アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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一方その頃の少女視点。


Lesson340 私たち、ドルヲタアイドルです! 2

 

 

 

「むむむぅ……」

 

 

 

 何故だろう、最近亜利沙さんの様子が少しだけおかしい。

 

「亜利沙さんがおかしいのはいつものことじゃない?」

 

「翼、流石にそれは失礼だよ。たまにおかしいだけでいつもではないよ」

 

「未来、貴女も失礼よ。そもそも私はいつもよりテンションが低めに様子がおかしいと言っているの」

 

 いや私も含めて散々な言いようになってしまったが、とにかく様子がおかしいのだ。

 

 ただおかしいと言っても翼や未来が言ったようないつものハイテンション的な意味でのおかしいわけじゃなく、寧ろその逆。今のように、少々テンション低めに何かを思い悩んでいるかのような溜息を吐く姿を度々見かけるのだ。

 

「うーん、亜利沙さんが悩んでいるとしたら、きっとアイドル関係だよね」

 

「いつもの傾向からするとその可能性は高いわよね」

 

 未来の発言に同意する。第一候補としてはアイドルのライブのチケットが当たらなかったとか、ライブの日付が何か別の予定と被ってしまったとか、そっち関係だろう。

 

「あ! もしかしてあれじゃない! 最近発表があったあれ!」

 

「あれ?」

 

「そう、あれ!」

 

「……あ、わたしも分かったかも!」

 

 未来と翼は何か心当たりがあるようだが、私は分からず首を捻る。

 

 

 

「10月からついに始まるミリオンライブ(わたしたち)のアニメだよ!」

 

「なんと8月から劇場で先行上映するらしいよ!」

 

 二人して一体何を言っているのか(前売り券も発売中よ)

 

 

 

「でも亜利沙さんの様子から、何かを楽しみにしてるって感じではないよね」

 

「普段の亜利沙さんなら、それすらも楽しんでる感じだもんね」

 

 コソコソと亜利沙さんに聞こえないような声量で会話を続ける。無粋だとは思いつつも、やっぱりこういう話をするのは少々ワクワクするものである。

 

「……! アイコピー!」

 

「なにか分かったの!? ツバサトップガン!」

 

 どちらかというとツバサテイオーな気がする。

 

「これはきっと『恋のLesson初級編』に間違いないよ!」

 

「どうしていきなり自分のソロ曲の宣伝を……!?」

 

「そうじゃなくて、ね!?」

 

「……あ、なるほど!」

 

 翼と未来が女子中学生らしく目を輝かせる。かくいう私もその可能性が改めて示唆されてちょっとドキッとしてしまった。

 

「でもその場合、相手が誰なんだろーって話になるけど……」

 

「そうなったらその相手は一人に決まってるじゃん! ほらほら! 亜利沙さんと仲がいい男性っていったら、ほら!」

 

「……あぁ」

 

 未来の言葉に思い浮かぶのは、劇場のアイドルとやたらと仲のいい不思議な男性『遊び人のリョーさん』から日本が世界に誇る超トップアイドル『周藤良太郎』にランクアップした無表情の男性の姿。

 

「プロデューサー?」

 

「も~! 翼ってばとぼけちゃって~」

 

「?」

 

「あっ、違う、コレ本気でその選択肢が頭に浮かばないガチな奴だ……」

 

 本当に嫌いなのね……。

 

 ともあれ、亜利沙さんがあんなにも深く想いを馳せる相手が良太郎さんならば納得出来た。

 

 亜利沙さんは劇場でアイドルを始めるよりも前から良太郎さんと知り合いらしく、劇場でも度々楽しそうに話をしている姿を見かけたことがある。たまに意見が食い違ったらしく、お互いに両手を上げて威嚇をするという珍妙すぎる場面に出くわしたこともあるが、そんな感情をむき出しにするほど仲が良いということでもあるのだろう。

 

 ……そんな気心しれてた友人の男性が、実は誰もが憧れるトップアイドルだった。

 

「凄いよね~まるで少女漫画みたいだよね~」

 

 

 

「分かります! そうですよね! まるで物語みたいですよね!」

 

 

 

「うわビックリした!?」

 

「百合子さん!?」

 

 何故か鼻息が荒く興奮した様子の百合子さんが突然生えてきた。

 

「そう、その出会いは偶然だった! 少女は街中で偶然出会った青年と仲良くなるが、なんとその青年の正体はその国の王子様! 青年は自らの身分を隠しつつ少女との相瀬を重ねるが、やがて少女が真実を知る日が訪れる! あぁなんという悲劇! 身分が分かつ二人の恋の行方は――!」

 

「ごめん……回収していくね……」

 

 そして何やら熱く語り始めた百合子さんは、またもや突然現れた杏奈さんによって引き摺られていった。

 

「……今のなんだったんだろう」

 

「さぁ……?」

 

 

 

「……さ、流石にそれはありさにも聞こえてますよ……そ、そんなんじゃないのに~……」

 

 

 

 

 

 

「むむむぅ……」

 

 

 

 何故だろう、最近りあむさんの様子が少しだけおかしい。

 

「まぁりあむさんがおかしいのはいつものことデスね」

 

「ちょっと待てぇぇぇい!? 同じ状況なのにぼくの方は扱いが雑ぅぅぅ!?」

 

 一体何が同じ状況なのかは分からないが、こっちから関わらないようにしたのに向こうから来てしまった。

 

「聞こうよ!? そこは『りあむさんどうしたんデスか?』って聞こうよ!?」

 

「聞きたくないし」

 

「『興味ない』以上にシンプルな拒絶!」

 

 とはいえレッスン中の休憩時間でこの場から立ち去ることも出来ない以上、どうやらこれはスキップ不可の強制イベントらしい。

 

「……デ? りあむサンハ一体ドーシタンデスカー?」

 

「うわ超棒読み……でも聞いてくれたからいいや!」

 

 こんな塩対応でもいいとかどんだけ聞いてもらいたかったんデスか。

 

「実は今度、久しぶりにアイドルオタクの仲間たちと集まることになってさ」

 

「はぁ」

 

「……もし、もしだよ? 万が一だよ? サインとかファンサービスを求められちゃったら、どれぐらいならしてもいいのかなーって」

 

「うわくだらねぇことで悩んでんなぁ」

 

「この際罵倒はいいけど口調はもうちょっとマイルドにしてもらっていいかなぁ!?」

 

 涙目でギャーギャー騒ぐりあむさんをあしらいつつ、しかしふと気付いたことがあった。

 

「そのアイドルオタク仲間の中には、以前お会いした『リョーさん』もいるんですよね?」

 

「え? うん。寧ろそのリョーさんが中心になって集まった感じ」

 

 以前街中で顔を合わせたりあむさんの知り合いだという『リョーさん』。りあむさんをおちょくりつつ随分と仲良さそうな雰囲気だった男性だが、その正体はなんとあの『周藤良太郎』だった。

 

 

 

 ――も、もしかして、りあむさんは知らないんデスか……?

 

 ――まだ教えてないからね。

 

 

 

 こっそりと私にだけ正体を明かしてくれた彼は、りあむさんにも『いずれ教えてあげるタイミングはあると思う』と話していた。

 

「いやーリョーさんってば口ではそんなに興味なさそうにしてたけど、あのときと違って今の僕はトップアイドルと言っても過言ではないからね! きっと会った瞬間に握手とかサインとか求めてくるに決まってるよ! いやーリョーさんってばチョロいなー!」

 

「おめでたい頭デスね」

 

「え? 今何か言った?」

 

「おめでとうございますって言いました」

 

 しかしどうやらこの感じからすると、まだりあむさんには自分のことを話していないらしい。

 

(……そういえばこの人、八事務所合同でのリモート会議のときもリョーさんに『周藤良太郎』と話したことを自慢してたっけ……)

 

「え、どうしたのあきらちゃん、何その目」

 

「いえ何も。きっと楽しい集まりになるでしょうね」

 

 滑稽とすら思えなかった。良太郎さんは自身の正体をりあむさんに明かした場合『うら若き乙女が涙と鼻水と涎を垂れ流しながら五体投地してる姿を晒すことになる』と称していたが、寧ろそれぐらいで済めばいいのだが。

 

「今まで散々揶揄われてきたリョーさんに仕返しするチャンスなんだから、もっとしっかりと作戦を練らないと」

 

 どうしてこの人は自分で自分の墓穴を掘るのが上手なんだろうか。

 

「というか、そもそもその身内っていうのはりあむさん以外はみんな一般人なんデスか?」

 

「……いや~、それが実はね~」

 

 

 

「……へぇ、りあむさんを含めて五人中三人がアイドルに」

 

「そーなんだよ! ビックリじゃない!? アイドルに対してブヒブヒ言ってたただのオタクがアイドルだよ!?」

 

 それに関しては純粋に驚いているが、りあむさんに集合写真を見せてもらってことで少しだけ納得してしまった。

 

(オタク集団の癖に顔面が良すぎる件について)

 

 カラオケボックス内で撮影された男性二人女性三人の五人組の写真なのだが、どいつもこいつも顔が良い。

 

 まずは良太郎さん。この写真を撮影した頃は誰もアイドルじゃなかったとりあむさんは言っていたが、時系列的に考えると余裕でトップアイドルやってた頃。黙っていればイケメンの極致。#黙っていれば。

 

 次にもう一人の男性、今は315プロでアイドルをやっている渡辺みのりさん。元はお花屋さんだというポニーテールの長身の男性。ニコニコと優しく微笑む姿は、なるほど王子様系のアイドルである。

 

 そしてツインテールの女性が、765プロでアイドルをやっている松田亜利沙さん。彼女の芸風というかテンションというか、普段どのような感じにアイドルをしているのかを知っているので微妙な気持ちになるものの、それでも写真の中で笑う姿は正統派美少女そのものである。

 

「……まぁりあむさんは飛ばして」

 

「ぼくは何を飛ばされたの……?」

 

 最後に残った一人。亜利沙さんよりも低めに結んだ黒髪ツインテールに眼鏡をかけた彼女が、どうやらこの五人の中で唯一の一般人になるらしいのだが、彼女も例に盛れず美少女である。なんというか『クラスでもそんなに目立たないけど「こいつの可愛さは俺だけが知っている」と多くの男子生徒が考えていそうなタイプ』の美少女である。※個人の感想デス。

 

 そんな顔面のいい男女五人組。一見してみると大学の陽キャサークルのようにも見えなくもないのだが……。

 

「………………」

 

 スッとりあむさんのスマホの画面を横にスワイプする。

 

「あ、これはカラオケで円盤鑑賞会したときの写真だねー」

 

 

 

 そこには、先ほどの顔面のいい五人組が半狂乱になってサイリウムを掲げる姿が。

 

 

 

「うわぁ……」

 

 思わずそんな声が漏れてしまうぐらい残念な光景だった。どいつもこいつも写真なのに『うっひょー!』という声が聞こえてきそうな表情である。※良太郎さんを除く。

 

「いやぁ楽しかったなぁコレ。アイドルやってるときも楽しいけどこうやってオタクやってるときも楽しいんだよね!」

 

「……まぁこれだけ全力になれれば、ねぇ」

 

 なんかりあむさんのことに興味を持つことが少々癪だが、それでもこのオタク集団のことが少し気になりつつある自分がいた。

 

 

 

「あ、良かったらあきらちゃんも来る?」

 

「はっ」

 

「鼻で笑ったな!?」

 

 

 




・ミリオンライブのアニメ
長かったなぁ……。
なんか劇場版後の時間軸の可能性があるらしいんだけど、ワンチャン設定噛み合う?

・ツバサトップガン
・ツバサテイオー
かくいう静香はモガミルドルフ。

・顔面のいい五人組が半狂乱になってサイリウムを掲げる姿
日常風景。



 オタク女子組二人視点のお話でした。ようやく次話には最後の一人の登場になります。
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