アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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読み飛ばし注意?


Lesson337 フェイバリットなあたし 3

 

 

 

「さて、それじゃあお互いに改めて自己紹介でもしようか」

 

 結局尾行がバレた俺たちは、涼と共に歩いていた()へと自己紹介をする流れとなった。

 

「……あれ!? りょーおにーさん、ちょっと待って!?」

 

「お話飛んでない!? 大丈夫!? コレ本当にLesson336!?」

 

「大丈夫大丈夫、間違ってないよ。ちょっと描写されてない行間が多かっただけ」

 

 どうやってネタバラしをするのが面白いのか考えながら行動してたら愛ちゃんのフォローに入るのを忘れてしまったため、涼が愛ちゃんと絵理ちゃんへのプレゼントを選んでいるということに気付いた愛ちゃんが「えっ!? そうなんですか涼さん!?」と大声を出してしまったのだ。

 

 お相手が涼だけだったならば誤魔化して気付かなかったことにしてもらえばよかったのだが、一緒にいる子が「アレ!? もしかして日高愛ちゃん!?」と気付いてしまったためにそれも出来なくなってしまった。

 

 ということで、(主に俺が)観念して涼たちと合流することとなったわけだ。

 

「うぅ……ごめんなさい、涼さん……」

 

「反省してます?」

 

「愛ちゃんはともかく、絵理ちゃんはせめて反省の言葉ぐらいは疑問符付けないで?」

 

 愛ちゃんと絵理ちゃんの謝罪の言葉(?)を受け入れつつ、涼は苦笑と共に溜息を吐いた。

 

「そうだよ二人とも、反省しないと」

 

「そーだよー! 気になるのは分かるけど、尾行はダメっしょー!」

 

「良太郎さんと亜美さんのそれはツッコミ待ちですよね?」

 

 一通りのお約束を済ませたところで、そろそろ置いてけぼりにしてしまっている最後の一人に目を向けていこう。

 

「あははっ! 人気者だね、りょうちん!」

 

 カラカラと笑う()は、愛ちゃんたちの予想通り、なんと男性なのであった。……なんて引っ張った割には、まぁその正体に関してはお察しの通りなのだが。

 

「改めまして初めまして! あたしは315プロ所属の水嶋咲! よろしくね、愛ちゃん! 絵理ちゃん! 亜美ちゃん!」

 

「は、初めまして! ……え、315プロってことは……!」

 

「ほ、本当に、男性……!?」

 

「うん、そーだよ! 男だよ!」

 

「「「えぇぇぇ!?」」」

 

 咲ちゃんの正体に驚愕する愛ちゃんと絵理ちゃんと亜美ちゃん。先ほど『実は男性』という予想を立てていたが、まさかそれが本当に当たっているとは思わなかったのだろう。

 

「こ、こんなに可愛いのに……!」

 

「ありがとー! でも、可愛いは男の子も女の子も関係ないでしょ? あたしはただ、可愛くありたいの」

 

「なるほど!」

 

 咲ちゃんの考えを一瞬で理解する愛ちゃん。普段はあまり褒められない状況が多い彼女の理解の早さもこういうときに輝く。

 

「でも涼さんとデートしてた事実には変わりない?」

 

「デート!?」

 

「あははっ、二人きりでのお出かけをデートって呼ぶならそうかもしれないけど、そもそも今日のりょうちんはずっと……」

 

「わー!? 咲ちゃんストップ!」

 

 あっさりと何か大事なことをバラそうとした咲ちゃんの言葉を遮る涼。多分咲ちゃんから問いただされて、色々とゲロっちゃったんだろうなぁ。

 

「「怪しい……」」

 

「何も怪しくないって! ほ、ほら! 折角だし、みんなでどこか甘いものでも食べに行こうよ! ね!?」

 

「甘いもの! 食べます!」

 

「はい決まり! ほら絵理ちゃんも! 良太郎さんや亜美さんもよかったら!」

 

「……分かった」

 

「いーじゃん! 亜美もさきさきとおしゃべりしてみたかったんだよね~!」

 

「あははっ、なんだか楽しくなってきちゃった!」

 

 うーん、当初想定していたものとは違う流れになって来たけど、コレはコレで。

 

 ……ん? りっちゃんからメッセージ?

 

『ちょっと、アンタがいないって知ってADさん半泣きなんだけど!?』

 

 ……ふむ。

 

『大丈夫、アイツは逆境を乗り越えることで強くなるタイプだから』

 

 さて、それじゃあこの近くでおススメの甘いものは、っと……。

 

 

 

 

 

 

「え、それじゃあ咲さんが涼さんのユニットメンバーになるってことですか!?」

 

「そうだよ。ユニット名は『(セカンド)Blossom(ブロッサム)』。ある意味で二回開花してるあたしたちにピッタリのユニット名。プロデューサーが考えてくれたんだ」

 

 ここは毎度おなじみ喫茶『翠屋』……ではなく、パフェで有名だった近場の喫茶店。生憎ここから翠屋まで移動しては時間がかかりすぎるので、今回はお預けである。すみません士郎さん桃子さんなのはちゃん、また別の機会に貢献するので……。

 

「ぶ~……涼さんはあたしたちの大事なユニットメンバーなのに……」

 

「あははっ、ごめんごめん! でも今回のユニットでようやくあたしはデビュー出来るの」

 

「えっ!? そうなんですか!?」

 

「うん。だからね? ちょっとだけりょうちんのこと貸して? ね?」

 

「う~……でも~……」

 

 両手を合わせて可愛らしく懇願する咲ちゃん。しかし普段の聞き分けのいい愛ちゃんにしては珍しく、しっかりと理由を説明されても渋っていた。それだけ(無自覚にとはいえ)涼のことを特別だと考えているのだろう。

 

「……愛ちゃん、僕からもお願いしたいんだ」

 

「涼さん……」

 

 それまで黙って事の成り行きを見守っていた涼が口を開いた。

 

(……お願いしたいっていう言葉のチョイスが完全にアレだよね)

 

(やっぱり涼さん浮気……)

 

(ひゃーりょうちんやる~)

 

「良太郎さんたちはちょっと黙っててもらえます!?」

 

 涼に怒られたので三人揃ってお口にチャック。

 

 緩んでしまった空気を、涼がコホンと咳払いをしてリセットする。

 

「今回のライブは、僕にとっても大きな転換期になると思うんだ。876プロでも男性アイドルとして活動出来てるし、これからも876プロから離れるつもりはない。でも()()()()()()()()()()()()の垣根を超えた、新しい境地に至れるような気がするんだ」

 

「………………」

 

「……多分」

 

「「「多分!?」」」

 

「そこ日和っちゃうか~」

 

 俺が言えた立場にはいないけど、そこはビシッと決めるべき場所だったのでは。

 

「……う~、分かりました! でもあたしたちと別のチームに所属することになる以上、容赦しませんから覚悟してくださいね!」

 

「手加減無用? ぎったぎたにしてやんよ」

 

 フンスとやる気をみなぎらせる愛ちゃんと、シュッシュと拳を突き出す絵理ちゃん。

 

「……ありがとう、二人とも!」

 

 さて、どうやら話がひと段落が付いたようなので。

 

「亜美ちゃん、俺たちはそろそろお暇させてもらおうか」

 

「えー!? もーちょっとだけー!」

 

「ダメ、流石にこれ以上は間に合わなくなる」

 

 確かにADが泣くような無茶はしているものの、収録スケジュールに穴を開けるようなことをするわけにはいかないし、亜美ちゃんにさせるわけにもいかない。

 

「その線引きは大事。亜美ちゃんはそれが分からないような悪い子じゃないでしょ?」

 

「むー」

 

 むくれつつも亜美ちゃんは納得してくれた様子である。

 

「そんなわけで、俺たちは先に失礼するよ」

 

「はい、ありがとうございます……で、大丈夫なんですかね……?」

 

「確かに良太郎さん、何もしてない?」

 

 涼と絵理ちゃんからの指摘が痛い。確かに何もしてねぇ……。

 

「へいへいりょーにーちゃん、Tシャツに書かれた甲斐性の文字が泣いてるぜ~!?」

 

 くっそ、亜美ちゃんまでここぞとばかりに煽ってきやがる。

 

「……確かに今の俺には甲斐性が足りていない。それは認めざるを得ない」

 

「いや流石にそこまで言うつもりはなかったですけど……」

 

「故にこの『甲斐性ありm@s』Tシャツは涼に託そうと思う」

 

「クソTシャツ押し付けようとしないでもらえます!?」

 

 実は服の上から着ていたTシャツをさっと脱いで涼に託す。

 

「忘れるな涼、このTシャツに込められた真の意味を」

 

「絶対にそんなものないですよね!?」

 

「いずれお前にも分かるときがくるさ……具体的には次話」

 

「絶対に嘘ですよね!?」

 

 なんて言いつつも一応受け取ってくれる涼は本当に律儀である。押しに弱いとも言う。

 

 

 

 

 

 

「……嵐のように去っていった……」

 

 僕にTシャツを押し付けた良太郎さんは、実はTシャツと一緒にこっそりと一万円札を僕に握らされていた。あとでメッセージに『支払いよろしく』と来ていたので、どうやらこの場は僕の支払いということにさせたいらしい。……変なところで律儀というか、逆の方向性でカッコつけたがり、というか……。

 

「……はぁ、緊張した~」

 

 良太郎さんがと亜美さんが喫茶店を去ってしばらくすると、咲ちゃんが苦笑しながら肩の力を抜いた。

 

「あたし、今トップアイドルの『周藤良太郎』と一緒に話してたんだよねぇ……」

 

 ……あ、そうか、僕たちは良太郎さんと昔から知り合いだったけど、咲ちゃんはそうじゃなかったから。

 

「一回だけ事務所に来てくれたんだけど、未だに緊張しちゃうんだよねー」

 

「大丈夫ですよ咲さん、慣れます!」

 

「な、慣れちゃうんだ……」

 

「というか、呆れる?」

 

「呆れる!? ……いや、リョーさんだったときのことを考えると、そういう表現があってるのかもねー」

 

 聞いた話では、良太郎さんは『仕事人リョーさん』という別人を騙って315プロへと赴いたらしい。いかにも良太郎さんがやりそうなことである。

 

「……ねぇ、りょうちん」

 

「はい?」

 

()()()()周藤良太郎さんが挙げた動画って……多分、君のためだったんだよね?」

 

「っ」

 

 咲ちゃんが口にした『あのとき』という言葉。なんの具体性もないその言葉は、しかし僕にはその言葉が持っている意味を正しく理解出来た。

 

 

 

『ちょっと本気出して、女性になってみた』

 

 

 

 ……それが()()()()、良太郎さんが事務所の公式チャンネルで公開した動画だった。

 

 内容は知り合いのメイクさんと協力して『全力で女性になった』良太郎さんが、架空の女性アイドルとして歌って踊る異色の動画。元々顔立ちが中性的に近かった彼がメイクの力と自身の演技力により、その過程をずっと見ていたとしても『本物の女性』だと誤解してしまいそうになるクオリティに仕上がっていて大変な反響を見せた。

 

 『周藤良太郎』の動画なのだから反響が大きいのは当然なのだが……その動画が公開された時期が――。

 

 

 

 ――僕が本当の性別を暴露して、活動謹慎中のことだったのだ。

 

 

 




・「お話飛んでない!?」
別に書くのが面倒になったわけではない(注意)

・ADさん半泣き
良太郎の奇行に半泣きするのでまだ半人前。

・『ⅡBlossom』
カフェパレPとフラッグPには申し訳ないと思っています……。

・具体的には次話
予定は未定()

・あのときの動画
実はやってた。



 次回、ようやく876プロに何があったのかを語ります。大丈夫咲ちゃんを空気にしたりしないから。
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