アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

511 / 664
章は変わらないけどM編前半最終話。


Lesson358 夏を制する者はライブを制する 4

 

 

 

「あ、あの……」

 

「………………」

 

「え、えっと……」

 

「………………」

 

「そ、その……」

 

 

 

 チラリ。チラリ。

 

 何度も何度も視線をこちらに投げかけ、何度も何度も言葉を選び、しかしその度に二の足を踏んでしまう少女の姿に、私は口角が吊り上がるのを抑えきれなかった。

 

(うふふ、ありすちゃん、可愛いですねぇ……!)

 

 さて、何故私が346プロのアイドルであるありすちゃんと一緒にいるのかというと、今回の八事務所合同ライブで私は彼女と『スウィート・ソアー』というユニットを組んで参加することになったため、今日はその顔合わせなのだ。

 

 当初の予定では123プロの女性アイドルは一人か二人だけが参加することになっていたのだが、様々な事情が絡んだ結果、五人全員が様々な事務所へ出向するという形で参加することになったのだ。

 

 ちなみに何故私がありすちゃんとユニットを組むことになったのかは、正直よく分かっていない。なにやら各事務所の上層部での合計十時間に及ぶ会議の結果らしいが……幸太郎さんが携わっている以上、きっと私たちには分からないような何か特別な理由があるに違いない、うん。

 

「さ、佐久間さん」

 

「はぁい、なんですかぁ、ありすちゃん」

 

「……あ、あの、その、名前……」

 

「あら、ごめんなさい。いきなり馴れ馴れしかったかしらぁ」

 

「そそそんなことありません! ありすで大丈夫です!」

 

 私が謝ると、ありすちゃんは真っ赤になった顔をブンブンと左右に振った。

 

「うふふっ、それじゃあ私のことも『まゆ』って呼んでくださいねぇ」

 

「は、はい! 改めてよろしくお願いします! まゆさん!」

 

 ガチガチに緊張しちゃってるありすちゃんも可愛いけど、同じユニットとして活動していく以上もっと仲良くなりたい。

 

 ……ふむ、手っ取り早く良太郎さんのライブ映像でも見てもらいましょうか。良太郎さんのライブが嫌いなアイドルなんて存在しませんし、これでもぉとありすちゃんと仲良く……。

 

「あ、あの、まゆさんに聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

 

「勿論いいですよぉ。なんだって答えてあげます」

 

 しかしありすちゃんの方から話題を提供してくれるらしいので、素直にそちらを聞くことにする。

 

「あ、あの……実は私……」

 

「はい」

 

 

 

「……さ、『佐久間流周藤良太郎学』の動画が大好きで……」

 

 ……なんですと?

 

 

 

「それで、その……実際に受講出来たらなぁって……」

 

 ………………。

 

 

 

「佐久間流周藤良太郎学のお時間ですよぉ!」

 

 

 

 ひゃっはー! もう我慢できません! お勉強の時間ですよオラァ!

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 なんだろう、まゆが荒ぶっている気配がする。確かまゆも今日は346プロで今回のライブのユニットメンバーとなる橘ありすちゃんとの顔合わせをしているはずなのだが……そこできっと何かをやらかしたに違いない。

 

(ありすちゃん、大丈夫かな……)

 

「あ、あの……」

 

「あ、ごめんごめん、ちょっと電波が」

 

「「え?」」

 

「……なんでもないヨー」

 

 マズいマズい、まだこの二人は()()()()()()に慣れていないだろうから自重しないと。

 

 というわけで、私も今回のライブでユニットを組むことになった765プロのアイドル二人との顔合わせにやって来ていた。

 

「えっと、それじゃあ改めて自己紹介しよっか。アタシは123プロの所恵美。普段は佐久間まゆと二人で『Peach Fizz』を組んでるけど、今回は一緒によろしくね!」

 

「は、はい! 765プロの田中琴葉です! と、所さんのことはよく知っています! 今回はよろしくお願いします!」

 

「にゃははっ、同い年なんだからそんなガチガチの敬語じゃなくていいよー」

 

「は、はい……じゃなくて、えっと……わ、分かったわ」

 

 まずは田中琴葉。第一印象は生真面目な委員長タイプって感じの子。同い年だけどアタシよりしっかりしてるかも。

 

「ハーイ! ワタシは島原エレナ! よろしく、メグミ!」

 

「うん! よろしく、エレナ!」

 

 こちらは島原エレナ、南米の陽気を感じるノリのいい子。うーん、気が合いそう……。

 

 この二人と私の三人で特別ユニット『トライスタービジョン』を組み、合同ライブは765プロダクションのアイドルとして参加することになる。

 

 ちなみに何故アタシが琴葉やエレナとユニットを組むことになったのかは、正直よく分かっていない。なにやら各事務所の上層部での合計十時間に及ぶ会議の結果らしいが……幸太郎さんが携わっている以上、きっとアタシたちには分からないような何か特別な理由があるに違いない、うん。

 

「それじゃあ早速なんだけど、今回のライブに三人で参加するに辺り重要な特訓をしようと思います」

 

「っ、重要な特訓!?」

 

「オォ……なんか凄そー……!」

 

 アタシがそう切り出すと、琴葉は真剣な面持ちでギュッと眉根を寄せた。エレナも笑顔は崩していないけれど少しだけ身体に力が入ったのを感じた。

 

「二人にはちょっとだけ過酷かもしれないけど……付いてきてくれるかな?」

 

「も、勿論! どんなことだってする覚悟があります!」

 

 うーん、琴葉の気合いが重い……けど、それもまたヨシッ!

 

 

 

「それじゃ! カラオケ行こっか!」

 

「はいっ! ……え」

 

「ワーイ! 行く行くー!」

 

 

 

 ノリノリで諸手を挙げたエレナとは対照的に、琴葉はポカンとした表情を浮かべた。

 

「この辺のカラオケは~……」

 

「……え、ちょ、ちょっと待って!? カラオケ!? なんでカラオケ!?」

 

 スマホで近隣のカラオケを探し始めたアタシにストップをかける琴葉。どうやら納得がいかない様子だけど、分かってないな~。

 

「もしかしてアタシがただ遊ぶためにカラオケって言ったと思ってる?」

 

「えっ!? 違うの!?」

 

「勿論!」

 

 これはユニットとしてのコミュニケーションを高めながら、お互いの歌唱レベルをしっかりと確認するための合理的な考えなのだ。……ということを琴葉に伝えると、彼女は「な、なるほど……」と目から鱗が落ちたような表情を見せた。

 

「分かってくれた?」

 

「えぇ! 勿論よ!」

 

「よーし! そーゆーことならワタシも頑張っちゃうヨー!」

 

 こうしてアタシたちは事務所での打ち合わせもそこそこに、近くのカラオケへと向かうことになった。

 

 ……リョータローさん、上手くいったよ! アドバイスありがと!

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「ん? どうかした?」

 

「いえ、なにやら良太郎さんが変な入れ知恵をした気配が……」

 

「……よく分からないけど、良太郎ならそういうことしそうだね」

 

 自分でも少しアレなことを呟いてしまったと思ったが、美琴さんは納得してしまった。おそらく私よりも良太郎さんとの付き合いが長いので、その分理解もあるのだろう。なんか嫌な理解のような気もするが。

 

 さて、何故私がこうして283プロの緋田美琴さんと一緒にいるのかというと、今回の合同ライブで私が彼女と共にステージに立つからである。

 

「それにしても、なんで私と志保ちゃんなんだろうね」

 

「それは……私にもよく分かりません」

 

 私たちの出向先の事務所を決めたのは各事務所の上層部の人間である。良太郎さんならばともかく、幸太郎さんが携わっているのであれば間違いはないだろう。

 

「けど、なんとなく……私と美琴さんが少しだけ似てるから……なんじゃないかと」

 

「……そうだね、ちょっと目つきが似てるかも」

 

「いえ、見た目ではなく……」

 

 でも確かに言われてみれば……ってそうではなく、私が言っているのは雰囲気というかアイドルとしてのスタンスが似ているという意味だ。

 

 美琴さんのことは少しだけ良太郎さんから聞いている。『周藤良太郎』と『玲音』の強い光に目を焼かれてしまい、様々なものを切り捨ててでも前へと進もうとする女性だと。

 

「………………」

 

 ……いや、私はここまでストイックになれただろうか。自分自身のアイドルデビューのチャンスすら投げ捨てて、ひたすら高みを目指すことが出来ただろうか。

 

 それならば『似ている』という表現は正しくないのかもしれない。

 

 きっと……私は美琴さんのようになりきれなかった()()()だ。

 

「ふふっ、なんか妹が出来たみたい」

 

「いや見た目だけで妹判定されるのはちょっと……」

 

 うーん、この人も独特の空気感を持っているからやりづらい……。

 

 

 

「それじゃあ志保ちゃん、そろそろ続きやろっか」

 

「……もうちょっと休ませてください……」

 

 

 

 というか。

 

 顔合わせって話だったのに、なんで私は美琴さんと一緒に高町さんちで地獄のような特訓をする羽目になっているの……!?

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「美優さん、どうかした?」

 

「い、いえ、何故か志保ちゃんから助けを求められたような気がして……」

 

「えっ!? 志保さんが!? 一体何が!?」

 

「わ、分からないけど……た、多分私の気のせいだから」

 

 年下の女の子二人に心配をかけるわけにはいかないので、私は自分の胸騒ぎを無視することにした。ま、まぁ志保ちゃんも顔合わせだけって話だったし、変なことにはなってない……わよね?

 

 というわけで、私も今回の合同ライブで一緒にステージに立つ876プロの日高愛ちゃんと水谷絵理ちゃんの二人と顔合わせをするために、事務所近くの喫茶店へとやってきたのだが……。

 

「あ! 美優さんもパフェ食べましょパフェ!」

 

「愛ちゃん、あんまり食べ過ぎるとまたレッスン増やされるよ?」

 

「大丈夫です! 頑張ればいいんです!」

 

 元気いっぱいにパフェを注文する愛ちゃんと、なんだかんだ言ってそれに便乗する絵理ちゃん。

 

 ……いや本当になんで私がこの二人と一緒にステージに立つんですか……!?

 

 決して文句があるわけではありません……二人ともとてもいい子ですし、アイドルとしてもとても素晴らしいことは知っています……でも、なんで私なんですか……!? 私、二十八ですよ……!? 愛ちゃんは十七で、絵理ちゃんは十九ですよ……!?

 

 そういう歳の差のアイドルユニットもあるのだろうけど、何故かこの組み合わせを考えた人からの何か別の意図を感じて仕方がなかった。

 

「美優さん!」

 

「っ、ど、どうしましたか……?」

 

「私、頑張りますね!」

 

「……へ?」

 

 突然の愛ちゃんからの力強い宣言に、思わず呆気に取られてしまった。

 

「あの123プロの三船美優さんと一緒のステージに立てるなんて、私とても嬉しいです!」

 

「あ、ありがとう……で、でも、アイドルとしては愛ちゃんと絵理ちゃんの方が先輩のような……」

 

「そういう細かいことはいいんですよ!」

 

 細かいことなのかしら……?

 

「123プロのアイドルは皆さんキラキラに輝いていて、私大好きなんです! そんな人たちと一緒のステージに立てることが嬉しいんです!」

 

「愛ちゃん……」

 

「これなら涼さんにも勝てます!」

 

「勝て……?」

 

 ……あ、そういえば一応紅白歌合戦形式になるんだったわね……。

 

「これから沢山時間もありますから、頑張りますね!」

 

「時間が……あぁ、そうね、もうそろそろそうだったわね……」

 

 愛ちゃんは笑顔で「はい!」と頷いた。

 

 

 

 ――もうすぐ『夏休み』です!

 

 

 

 アイドルたちの、とても熱い夏が、始まる。

 

 

 




・まゆ&ありす
『スウィート・ソアー』を結成。
リアルだとまだ曲のないユニット。タッキーまた失恋して曲書いてくれよ~。

・「『佐久間流周藤良太郎学』の動画が大好きで……」
スウィートソアー魔改造計画()

・恵美&琴葉&エレナ
アイ転では実現しないと作者も思っていた『トライスタービジョン」がまさかの結成。
いや本当にまさかこうなるとは……()

・志保&美琴
個人的にこの二人の組み合わせが見たいと思った結果。
でもなんかこう……似てない?

・高町さんちで地獄のような特訓
強化フラグですね!()

・美優&愛&絵理
ぶっちゃけあまりの組み合わせです!
でもこの二人に合わせてフリッフリな感じの衣装を着る美優さんも見たかった。



 ここまで合同ライブへ向けての事前準備編みたいな感じでした。正直サイドエムとは……みたいな感じになっていますが、こっから、こっからだから……!

 章は変わりませんが、ここから合同ライブへ向けての後半戦です。熱い夏が始まる!



『どうでもいい小話』

 かがやきよまつりお疲れさまでした! 次は九月に愛知でお会いしましょう!

 ……スパンが早い!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。