「あっ、周藤先輩、お久しぶりです」
「げっ」
「出会いがしらの一言目がそれは流石に酷くありゃしませんかねぇ!?」
「すまん無意識だ」
「そっちの方が酷ぇよ!」
とある休日のこと、街中を歩いていたら後輩とばったり出会った。それが普通の後輩だったら普通に挨拶して最近どうだ的な話題に移行するのだが、生憎我が出身校に普通の後輩は限りなく少ないのでそれも難しい。しかも今目の前にいる後輩は、その中でも特に面倒くさい部類に属する男だった。いや、こいつの性格自体にはなにも問題はないのだが……。
「とにかく、久しぶりだな上条」
「っす」
どうやら目的地の方向が同じらしい上条当麻と、自然に並んで歩く。
「風の噂で聞いたが、大学合格という
「自分でも奇跡だと思っちゃってるからなんも反論できない……」
決して頭の回転が悪いわけじゃないのに常に赤点と補習の常連だった上条が大学に受かったという話を聞いたときは、思わずカレンダーを見てエイプリルフールだったかと確認してしまったほどである。
「成績的な意味も勿論あるんだが、お前の場合は『受験日を間違える』とか『受験票を失くす』とか『受験会場を間違える』とか『郵送した入学手続きが紛失する』とか、そういうことをやらかしそうだったから本当に驚いたよ」
「ちくしょう! それも自分で思っちゃったから反論出来ねぇ!」
ついでに不幸体質と肝心なところでポカをやらかす体質を兼ね備えているもんだから、余計に信じられなかったのだ。
「とはいえ本当に受かったのであれば、それだけお前が頑張ったってことなんだろう。この後時間あるか? ちょっと遅くなったが合格祝いに飯でも奢ってやるよ」
「あざっす!」
というわけで急遽後輩とご飯へ行くことになった。どうせこいつはいつも金欠だろうし、ちょっといい肉が食える店を探して……。
「っ! 先輩、ちょっとすみません!」
などと考えていると、突然血相を変えた上条が走り出した。一体何事かと思ったら、上条が走っていく先に小学生ぐらいの子ども二人と、そんな二人に絡んでいるように見える二人の男の姿が……。
「……まぁ、見過ごすわけにゃいかんわな」
相変わらずの行動の早さに内心で苦笑しつつ、俺も上条の背中を追った。
……ん? あれ? もしかしてあの子……。
「おいテメェら! なにやってんだ!」
「あぁん? なんだテメェ」
上条が啖呵を切ると男たちの視線がこちらを向いた。どういう理由で子どもたちに絡んでいたのか知らないが、この反応を見る限りはどうやら『迷子を案内していた』とかそういう和やかなものではなさそうだ。
ではどういう状況なのかという説明は、泣いている女の子を庇う様にして立っている男の子が、男たちを指差しながら教えてくれた。
「こいつらが蘭の自転車こわしたんだ!」
「うるせぇな、そんなところに停めてる方が悪ぃんだろ」
「だからってわざわざ蹴る必要ないだろ!」
なるほど。すぐそこのコンビニを利用するために停めておいた自転車を、この男たちか蹴り壊したのか。
「おい、この子に謝れ!」
「はぁ? なんでだよ」
「俺らはこんなところに自転車停めた悪い奴を懲らしめたんだっての」
「そーそー、俺らのが正義なわけ」
「何が正義だ! それが正義なんて寝言を言うんなら……まずはその幻想をブチ殺す!」
上条がキレて、一色触発の空気になってしまった。……本当ならば先輩として上条を諫める立場なんだろうけど……。
「……悪いが上条、俺は手ェ出せないからな」
「当然っす。俺は大丈夫ですから、先輩はその子たち連れて下がってください」
二対一という不利な状況に加えて特別高い身体能力を有しているわけではないが、あの魔境校を生き延びた上条ならばきっと問題ないだろう。
「二人とも、こっち」
男の子と女の子を呼び寄せて俺より後ろに下がらせつつ、とりあえず早苗ねーちゃん辺りに連絡を入れて……。
「……おいおい、何やってんだよ?」
「なにそいつら? やんの?」
「なんだテメェ?」
……なんか、コンビニから複数の男たちが出てきたんだけど。
「「……おいおい」」
思わず上条とハモる。二対一という不利な状況が、五対一というさらに不利な状況へと悪化してしまった。
「上条く~ん、君さ~……」
「ほんっっっとすんませんっ……!」
この不幸体質というかトラブル体質は本当になんとかならないのか……!?
しかしどうしたもんか……いくら上条とはいえ五人相手は出来ないはずだ。一応俺も参戦すればなんとかなるかもしれないが、大事になればなるほどアイドル的に問題が大きくなるんだよなぁ……。
(……逃げるか)
二人で子ども二人を抱えて逃亡しようと上条に提案しようとして……。
「くぉらあああぁぁぁ! お前らあああぁぁぁ!」
……そんな怒鳴り声と共に、自転車でカッ飛んでくる警官の姿が見えた。
「げっ、警察だ!?」
「お前ら行くぞ!」
国家権力という存在が怒りの形相で迫ってくるという状況に、流石の男たちもバタバタと逃げていった。
そして自転車の警官はそのままのAKIRAばりのドリフトを決めながら俺たちの目の前で停車する。
「ったく、あのクソガキども……
まるで警官とは思えないような言動と袖捲りしてサンダルという風変わり過ぎる格好をしているが、それが信頼に値する知り合いだったためにホッと胸を撫で下ろした。
「ふぅ、ありがとうございます、両さん」
「ん? ……なんだ、誰かと思えば良太郎じゃねぇか!」
俺を認識した途端、特徴的な繋がり眉毛を持ち上げながら
「早苗ちゃんの結婚式以来だな! お前さんも忙しいだろうが、たまには派出所に顔出せ! 中川や麗子も喜ぶ!」
「はい、また何か差し入れ持ってきます」
「でもってお前は上条か。まぁたトラブルに巻き込まれてんのか、ったく」
「はい……すみません……」
高校の頃からトラブル続きでいい意味でも悪い意味でも警察のお世話になることが多かった上条も、当然のように両さんから顔を覚えられていた。
「で? なにがあったんだ?」
「実は……」
かくかくしかじか。
「そういうことか。……ったく、見付けたらただじゃおかんぞあのクソガキども」
「それでなんだけど、両さんならこの自転車直せない?」
手先が器用で家電の修理も出来る両さんならば自転車ぐらい修理できるのではないかと思って提案してみる。
「んーどれどれ……チェーンが切れてハンドルが曲がっただけか。これならすぐに直してやる」
「ホントか、お巡りさん!」
「ほ、ほんとうに……?」
「おう、任せとけ!」
両さんの頼もしい答えに、それまで恐怖やらなんやらで暗かった少年少女の表情が明るくなった。
「よかったな
「えっ!? なんで俺の名前……!?」
「やっぱり気付いてなかったか」
膝を折り、工藤先生と有希子さんの一人息子である工藤新一君と目線を合わせつつ、伊達眼鏡をズラして名乗る。
「俺は周藤良太郎。お母さんやお父さんと一緒に食事したこと、覚えてない?」
以前、二人に誘われて工藤家で食事をした際に顔を合わせているのだが、まぁ彼はまだ俺の変装にも慣れてないだろうから気付かなくてもおかしくなかった。
「……あっ! 確か母さんが弟弟子とか言ってた人!」
「……いやまぁ、それも間違ってないけど」
確かに黒羽先生からちょっとした
「さて、君は初めましてだよね? 新一君とは知り合いの周藤良太郎だ」
「も、
やっぱり、彼女が有希子さんが話していた新一君の幼馴染の女の子か。俺が名乗ったことで目を見開いて驚いているが、人差し指を口元に当ててシーってする。
「ん? 毛利? なんだ、誰かと思ったらお前さん、毛利の娘か」
壊された自転車の様子を見ていた両さんが、蘭ちゃんの名前を聞いてこちらを向いた。
「あれ、両さん知り合いでした?」
「こいつの親父さん、
へぇ、確か目暮って、よく工藤先生に助言を求めに来る刑事さんだっけ。色んなところで色んな縁があるもんだ。
「ま、この場であったのも一つの縁だ。新一君も蘭ちゃんも、よければ両さんも一緒に食事でも」
「おっ! ワシもいいのか!? すまんなぁ! お言葉に甘えて……!」
「くぉらあああぁぁぁ! 両津うううぅぅぅ!」
「げぇ!? 部長!? いかん、追われとったの忘れとった!?」
道の向こうから聞こえてきた怒声とパトカーのサイレンに、両さんは「すまん! 派出所に置いといてくれれば明日までには直しといてやる!」と言い残して、ヒラリと自分の自転車に跨ってあっという間に走り去ってしまった。
「「「「………………」」」」
まるでバイクのように加速して走り去っていく両さんと彼を追いかけるようにして走り去るパトカーを無言で見送る。
「……あのお巡りさん、なんでパトカーに追われてるんだ……?」
「大丈夫大丈夫、あれあの人にとってはいつものことだから」
「お巡りさんなのにいつもパトカーに追われてるの!?」
「上条さんは、怒られた腹いせに部長さんのデスクに罠を仕掛けた辺りじゃないかと思ってますよ」
「デスクに罠!?」
両さんという人物をよく知っている俺と上条には見慣れた光景だけど、まだこの二人には早かったようだ。
「まぁいいや、それじゃあ自転車を亀有の派出所へ持ってってから、ご飯食べに行こうか」
「え、えっと、いいんですか……?」
「子供が遠慮しない。お兄さんに任せなさい」
さて、人数が増えたものの今度こそ食事へ……。
「あー! 見付けたー!」
……と思ったら、今度はなんだ? 振り返ると、そこには上条を指差しながら可愛らしい顔立ちに怒りを張り付けて立っている少女の姿が。
「……上条く~ん、君さ~……」
「二度目っ!」
上条は心外だとばかりに首をブンブンと横に振るが、この様子を見る限りではとてもなにも無いとは言えないだろう。日曜日にも関わらず着ているこのお上品な制服は、間違いなく『私立常盤台学園』のものだ。こんなお嬢様校の生徒と何処で知り合ったんだこの後輩は。
「見付けたわよっ! 今度こそリベンジしてやるんだから!」
少女はズンズンと力強い歩みで上条への距離を詰める。
「何したの、お前」
「……え~っとですね……前にゲーセンのロボゲーで周りを煽りながら調子に乗ってたから、ちょーっとばっかし鼻を折ってやろうとしまして……」
年下相手に何やってんだよお前は。
「ロボゲーってあれか? 最近流行ってるストラトス?(※番外編62参照)」
「あ、いや、バーチャロン……」
あれが現役で稼働してるゲーセンがあったのか……。
「なにゴチャゴチャ話してんのよ!? ほら、さっさと決着を……!」
「や~ん! 上条さ~ん! こんなところで会えるなんて奇遇です~!」
なんかまた増えたんだけど!?
「げっ!?
「え~? それはこっちのセリフなんですけど~? なんで
今度はかなり素晴らしい大乳の金髪少女が、満面の笑みで上条の腕に抱き着いていた。こっちの少女と同じ制服を着ているところからも知り合いだというのが分かるが……。
「あぁもうごちゃごちゃ面倒くせぇ! 全員まとめて飯食わせてやるからさっさと移動するぞ!」
予想以上に大所帯になってしまったが、自己紹介前の少女二人も加えて全員を食事に連れていくことにした。
こうなったら自棄だ! 次はなんだ!? 何でも来いってんだ!
「……そ、それで? どうなったの?」
「それが全員で入ったお高いフレンチの店で殺人未遂事件が起きてな」
「殺人未遂事件っ!?」
「これまた不幸にも上条が容疑者になっちまって、流石にマズいから工藤先生に連絡してきてもらおうと思ったんだけど、たまたまそこに同級生の衛宮たちが留学したロンドンの大学の教授がいてな? その人が解決してくれたと思ったら犯人が往生際悪く逃げ出そうとして、それを上条が顔面を一発ぶん殴って一件落着」
とまぁそんなわけで。
「今日は何事もない平和な一日だったよ」
「りょーくんは一体何を言ってるのっ!?」
・上条当麻
Lesson26から度々名前が出ていた『とある魔術の禁書目録』の主人公がついに登場。
この世界では奇跡的に大学受験に合格しております。
・エンデュミオン
映画のねーちん生身で宇宙行ったってマ?
・工藤新一
・毛利蘭
『名探偵コナン』のメインキャラ二人。この頃は小学二年生ぐらい。
・AKIRA
無事とは言えないけどオリンピック中止にならなくて良かったね。
・両津勘吉
皆ご存じ元祖りょーさんがついに登場!
事務所経営に辺り幸太郎が意見を求めたとか求めてないとか。
・弟弟子
一番弟子がシャロンで、その次に有希子と良太郎が続く。
つまりこの世界だと(一応)良太郎は快斗の兄弟子になる。
・毛利
・目暮
毛利小五郎と目暮十三。刑事時代で、年齢的には両さん(35)の年下で後輩。
本来ならば時期には既に小五郎は刑事を止めて私立探偵になっているが、この世界では現役刑事。多分今後も刑事。
・バーチャロン
その昔、『とある魔術の禁書目録』×『電脳戦機バーチャロン』という中々訳の分からないコラボがあってじゃな……。
・御坂
・食蜂
上条ヒロインズ。この世界だと既にJK。御坂はともかく食蜂は色々と凄いことになっているはず。作者、食蜂推しなんすよ(隙自語)
・ロンドンの大学の教授
嫌々ながらも日本でしか買えない戦略ゲームを買いに来たらたまたま事件に巻き込まれたとか、一体なにメロイ二世なんだ……!?
アイマス作品が関わらないとカオスになる良太郎君の日常でしたとさ。恋仲○○シリーズとはまた別ベクトルで書いてて楽しかった。またこんなノリで良太郎の高校の思い出話とか書きたいなぁ。
次回は本編に戻ります。そろそろ始まる夏フェス。ついに静香たち新ユニットのステージ、そして『346プロの新人アイドル』がついに登場……!?