アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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ほぼシャニマス編。


Lesson348 覇王世代の宴 2

 

 

 

「ど、どういうこと? アタシが理解出来てないだけ……?」

 

「いえ、私もよく分からなくなってきました……」

 

 良太郎さんや麗華さんが「アイドルの同期だ」と公言しているのに、アイドルデビューしていない……? 

 

「そのことに関していえばそれほど難しい話ではありませんよぉ?」

 

「え?」

 

「例えば……恵美ちゃん、私たちがデビューしたのっていつでしたっけぇ?」

 

「えっと……二年前の年明け」

 

「それじゃあ、私たちが()()()()()()()()のは?」

 

「んー、それは……あ、そういうことか」

 

「そういうことですか」

 

 まゆさんの例え話に、恵美さんと共に理解することが出来た。

 

 恵美さんとまゆさん、そして私も、一応765プロのアリーナライブには()()()()()()()立っている。つまり『アイドルになった』ことと『アイドルデビューした』ことは別だということか。

 

「私も少々気になって調べてみたのですが、やはりデビューしていらっしゃらないアイドルの情報というものはなかなか残っていませんでした。特に緋田美琴さんは当初無所属での活動だったそうで……」

 

「そうなると、余程アイドルに精通していらっしゃる方じゃなければ緋田美琴さんのことは知らない、ということですね」

 

 

 

 

 

 

「……は、ハーックション!」

 

「っ!? あ、亜利沙さんまた写真撮ろうとしてたでしょ!?」

 

「あぁ、バレ……!? い、いえそんなことしてませんよ!?」

 

 

 

 

 

 

「それ以外に分かっていることは、現在は283プロに所属していること、それ以前は961プロに所属していたことぐらいですねぇ。961プロに所属することになった経緯を含め、良太郎さんたちとの交流が無くなってからのことが何も分かりませんでしたぁ……」

 

 まゆさんは『緋田美琴』の横に『?』を書くと、そこから右に矢印を伸ばし、右端の部分で『961→283』と書いた。

 

「そうなると、これ以上アイドル『緋田美琴』のことは何も分からないのかー」

 

「ごめなさい志保ちゃん、あまりお役に立てず……」

 

「あ、いえ、どうしても知りたかったこと、というわけでもないので……」

 

「お詫びとして、律子さんが活動していた時期の『周藤良太郎』の解説を……!」

 

 これは長くなりそうだな……と内心で覚悟を決める。

 

「お疲れー。……どうしたお前ら、ホワイトボードなんて引っ張り出してきて」

 

 あ、冬馬さんが戻って来た。

 

「ん? ()()()()がハテナ? 本当に何やってたんだお前ら」

 

 

 

「「「……緋田先輩!?」」」

 

 

 

 意外な人物から意外な発言が飛び出してきて、思わず三人で叫んでしまった。

 

「うるせぇなぁ……いきなり叫ぶんじゃねーよ」

 

「す、すみません、思わず……」

 

「そんなことより、冬馬さん、緋田美琴さんと知り合いだったの!?」

 

 顔を顰める冬馬さんに思わず謝ってしまったが、恵美さんはそんなことはお構いなしに冬馬さんに詰め寄った。

 

「知り合い……まぁ、知り合いっちゃ知り合いか。仲良かったわけじゃねぇが、事務所の廊下やレッスン室で何回か話したことあるし」

 

「……あっ、そうか冬馬さん、というか『Jupiter』の三人は……!」

 

 元961プロダクション!

 

「で? お前ら本当になんなんだ?」

 

「えっと、実はですね……」

 

 

 

「ふーん、緋田先輩の昔のことねぇ」

 

「初めはただの興味本位だったんですけど、こうやって情報を纏めている内に分からないことが増えてしまって……」

 

 なんというか、まるで過去を解き明かすミステリーを読んでいるような感覚になって楽しくなってきてしまった。

 

「冬馬さん、何か知ってますか?」

 

「つっても、さっきも言ったが仲が良かったわけじゃねぇから詳しい事情は何も知らんぞ」

 

「ですよねぇ。正直アテにはしてませんでしたぁ」

 

 まゆさんの毒舌で冬馬さんのこめかみに青筋が浮かぶが、割といつもの光景である。相変わらず当たりが強いなぁ。

 

「でもまぁ……緋田先輩は事務所でもそれなりに有名な人だったからな。知ってることはそれなりにあるぞ」

 

「有名な人?」

 

「……961で一番の変わり者、だよ」

 

 

 

 

 

 

 俺が黒井のおっさんにスカウトされたときには、もう緋田先輩は961にいたんだ。勿論いつ頃からいたのかとか、どうして961だったのかとか、その辺りの詳しい事情は知らねぇ。

 

 でも緋田先輩は事務所内で随一の変わり者だった。変わり者で有名だった。

 

 お前らもなんとなく分かってるだろうが、961に所属する奴らは多かれ少なかれ『野心』を持ってるような奴ばっかりだ。何が何でもアイドルとして大成してやるっていうギラついた連中ばかりが周りの奴らを蹴落としてでも前に進もうとする、まるで蟲毒みてぇな環境だった。

 

 でも、緋田先輩だけは何か違ぇんだ。

 

 あの人、とにかくレッスンの量が凄いんだ。ダンスもボーカルも、一体いつ休んでるんだってぐらい通い詰めてて、少なくとも俺がレッスンを受ける日で緋田先輩の姿を見なかった日は一日もなかった。……レッスンの量だったら、もしかして良太郎にも負けねぇかもしれねぇな。

 

 ……でもそれだけだ。あの人は……緋田先輩は『野心』どころか『アイドルになりたい』っていう強い感情そのものが希薄なんだよ。

 

「それは……アイドルになりたがらなかった、っていうことですか?」

 

 ……黒井のおっさんから直々にデビューの話を持ち掛けたが、それを断ったらしい。

 

「ど、どうして……?」

 

 知らねぇ。なんかやたらと緋田先輩に懐いてた奴がいて、そいつとの会話が耳に入っただけだからな。

 

 事務所の奴らの間では『どれだけ練習しても自分自身が理想とするレベルに到達していないから』なんじゃないかとか、そんなことを言われたけど真相は知らん。

 

 それから先の話も、悪いが分からん。俺も翔太や北斗と一緒に『Jupiter』としてのデビューが決まってそれどころじゃなくなったからな。そんで事務所に戻ることもなく黒井のおっさんのやり方が気に食わなくなって辞めちまったから、緋田先輩がどうなったのかは知らねぇ。

 

 けどまぁ……黒井のおっさんが言うことを聞かない奴をいつまでも手元に置いとくとも思えねぇからな。

 

「……黒井社長が直々に声をかけたということは、もしデビューしていたとしたら……」

 

 気付いたか、鋭いじゃねぇか佐久間。

 

 ……俺は、きっとすげぇアイドルになってたと思う。それこそ『魔王エンジェル』に匹敵するようなトップアイドルに。

 

 

 

 

 

 

「「「………………」」」

 

「以上が、俺が知ってる961に所属してた頃の緋田先輩だ」

 

 冬馬さんは詳しいことは知らないと言いつつ、結構詳しいことを教えてくれた。

 

「……なんというか、余計に緋田美琴さんのことがよく分からなくなりましたね」

 

「情報が増えたのに謎が増えた感じがするぅ……」

 

「一度休憩しましょうかぁ。お茶を入れてきますねぇ」

 

「というかお前ら、まだコレ続けるのか……?」

 

 呆れた表情の冬馬さん。まゆさんが給湯室へ向かい、残された私たちはぼんやりとホワイトボードを眺める。

 

(……周藤良太郎の同期であり、そして実力も申し分なかったにも関わらず、デビューどころかアイドルになること自体に消極的だった……)

 

 不思議な人、という印象だった。

 

 人一倍にアイドルになるためのレッスンを頑張っているのに、まるでアイドルそのものには興味がなさそうな、そんな不思議な人。今までに出会ったことがないような人だった。

 

「……そーいや、その緋田先輩にやたらと懐いてた奴、この前961でデビューしてたな」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「あぁ、若い女子にカルト的な人気が出てるらしいぞ。なんつったっけな……確か――」

 

 

 

 ――『カミサマ』とか呼ばれてたな。

 

 

 

 

 

 

「……久しぶり、律子」

 

「……うん、久しぶりね、美琴」

 

「……え、泣いてる?」

 

「泣いてない!」

 

 ヤダりっちゃんってば、久しぶりに美琴と再会して泣いてらっしゃる。

 

「だから泣いてないって!」

 

「そうだねー汗だねー」

 

 七年ぶりに美琴との再会を果たしたりっちゃんが早速涙目になっていた。

 

「相変わらず涙脆いね、律子は」

 

「だから泣いてないっての~」

 

 クスクス笑う美琴とムキになるりっちゃん。そんな二人のやり取りを、俺と魔王エンジェルの四人で微笑ましく見守る。

 

 ちなみにりんとともみが美琴と再会した際には、それはもう勢いよく飛びかかっていた。乳と乳と乳が潰れ合う光景は本当に素晴らしかった……。

 

 さて、そんなわけで同期会当日である。

 

「それにしても麗華、アンタなんてところ貸切ってんのよ……」

 

「『魔王エンジェル』と『周藤良太郎』が揃うんだから貸切るに決まってるじゃない」

 

「私が言ってるのはこのレストランのこと! こんな高級レストランでやるなんて聞いてないわよ!?」

 

「……良太郎、アンタ言ってないの?」

 

「ホテルで食事としか」

 

 麗華がやるって言いだした時点でこうなるって分かり切ってるから言う必要ないかなって思った。

 

「安心しなさい、アンタたちに費用を出させるつもりはないから」

 

「そーそー。今回のお代は俺と麗華が出すから」

 

「……そういうことを……言っているわけでは……」

 

 強がり言ってるけど、やはりりっちゃんが一番気になってるところはそこだったらしい。考えることが良くも悪くも庶民的である。

 

 ちなみにこのメンバーの中でりっちゃんと同じぐらい庶民であるはずの美琴は、特にその辺り気にした様子はなかった。こいつもこいつで流石である。

 

「さ、積もる話もあるだろうけど、それは食事をしながらにでもしましょ。マナーとかそーゆーのいいから、楽しむわよ」

 

 結局この六人の中で一番ウキウキしている麗華の言葉で、俺たちの同期会がスタートするのであった。

 

 

 

「ちなみに画面の向こうのアンタたちに先に言っておくけど、今回のこのレストランにクロスオーバー要素は一切ないわよ」

 

「せめて神様(さくしゃ)が『食戟のソーマ』をしっかりと読んでいたらなぁ……」

 

 

 




・アイドルデビューのタイミング
同期でありつつ同期ではない理由。

・緋田先輩
時系列を考えると実はこんな繋がりがありましたというのがアイ転世界。

・『カミサマ』
実は最近まで出演させる可能性がかなり低かったお人。
……出さざるを得ねぇよ……。

・「今回のこのレストランにクロスオーバー要素は一切ないわよ」
思いつかなかったんや……。



 sideM編と言いつつ完璧にシャニマス編になってしまった美琴編の二話目です。

 美琴関係の設定は基本的な形は保ちつつ、アイ転世界チックにアナライズしました。やっぱり961プロ所属というのが大きいかと。

 ……果たして彼女の闇は、これで深くなるのか浅くなるのか……。



『どうでもいい小話』

 なんか500話目らしい(他人事
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