期生である美奈子さんや奈緒さんは参加していない。今回のオーディションが私たち二期生の登竜門と考えれば妥当である。

 

「それじゃ、早速始めていくぞー! 一番、最上静香!」

 

「っ、はい!」

 

 我那覇さんに名前を呼ばれ、私は立ち上がって前に出る。

 

(……大丈夫、練習通りに!)

 

 未来の声援を背に息を整え、背筋を伸ばす。

 

「……行きます!」

 

 

 

 

 

 

「もうダメ……落ちたわ……」

 

 始まる前の気合いは何処へやら。すっかりと意気消沈して完全にフォントが掠れてしまっている静香の姿に、自分は思わず苦笑してしまった。

 

(ステップを間違えたことよりも、メンタルの打たれ弱さも課題だよなぁ)

 

 手元の資料にちょちょいと書き込みつつ、ふぅと一息つく。オーディションも残り数人。こうして人のダンスを審査する側に回ったのは初めてだから、こっちはこっちで意外と気を張っていて大変だった。

 

「どうでしょう響、貴女は気になっている子はいますか?」

 

 横からひょこりと貴音が自分の手元を覗き込んでくる。

 

「そうだな……今のところ『この子だ!』って思ってるのは何人かいるぞ」

 

 まずはコイツ。

 

「島原エレナ、十七歳。日本とブラジルのハーフ」

 

 特技はサンバ。話すみたいに自然にダンスが出てくるタイプだ。小さい頃から踊り続けてるからダンスを『覚える』んじゃなくて『理解する』ことが出来る。技術じゃなくてダンスそのものが体に染みついてるんだ。

 

「それと高坂海美、十六歳。自己アピールはスタミナに自信あり」

 

 確か真美が良太郎さんと一緒にボルダリング施設でウチのオーディションを受けたばかりの彼女に出会ったって言ってたな。でも自分が注目したのはスタミナよりも、あの身体。表現力を高める柔軟性とそれを支える鍛えられつつもしなやかな筋肉……恐らくバレエ経験者だ。

 

「次は舞浜(まいはま)(あゆむ)、十九歳。なんと真のお墨付きだ」

 

 アメリカ留学で培った抜群のリズム感でR&BやHIPHOPを踊りこなす生粋のダンサー。シアター組の中からバックダンサーを選出するという話になり、真っ先に真は彼女の名前を挙げた。ダンスという一点においては十分に『トップアイドル』レベルだ。

 

「そして最後。北上(きたかみ)麗花(れいか)、二十歳」

 

「麗華殿?」

 

「一瞬自分もビクッとしたけど字が違うぞ」

 

 すらりと伸びた手足と長身、そして独特の雰囲気がステージ映えしそうなんだけど……なーんか彼女を見てると、心がざわつくというか落ち着かないというか……端的に表現すると()()()()がする。いや、別にアイドルとして問題はないんだろうけど。

 

「今のところ、この四人が候補だぞ」

 

 技術とステージ映えだけで評価をするならば、きっと彼女たちがシアター組のダンス四天王ってところかな。

 

「四天王……つまり五人目がいるということですね」

 

「貴音は一体何を言ってるんだ」

 

「四天王は五人、三銃士は四人いるのが『お約束』なのでしょう?」

 

「それ言ったの良太郎さん?」

 

「いえ、百合子です」

 

「百合子ぉ!」

 

 良太郎さんとよく一緒にゲームしているせいで結構影響を受けている杏奈に隠れているが、百合子も大概だった。ホントいい意味でも悪い意味でも影響力強いなぁあの人!

 

 閑話休題。

 

「この四人以外は……まぁ、うん」

 

「皆、身体が堅く全力を出せているとは思えませんね」

 

 自分が言葉を濁した部分を、貴音はハッキリと口にした。

 

「きっとオーディションそのものに慣れてないんだろうな」

 

 一応外での仕事も存在するシアター組二期生だが、その仕事はまだイベントMCやキャンペーンガールが多い。彼女たちの実力で勝ち取った仕事ではなく、プロデューサーたちが()()()()()()()ばかりだ。

 

「ついでに劇場でのステージが多いから余計にだな」

 

 まだ彼女たちには歌とダンスをこなすことで精一杯なのだろう。こればかりは場数をこなすしかない。これからこれから。

 

「これは美希が遅れてて良かったもしれないな。いつもの調子でズバズバ本音を言われたら、みんな余計に固まっちゃうぞ」

 

 しかも最近の美希は()()()()()()()()()()()()からなぁ……。

 

「ミキがなぁに?」

 

「っ!?」

 

 バッと振り返ると、そこにはいつもの眠そうな表情で手を挙げる美希が立っていた。まだ帽子やサングラスを付けたまま、鞄も持ったままの『たった今来ました』スタイルだ。

 

「遅れてゴメンなのー……あふぅ」

 

「だ、大丈夫だぞ」

 

「お疲れ様です、美希」

 

 眠そうに欠伸をした美希は、そのままパイプ椅子に座ろうとして――。

 

 

 

「美希せんぱーい! おっはようございまーす!」

 

「ひらり」

 

 

 

 ――勢いよく飛び込んできた翼を流れるように躱した。

 

「ぐべぇ!?」

 

 あまり女の子が出すことを推奨されない声で地面に倒れ伏す翼。そういえばやたらと美希にご執心だったな、この子は。

 

「み、美希先輩酷い……」

 

「ミキ、自分からはともかく、抱き着かれるのはリョータローさんだけって決めてるの」

 

「ぐぬぬ……! おのれ、周藤良太郎……!」

 

 おぉ、珍しい形で良太郎さんへのヘイトが上がっている!

 

「……いいぞ……もっとだ……もっと憎しめ……!」

 

「響、闇が漏れています」

 

 はっ!? 思わず良太郎さんへの日頃の恨みが……。

 

「ねぇ響、オーディションってあとどれだけ残ってるのー?」

 

「あ、あぁ、あとニ・三人ってところだ」

 

「それじゃ、パパッと終わらせよ? ミキ、今日は移動が多くて疲れちゃった」

 

 寧ろ移動時間はいつも寝てるんだから、回復出来ているのでは?

 

「……そうですね」

 

 聞きようによっては興味がなさそうにも捉えることが出来てしまう美希の言葉に、翼は一人だけ目の色を変えた。それは悲しみの色ではなく……。

 

 

 

 ――パパッと、終わらせちゃいましょう。

 

 

 

 ……やる気に満ち溢れた、まるで獣のような目。

 

 

 

「……まさか貴音の言葉通りになるとはなー……」

 

 どうやら、本当に四天王は()()いたらしい。

 

 

 

 

 

 

「……凄い」

 

 私は、目の前で披露されている翼のパフォーマンスをそう称することしか出来なかった。

 

 決してステップが正確だったわけじゃない。なんだったら、先ほどの琴葉さんよりもミスが多いかもしれない。けれど翼は満ち溢れる自信と生まれ持った感覚だけで()()()()()()()()()

 

(私とは生まれ持った才能が違いすぎる……)

 

 私だけじゃない。シアターのみんなだけでもない。審査員である響さんや貴音さんや美希さんまでも、翼のことを食い入るように見つめている。

 

 伊吹翼から、目が離せない。

 

 きっと、真っ先にバックダンサーに選ばれるのは、彼女……。

 

 

 

「……ふーん」

 

「なるほど……」

 

「……自分は、悪くないと思うんだけど……美希?」

 

「ミキがなんて言うか、分かってるくせにー」

 

 

 

 ……え?

 

 

 

「……美希せんぱーい! どうでした!? わたし、ツアーに連れていってもらえます?」

 

「ねぇ、翼」

 

「はい?」

 

 

 

「翼、ミキたちのバックダンサーは似合わないって思うな」

 

 

 




・「あと二人ともテレビで見るよりお胸大きいね……!」
未来ちゃんさぁ……。

・響&貴音
やっぱり765組に語り手やってもらうと、書いてる側としてもホッとするものがある。

・舞浜歩
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。
ヒップホップダンサー系少女な19歳。まいがー!
アイ転補正を受けて能力微強化済み。多分アメリカでヤツと遭遇している。

・北上麗花
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。
ミステリアスな雰囲気の20歳。スレンダー美人。
……説明おかしいって? ははっ、そんな馬鹿な。



 登場していないのに各方面からヘイトを集める系主人公。人気者は辛いね()

 内容的には、原作よりもフェアリー三人組の対応が若干大人になっております。なにせ美希(18)、響(19)、貴音(21)ですからね。ミリオン組と年齢差が開いており、翼(14)なので普通にお姉ちゃんに甘える妹ぐらいの感じになっております。

 ……しかしこれ本当に四話で収まるかな?(ここまでテンプレ)

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