アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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sideMに876を混ぜて書きたかったお話。


Lesson335 フェイバリットなあたし

 

 

 

 こんにちは! 日高愛です!

 

 

 

 今日は絵理さんと一緒にお買い物です!

 

「こうして二人で出かけるのも久しぶり?」

 

「そうですね、最近はみんな忙しくなっちゃいましたもんね」

 

 三年前はまだまだ駆け出しの新人アイドルだったあたしたちだけど、今ではしっかり一人前のアイドル! ……同じユニットメンバーであるはずの涼さんや絵里さんと比べてソロの仕事は少ないけど。

 

 ただそのおかげで三人で一緒に出掛けることも少なくなってしまった。

 

「昔はお仕事なくて、お客さんのためのお菓子を買いに行くぐらい暇でしたもんねー」

 

「結局余計なことにお金使っちゃって怒られたね」

 

 今考えれば来客用のお菓子を買うために預かったお金でケーキ食べるって、なかなかアレなことしてたなぁあたしたち……。

 

「でも今ではそんなあたしたちでもすっかりアイドル!」

 

「そういうことは街中で言わないでね?」

 

「すみません……」

 

 それこそデビューしたての頃だったら、こんなことを言ったところで「へぇあの子たちアイドルなんだ」程度の認識で済んだだろう。しかし今は「あれ? もしかして?」と十人いたら二人か三人ぐらいは反応してくれる程度の知名度にはなった。今も二人揃って変装をしているので、気分は大物アイドル!

 

「髪をちょっと弄ったぐらいで気付かれなくなる程度の知名度?」

 

「ちょっと悲しくなるから言わないでくださいよ~……」

 

 話は戻るが、そんな風にアイドルとして忙しくなってしまったおかげでこうしたお出かけも少なくなってしまったのだ。

 

「涼さんも一緒だったら良かったんですけどねー」

 

「315プロの方に用事があるらしいからね」

 

 『あの一件』の直後は少しだけギクシャクしてしまったあたしたちだけど、今ではそういう蟠りも無くなった。あたしにとって涼さんは、頼れるお姉さんでありお兄さん。

 

「……あれ? 涼さん?」

 

「えっ!?」

 

 そんなあたしたち『Dearly Stars』の頼れる涼さんが――。

 

「……あ、あれぇ……!?」

 

 

 

 ――な、なんか知らない女の人と、腕を組んで歩いてるんですけどぉ!?

 

 

 

 

 

 

『りょーおにーさん助けて!』

 

 

 

 まずは俺の鼓膜を助けてもらいところではあるが、流石に可愛い妹分の救援要請ともなればそんなことも泣き言も言っていられない。痛む右耳からスマホを遠ざけて左耳で愛ちゃんの話を聞く。

 

「ど、どうしたの? なにかトラブルに巻き込まれた?」

 

『とにかく大変が大変で大変なんですぅ!』

 

「大変が大変なのは分かったからもうちょっと詳細を……」

 

 どうにもテンパっている様子の愛ちゃんからは大変以上の情報が出てこない。さてどうしたものかと思ったら、スマホの向こうから『ちょっと代わって』という声と共に愛ちゃんの声が遠ざかっていった。

 

『良太郎さん』

 

「あ、絵理ちゃんも一緒だったんだね」

 

 よかった、愛ちゃんよりもしっかりと事情を説明してくれそうな子が近くにいた。

 

『涼さんが浮気した』

 

「君も落ち着け」

 

 大声でテンパってる子から静かにテンパってる子に代わっただけじゃねぇか!

 

 

 

 要約すると。

 

「315プロに行ったはずの涼が知らない女の子と腕を組んで歩いてた、と」

 

 はい、先生がこの一文を読み取るために五分かかりました。本当に緊急事態だったらどうするつもりですか。

 

『そーなんですよ! 一体あの子は誰なんですかぁ!?』

 

「俺に言われても」

 

 ワンチャン俺なら知っているかもしれないという可能性を考えて連絡してきたのかもしれないが、残念ながら何も分からない。俺が分かるのは、()()()()()()()()()()()()()()()ことでこの子たちがテンパってしまった理由ぐらいである。

 

「聞いてみたらいいんじゃない? 『その私たちの知らないメス猫は何なのよ!』って」

 

『なるほど!』

 

「やっぱちょっと待とうか」

 

 普段の他の人とのノリだと『そんなこと聞けるわけないじゃないですか!』と返ってくるところだったのだが、それに対して積極的な反応を示してしまった愛ちゃんへ逆に待ったをかける。

 

「絵里ちゃん、やっぱり愛ちゃんの情操教育ちょっと失敗したんじゃない?」

 

『これはこれで』

 

 ちなみにスピーカーに切り替えてもらったので、二人と同時に会話出来ている。

 

(それにしても、あの涼が女の子と腕を組んで、ねぇ……)

 

 涼がモテないというつもりはないが、それでも意外だった。本人は否定するかもしれないがなんだかんだ言って愛ちゃんと絵理ちゃん、()()()()()()()()だし。最近では夢子ちゃんというニューカマーが現れたことで若干行く末が見えづらくなったものの、最終的にこの中の誰かとくっつくものだとばかり考えていた。

 

 いや、そもそも涼がその女の子と付き合っていること自体疑わしいところである。

 

「その女の子、実はメッチャ少女趣味な格好したりっちゃんだったってオチは?」

 

『流石のあたしでも律子さんを見間違えたりしませんよぉ!』

 

『律子さんにしては可愛すぎる動きだったから、それはないかも? というか律子さんがあんな仕草する姿は想像できない? というか大爆笑?』

 

「まぁそもそもりっちゃんは今俺の目の前にいるんだけどね」

 

『えっ』

 

 たまたま今日収録する歌番組で共演する竜宮小町がりっちゃんと共に楽屋に遊びにきてたところだったのだ。そしてこちら側も先ほどスピーカーにしたため、この会話もりっちゃんたちに筒抜けである。

 

「絵里ちゃん、今度ゆっくりお話ししましょうね?」

 

 底冷えするようなりっちゃんの声に、向こう側から絵理ちゃんの『ひぇっ』と息をのむ声が聞こえてきた。俺の隣に座る亜美ちゃんや、りっちゃんの両隣に座る伊織ちゃんやあずささんまでも顔を蒼褪めていて、きっと絵理ちゃんもこんな顔になっていることだろう。

 

「それでりっちゃん、涼と腕を組んで歩きそうな女の子に心当たりある?」

 

「いや、私もアイツがそういうことしそうな相手っていうと愛ちゃんと絵理ちゃん以外に思い浮かばないわ。アンタみたいに甲斐性ないだろうし」

 

「え、俺って甲斐性あるの?」

 

「……え、良太郎って甲斐性あるの?」

 

「なんで自分で言ったことに疑問を抱いてるのよ」

 

 ビックリしてりっちゃんに尋ねてみたら、何故かりっちゃんもビックリして伊織ちゃんに尋ねていた。本当にどういうことだよ。

 

「甲斐性の有無はよく分かりませんが、確かに良太郎君はいつも女の子と仲良さそうに歩いてることが多いですよね~」

 

「そ~だよね~、りょーにーちゃんはそんなイメージ~」

 

 あずささんと亜美ちゃんは肯定してくれて、自分でもそういう自覚はあるのだけれど、当然のようにそう認識されるのはなんだか釈然としない。せめて甲斐性ぐらいはあると信じたい。

 

『りょーおにーさんのかいしょーなんてどうでもいいです! 今は涼さんのことです!』

 

「おいコラ」

 

 俺の甲斐性はどうでもよくないぞ!? 一応これでも億稼いで滅茶苦茶可愛い婚約者もいるんだぞ!? 他の二十二歳と比べると破格の甲斐性と言っても過言ではないぞ!?

 

「よぉしいいだろう。そこまで言うなら俺の甲斐性ってやつを見せてやろうじゃないか。二人とも今何処?」

 

『えっ!? わ、私たちですか!? え、えーっと……』

 

 愛ちゃんが教えてくれた二人の現在位置は、このスタジオからそれほど遠くない場所だった。今から自分の車を駐車場から出していては時間がかかってしまうが、タクシーを使えばすぐだろう。

 

「えっ、良太郎!? アンタまさか!?」

 

「ちょっとこの後リハーサルよ!?」

 

 俺の考えに気付いたらしいりっちゃんと伊織ちゃんがギョッとして立ち上がった。

 

「大丈夫大丈夫。まだ時間あるし、スタッフには一言断っておけばそれぐらい融通効くから」

 

「……喉元まで『アンタ何様よ』って言葉が出かけたわ」

 

 あいあむナンバーワンあいどるおぶざワールド。

 

「最近ずっと大人しくしてたし、これぐらいの我儘だったらそろそろ許されるでしょ。愛ちゃん、今からそっち行くね」

 

『分かりました! 待ってますね!』

 

 最後まで元気が良すぎる声だった愛ちゃんとの通話を終了する。

 

「てなわけで、ちょいとお出かけしてきます」

 

「遅くなってスタッフさんのご迷惑にならないようにしてくださいね~」

 

「いや出かけること自体が既に迷惑……」

 

 ボソッとツッコむ伊織ちゃんの声は聞こえなかったフリをして、手を振ってゆるふわと見送ってくれるあずささんに「いってきますね~」と手を振り返す。りっちゃんは既に説得するのを諦めたらしく、俺の楽屋に用意されてあったお菓子を食べていた。美味しいよねそれ。

 

 しかしそこに亜美ちゃんが「えー!?」と待ったをかけた。

 

「りょーにーちゃんだけ遊びに行くのずっこーい! 亜美も行くー!」

 

「はぁ!? アンタまで何言い出してんのよ!?」

 

「亜美たちだってリハまだでしょー!? 行きたい行きたい行きたいー!」

 

「高校生にもなってくだらないことで我儘言わない!」

 

 伊織ちゃんに叱られながらも、亜美ちゃんは引き下がらない。

 

「ちょっと良太郎! 見なさい!」

 

「うん、やっぱり亜美ちゃんは大きくなる素質があると信じていたよ」

 

「誰が胸を見ろっつったかぁ!?」

 

 言葉を省いたりっちゃんにも1%ぐらいは責任があると思う。

 

「アンタのせいで亜美までこんなこと言い出しちゃったじゃない! どうすんのよ!?」

 

「うーむ……しょうがない、ここは俺が責任を取るよ」

 

「えっ」

 

 俺は席を立つと、亜美ちゃんの後ろを通って入口に向かいながら彼女の肩をポンと優しく叩いた。

 

「亜美ちゃん」

 

「うっ……りょーにーちゃん、自分だけズルい……」

 

「ズルい?」

 

 はっはっは、心外だな。

 

 

 

「ほらさっさと行くぞ亜美ちゃん!」

 

「ひゃっほー! りょーにーちゃん大好きー!」

 

 

 

「「コラァァァ!?」」

 

「二人ともいってらっしゃ~い」

 

「「お土産買ってくるねー!」」

 

 りっちゃんと伊織ちゃんの怒鳴り声とあずささんのお見送りの言葉を背中に、俺と亜美ちゃんは足早に楽屋を後にするのだった。

 

 

 

(……ん? 『315プロに行った』? 『女の子』?)

 

 あっ(察し)

 

 

 




・こんにちわ!
初手音量MAXは基本。

・来客用のお菓子を買うために
最近になってようやく買った漫画版愛ちゃん編でのエピソード。

・テンパってしまった理由
つまりそういうことである。

・他の二十二歳と比べると
冷静になって考えると普通にヤバいスペック。

・亜美ちゃんは大きくなる素質がある
双海姉妹は二十歳になる頃にはとんでもねぇスタイルになっていると確信してる。



 最近良太郎が大人しかったからたまには暴走させようと思った。生き生きしてる良太郎を書くのは楽しかった(小並感)

 というわけで???編です。伏せるまでもなくあの子です。サイドエム編に876プロを登場させた理由といっても過言ではありません。可愛く書けたらいいな。
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