アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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※朝霞リョウマの特徴
まともなプロットを用意せずに執筆に入り書きたいことをドンドン後付けしてしまうので蛇足的な文章が膨らむ。そのため書きたかったことが先延ばしになる。

※要約
話が四話に纏まらなかった。


Lesson46 恋と演技と苦手なもの 4

 

 

 

 リインフォース・アインス。主に日本で活動しているドイツ人の若手実力派女優。基本的に穏やかで周りから一歩後ろに下がる性格だが、一度演技に入るとありとあらゆる役柄を的確にこなし、去年の『クリスマスライナー』のヒロインを務めたことで一躍人気に火が付いた。

 

「り、リインフォース・アインスさん……!?」

 

「それは芸名だ。本名は八神リインフォースだ。よろしく、我那覇響、菊地真、萩原雪歩」

 

「え、ぼ、僕たちのこと知ってるんですか!?」

 

「あぁ、これでも私は女優の端くれだ。今話題のアイドルの名前ぐらい分かるさ」

 

「こ、光栄です!」

 

 慌てて帽子や眼鏡などの変装道具を取り払って頭を下げる三人。……俺も初めてみんなに会ったときはこんな感じだったんだけど……接しすぎたせいで慣れちゃった感じが。距離が無くなって嬉しいような悲しいような。

 

「リインさんの紹介はしなくていいみたいだから、こっちの二人の紹介は代わりに俺がさせてもらうよ」

 

 複雑な気分はとりあえず置いておいて、一緒に入ってきた二人の女性の紹介をすることにする。まずはピンクの髪をポニーテールにして大変女性らしい身体つきなのだが服装が上下ジャージで持ち物がスポーツバックと竹刀袋というちょっと残念なカッコいい系美人さん。

 

「こちら、八神シグナムさん。職業はスタントマンで、俺が覆面ライダーの撮影をしてたときは殺陣(たて)の演技指導をしてもらったんだ」

 

「よろしく頼む」

 

 続いて薄い金髪のボブカットにシグナムさん程ではないがやはり女性らしい身体つきのおっとり系美人さん。

 

「こちらは八神シャマルさん。職業はメイクアップアーティスト。業界ではまだ若手だけど腕前はぴか一だから、映画やドラマの仕事が増えればメイクしてもらう機会が増えるかもね」

 

「よろしくお願いしまーす!」

 

 ちなみに二人もリインさんと同じドイツ人である。

 

「三人ともはやてちゃんの家族。あと一人ヴィータっていう末妹がいて、五人揃って『八神家美人五姉妹かっこ美少女も含む』。このお店のリピーターが多い理由の一つだよ」

 

 どうやらヴィータは現在不在のようだが、多分近所の公園でお年寄りに交じってゲートボールでもしているのだろう。

 

「え……皆さん姉妹だったんですか?」

 

 まぁ、全員髪の毛の色も目の色も違うから雪歩ちゃんの疑問はもっともである。ただこれは流石にプライベート過ぎる問題だから俺が勝手に話すわけにはいかないので、リインさんたちにお任せしようと視線を向ける。

 

「血が繋がっとるわけとちゃいますよ。ちょい事情があって、死んだ私の両親がみんなを養子として引き取ったんです」

 

 しかしそれは店の裏から出てきたはやてちゃんの口から語られることとなった。

 

「はやて、ただいま帰りました」

 

「ただいまはやて。今帰ったぞ」

 

「ただいまー、はやてちゃん」

 

「おかえりなー、みんな」

 

 リインさん、シグナムさん、シャマルさんの「ただいま」の言葉に、はやてちゃんが笑顔になる。その手には幾つかのDVDと一枚のメモ用紙が抱えられていた。

 

 対して響ちゃんたちは聞いてはいけないことを聞いてしまったのではないかとバツの悪そうな顔をするが、それに気付いたはやてちゃんは笑顔で首を横に振る。

 

「私がだいぶちっちゃい頃の話です。私は気にしとりませんから、皆さんも気にせんといてください」

 

 そう言いながら、持っていたものを響ちゃんに手渡す。

 

「これが、私が選んだ参考になりそうな映画のDVDです。手元になかったのはリストアップしときましたので、お手数ですがご近所のレンタルショップで借りてください」

 

「え、えっと……ありがとう、ございます」

 

「いえいえ」

 

 とりあえず響ちゃんをこの店に連れてきた目標の一つは達成されたわけだ。

 

「それにしても凄いですね、ご家族がみんな業界関係者って」

 

 なるほど創作物マニアにもなるはずだ、と納得した様子の真ちゃん。

 

 だがしかし、驚くのはまだまだ早い。実は彼女のお祖父さんはイギリスが誇る巨匠、ギル・グレアム監督なのだが……まぁ、今は置いておこう。それはまた別のお話、というやつだ。

 

 それよりも、もう一つの目標の方を進めていかねば。

 

「リインさん」

 

「ん? 何だ?」

 

「実はこの響ちゃんが今年の『クリスマスライナー』のヒロインを務めることになったんですが、何かアドバイスをと思って今日は連れてきたんです」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 何も言っていなかったが、リインさんがここにいたことで何となく察した響ちゃんは俺の言葉に合わせてリインさんに向かって頭を下げた。

 

「そうか、君が今年のヒロイン役だったのか」

 

「は、はい!」

 

「んー、立ち話もなんですし、上がっていかれますか?」

 

 お茶でもどうぞ、と言うはやてちゃんのお言葉に甘え、俺たちは店の二階にある住居スペースにお邪魔することになった。

 

 ちなみに店番は引き続きザフィーラが務め、いぬ美もザフィーラと共にカウンターの前で待っていてもらうことに。

 

「………………」

 

「………………」

 

 なお先ほどからいぬ美はザフィーラに興味津々の様子で身体中の匂いを嗅いでいたのだが、そんな中でもザフィーラは身動き一つ取っていなかった。……やっぱりザフィーラは犬界の中ではイケメンでモテモテなのだろうか。……いやまぁ、流石に犬に対して羨ましいとか爆発しろとかは思わないが。

 

 

 

 八神堂二階の住居スペース。まだ掛け布団をかけていない掘り炬燵に座り、温かい緑茶と共にはやてちゃんの手作りおはぎをご馳走になる。うむ、程よい甘さ。

 

「あ、美味しい……!」

 

「お茶も美味しいです」

 

「ありがとうございます」

 

 真ちゃんと雪歩ちゃんのお褒めの言葉にお礼を言いながら、お盆を置いたはやてちゃんも掘り炬燵に座る。

 

「それでリインさん……」

 

 アドバイスを、と響ちゃんが声をかけるのだが。

 

「ん~!」

 

 当の本人はうっとりとした表情をしながらはやてちゃんの手作りおはぎ(リインさんの大好物)を食べていた。多彩な表情を見せる女優とはいえ、基本的にクールビューティーなリインさんが見せるこの笑顔はテレビでは余り見ることが出来ないので大変貴重である。

 

 にしても本当に美味しそうに食べるなぁ。貴音ちゃんと一緒に銀髪コンビでグルメ番組とかいいかもしれない。二人ともキャラが被っているような気がしないでもないが、美人さんで画面が埋まるのであればそれは大変絵になると思う。今度テレビ局のプロデューサーにでも進言してみよう。あわよくば俺もゲスト出演したい所存である。モノを食べる時は誰にも邪魔されず自由で救われてなきゃダメなんだよな? アームロックとか余裕で出来るよ!

 

「あの、リインさん?」

 

「リーイーンッ! 私のおはぎを美味しく食べてくれてるのは嬉しいんやけど、響さんのお話もちゃんと聞いてあげてな?」

 

「……はっ!? す、すみません!」

 

 はやてちゃんに声をかけられ、ようやく我に返るリインさん。顔を赤くしながらワタワタとフォークを机の上に置いてから響ちゃんに向き直る。

 

「そ、それで『クリスマスライナー』に出演する上でのアドバイスだったな」

 

 しかしアドバイスか、とリインさんは眉根を寄せる。

 

「正直私の演技は参考にならないと思うぞ。何せ監督からの評価もイマイチだったからな」

 

「えっ!?」

 

 リインさんからの衝撃のカミングアウトに響ちゃんだけでなく真ちゃんや雪歩ちゃんまでもが目を剥いて驚く。

 

「あ、あの演技がイマイチだったんですか!?」

 

「とっても素敵なCMでしたけど……」

 

「あれでイマイチの評価だったら、自分はどんな演技をすればいいんだ……」

 

 ズーンと暗い影を背負う響ちゃん。ちなみに去年の『クリスマスライナー』は「携帯電話の電池が切れて連絡が取れなくなったカップルが駅構内を探し回り、クリスマスツリーの下で再会する」という内容だった。もう会えないのかという不安とようやく会えたという安堵。涙目になりながらも一度俯いてから涙を拭い、顔を上げた時に見せた優しい笑顔は男女問わず多くの人の心を鷲掴みにした。

 

 確かにこれだけ評価された演技をイマイチと称されてしまったらどうしようもないだろう。

 

 ただ、それが本当に『監督が求めていた演技』であれば、の話である。

 

「ここだけの話、あのCMを撮影した時私は『恋』の演技をしていなかったのだよ」

 

「……え?」

 

 俯いていた響ちゃんが顔を上げる。リインさんは照れ臭そうな表情になりながら人差し指で頬を掻いていた。

 

「恥ずかしい話だが、私はまだ本当の恋というものを経験したことが無くてな。その時持ち合わせていた感情で演技をしたのだよ」

 

「その時持ち合わせていた感情……?」

 

「あぁ。……私は、はやてが好きだ。シグナムが好きだ。シャマルが好きだ。ヴィータが好きだ。ザフィーラが好きだ。この八神家が――私の家族が大好きだ」

 

 これは私の持論なのだがね、とリインさんが一息ついてお茶を飲む。

 

「それは伴侶だけではなく親や子や兄弟に対する感情、自身に近いものに対する感情、『愛』。人は『恋』をし、やがて『愛』に変わり、それは『家族愛』へ変化していく。だから私は、『恋』の延長線上に『愛』があるのだと考えている」

 

 はやてちゃん、シグナムさん、シャマルさんと順番に視線を向ける。全員がリインさんに優しい笑顔を向けていて、リインさん自身も笑顔である。

 

「我那覇響、君には大切な家族がいるかい?」

 

「も、もちろんだぞ! 故郷のうすめー(お母さん)にすー(お父さん)、あんまー(お祖母さん)ににーにー(お兄さん)も! あ、あといぬ美や他のみんなも大切な家族だぞ!」

 

 勢い込んで立ち上がる響ちゃん。

 

「ならば、大丈夫だと思う。君は『恋』の先にあるものを知っている。きっと素敵な演技ができるさ」

 

「は、はい!」

 

「もっとも、私はその演技で監督から注意を受けてしまったがな」

 

「え、えぇ~?」

 

「どうやら監督には私が『恋』の演技をしていなかったのが分かっていたようでな。撮影終了後に注意を受けてしまったよ」

 

 苦笑するリインさん。そこは俺の時と同じである。言葉少なで丸投げな人だけど、本当に優秀な監督だ。

 

「期待しているよ、今の君が出来る『恋』の演技を」

 

「……はい!」

 

 元気よく頷く響ちゃんを見守るような眼差しのリインさん。いやぁ、クールさ加減が無くてもやはりビューティーには変わりないな。

 

 

 

「ん~? こんなナイスなおっぱいしとるっちゅーのに、恋を知らんのは勿体ないよな~?」

 

 ワシッ

 

「ひゃ!? は、はやて!?」

 

 

 

 いつの間にか背後に回っていたはやてちゃんにより、胸を鷲掴みにされて真っ赤になるリインさん。

 

 ……大きいなぁ――じゃなくて。

 

 こうして家族と一緒にいるリインさんの素顔は、またテレビでは決して見ることが出来ないもの。これも、前にともみが言っていた自分の顔がある場所、かな。

 

 

 

 ――いやホント羨まけしからん。

 

 

 




・シグナム
『魔法少女リリカルなのはAs』に登場した、はやてに仕える剣の騎士。
イノセントでは大学生だった彼女はスタントマンに。殺陣とかそういうのが合っているんじゃないかと思った。ちゃんと働いています。ニートではありません。

・シャマル
『魔法少女リリカルなのはAs』に登場した、はやてに仕える湖の騎士。
イノセントでは医学生だった彼女はメイクさんに。改変しすぎかとも思ったが、こうなったらとことんオリ設定を盛り込む所存。

・ヴィータ
『魔法少女リリカルなのはAs』に登場した、はやてに仕える鉄槌の騎士。
エターナルロリータではなく普通の小学生。たぶん二年生ぐらい。(未登場)

・ギル・グレアム
『魔法少女リリカルなのはAs』に登場した、時空管理局の提督。
両親不在のはやてを影から援助していたのだが、その理由は……。
この世界では普通に祖父でさらに映画監督設定。きっと二匹の猫を飼っている。

・やがみけっ!
祖父 ギル・グレアム(映画監督)
両親 不在
長女 八神リインフォース(女優)
次女 八神シグナム(スタントマン)
三女 八神シャマル(メイク)
四女 八神はやて(物語マニア)
五女 八神ヴィータ(特になし)
飼犬 ザフィーラ(天才犬)
すげぇこの一家(小並感)。設定作ってないけど、ヴィータも何か設定足そうかしら。

・それはまた別のお話
『特殊ルート解放条件』
 済 高町なのはが登場する
 済 八神はやてが登場する
 未 ????・??????が登場する
 未 ?????がIUに殿堂入りする
 未 ?????が???プロダクションを設立する
 未 高町なのはが???・?????と出会う

・やっぱりザフィーラは犬界の中ではイケメンでモテモテなのだろうか。
普通にキリッとしていてカッコいいと思う。
ん? 人間形態? ハハッ、だからそんなファンタジーじゃないんだから。

・モノを食べる時は誰にも(ry
以前友人とわさび丼を食べに伊豆まで赴いた作者。今度日間賀島まで行ってきます(報告)

・『愛』
家族愛云々は漫画版を参考に、作者が一晩で考えた(適当)

・おっぱい星人はやて
正統派(?)魔法少女アニメにおける数少ない(?)エロ(?)要素。直接触るシーンはアニメに無いが、ドラマCDでは触りまくりである

・いやホント羨まけしからん。
いい感じに締めようと思ったが最後に本音が漏れた図。



 という訳で蛇足的な次回に続く。

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