アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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まだバーベキュー始まらないってマジ?


Lesson317 765劇場大勝利!静香と未来へレディ・ゴー! 3

 

 

 

「いい? サインよサイン。私たち家族分なんて贅沢言わないから、一枚ちゃんとした『周藤良太郎』のサイン!」

 

「はいはい! 私も! 私も欲しいです!」

 

「……えっと、リョーさん……」

 

「分かった分かった、三人分ね」

 

 ニコちゃんと未来ちゃんと静香ちゃんからサインを強請られ、それを了承する。サインを強請られることには慣れてるけど、周藤良太郎として直接要求されたわけではなくリョーさんとして間接的に要求されたのは流石に初めてである。

 

 いやそろそろ正体を白状する頃合いかなぁって思っていただけに肩透かしを食らった気分というか、不意の事故による身バレがなくてホッとした気分というか、複雑な感じ。

 

「りょーくん、アタシもいい?」

 

「なにゆえ?」

 

 何故か便乗したりんにもサインを要求された。いや確かに最近『周藤良太郎』としてサインあげてなかったけど、今更いります……?

 

「そうだニコちゃん、一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな」

 

「……サイン貰ってきてくれるお駄賃程度のことだったら話してあげてもいいわよ」

 

(……『周藤良太郎』のサインの価値を考えると、人によっては預金残高とか余裕で話しそう……)

 

 何故か微妙な目線でニコちゃんを見ている静香ちゃんはさておき、お駄賃程度で話してくれるのであれば聞いてしまおう。大丈夫、多分それでもおつりは来る。

 

 

 

「アイドル、続ける?」

 

 

 

 回りくどい聞き方なんてせず、真っ直ぐにそれを聞いた。

 

「……聞かれるとは思ってたわよ。……続けるつもりはある。でも今は無理」

 

 目を逸らしながらニコちゃんは溜息を吐き、そして首を横に振った。

 

「あれだけお膳立てしてもらって今更『ステージに立つ気はない』なんて言わない」

 

 ニコちゃんは「でも……」と言葉を濁した。

 

 ……きっと、まだ恐怖心そのものは拭えていないのだろう。一人でステージに立つだけの勇気を持てていないのだろう。

 

 でも。

 

「『今は無理』なんだね。なら、俺は()()()()を楽しみに待ってるよ」

 

「……いつになるかなんて、私にも分からないわよ」

 

「それでもいいよ」

 

 一年だろうが二年だろうが、俺は楽しみに待ち続けよう。

 

 ニコちゃんならば、ニコちゃんをステージの上に引っ張り上げる誰かならば、きっと素晴らしいステージを見せてくれると、そう信じているから。

 

「……ふんっ、勝手にしなさい」

 

 鼻を鳴らしながらそっぽを向いたニコちゃんはそんな憎まれ口を叩きながら、しかし僅かに見える口元が少しだけ緩んでいるような気がした。

 

 

 

 

 

 

「……は? 良太郎が恋人を連れて劇場に来る?」

 

「そうなんだよ!」

 

 本日開催される765プロ劇場でのバーベキューのため、ウチの店から届けてもらった食材を給湯室で下ごしらえをしていると、少々興奮気味のプロデューサーが突然そんなことを言い出した。

 

「一体何がどうしたらそのような事態になりますの?」

 

 流石にコレは片手間に聞くべき話ではないような気がしたので、包丁を置いて水道で手を洗って話を聞く姿勢になる。

 

「それが偶然街中で未来と静香の二人が、恋人とデート中だった周藤君に会ったらしくてさ、色々とお世話になったお礼がしたいとか言って誘ったらしいんだ」

 

「本当に凄い偶然ですわね……」

 

「いくら『周藤良太郎』とはいえ、正体を明かしていない状態の一般人の参加はどうかとも思ったんだけど、周藤君の恋人が一緒だって聞いたら思わずオッケーしちゃって」

 

「なにをしてますの貴方」

 

 いくら知り合いといえその辺はしっかりしなさいプロデューサー。

 

「いやだって『周藤良太郎』の恋人だぞ? 誰だって気になるに決まってるだろ? 千鶴だって気になるだろ?」

 

「………………」

 

「……ん?」

 

「……あ~はい、まぁ、そうですわね」

 

「んん!? アレ!? これお前知ってるな!?」

 

「ワタクシモ恋人ガ誰ダカ気ニナリマスワー」

 

 そういえば一応私も既にそれを知っている側の人間だった。

 

 さて、下ごしらえの続きですわ。何せ劇場のメンバーに加えて、今日は良太郎とりんも合わせた大所帯。早く美奈子が帰って来て手伝いをして欲しいところだ。

 

「えっ、誰々!? 教えて教えて!?」

 

「今から良太郎が連れてくるのだからそこで確認してくださいまし」

 

 というか貴方も手伝いなさいプロデューサー! 食べさせませんわよ!? いえ寧ろ逆に食べさせますわよ!? 美奈子のフルコースを!

 

「ただいま~」

 

「只今戻りました~」

 

 しつこいプロデューサーをあしらっていると、足りない食材の買い出しを頼んでいたこのみさんと風花が戻って来た。

 

「はい千鶴ちゃん、こっちに置いておくわ」

 

「下ごしらえ、私も手伝いますね」

 

「ありがとうございますわ」

 

 風花も手伝ってくれるようなので、これで多少戦力の補強になった。

 

「それで、プロデューサーは何を騒いでるの?」

 

「今からここに良太郎が連れて来る恋人が誰なのか気になってるらしいですわ」

 

「「へぇ、周藤良太郎が恋人を連れて……えっ!?」」

 

「今凄いハモり方しましたわね」

 

 流石にハモるにしては長文すぎる気がしたが、それだけ二人にとっても寝耳に水だったということだろう。

 

「良太郎君が来るの!?」

 

「しかも例の恋人を連れてくるんですか!?」

 

「アレ!? もしかして二人も周藤君に恋人がいること自体には驚いていない感じなのか!?」

 

 二人の驚いているポイントに驚くプロデューサー。そういえばこのみさんと風花、それに莉緒さんと歌織さんも居酒屋でそれを知ったんでしたわね。

 

「と言っても、名前も姿も知らないんだけどね。……あぁ、姿に関していえば、確か胸が風花ちゃんに負けず劣らずなんだっけ?」

 

「それは、なんというか……実に周藤君らしいな」

 

「ま、負けません!」

 

「「なにが?」」

 

 何故か意気込む風花に対してプロデューサーとこのみさんは首を傾げるのだった。

 

「あぁ、俺は今、凄いワクワクしてる……確実にいると数年前から囁かれ続け、これまで決して公にされなかった『周藤良太郎』の恋人の正体が、ついに明かされるのか……!」

 

 噂自体は数年前からあったが、恋人になってからまだ一年経ってないらしいけど。

 

「どんな子なんだろうな……」

 

 

 

「こんな子です」

 

「こんな恋人です」

 

 

 

「「「「……んん!?」」」」

 

 突然増えた二人分の声に、その場にいた全員がビクリと肩を跳ね上げてその声の発生源へと視線を向けた。

 

「お邪魔してまーす」

 

「初めましてー」

 

「良太郎!? りん!?」

 

 しっかりと変装状態の良太郎とりんが、しれっと給湯室にいた。手にはソフトドリンクのペットボトルやアルコールの缶などがぎっしりと詰まったエコバックを携えていて、キチンとしていて大変よろしい……じゃなくて。

 

「しれっと入ってくるのはやめてくださいまし!」

 

「ちゃんとノックしたけど、なんか俺の話題で盛り上がってて気づかなかったのはそっちじゃないか」

 

「……そ、それは、確かにこちらに非がありましたわ。ごめんなさい」

 

 言われてみれば、プロデューサーたちが盛り上がっている最中、ドアを叩く音がしたような気が……。

 

「プロデューサーさん、今日はご招待いただきありがとうございます。コレ、ささやかながら差し入れです」

 

「ご、ご丁寧にどうも。……って、周藤君! もしかして、その人が……!?」

 

 良太郎から袋を受け取りながら、プロデューサーの視線はその隣に立つりんへと釘付けになっていた。その際チラリと彼女の胸部を確認していることがここからでも分かってしまう。正直同性の私でも視線が吸い寄せられるのだから、男性のプロデューサーは責められなかった。

 

「はい。バーベキューの前にプロデューサーさんたちには先に紹介しておこうかと思って」

 

「初めまして、りょーくんの恋人よ」

 

 そう言いながらりんは変装用の伊達眼鏡を外した。正直変装と言ってもアイドルとして表に出るときのツインテールを解いて伊達眼鏡をかけているだけだったのだが、それでもプロデューサーたちは彼女を認識できていなかったらしい。

 

「あ、貴女は……!」

 

 ついに素顔が晒され、その正体を知ったプロデューサーは、驚愕に目を見開いた。

 

 

 

「とある雑誌の『周藤良太郎の恋人本命候補ランキング』で三位だった朝比奈りんさん!」

 

 

 

「その話題を出すなぁ!」

 

「確かそれ、一位は東豪寺麗華ちゃんだったわね……」

 

「追撃ヤメテェ!」

 

「二位は佐久間まゆちゃんでしたね……」

 

「わぁ……ぁ……!」

 

「泣いちゃった」

 

 プロデューサーとこのみさんと風花による三連続の連携攻撃に『周藤良太郎』と双璧をなすトップアイドルである『魔王エンジェル』の朝比奈りんの眼からは涙が。三人ともそのつもりはなかったんでしょうけど、恋人である貴方がその態度はどうなんですの良太郎。

 

「いやまぁ、アレは仕方ないって。傍から見てると周藤君と東豪寺さん、息の合ったパートナーみたいな雰囲気だから」

 

「良太郎さんとりんさんは、アイドルとファンみたいな関係として認知されてる弊害ですよきっと……」

 

「同じくファン枠であるはずのまゆちゃんは二位だけどね」

 

 良太郎の胸でさめざめと涙を流すりんを慰めるような言葉をかけるプロデューサーと風花だが、このみさんの言葉は更なる追い打ちとなってりんを襲う。

 

「ふーんだ! いいもんねー! 世間ではどう思われようとも、りょーくんの恋人はアタシだという事実には変わりないもんねー!」

 

 りんはグリグリと良太郎の胸に額を押し当てながらそんなことを言う。確かにその通りですけど、内容が完全に負け惜しみである。

 

「というわけで、周藤良太郎の恋人は朝比奈りんでしたわ」

 

「そ、そうだったんだな……いやまぁ、ある意味で納得する相手ではあったよ、うん」

 

「確かに『魔王エンジェル』ぐらいじゃないと釣り合わないか」

 

「……ま、負けてませんもん……」

 

「「なにが?」」

 

 ともあれ、こうしてバーベキュー前に良太郎の恋人との顔合わせという目的は達成されたのであった。

 

 だから貴方たち、いいから下ごしらえを手伝いなさい。

 

 

 

「あ、ちなみに俺は『周藤良太郎とプライベートな付き合いのある芸能界の重役』っていう設定になってるから、口裏合わせよろしくお願いします」

 

「「「「……なんで?」」」」

 

 

 




・一年だろうが二年だろうが
作中では二年後でも、現実だと何年後になるんだろなぁ……。

・とある雑誌の『周藤良太郎の恋人本命候補ランキング』
・三位だった朝比奈りんさん
ツイッターで呟いたネタをこちらでも活用していく。

・「わぁ……ぁ……!」
・「泣いちゃった」
負けヒロイン気質……てこと!?



 ニコちゃんの事後処理というかその辺りのお話はコレで一旦解決です。今後もちょくちょく顔を出すかもしれませんが、それでも本格的な活動はラブライブ編に入ってからになります。……本当に入るかどうかは未定。

 そして次回ようやくバーベキュー! ……もしかしたら一話伸びるかも()
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