アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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いざ315プロダクションへ!


Lesson323 サイコーなアイドルたち

 

 

 

 説明しよう! 315プロダクションとは、社長である齋藤孝司が去年設立した男性アイドル専門の芸能事務所である! 所属しているアイドルは総勢……えーっと……十五人ぐらい! 二十人はいない! はず!

 

 世間は第三次アイドルブームで盛り上がっているが、男性アイドルという存在は圧倒的に数が少なく注目度も少ない。というか圧倒的な頂点(すどうりょうたろう)不動の次席(ジュピター)の人気が高すぎて注目されづらいというのが辛い現実だ。

 

 しかしそんな逆境をものともせず! トップアイドルを目指してひた走る!

 

 

 

 それが俺たち! 『DRAMATIC STARS(ドラマチックスターズ)』だ!

 

 

 

「まずはリーダーの俺! 努力と根性の熱血ヒーロー! 天道(てんどう)(てる)!」

 

 以前は弁護士として活動していたがちょっとしたトラブルで所属していた弁護士事務所を辞め、みんなを笑顔にするためにアイドルになった! 

 

「続いて二人目のメンバー!」

 

「……えっ!? あ、えっと、す、ステージを華麗にリフトオフ! 柏木(かしわぎ)(つばさ)です!」

 

 翼は元パイロット! 翼も過去に色々あったが、今は俺と一緒にトップアイドルを目指す良きユニットメンバーだ! ご飯を凄い食べるぞ! そりゃあもうビビるぐらい食べるぞ! いやマジで!

 

「そして最後! 三人目のメンバーは!」

 

 

 

「……さっきからキミは何をしているんだ」

 

 

 

「っだぁぁぁ! 乗れよそこは!」

 

 三人目のユニットメンバーで元医者のアイドルでもある桜庭(さくらば)(かおる)が呆れたように眼鏡を指で押し上げながらため息を吐いた。寧ろ俺が何をしているんだと言いたい。

 

「相変わらずノリが悪いなぁお前は」

 

「まずは説明をしろ。それぐらい言わなくても理解できるだろう」

 

「ま、まぁまぁ……」

 

 睨みあう俺と桜庭、そしてその間に引き攣った笑みで入ってくる翼。俺たち三人の中では既にお馴染みの光景である。

 

「ほら、プロデューサーが『今日は社長が大事なお客さんを連れてきます』って言ってただろ? だからそのお客さんにする挨拶の練習だよ」

 

「……こんな挨拶をするつもりなのかキミは? そしてこんな挨拶の練習をするためにわざわざレッスン室に僕たちを呼び出したのか?」

 

「こんな挨拶とはなんだよ!」

 

 別に今回だけじゃなくて、これからのステージでも使える汎用性のある自己紹介だ。俺たちは誰かさんのせいでその辺りがかなり疎かになってるんだから、しっかりと練習してものにしないと。

 

「どんな場面であろうとも僕は絶対にこんな挨拶しないからな」

 

「しろよ!」

 

「そんなことより」

 

「そんなことだとぉ!?」

 

「ま、まぁまぁまぁ……」

 

「そろそろ時間だぞ」

 

 桜庭に言われて壁の時計を見ると、いつの間にか予定の時間が迫っていた。確かにそろそろ準備をしないとお客さんが来てしまう。

 

「今日のところはこれぐらいにしといてやる! 次回までには自分の挨拶をしっかりと出来るようにしておけよ、桜庭!」

 

「自分の挨拶ぐらい出来る。キミのそのノリが嫌なだけだ」

 

「なんだとぉ!?」

 

「ま、まぁまぁまぁまぁ……」

 

 

 

 レッスン室を後にした俺たちは、着替えを済ませて事務所の応接室へと向かう。その道中の話題は今日訪れるという大事なお客様についてだ。

 

「結局誰なんだろうな」

 

「プロデューサーさんも『実は私も知らないんです』って言ってましたね」

 

 ということは社長だけが知ってるってことだけど……もしかして業界で相当偉い人を連れてきたりするんじゃないか?

 

「……もしそうだとしたら絶好のチャンスだ。何か大きな仕事に関わることが出来るかもしれない」

 

「大きな仕事……やっぱりテレビ出演だな!」

 

 深夜にやってる小さな番組には出演したことがあるが、やっぱりゴールデンタイムに進出したい。

 

「何処かの企業の広告塔、っていうのもありじゃないですか?」

 

「それもいいな! 三人で並んで、栄養ドリンクなんかを一気飲みしちゃって!」

 

 ……自分で言っておいてあれだけど、元弁護士と元パイロットと元医者が勧める栄養ドリンクってなんかヤダな。何処かブラックな香りが漂ってきそう。

 

「……あ、プロデューサー」

 

「皆さん、お疲れ様です」

 

 廊下の向こうからプロデューサーが歩いてきた。いつものようにほんわかとした笑みを浮かべているプロデューサーだが、何故か今日は少しだけ緊張しているような、そんな感じがした。

 

 ……今気付いた、プロデューサーの後ろに誰かいる。中折帽子を被り眼鏡をかけた男性。

 

「紹介します、彼らは……」

 

 そんな男性に向く俺の視線に気付いたプロデューサーは振り返って男性に俺たち三人の紹介を始めた。

 

 しかしそんなプロデューサーの言葉を男性は「大丈夫」と遮った。

 

 

 

「所属アイドルに関してはしっかりと予習しているでヤンス」

 

 

 

「「「「ヤンス!?」」」

 

「天道輝・桜庭薫・柏木翼の三人組アイドルユニット『DRAMATIC STARS』でヤンスね。実に王道のアイドルグループで気になっていたでヤンスよ」

 

 しっかりと認知されていた上に褒められてるのに、語尾が気になりすぎてそれどころじゃない。いたのか、現代日本にこんな語尾の人間が本当にいたのか。

 

「どうしたでヤンスか?」

 

「い、いえ、その……そ、そういうキャラで通すつもりなんですか……?」

 

 プロデューサーがここまで引き攣った顔をしているのを初めて見た。

 

「大丈夫でヤンス。多分飽きたら終わるでヤンス。具体的には後に二話ぐらい。三話は怪しいでヤンス」

 

 いや本当に語尾が気になりすぎて会話の内容も全く入ってこない。

 

「315プロに所属しているアイドルは、なかなか『キャラが濃い』という話を伺っていたでヤンスから、自分もそれに負けないぐらい濃いキャラで挑まなければ影が薄くなってしまうと思ったでヤンスよ」

 

 今現在アンタのキャラの濃さで俺たちが極限にまで薄まってるよ。

 

「……それでプロデューサー、結局彼は誰なんだ?」

 

 呆れ顔が一周して真顔になった桜庭がプロデューサーに問いかける。男性に直接話しかけようとしない辺り、この人のことをどう考えているのか手に取るように分かる。

 

「『社長が連れてくる大事なお客様』とやらの関係者か?」

 

「……ん? え?」

 

 何故か目を白黒させているプロデューサーに代わって、男性が「正解でヤンス」と答えた。

 

「流石鋭いでヤンスね桜庭さん。伊達に眼鏡をかけていらっしゃらない」

 

「眼鏡は関係ない」

 

「ちなみにアッシのこれは伊達眼鏡でヤンス」

 

「いやそれも関係な……一人称までそれなのかキミは……」

 

 凄い。あの桜庭がこれだけの短い会話であんなにも消耗させられるなんて。

 

「桜庭さんのご指摘通り、アッシは本日齋藤社長に招かれた『とある人物』の付き人みたいなものでヤンス。申し訳ないことに社長とその人が遅れているようでヤンスから、先に自分が事務所や所属アイドルのことを見せてもらっていたでヤンス」

 

「付き人みたいなものですか」

 

「大体そんな感じでヤンス」

 

 ちょっとだけ慣れてきた。とりあえず悪い人ではないみたいだし、プロデューサーが直々に連れてきたってことは悪い人でもないだろう。

 

「よし! それじゃあここはプロデューサーに代わって俺たちが案内してあげますよ!」

 

「なっ」

 

「えっ」

 

「ありがたい提案でヤンスけど、いいんでヤンスか?」

 

「勿論! 俺たちの事務所のことを、もっと多くの人に知ってもらいたいからな!」

 

「でも柏木さんはともかく、桜庭さんの顔が凄いことになっているでヤンスよ」

 

 男性が指さす先には、多分渋柿をゆっくり味わって食べてもあぁはならないだろっていうぐらい渋い顔をした桜庭が。

 

「いいだろ桜庭。さっきの自己紹介が出来ない以上、こうなったらこの人から『大事なお客様』にこの事務所のいいところを紹介してもらわないと」

 

「なんでその二択になるんだ……」

 

「まぁまぁ、いいじゃないですか薫さん。語尾は少し怪しいですけど、良い人そうですよ」

 

「少し?」

 

「……け、結構」

 

 そこは譲れないんだな桜庭。そして訂正しちゃうんだな翼。俺もそこには同意するけど。

 

「……まぁいい。僕も同行してやる」

 

「おっ、ようやく乗り気になったな」

 

「勘違いしないでくれ。不審者に変なことを説明しないように監視するだけだ」

 

 ひでぇ言い草。

 

「悪いな、えっと……」

 

「あぁ、そういえばアッシの自己紹介がまだでヤンスね」

 

 キャラの濃さにそれどころじゃなかった男性が、ようやく俺たち三人に対して自己紹介をしてくれた。

 

 

 

「アッシは……そうでヤンスね、今は『仕事人リョーさん』とでも呼んで欲しいでヤンス」

 

 

 

「やはり通報するべきだプロデューサー。キミは騙されている」

 

「薫さん! もうちょっと! もうちょっと様子を見ましょう!」

 

 正直俺も前言撤回したい。

 

 

 

 

 

 

(……えっと、本気ですか? 本気でそのキャラを押し通すつもりですか?)

 

 ドラマチックスターズ略してドラスタの三人に聞こえないように配慮して声を小さくしてくれるプロデューサーさん。

 

(さっきも言いましたけど、ずっとコレで行くわけではないですよ。俺が『俺』だとバレないようにするための偽装工作でヤンス)

 

(語尾抜けきってませんよ)

 

 齋藤社長が遅れているのは本当だ。だから俺がこうして一人で先に事務所へとやって来たのだが……。

 

(なんというかこう、久しぶりに悪戯心がフツフツと……ね?)

 

 思い出すなぁ。346プロでは出来なかったけど、初めて765プロへ行ったときはこんな感じで自分の正体を隠してたんだよなぁ。ケーキ屋さんだと勘違いした響ちゃんに事務所に案内されて……懐かしい記憶だ。

 

(……風の噂で『最近はトンと大人しくなった』と聞いていたのですが……全然そんなことないじゃないですか)

 

 そんな噂流れてるのか、我ながらウケる。

 

 

 

「おーいリョーさん、何こそこそ話してるんだー? 事務所案内するぜー!」

 

「おっとこれは失礼したでヤンス」

 

 天道さんに呼ばれ、自分のキャラを先ほど急造した『仕事人リョーさん』へと切り替える。ぶっちゃけまだキャラが固まりきってないからアドリブで作っていくしかない。

 

 さてさて、315プロではどんなアイドルに出会えるかな?

 

 

 




・『DRAMATIC STARS』
サイドエムの信号機トリオユニット。
知らない人はいいから黙って『MOON NIGHTのせいにして』を聞くんだ(迫真)

・天道輝
アイドルマスターsideMの信号機トリオの赤担当。
元弁護士という経歴を持つ28歳。デレミリ勢からしてみるとかなり年齢が高く見えるかもしれないけどエムマスだと割と普通。
特撮ヒーロー好きなので覆面ライダー関係でも色々とやりたい。

・柏木翼
アイドルマスターsideMの信号機トリオの黄担当。
元パイロットな24歳。パッションチックな輝に対して、黄色ながらキュート寄り。分かる人に伝われ。
いや本当に凄い食うのよ。

・桜庭薫
アイドルマスターsideMの信号機トリオの青担当。
元医者という経歴もありなかなか過去が重め。26歳。
なおアイ転では一番の被害者になる予定なのは言わずもがな。

・315プロのプロデューサー
通称石川P。今までのアニメPに対して厳しいことを言うかもしれないけれど、マジで優秀なお人。

・『仕事人リョーさん』
一体誰なんでヤンスか……!?



 ついに! ついにやってきました315プロダクション! 覚悟してください! これからしばらくは女の子成分皆無ですよ! 大丈夫女の子みたいに可愛い男性は何人かでますから! いやマジで!

 真面目な話。昔は書く気が一切なかったエムマス編がここまでくるとは思わなかったです。こうなったからにはしっかりと、それでいて趣味に走り、そしてさらにアイ転らしいお話にしていきたいと思います。



『どうでもよくない小話』

 総選挙グループA! 唯ちゃん2位&楓さん3位! やったぜ!
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