アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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予定を変更してなんと豪華四本立て!

※などと言っておりますが、諸事情により執筆が滞ってしまったため、過去にツイッターにて公開した短編の修正版の再掲になります。ご容赦ください。


番外編68 もし○○と恋仲だったら 特別総集編2

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

「リョつん! 外見て外! 積もったよ!」

 

「………………」

 

 朝目が覚めると、そこには恋人の満面の笑みが。

 

「……あのさ、一ついいかな」

 

「何なにー!? 手短に済ませて、早く外行こうよ外!」

 

 眠い目を擦りつつ、まるで子供のように俺の胴体に馬乗りになってユサユサ揺すってくる恋人に問いかける。

 

「……今回のお泊り、お互いの寝室には入らないっていう約束で兄貴や武内さんたちに許してもらったんじゃなかったっけ……?」

 

 寧ろたったそれだけの制約で、現役アイドル二人のお泊りが許可されたのが驚きである。

 

「いーじゃんそれぐらい! ホラホラ、起きた起きた!」

 

「あーハイハイ、起きたから……着替えてすぐ行くから、外で待ってて」

 

「ラジャー!」

 

 そんな恋人同士というよりは親子のようなやり取りをしつつ、彼女はヒラリと身軽に俺の身体から降りてベッドの下に着地する。短いスカートだったらフワリと中が見えそうになっていたところだが、残念ながらストッキングにショートパンツだった。

 

 小走りに部屋を出ていこうとした彼女はふと思い出したように足を止め、振り返りながら照れくさそうな笑顔をこちらに向けた

 

「おはよっ! リョつん!」

 

「……おはよう、未央」

 

 

 

「「おぉ……!」」

 

 手早く着替えを済ませ、朝食も後回しにして玄関の扉を開けた俺たちは、目の前の光景に思わず感嘆の声を上げてしまった。

 

「積もったなぁ……」

 

「昨日の晩、すっごい降ってたもんねー!」

 

 まぁ主語を抜いて話しているものの何となく分かってもらえると思うが、雪である。

 

 今回、たまには恋人らしいことをしたいという俺と未央の願いが叶い、こうして小さなロッジを一軒貸し切っての旅行へとやって来たのだが、時期が時期で場所が場所だったので一晩明けたら見事に雪が積もっていた。

 

「ねぇねぇリョつん! せーので外に出よ?」

 

「ん? ……あぁ、最初の一歩か」

 

 まだ誰も踏み入れていない雪化粧の上に足跡を付けるのが楽しいらしいが、その気持ちはよく分かる。まだ誰もしたことがないことをするというのは、優越感があるものだ。

 

「それじゃあ、せーのでね」

 

 自然とお互いの指を絡めるように手を握り合い、俺は右足を、未央は左足を持ち上げた。

 

「「……せーのっ!」」

 

 ザクッという心地よい音と共に、俺と未央は真っ白な世界へと足を踏み入れた。

 

「く~っ! この感覚がたまんないねぇ!」

 

 やり遂げた顔の未央。大事な最初の一歩は終えたとばかりにそのまま俺の手を離し、二歩三歩と真っ白なロッジの庭を駆け回る。まるで犬っぽいというか、寧ろポジパ的には茜ちゃんっぽいというのが真っ先に思い浮かんだ感想だった。

 

「未央、雪でテンションが上がるのは分かるけど、一先ず朝飯に……ぐべっ」

 

「アハハッ! リョつんってば隙だらけー!」

 

 いつも間にか作っていたらしい未央の雪玉が俺の顔面に飛来した。

 

「コイツめ……やったなぁ」

 

「へっへーん!」

 

 どうやらミオワンワンは雪合戦がご所望らしい。俺も雪をかき集めて雪玉を作る。

 

「そりゃ」

 

 軽く投げた雪玉は、そのままタートルネックのセーターを着た未央の胸元に当たった。

 

「おっ! やったなー! お返しー!」

 

 未央の投げた雪玉が俺の肩に当たる。

 

「とりゃ」

 

 俺の投げた雪玉が未央の右胸に当たる。

 

「……も、もう、コイツー!」

 

 未央の投げた雪玉が俺の腹に当たる。

 

「うりゃ」

 

 俺の投げた雪玉が未央の左胸に――

 

「って、コラアアアァァァ!?」

 

 ――怒られた。

 

「さっきから私の胸ばっかり狙ってない!?」

 

「大きいから当たりやすいだけだって」

 

「あ、そうなの? いやぁ未央ちゃんってばナイスバディですからなぁ……って、そんなわけないでしょっ!?」

 

 ここでちゃんと乗ってくれる辺りが未央らしい。

 

「もうっ! リョつんが女の子の胸に興味津々なのは知ってるけどさぁ……い、言ってくれれば……私は、その」

 

 照れくさそうに人差し指を合わせる未央の耳が赤いのは、多分寒いからではないだろう。そんな未央の申し出に俺は諸手を挙げて喜びたいところではあるのだが、現実は厳しい。

 

「いや、流石にまだお互い現役アイドルだし……兄貴たちにも約束しちゃってるし」

 

 二人の交際を認めてもらう際に『お互いの芸能活動に支障を来さないようにする』という約束をお互いの事務所で秘密裏に交わしてあるのだ。故に俺も、本当ならばこう、手を出したい(物理)ところではあるのだが……。

 

「………………」

 

 という説明をすると、何故か未央は不満そうに頬を膨らませた。

 

「……未央?」

 

「……フーンリョつんってば、私にアイドルとして接してたんだーフーン」

 

 拗ねて唇を尖らせつつススッと寄って来た未央は、そのままポフッと抱き着いてきた。

 

「……私は、リョつんの前ではいつだって普通の女の子なんだよ?」

 

「………………」

 

 そんなことを言いながら上目づかいになる未央が本当に可愛くて思わず(ry

 

 

 

 

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

『第七回シンデレラガール総選挙……栄えある第一位に輝き、シンデレラガールの称号に手に入れたのは――!』

 

 テレビから聞こえてくる司会者のその言葉に、俺は人知れず息を呑む。その緊張のしようと言ったら、IUの決勝のとき以上だった。

 

『――安部菜々さんです!』

 

「っしゃあっ!!」

 

 菜々の名前が呼ばれた途端、楽屋で一人盛大にガッツポーズを決めてしまった。

 

 早速恋人の快挙にお祝いの電話をしたくなるが、残念ながらこれは生放送。今電話をしたところで、舞台の上で涙を流しながら祝福されている彼女がそれに出ることはないだろう。ならば現場に飛んでいきたくなるが、この後すぐに収録を控えているのでそれも出来ない。

 

 ならば今の俺に出来ることはただ一つ。

 

 ――全力を持って仕事を終わらせるのみ。

 

 

 

 というわけで有無を言わさぬ一発撮りで収録を終えた。しかしそれでも遅い時間になってしまったが、どうやら彼女も彼女で取材や打ち上げで今まで自由に動けなかったらしい。ようやくお互いに時間が空いたので、車を走らせて恋人の下へと向かう。

 

「菜々!」

 

「……良太郎さん!」

 

 いつも待ち合わせに使う駅前のロータリーへと車を進めると、彼女はいつもと同じようにそこで待っていてくれた。もう遅い時間だというのに、未成年の少女をそんなところに待たせてしまったことに対する罪悪感に苛まれながらも、今はそんなことすら気にする余裕が無かった。

 

 ハザードランプを点けて停めると、車を飛び降りそのまま菜々の体を抱きしめた。

 

「菜々っ! おめでとう!」

 

「良太郎さん……! ナ、ナナ……私、やりました! ……ぐすっ」

 

 あの大きな舞台に一人で立ち大勢の観客を魅了したその少女の体は、ギュッと抱きしめると折れてしまうのではないかというぐらい小さく華奢だった。

 

 そのまま人目も気にせずにずっと彼女のことを抱きしめていたかったが、流石にこれ以上は身バレの危険性が高いので、名残惜しいが体を離す。その際、菜々がやや寂しそうな顔をしたのでまた抱きしめたくなったが、グッと堪える。

 

「一先ず移動しよう」

 

「はいっ!」

 

 菜々を助手席に乗せて自分も運転席に戻り、そのまま車を発進させる。特に行くアテは決めていない。このまま夜のドライブである。

 

「それにしても、流石菜々だよ。シンデレラガール……あのバカみたいに多い346プロのアイドルの中で一番になったんだから」

 

「『バカみたいに』のところはイマイチ触れづらいですけど……はい。これで少しは、ナナも良太郎さんの隣に立つのにふさわしいアイドルになれましたかね……」

 

「何言ってるんだ。別にシンデレラガールじゃなかったとしても、俺の隣は菜々だけだよ」

 

「……そう言ってくれるだけで、ナナは幸せです」

 

 ひじ掛けに乗せていた俺の左手に、菜々がキュッと両手を乗せた。

 

「……あの、良太郎さん」

 

「ん?」

 

「……少し、お話したいことがあるんです」

 

「……っと、この辺でいいかな」

 

 菜々が話をしたいということで、適当に車を走らせて海が見える公園までやって来た。夜景も見えるここは夜になるとカップルのデートコース定番になっているのだが、今日は珍しく俺たちの貸し切り状態になっていた。

 

「んー、潮風が気持ちいいー。最近暑くなってきたからな」

 

「そうですねぇ。あっ、だからといってあまり薄着で寝ちゃダメですよ! 明け方は冷えることもあるですから!」

 

 メッと可愛らしい菜々からの忠告に「はーい」と返事をすると、彼女は満足そうに頷いた。

 

「………………」

 

 しかし唐突に押し黙り俯いてしまった菜々。こんなめでたい日での二人きりのデートだというのに、一体……?

 

「……良太郎さん。ナナは……私は、貴方に言わなければいけないことがあります」

 

「俺に、言わなきゃいけないこと……?」

 

「はい。……私の秘密です。ずっと黙ってきた、私の秘密。世間のみんなどころか、良太郎さんにもずっと言えなかった秘密」

 

 菜々はそう言いながら目を伏せた。まるで、とても辛いことを話すかのように。

 

「……別に無理しなくてもいいぞ? 秘密の一つや二つ、あっても受け入れるのが……」

 

「違うんです! これは……これだけは、貴方を愛しているからこそ言わなければいけないことなんです!」

 

「菜々……」

 

「……良太郎さん……私は……安部菜々は――」

 

 

 

「――それが、菜々の秘密……?」

 

「……はい」

 

 全てを語り終えた後、菜々はポロポロと涙を流し始めた。

 

「本当は、もっと早く言っておくべきでした……! そうすれば、良太郎さんは……良太郎君は、こんな私に――!」

 

「……よかった~……!」

 

「――え?」

 

 はぁっと安堵の溜息を吐きつつ、菜々の体を抱きしめながら頭を撫でる。

 

「もしこれで『本当は貴方のことなんて愛していませんでした』とか言われたらどうしようかと思った……いや、それでも俺の気持ちは変わらないけど、やっぱりそれはショック――」

 

「……なんで……?」

 

「――ん?」

 

「なんで……!? 私は、貴方を騙していたんですよ!? それなのにどうして……!」

 

 ボロボロと泣きながら、俺の体を引き剥がそうとする菜々。しかし俺は逆により強く彼女の体を抱きしめた。先ほどの駅前でのときよりも、ずっと強く。

 

「それは……お前が、俺の愛した安部菜々という一人の女の子だからだよ」

 

「……で、でも、私はもう女の子なんて……」

 

「……菜々が言ってくれたんだから、俺だけ隠し事するのもズルいよな」

 

「え……?」

 

「……あのな、菜々。実は俺、周藤良太郎はな――」

 

 菜々にだけ打ち明けた俺だけの秘密。

 

 この先ずっと、二人一緒に居られるようにと約束するように。

 

 

 

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

「奈緒っ! 突然だが新妻というものに大変興味が湧いたから今すぐこのフリフリピンクエプロンを着てお玉を片手に『おっ、お帰り。ご飯と風呂、どっちにする? ……へっ? お風呂で奈緒をご飯に……ってなに変なこと言ってるんだよ!? い、いくら夫婦だからってそんなことしないからな! このバカ!』と言いつつ顔を赤らめてくれ!」

 

「番外編だからって導入が雑すぎる上にもう半分以上話が終わってるじゃねぇかよ!?」

 

 折角用意したエプロンは、顔を真っ赤にした奈緒に「このバカっ!」という罵声とともに投げ返されてしまった。ただこれだけで当初の目的の半分近くは達成してしまった。

 

「ったく……いきなりどうしたんだよ。わざわざこんなの買ってきてまで」

 

 奈緒が落ち着いたところで、改めて二人でリビングのソファーに腰を下ろす。

 

「いや、この間346で恒例のアイドル主演のドラマやってたじゃん? ほら、アーニャちゃんと響子ちゃんと芳乃ちゃんの」

 

「あー……『桜の風』?」

 

「そうそう。あのときのアーニャちゃんのピンクエプロンが可愛くてさ。絶対奈緒にも似合おうと思って。絶対可愛い」

 

「………………」

 

 奈緒の中で『他の女の子を褒めたことに対する怒り』と『自分が可愛いと褒められたことに対する喜び』がせめぎ合っているのが分かった。もうひと押しすれば着てくれそうだ。

 

「ほらほら~着てみてよ~本当は奈緒も着てみたいんだろ~可愛いぞ~」

 

「や、でも……」

 

「えぇい! ぐだぐだ言わずに着るのだ!」

 

「きゃあああぁぁぁ!?」

 

 結局強硬手段に出るのであった。この手に限る。

 

 

 

「うぅ……」

 

「おぉ……可愛い……今日までアイドルの仕事頑張っててよかった……」

 

「そいつは良かったな……!」

 

 涙目で顔を赤くしながらフリフリピンクエプロンの裾を両手でギュッと握りしめる姿は、まさしく俺が思い描いていた奈緒の姿だった。

 

「よし、それじゃあ次はセリフ言ってみようか」

 

「まだ続くのかコレ!?」

 

「ポーズが先でもいいけど」

 

「最終的にポーズまでつけさせるつもりだったのかよ!?」

 

 両手で顔を覆いながら「あたしの恋人が変態だ……」と嘆く奈緒。普段から「チチシリフトモモー!」と叫び続けている男を捕まえて、今更何を言い出すのか。

 

 だがしかし、未だ俺にピッタリと寄り添うようにソファーに座っている辺り、本当に嫌がっているわけじゃなさそうなのが大変愛い奴である。

 

「そもそも、これは俺の欲求を満たすだけじゃなくて、奈緒のためでもあるんだぞ?」

 

「現在進行形で恋人に辱められてるこの状況が、あたしのためだって……?」

 

「可愛いお嫁さんになるのが夢だって聞いたけど……」

 

「話した奴誰だ!? 凛か!? いや絶対に加蓮だ!」

 

 髪を振り回しながら身もだえる奈緒。ペチペチと髪先が頬に当たるのがくすぐったい。

 

(本当はカマかけただけなんだけど……心当たりがあるなら、別に言う必要もないか)

 

 なおかわいい。

 

「女の子が『お嫁さん』に憧れるなんて、別に恥ずかしがるようなことじゃないだろ」

 

「……そうだけどさ」

 

 落ち着いた奈緒のポニーテールの先をクルクルと弄ぶ。

 

「その夢はもうしばらく叶えてあげれそうにないし、せめて気分だけでもって思ったんだが、お気に召さなかったか」

 

「………………え」

 

「IEも控えてるし、そもそもお互いにまだ現役のアイドルの身。俺はともかく、奈緒はこれからもっとトライアドの三人での仕事が増えていくだろうから。もうちょっとお互いに落ち着いてからの方が世間的にもいいかと思ってな」

 

 ただ果たして『周藤良太郎』が落ち着くのは何年先の話になるのやら。

 

「………………」

 

「……どした?」

 

 先ほどから動きが止まっていた奈緒は、顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせていた。

 

「……そ、それって……そ、そーいう意味……なのか……!?」

 

「俺は最初からそのつもりだよ。奈緒と結婚するって」

 

「けっ……!?」

 

 重たい男と思われるかもしれないが、生憎別の女性とのことを考えるなんて器用なこともプレイボーイなことも出来る性分じゃない。

 

 奈緒は、俺に欠けていた『誰か特別な一人を好きになる』という根本的な感情を取り戻させてくれた。

 

 だから、なんて言葉は使いたくないが……彼女以外の女性とのことは、考えたくなかった。

 

「……あ、あたしも……」

 

 もしかして奈緒にはそのつもりが無かったのだろうかと一人不安になっていると、奈緒が俺の服の裾を掴んだ。俯いているのでその表情は見えないが、髪の毛の隙間から真っ赤になった耳が覗いていた。

 

「け、結婚するなら……りょ、良太郎以外……考えたこと、ないから……」

 

「……ありがとう、奈緒」

 

「……うん」

 

 そっと奈緒の背中に腕を回して抱き寄せると、彼女はポスンとこちらに倒れこんできた。小柄な奈緒の体を抱きしめながら――。

 

「どう!? 凛ちゃん! 加蓮ちゃん! 撮れた!?」

 

「バッチリ」

 

「撮れてますよー!」

 

 ――先ほどから部屋の入り口でビデオ撮影をしてくれていた凛ちゃんと加蓮ちゃに声をかけると、二人はいい笑顔で親指を立ててくれた。

 

「はあああぁぁぁ!? 凛!? 加蓮!? おおおお前らいつから……!?」

 

「勿論、良太郎さんの『突然だが新妻というものに大変興味が湧いたから』……の辺りから」

 

「本当に冒頭じゃないかあああぁぁぁ! 良太郎! あたしを騙して――!」

 

「……俺が嘘を言ったと思うか?」

 

「――思わないですハイ」

 

 今日一番の顔の赤さを披露しつつ……顔を覆う手の隙間から見える口元がニヤニヤと笑っている奈緒が可愛くて、もう一度彼女の体を抱き寄せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

 我らが生きる《時》が重なったのは、果たして世界の祝福か。我が片翼《ブリュンヒルデ》と共に彼女の魔力の糧となる《禁断の果実》を求める。

 

「くくくっ、共に儀式に臨めることを、光栄に思うが良い!」

 

「この誉れ、我はこの胸に刻もう」

 

 我と対峙する《ブリュンヒルデ》は妖艶な笑みを浮かべる。戦の舞台では何人も寄せ付けぬ《覇者の風格》を放つ彼女も、儀式を前に昂っているのが手に取るように分かった。

 

 やがて劫火にその身を晒し我らの生贄となる《禁断の果実》が捧げられると、その瞳は極光の輝きを放ち始めた。

 

「「さぁ……我らの魔力となるが良い!」」

 

 捧げられた供物は、《神の剣の使い》からもたらされた伝承の通りであった。

 

「我が片翼よ、汝の供物には異なる秘薬が注がれているのだな」

 

「左様」

 

 供物から魔力を取り込みながら、《ブリュンヒルデ》はこちらの魔力を探っているのを感知した。比翼連理である我らの間に言葉は要らず、我は自らの供物を彼女のために捧げることに一切の躊躇いはない。

 

「受け取るが良い」

 

「……流石は我が片翼よ」

 

 一瞬のためらいを見せつつ、しかし《ブリュンヒルデ》はそれを自らの魔力とした。

 

「……代償を払おう」

 

 過剰な魔力が焔となって溢れ出す彼女から、その《チカラ》の一端を譲渡される。この儀式により我らの魔力が一つとなったことを告げると、彼女から溢れる焔は彼女の供物にかかりし真紅の秘薬よりも《朱く》燃え上がるのだった。

 

 

 

 折角の休日でオフが重なったので、恋人の蘭子と一緒に彼女の好物であるハンバーグを食べに行くことにした。

 

「えへへ、良太郎さんと一緒にお食事に行けて嬉しいです」

 

「喜んでもらえたようで、俺も嬉しいよ」

 

 俺の対面に座りつつ蘭子は楽しそうに笑う。普段はキャラ的にもやや大人っぽく見られる彼女であるが、やはりこういうところは年相応だった。

 

 そしてアツアツの鉄板に乗ったハンバーグが運ばれてくると、その目はさらにキラキラと輝いた。

 

「「いただきます!」」

 

 早速お互いのハンバーグを食べ始める。うん、恭也たちに聞いた評判通りの美味しさだ。

 

「……良太郎さんが頼んだのは、デミグラスソースがかかってるんですよね」

 

「あ、うん」

 

 目の前のケチャップハンバーグを美味しそうに食べつつ、チラチラとこちらに視線を向けてくる蘭子。何が言いたいのかを察した俺は自分のハンバーグを小さく切り分けると、フォークに刺すと彼女に向かって差し出した。

 

「はい、あーん」

 

「っ! ……あ、あーん」

 

 恥ずかしそうにしつつも、素直に俺のフォークからハンバーグを食べる蘭子。

 

「……お、お返しです。あーん」

 

 顔を赤らめつつ、蘭子は自分のハンバーグを俺に差し出してくる。お言葉に甘えてそれを咥え……間接キスだということを伝えると、彼女はかかっているケチャップよりも顔を赤くするのだった。

 

 

 




・恋仲○○未央編
限定SSR【カレイドスノー】お迎え記念短編……だったはず。
恋仲○○19よりも書いたのは前だったと思う。

・恋仲○○菜々編
安部菜々シンデレラガール記念短編。
菜々さんの秘密? はて?

・恋仲○○奈緒編
ハロウィン奈緒お迎え記念短編。
良太郎の相手(ツッコミ的な意味)で奈緒は色々と扱いやすすぎる……。

・恋仲○○蘭子編
……何記念短編だったかなぁ……?
とりあえず書いてて楽しかった。



 ツイッターで公開した恋仲○○特別編の総集編でした。

 今回はライブの関係で執筆時間が取れず、帰宅してからも色々と心の整理が付かなかったのでこういう形になってしまいました。申し訳ありません。

 一体何がどう心の整理なのかは、作者ツイッターにて。もう未練はありません。

 次回こそ、本当に恋仲○○をお送りします。
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