アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

44 / 555
ラブライブ終わってしまいましたね……。

最近はラブライブメドレーを聞きながら執筆作業をしております。

……何かおかしいこと言いましたかね?


Lesson40 HENSHIN! 2

 

 

 

「いらっしゃいませー。四名様ですか? こちらのテーブル席へどうぞ」

 

 接客なう。

 

 完全武装メイド姿でホールスタッフとして現在労働中である。中学生の頃に軽いお手伝い(バイトだと法律的にアウトのため)をしていたので接客はお手のもの。他にもオーダー取りテーブルセッティングレジ打ちなんでもござれだ!

 

「あれ、お姉さん新しいバイト?」

 

「はい。今日だけ臨時でアルバイトに入った周藤良子です。よろしくお願いします」

 

 常連さんの奥様に声を掛けられ、無表情のまま挨拶をする。接客として笑顔がないのは若干アレかもしれないが、そこはキャラということで。

 

「へぇ、周藤良太郎君と随分と似た名前なのね」

 

「よく言われます」

 

 この常連さんは俺とも顔見知りのはずなのだが、一切気付く様子が無い。

 

 ちなみに周藤良子は母さんの名前である。周藤ハーマイオニーとでも名乗ろうかとも思ったのだが、別の女装男子の名前と被るのでやめておいた。さらにあんまり使われることがない完全声帯模写の特技を駆使して声も母さんのものにしてあるため、これで俺が男だとばれることはほぼ無いはずだ。もしばれたら多分その人は無意識的に女性を避ける人物か人を疑うことしかできない人物だろう。

 

 さぁ、本日の翠屋は美人美少女店員三人組(+イケメン親子+美人人妻)でお送りするぞ! 来いよお客さん! 財布の紐なんか投げ捨ててかかってこい!

 

 

 

「ふふ、ホント昔から良子ちゃんは働き者ね」

 

「……母さん、さも当たり前のようにアイツを良子呼びするのはやめてくれ。アイツの性別が分からなくなる」

 

「良子ちゃーん、これ運んでくれー」

 

「はーい!」

 

「父さん……」

 

「良子ー、レジ代わってくれるー?」

 

「フィアッセまで!?」

 

「リョウお姉さーん!」

 

「なのは!?」

 

 

 

「どうした恭也、さっきから。しっかりと仕事しろ」

 

「喧しい!」

 

「?」

 

 何故怒鳴られたのだろう……解せぬ。

 

 

 

 

 

 

「えっと、こっち……だよね」

 

「うん、道は合ってるみたいだよ」

 

 午前中の仕事が終わり、私と千早ちゃん、真、雪歩の四人はとある場所に向かって歩いていた。

 

 本日の仕事はこのメンバーでの雑誌の写真撮影だった。全員で制服に着替えての撮影で、普段着ている制服がセーラー服なのでブレザーの制服は新鮮だった。なお、真が一人だけ男子生徒の制服だったのはもはや予定調和だったので(真を含め)誰も何も言わなかった。本人も諦めたのか、ふっきれたのか、それとも自然過ぎて気が付かなかったのか。

 

 さて、それで私達が何処に向かっているのかというと、喫茶『翠屋』である。

 

 喫茶『翠屋』。良太郎さんが差し入れに持って来てくれたシュークリームの箱に書いてあったその名前を調べてみたところ、どうやらテレビの取材も訪れるほどの名店だったらしい。あの美味しかったシュークリームをもう一度食べたくなり、幸い四人とも夕方まで空き時間があるため、ならば四人で行ってみようという話になったのだ。

 

『そうか、楽しんでこい。ただ、四人とも身バレには気を付けてくれよ? しっかりと自分がアイドルだという自覚を持ってくれ』

 

 翠屋に行くと伝え撮影現場で別れたプロデューサーさんの言葉である。

 

 先日のこともあり、身バレについて多少は気にかけているつもりではある。一応、私と雪歩はマスクを、千早ちゃんと真は帽子を被っている(千早ちゃんは帽子を被って来ていなかったので真が予備に持っていたものを借りた)。傍から見ると若干怪しい四人組にも見えない気がしないでもないが、流石に不審者として通報されることは無いだろう。正体がバレないことが最優先である。

 

「あ、見えてきた! たぶんあれだよ!」

 

 真が指差すその先に、その店はあった。店名と同じ緑色の看板を掲げた喫茶店、翠屋である。

 

「わー! 可愛いお店だね!」

 

「早く入ろう!」

 

「そ、そうね」

 

 あまり喫茶店やケーキ屋さんには入らないと言っていた千早ちゃんの背中を押しながら、入口へと向かう。

 

 そして扉の取っ手に伸ばした私の右手が、横から伸ばされた別の人物の手に触れた。

 

「あ、ごめんなさい」

 

「こっちこそごめんなさい……って、あれ?」

 

 横から同時に手を伸ばしたその女性が私達の姿を見て首を傾げるのを見て、慌てて私達は顔を逸らす。

 

(も、もしかしてバレちゃった……!?)

 

 しかし、その不安は杞憂に終わることとなる。

 

 

 

「久しぶり。765プロの……天海春香、だよね?」

 

 

 

「え?」

 

 久しぶり、という言葉に引っかかって顔を上げる。

 

 そこにいたのはサングラスをかけた女性。初めは誰だか分からなかったが、サングラスを外したその姿は確かに久しぶりと言う言葉が正しい人物、しかし個人的にはテレビで何度も見た人物であった。

 

「さ、三条ともみさん!?」

 

 1054プロダクションに所属するトップアイドルグループ『魔王エンジェル』の三条ともみさんだった。テレビで何度も見かけたが、こうして直接会うのはあの大運動会以来である。

 

「お、お久しぶりです!」

 

 別事務所とはいえ業界で言えば私たちではまだまだ足元にも及ばない大先輩との突然の邂逅に、私達は変装のために付けていたマスクや帽子を外して挨拶をする。

 

「そんなにかしこまらなくていい。わたしもあなた達もオフなんだし。そういうことに関しては、わたしは律子みたいに厳しくするつもりはないから」

 

 ね、と微笑むともみさん。なんとも優しい態度……確かに常日頃から上下関係に厳しい律子さんとは大違いの態度である。

 

「そういえば聞いたよ。初の感謝祭ライブ大成功おめでとう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「本当は行きたかったんだけど、お仕事があって行けなかったんだ」

 

「い、いえ、お気持ちだけで十分ですよ!」

 

「お、お心遣いありがとうございますぅ~!」

 

 ぶんぶんと手を振るが、しかしその言葉はとても嬉しかった。感謝祭ライブのことは実際に会場に来てくれた良太郎さんからも称賛の言葉を貰い、嬉しかったり恥ずかしかったり。当然あのライブを自分で卑下するつもりはないし、自分でも最高のライブだったと胸を張れる。だがこうしてトップアイドルの皆さんから褒められるとやはり嬉しいのだ。

 

「あ……こうしてお店の前にいたら邪魔になっちゃうから」

 

「あ、はい」

 

 入ろうか、と言うともみさんの言葉に頷く。ともみさんが扉の取っ手に手を伸ばしたので、私達は慌てて再びマスクや帽子を装着しようとするが、そんな私達の様子を見て再びともみさんは言う。

 

「そんなに気にしなくても大丈夫」

 

 ……えっと、それはまだ私達が身バレを気にするほど有名になっていないと言っているのだろうか。

 

「このお店はリョウがデビュー前から通ってて、店員さんはもちろん、お客さんもアイドルぐらいで騒ぐ人はそうそういないから。特に昼過ぎのこの時間は」

 

 わたしも何度か変装無しで来てるし、とともみさん。なるほど、良太郎さんに慣れている店員さんにお客さんだったらつい最近有名になりだした私達程度では動揺しないと言うことか。……それはそれで、寂しいような悔しいような。

 

「それじゃあ改めて」

 

 ガチャリと扉を開けて、私達は店内へと足を踏み入れた。

 

「いらっしゃいませー!」

 

 そんな私達を出迎えてくれたのは、なんとメイド服を着た美人のお姉さんだった。可愛らしいソプラノボイス、千早ちゃんのように真っ直ぐ綺麗に伸びた黒髪、すらっと伸びた長身、可愛いと言うよりはカッコいい美人。私もアイドルなのである程度自分の容姿に自信があるのだが、それでも思わず羨んでしまうぐらいの美人だった。しかしその表情は何故か無表情。これでニコリと笑ってくれたらとても絵になったのだが。

 

「って、あれ、もしかして……『魔王エンジェル』の三条ともみちゃん? それに、えっと……765プロの天海春香ちゃんに、如月千早ちゃん、菊地真ちゃん、萩原雪歩ちゃんですか?」

 

 私達の顔を確認するなり驚いたといったリアクションを取るお姉さん。しかしその表情は一切変わらずに無表情なので本当に驚いているのかどうかの判断が出来なかった。

 

「え、えっと……」

 

 正直に頷いていいものかと逡巡するが、私達が反応する前にお姉さんは一人納得したようにパチリと手を合わせた。

 

「マスターからこのお店は芸能人の方が何人も訪れるって話を聞いていたのですけど、まさかアルバイト初日で会えるとは思っていませんでした」

 

 それじゃあお席の方に案内しますね、と言うお姉さんに案内されて私達はテーブル席へ。

 

「あれ? ともみさん、どうかしたんですか?」

 

 振り返ると、何故かともみさんが眉根を潜めてお姉さんをじっと見ていた。

 

「……あの無表情具合が良太郎に似すぎてて……」

 

「確かに、言われてみればそうですね」

 

 真もともみさんに同調しながら頷く。確かにどんな時も崩れることがない無表情は良太郎さんそっくりだ。

 

「御親戚の方ですかね?」

 

「言われてみれば、少し面影が……」

 

 お絞りと水の入ったグラスをテーブル席に置き、ご注文が決まりましたらお声をおかけくださいと言ってお姉さんは業務へと戻っていった。というか、ナチュラルにともみさんと同席することになってしまったが、ともみさんは何も言わないし個人的にもう少し話をしたかったので私も特に何も言わない。

 

「良子ちゃん、これお願いね」

 

「はーい」

 

 マスターらしき男性(かなりのイケメン)から受け取ったコーヒーを別のテーブルのお客さんに運ぶお姉さん。

 

「……良子、ねぇ……それにあの声……」

 

 先ほどよりも目が細くなっていくともみさん。ジトーッという擬音が聞こえてきそうなぐらい、もはや睨むようにお姉さんを見ている。

 

「もちろんシュークリームは頼むとして……あとはコーヒーが有名みたいだよ」

 

「千早ちゃんはどうする?」

 

「えっと……それじゃあ、私も同じもので」

 

 真たちはそうこうしている間に早々と注文を決めたようだ。もちろん私もみんなと同じものだ。

 

「ともみさんはどうしますか?」

 

「わたしも決まってる」

 

「それじゃあ……」

 

 すみませーん、と真が手を上げると、お姉さんが伝票を片手にやってきた。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

「えっと、シュークリーム四つにオリジナルブレンド四つ。……ともみさんは?」

 

 真に問われ、未だにお姉さんを見ていたともみさんはポツリと呟いた。

 

 

 

「……33-4」

 

「なんでや! 阪神関係ないやろ! ……はっ!?」

 

 

 

 !?

 

「い、今の声……!?」

 

「も、もしかして……!?」

 

「……何故バレたし」

 

「流石に良子さんと同じ名前と声を使っていれば不審に思う」

 

 はぁ、と溜息を吐いたお姉さん(?)が発した声は、紛れもなく聞き覚えのある『男性』の声だった。

 

 

 

「で? どういうつもり、良太郎」

 

「まぁ、色々あってな」

 

 

 

「「「「~っ!!?」」」」

 

 

 

 ここで叫ばなかったことに対して、私は自分で私達を褒めたいと思った。

 

 

 




・周藤ハーマイオニー
某魔法使い少女……ではなく、この小説で既に登場済みの某執事。女装した時の名前としてぱっとこれが思いついた。

・無意識的に女性を避ける人物
某覚醒する炎の紋章に登場する剣士さん、もしくは妖精尻尾クロニクルの主人公さん。
両者とも、避けるというか拒絶というか……しかし高性能セレナのため、剣士さんにはティアモを娶ってもらわねばならぬのだ……(血涙)

・財布の紐なんか投げ捨ててかかってこい!
野郎オブクラッシャー!(女の子大歓迎的な意味で)

・自然過ぎて気が付かなかったのか。
凛ちゃんはあんなにもスカートが似合ったというのに……。

・なんとメイド服を着た美人のお姉さんだった。
※だが男だ。

・「なんでや! 阪神関係ないやろ!」
没ネタ「すっきりさわやか?」「マダゼスチンサイダー!」
※後に本編で美希がそのCM撮影する予定なので時系列を合わせた結果没に。



『どうでもいい小話』
 最近のお気に入りキャラをまとめてみた。

 星井美希(アイドルマスター)
 朝比奈りん(アイドルマスター)
 西木野真姫(ラブライブ)
 乾梓(辻堂さんの純愛ロード)
 キリエ・フローリアン(リリカルなのはAsGOD)
 新子憧(咲阿知賀編)

 友人「ビッ○っぽいのばっかりだな」
 作者「ぶっとばすぞ貴様」

 どうしてこうなった。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。