アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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闇への道連れ(ハードモード)


Lesson300 「やめたくないよ」 2

 

 

 

 さて問題です。『周藤良太郎』よりも時間があり、『周藤良太郎』の事情を大体知っていて、『周藤良太郎』よりも最上静香と矢澤ニコから直接話を聞くことが出来そうな人物は誰でしょうか?

 

 

 

(……まぁ、わたくしですわよね……)

 

 

 

 ――悪い千鶴。

 

 ――ちょっと静香ちゃんとニコちゃんのことをお願いしたいんだ。

 

 

 

 珍しく、本当に珍しく殊勝な態度で良太郎が連絡をしてきたのが先週のことである。どうやら良太郎はこの二人の様子が気になっているらしい。

 

 選抜企画に出演するため一時的に劇場を離れている静香。

 

 デビューステージがとても苦いものになってしまったニコ。

 

 一応、私自身も良太郎に頼まれるよりも前から彼女たちのことは気になっていた。私もニコのデビューステージでの出来事は良太郎から聞いていて、その後もニコはウチにアルバイトへ来てくれているが、特に変わった様子が見られないのが逆に心配だった。静香は劇場に殆ど顔を出さないものの、その代わりに未来が日に日に萎れていくように元気を無くしていくのが心配だった。

 

 私もアイドルとしては発展途上の身なので恐らく話を聞くだけになってしまう可能性もあるが、それでも私自身が気になり、良太郎も気がかりになっているのであればもう少しだけ二人へ踏み入ってみることにしよう。

 

 しかし先ほども触れたが最近の静香は劇場へ来ていないので話どころか顔すら見ていない。ニコも最近はテスト期間に入ったらしく、アルバイトの回数が極端に減っているため中々タイミングが合わなかった。だからと言って無理に二人との時間を作るわけにもいかず。

 

 結局私も彼女たちと話が出来ないまま、十二月に入ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 ――新人アイドル選抜プロジェクト『ゴールデンエイジ』最終予選Cブロック。

 

 ――最初に勝ち上がったアイドルは……!

 

 

 

 ――765プロ『最上静香』さん!

 

 ――見事、クリスマスの決勝ライブ、武道館への切符を手に入れました!

 

 

 

『『『やったあああぁぁぁ!!!』』』

 

 劇場の一室で、固唾を飲んでテレビを見守っていた一同が歓声をあげる。奈緒が「よっしゃぁぁぁ!」と勇ましい声を上げる一方で、星梨花は「わぁー!」とにこやかに拍手をしていた。かと思えば亜利沙と未来は嗚咽と共に咽び泣いており、その反応は多種多様。しかし『仲間の活躍を祝福している』という一点は誰も変わらなかった。

 

 私はどちらかというと、安堵感の方が大きくて思わずホッと胸を撫で下ろしてしまった。勿論予選通過は嬉しいのだが、つまり予選に影響するような問題は抱えていなかったということだ。

 

(寧ろ良太郎が気にしていたのは、どちらかというと……)

 

 チラリと、奈緒に宥められながらグシグシと涙を拭っている未来に視線を向ける。

 

 良太郎は未来が静香の話題を一切あげなかったことを気にしていたようだ。しかし未来は次の定期公演で初のセンターを立候補したぐらいなので、私はそれを『未来が静香と一緒に頑張ると決めた決意の表れ』だと思っている。

 

 ……でもまぁ確かに、最近の未来は今までほど『静香ちゃん静香ちゃん』と言わなくなったが、それはきっと寂しさを押し込めているということなのだろう。また沢山おやつでも作ってあげて、話を聞いてみよう。きっと溜まっているはずの愚痴が溢れ出てくるはずだ。

 

 

 

 ――それでは最上さん、今の気持ちと決勝に向けて意気込みをどうぞ!

 

 

 

 テレビの中のインタビュアーが、静香にマイクを向けた。

 

 

 

 ――はい。私は武道館でライブをすることが夢だったので、本当に嬉しいです。

 

 

 

 にこやかに笑いながら挨拶をする静香。その姿に、昔初めてのステージでMCを任されて緊張しまくっていたときの彼女の姿が重なり、その成長に思わず目頭が熱くなり……。

 

 

 

 ――今回この企画にお声をかけていただいたプロデューサーさんと。

 

 ――私を送り出してくれた事務所のみんなのためにも。

 

 

 

 ――私は()()()()()()()()

 

 

 

 ……静香のその一言に、言いようのない違和感のようなものを覚えた。

 

「……はぁ~、なんや静香、あんな強気なこと言うなんて珍しいなぁ」

 

「そうね、静香ちゃんにしては珍しいセリフチョイス」

 

 奈緒と百合子も小さく驚いていた。他の面々も同じような反応で、亜利沙だけは「うっひょおおおぉぉぉ! カッコいぃぃぃ!」と一人大興奮していた。

 

 そしてその静香の言葉への反応で一番気になった未来はというと……。

 

「電話! 静香ちゃんに電話しなきゃ……ってコレ生放送だった!」

 

 静香に対してお祝いの電話をかけようとしていて、コレが生放送中だということに自分で気付いて「あちゃー!」と額に手を当てていた。

 

 

 

 ……後ろを向いていて、その表情は私からは見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 ――静香ちゃん、決勝進出おめでとう! ついに武道館だね!

 

 ――クリスマス当日は定期ライブの日でもあるから生放送は観れないけど。

 

 ――いつも通りお互いに頑張ろうね!

 

 

 

「……未来」

 

 生放送を終えて自分の控室に戻って来た私は、スマホに来ていたメッセージに目を通した。それはいつもの未来からの応援メッセージ。これを見るだけでも、少しだけ疲れが癒されるような気がするのだから我ながら現金なものである。

 

 なんと返信をしようかと考えていると、トントンと控室のドアが叩かれた。

 

「最上さん、入るわね」

 

「灰島さん、お疲れ様です」

 

「お疲れ様。今日もとても良かったわよ」

 

 控室に入って来たのは灰島さんだった。以前は色々と灰島さんから指摘を受けることが多かった私だが、最近の彼女はよく褒めてくれるようになった。きっと灰島さんのアドバイス通りのパフォーマンスが出来ているからに違いない。

 

「その調子で決勝も頑張ってね。それで話が変わるんだけど、今日この後の予定は?」

 

「この後、ですか?」

 

 特に予定はない。しいて言うならば、予定が無いから劇場に少し顔を出そうかなというのが予定になるが……。

 

 

 

「そう、つまり()()()()じゃないわね。キャンセルしなさい」

 

 

 

 それを伝えると、灰島さんはキッパリとそう言い切った。

 

「これ、『三船美優』のワンマンライブのチケットよ。一流のトップアイドルのステージを見て勉強すること。タクシーを呼ぶから一人で行けるわね?」

 

「え、えっと……」

 

「これは()()()()()なのよ? 分かるわよね?」

 

「………………」

 

 

 

 ――これはお前のために言っているんだ。

 

 ――分かるな? 静香。

 

 

 

「……はい、分かりました」

 

 私がチケットを受け取ると、灰島さんは「タクシーが来るのは三十分後。裏で待ってなさい」と言い残して控室から出ていった。

 

 三十分後とはまた急な話だが、既に出る準備は済ませていたので寧ろ三十分は暇を持て余す時間になってしまった。仕方がないので、もう一度控室の椅子に座り直す。

 

 そういえば先ほど来た未来からのメッセージの返信をしていなかったことを思い出してスマホを取り出すと、そこには『今から劇場に顔を出そうと思うんだけど、未来はまだ』とまで書かれた未送信メッセージが残っていた。

 

「………………」

 

 私はそれを全て削除すると、また新しくメッセージを考える。

 

『えぇ、お互いに頑張りましょう』

 

 ただそれだけを打てばいい筈なのに、何故か私の指は動かなかった。

 

 

 

 

 

 

「……あら」

 

「あっ、千鶴さん……こんばんは」

 

「えぇ、こんばんは」

 

 劇場で行われた『静香の最終予選を応援する会』を終えて帰宅すると、店先にニコがいた。

 

「どうなさったの? まだテスト期間中と仰ってましたわよね?」

 

「えっと、今日が最終日だったので、自分へのご褒美ってことでハンバーグでも作ろうかと思って……」

 

「あら、お疲れ様ですわ」

 

 そしてわざわざウチのお店をチョイスするところが素晴らしいですわね!

 

 お父様からお肉の入った袋を受けとっているニコの姿を見つつ、話を聞くなら今がチャンスなのではないかと思い立つ。

 

 ニコを悪戯に傷付けないように、かといって遠回しに聞いてはぐらかされたりしないように、出来るだけ端的に、シンプルに。

 

「……テスト期間が終わったのならば、またスクールアイドルとしての活動を再開しますの?」

 

「………………」

 

 私がそう尋ねると、ニコは袋を手にしたまま顔を俯かせた。

 

 私は良太郎から事情を聞いてしまっているが、本当はニコのデビューステージの事情を何も知らないということになっている。だから『デビューステージを済ませた』と思っているというテイで彼女に話しかけたのだが……。

 

「……あの、千鶴さん……少し話を聞いてくれませんか?」

 

 数秒黙り込んでいたニコは、顔を俯かせたままそう尋ねてきた。

 

「……えぇ、わたくしでよければいくらでも」

 

 

 

 店先で話し込むのはよろしくないため、ニコを家へと送りながら話を聞くことになった。もうすっかり日も落ちてしまったが、商店街はこの時間でもまだまだ喧騒に溢れているので女二人で歩いても危険なことはなにも無かった。

 

「ニコもすっかりこの商店街の一員ですわね」

 

 寧ろ二人で歩いていると『二階堂精肉店の看板二人娘』として良く声をかけられた。なんだか私も妹が出来たようで少し嬉しい。

 

「商店街の皆さん、本当に優しくて……ここに来ると、少しだけ気分が晴れます」

 

「………………」

 

「……私のデビューステージのこと、聞いてほしいんです」

 

 切り出すタイミングを計っていたのだが、ニコの方から切り出してくれた。

 

「聞くだけならばいくらでも。アドバイスとなると少し怪しいですが……もしアドバイスが欲しいのであれば、業腹ですが良太郎に聞いてもらうというのも意外とアリですわよ?」

 

 ニコは既に『リョーさん』の本名が良太郎だということを知っているため、名前を出しながらそんな提案をしてみる。

 

「良太郎が何処まで話したのかは知りませんが、わたくしよりもアイドルの業界では大先輩になりますわ。普段の様子からは想像できないでしょうが、あぁ見えて意外と後輩には慕われるタイプで……」

 

 しかしニコは静かに首を横に振って私の提案を拒絶した。

 

 やっぱりまだ良太郎を信用しきっていないのだろうかとも思ったが、ニコの口から発せられた言葉はその考えとは真逆の言葉だった。

 

「私は……アイツのアドバイスを聞く資格なんてないですから」

 

「……それは、一体……」

 

 

 

「……やっぱり私、アイドルになるのは無理だったみたいです」

 

 

 




・千鶴(道連れ)
またいずれ詳細を説明しますが、今回の件を良太郎一人に任せた場合確実に『詰みます』。
そこで千鶴を引き込む必要があったんですね(RTA並感)

・私は絶対に負けません。
静香ちゃん@覚醒(?)中



 千鶴さんと共に静香とニコを同時攻略中です。今回のイベントは一手間違えると二人どころか良太郎自身がバッドエンドルートに突入します。千鶴さんの走りに期待しましょう(RTA並感)(なお現状攻略の鍵が足りずにバッドエンドルート進行中)
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