アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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続・アイ転は新キャラをこうする()


Lesson270 少女たちの夏の始まり 4

 

 

 

「改めまして、綺羅ツバサです! 好きなアイドルは『魔王エンジェル』さんです!」

 

 三人の真ん中に立つ少女……薄い茶色のボブカットの少女は、先ほどまでの威風堂々とした態度から一変して人懐っこい笑みを浮かべていた。

 

 ……仕切り直しての自己紹介で、名前の次に言うべきことが好きなアイドルなのは、ある意味アイドルとしては正しい……正しいのだろうか……?

 

「私、魔王エンジェルさんが大好きで、麗華さんみたいなクールだけど心が熱いアイドルを目指してるんです! ……あ、高校一年生です!」

 

 心が熱いアイドルを目指すとは一体……って、ちょっと待って。

 

「えっと、それじゃあさっきまでのアレは……」

 

「はい、麗華さんの真似です! どうでしたか? 自分ではかなりそれっぽく出来てたと思うんですけど」

 

 ニコニコと笑うツバサさんからは、先ほど感じた威圧感のような雰囲気は一切感じられなかった。そう、()()感じられないのだ。

 

(つまり、あれが全部演技……いや、()()()()()()()だけってこと……!?)

 

 にわかには信じられないようなことだが、両隣の二人も「今日の出来はまぁまぁ良かったぞ」「だいぶ慣れてきたねぇ」と笑っていることから、どうやら本当らしい。いや、それどころか恐らくツバサさんだけでなく英玲奈さんやあんじゅさんも同じだ。

 

 ここまで明確に『スイッチ』を切り替えることが出来るアイドルが、まだデビューまでの候補生だなんて……。

 

「それよりツバサちゃん、自己紹介も大事だけどそれよりも先に説明しないといけないことがあるんじゃないの~?」

 

「?」

 

「……代わりに私から説明させていただきます。同じく高校一年の統堂英玲奈です」

 

 あんじゅさんの言葉に小首を傾げるツバサさんに変わって英玲奈さんが一歩前に出た。サラリと長い紫の髪を手で払う仕草がとても大人っぽく、なんとなく彼女がこの三人の中のまとめ役なんだろうという予想できた。

 

「私たちは1054プロダクションが経営に携わっているUTX学園芸能科アイドルコースに通うアイドル候補生です。入学してすぐに校長である東豪寺麗華先生に声をかけていただき、今日まで直接個別に指導をしていただいていました」

 

 あの『周藤良太郎』と並び立つトップアイドルである『東豪寺麗華』から直接……!?

 

「それで、先生からデビュー前に『ステージでの経験を積んで来い』って、765プロさんのステージに立たせてもらえるように取り計らってくれたんです。あっ、同じく一年生の優木あんじゅで~す」

 

 英玲奈さんの説明に続く形で口を開いたのは、ふわふわとウェーブがかった茶髪の優木あんじゅさん。……なんというか……その……すっごいスタイルがいい……。

 

(高校生って凄いね、静香ちゃん!)

 

 目を輝かせないで、未来。

 

「要するに、この三人は1054プロからアイドル候補生として本物のアイドルの元へインターンとしてやって来たってところだな」

 

 ざっくりとプロデューサーがそうまとめるが、多分未来辺りは『インターン』の意味が分かっていないだろうから後で説明が必要だと思う。

 

「アイドル候補生と言ってもその実力はあの『魔王エンジェル』のお墨付きだ。ハッキリ言ってレベルが違うぞ」

 

 あの『東豪寺麗華』から直接指導を受け、『魔王エンジェル』からお墨付きを受ける実力。それはもうアイドル候補生という括りで許される存在なのだろうか……?

 

「勿論765プロに所属することになるわけじゃないが、それでもしばらくは同じステージに立つ仲間として、共に実力を高め合ってもらいたい」

 

『はいっ!』

 

 他のみんなと共に返事をしながら、気合いを入れ直す。

 

 そうだ、怯んでいる場合じゃない。私だってアイドルとして高みを目指す身なのだから、彼女たちを超えるつもりでステージに挑まなくてはいけない。寧ろ『魔王エンジェル』が認めるレベルを間近で見ることが出来るのであれば、きっと私にとってプラスにはなってもマイナスになることはないだろう。

 

「よし、それじゃあ新しい仲間が加わったところで……」

 

「っ!」

 

 プロデューサーは(分かってるな?)という視線を私たちに向けてきた。

 

 勿論分かっています、プロデューサー。夏に控えている大きなライブ、新しいユニット、強力なライバルとなるであろうアイドル候補生たち……これは私たちものんびりしている時間なんてない。

 

 早速、次のレッスンに向けての準備を――!

 

 

 

 

 

 

「それでは『ようこそ! ツバサちゃん・英玲奈ちゃん・あんじゅちゃん! 歓迎花火大会』を始めまーす!」

 

『いえーい!』

 

 どうして(電話猫)。

 

 

 

 事務所の屋上で、元々未来と翼が用意していた手持ち花火を用いて小さな花火大会が始まった。765プロに所属するわけではないが、それでもみんなは新しい仲間としてやって来た三人のアイドルと楽しそうに花火に興じていた。

 

「はぁ……」

 

「静香ちゃーん、そんな隅っこにいないでこっち来てよー!」

 

 みんなから少し離れたところで線香花火の火花を眺めていたら、先ほどまで手持ち花火を両手に持ってはしゃいでいた未来が近づいてきた。

 

「未来はともかく、どうしてみんなもこんなに危機感が薄いのかしら……」

 

「あれ、今しれっと貶さ(ディスら)れた?」

 

 少し唇を尖らせながら、私の隣にしゃがみ込んだ未来が線香花火に火を付けた。私もまた新しい線香花火に火を付ける。

 

「もー、落ち込みたいのは私の方だよー! 折角静香ちゃんと翼の三人でユニットデビューする気満々だったのに、私だけ一人なんだから!」

 

 プンプンとわざわざ口にする未来に思わずクスリと笑ってしまった。

 

「未来はソロCDの発売が今週末で、しばらくはその営業やミニライブで凄く忙しくなるから難しいのよ。それに私たちのユニットだってイベントまでの限定みたいなものなんだから」

 

「それでもさー……」

 

「……大丈夫よ」

 

 

 

 ――未来には、沢山時間があるんだから。

 

 

 

 パチパチと音を立て、火花が散る。

 

「夏休みが終わったって、冬休みも春休みもあるし、次の夏休みだってある」

 

「静香ちゃん……?」

 

「ユニットだって、未来なら誰とでもユニットが組めるからきっと大丈夫よ」

 

 火花が徐々に小さくなり、そのままポトリと下に落ちる。ほとんど同じタイミングで火を付けた未来の花火は、まだ元気よく火花を散らしていた。

 

「……それじゃあ、約束して」

 

「え?」

 

 

 

「イベントが終わったら、真っ先に私とユニット組んでね?」

 

 

 

「………………」

 

 膝に顔を埋めるようにして私の顔を見上げる未来は、少しむくれているように見えた。

 

「……ふふっ。えぇ、約束するわ。一緒に頑張ってプロデューサーを説得しましょう」

 

「それじゃあ指切り」

 

「いいわよ」

 

 私の小指を未来の小指と絡める。

 

(……今の私に、みんなと一緒にアイドルを続ける『未来』なんて存在しない)

 

 それでも。だからこそ。私のアイドルとしての時間を、ただの良い思い出で済ますつもりはないけれど。

 

 

 

 ……今こうして『未来』と一緒に過ごすこの時間を大切にしよう。

 

 

 

「二人とも、仲良いんだねー」

 

 

 

「っ」

 

 突然声をかけられて、思わず未来の手を振りほどこうとしてしまったが、間一髪のところでそれに耐える。

 

「ツ、ツバサさん?」

 

「はい、ツバサです」

 

 声をかけてきたのは、先ほどまで向こうの翼たちと一緒にキャイキャイと楽しそうに話をしていたツバサさんだった。

 

 ……何故だろうから、翼とツバサで同じ名前のはずなのに、こうして敬称がなくてもしっかりと呼び分けが出来てしまっているような気がする……。

 

「って、もっと気軽に呼んで? 年上だけど、しばらくは一緒にステージに立つ仲間なんだから、仲良くさせて欲しいな!」

 

「あ、いえ、その……」

 

「それじゃあツバサちゃん!」

 

「はーい! ありがとう、未来ちゃん」

 

 私たちと向かい合うようにしゃがみ込んだツバサさんと小さくハイタッチをする未来。未来もかなり社交的というか友好的な性格してると思ったけど、ツバサさんもかなりいい性格をしているようだった。

 

「二人とも線香花火なんて雅だね~。私も混ぜて~」

 

 そう言いつつ線香花火に火を付けるツバサさん。未来も新しい線香花火を手に取ったので、私ももう一本手に取った。

 

「……えっと、何か御用でしたか?」

 

「御用と言えば御用かな? 二人とももっと仲良くなりたかったから」

 

 ニコニコと屈託ない笑顔で笑うツバサさん。未来も釣られて「私ももっと仲良くなりたいです!」と笑っている辺り、よく似ている二人である。

 

 

 

「特に~……静香ちゃんと」

 

 

 

「「……え?」」

 

 まだ火を付けて間もないというのに、私と未来の線香花火が早々に下へ落ちてしまった。

 

「私たちが『1054プロのアイドル候補生だ』とか『魔王エンジェルから指導を受けてる』ってことを話したとき、みんな『すごいなー』みたいに驚いた顔をしてたじゃない?」

 

 それは、みんなそんな顔をせざるを得ないだろう。

 

「でも、静香ちゃんはすぐに『負けたくない』って顔になった。私、そういう顔をする子が好きなんだ~」

 

「好っ……!?」

 

 あっけらかんとそんなことを言ってのけたツバサさんに、私は自分の顔が熱くなるのを自覚した。

 

「だから……ね? 仲良くしよう、静香ちゃん」

 

 何が『だから』なのか『ね?』なのかも分からない。仲良くなるという意味が本当にそのままの意味なのかどうかすら分からなかった。

 

 だけど、パチリとウインクをするツバサさんの顔が直視出来ずに目を逸らしてしまった。

 

「だ、ダメダメ! 私の方が静香ちゃん好きなんだから!」

 

「未来!?」

 

 貴女は一体何を口走ってるの!?

 

「おっ、それじゃあ未来ちゃん勝負しちゃう? とりあえず最後まで線香花火が残ってた方が勝ちね」

 

「の、望むところだー!」

 

 本当に何が起こってるの!?

 

 

 

 

 

 

「なーんか、静香ちゃんたちすっごい楽しそうなことになってるー」

 

「……色々とスマン」

 

「ウチのツバサちゃんがごめんなさいね、翼ちゃん」

 

 

 




・綺羅ツバサ
『ラブライブ』におけるライバルユニットのリーダー。
原作では三年生だが今作ではまだ一年生。魔王的には麗華ポジ。
キャラが大幅に崩壊した言い訳は↓にて。

・統堂英玲奈
『ラブライブ』におけるライバルユニットのメンバー。
ツバサと同じく一年。魔王的にはともみポジ。
……棒読み? なんのこったよ(すっとぼけ)

・優木あんじゅ
『ラブライブ』におけるライバルユニットのメンバー。
同じく一年だけど発育よしっ!(現場良太郎)魔王的にはりんポジ。
……『完全にフルハウス』? なんのこったよ(すっとぼけ)

・どうして(電話猫)
花火をするにあたって消火準備よしっ! ご安全に!

・「……それじゃあ、約束して」
・「仲良くしよう、静香ちゃん」
この辺に、なんか主人公よりもラブコメチックなフラグ立ててる女の子がいるらしいっすよ?



 アライズのメンバー出したいなぁ
 → でも小説版読んでないからイマイチキャラが掴めない。
 → 待てよ、もしアニメでのキャラが『作られた』ものだったとしたら?
 → 無印二期三話も内心では『今私メッチャカッコいい!』とか思ってたら?
 → こ れ や !

 以上、ツバサがキャラ崩壊したことに対する言い訳でした。英玲奈とあんじゅも微妙にキャラ変更入ってますが、まぁ常識の範囲内かと。

 最後唐突にラブコメ始まりましたが、大丈夫です、作者の趣味です()

 次回は久しぶりに普通の恋仲○○編をお送りします。
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