アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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ひと箱買ったらハウリングと地獄門が同時に出たので全部うっぱらおうと思いました(KONAMI感)


Lesson47 恋と演技と苦手なもの 5

 

 

 

 いやー、大乳美人と戯れる美少女ってめっちゃ絵になるわー、とか思いつつお茶を飲んでいると、いつの間にか番組収録の時間が迫っていることに気が付いた。

 

「そろそろ次の仕事があるから、俺はお暇させてもらうことにするよ」

 

 響ちゃん達はどうする? と問いかけながら立ち上がる。

 

「えっと……それじゃあ自分たちも」

 

「お暇させてもらいます」

 

「そうですか……またいつでも遊びに来てくださいね?」

 

 結局全員お暇させてもらうこととなった。

 

「これから収録か?」

 

「はい。○○テレビで生放送の収録です」

 

 ハンガーに掛けてあった上着を受け取りながらリインさんの質問に返す。

 

「ならばちょうどいい。私も出かける用事があった。良ければ車に乗っていくか?」

 

「お、いいんですか?」

 

「あぁ」

 

 これはラッキー、あのリインフォース・アインスからドライブのお誘いを受けるとは。

 

「はやて、私も少し出てきます。夕飯までには帰りますので」

 

「分かった。はよ帰ってきてな?」

 

 

 

 

 

 

 うん、ドライブのお誘い自体は嬉しかったし、現在進行形でシートベルトによってさらに強調された大乳とか大変眼福なんだけど、女の人の助手席に乗せてもらうっていうのは男としてどうなんだろうと思ったり思わなかったり。

 

 高校卒業したら免許取ろうかなー、と考えながら窓枠に肘を突く。

 

 ちなみにリインさんの車は意外にも八人乗りのファミリーカーだった。恐らくザフィーラも入れた家族全員での外出を考えてのチョイスなのだろう。相変わらず思考が長女というよりはお父さんだった。

 

 窓から見える空は先ほどまでの青い空が影を潜め、いつの間にか灰色の雲に覆われていた。何やら夕立が来そうな雰囲気である。今日は一日晴れの天気予報を信じて傘を持っていなかったので、これはリインさんに送ってもらって正解だった。

 

「……いい子達じゃないか」

 

 765プロだったか? と、リインさんはチラリと視線をこちらに向けてきた。

 

「彼女たちが君のお気に入りということか」

 

「まぁ、そうですね」

 

 他の事務所のアイドルよりも気にかけている、という点で言えば間違いなくお気に入りのアイドルたちだ。それは否定しない。

 

「周藤良太郎がアイドルのファンになっちゃおかしいですか?」

 

「いや、おかしくなんてないさ。ただ……」

 

 

 

 ――本当にそれだけなのかと思ってな。

 

 

 

「………………」

 

 ポツリ。

 

 ついに曇天の空から雨粒が零れ落ちた。雨粒はフロントガラスに当たって下に流れていくが、リインさんが作動させたワイパーが一往復するとその跡はあっという間に無くなってしまった。

 

「……どういうことですか?」

 

「いや何、君は彼女たちに対して何かを期待しているような気がしてな。アイドルとしての成功以外の『何か』を」

 

 赤信号で車が止まり、リインさんが視線をこちらに向けてくる。じっとこちらを見つめるその赤い双眸。こんな状況でなければ宝石のようだと表現して褒め称えていたが、今はそんな気分になれなかった。

 

「……気のせいですよ。俺はただ単に彼女たちのファンっていうだけですから。それに、後輩のアイドルを気にかけるのは先輩として別に間違ったことではないはずですよ」

 

「……そうか。私の勘違いだったか。変なことを聞いてしまったな」

 

 信号が青に変わりリインさんの視線がこちらから外れ、車はゆっくりと発進する。他の乗っている人を気遣うようなその発進の仕方は、八神家全員のことを想うリインさんの性格を表しているようだった。

 

「そうですよ。そういう中二病チックなことははやてちゃんの専売特許でしょ?」

 

「……それをはやての前で言わないでくれよ?」

 

 この間は大変だったのだから、とリインさんは苦笑する。

 

 響ちゃん達相手に随分と大人びた対応を見せてくれたはやてちゃん。それが関係あるかどうかは分からないが、はやてちゃんは小学三年生にして既に中二病の黒歴史を抱えてしまっているのだ。十字架が付いた黒い革表紙の本に『夜天の書』と名前を付け、その中にはシグナムさん達をモデルとした『守護騎士ヴォルケンリッター』という設定や、周囲を凍結させる『氷結の息吹(アーテム・デス・アイセス)』という呪文などが数多く記されていた。わざわざ呪文が英語じゃなくてドイツ語になっている辺りが大変凝っていると思う。

 

 ちなみに何故こんなことを知っているのかというと、ヴィータちゃんをアイスで買収して見せてもらったという裏話。アイスってすごいね! 人の心まで買えるよ!

 

「でも顔を耳まで真っ赤にしながらクッションに顔を埋めて足をバタバタさせるはやてちゃんは凄く可愛かったでしょ?」

 

「はやては天使」

 

 キリッとした表情で断言するリインさん。ホント、八神家のみんなははやてちゃん大好きだなぁ。

 

 

 

 結局雨は通り雨で、既に雲の切れ間からは再び太陽が顔を出していた。

 

 

 

 

 

 

「見たよ、出来上がったCM。昨日テレビ見てたら流れてた」

 

『ど、どうだった?』

 

「普段の元気がいい響ちゃんとのギャップがあって、すごく良かったよ」

 

 素直な感想を返すと、受話器越しの響ちゃんは「えへへ」と照れた様子だった。

 

 というわけで、今回のことの顛末である。

 

 リインさんからの助言やはやてちゃんお勧めの映画を鑑賞してから臨んだ『クリスマスライナー』のCMは、テイク18までもつれ込んだものの無事に終了。放送されたCMは一昨年や去年と比べても遜色がない出来栄えだったと思う。

 

『実は自分も家族やみんなのことを考えながら演技したのがバレちゃって『次はちゃんと恋の演技しろよ』って注意されちゃったけどね』

 

「響ちゃんもか」

 

 俺、リインさんに続き響ちゃんまで監督に見透かされてしまったようだ。

 

 その後、二言三言交わしてからお疲れ様と言って通話を終了する。

 

「……恋、か」

 

 うーん、と腕組みをしながら背もたれに背中を預ける。

 

 初恋は母親で早々に終わらせてしまっている。では現在進行形でどうなっているのかというと微妙である。前世を含めた精神年齢云々は置いておいて、一応俺も健全な青少年。可愛い女の子や綺麗なお姉さんとお付き合いできるのであればそれはそれで嬉しい。

 

 しかし、アイドルが恋愛っていうのは、実際問題どうなのだろうかと考えてしまう。……アイドルのおっぱい発言もどうなのだろうかという問題はスルーしておく。

 

 「アイドルはファンの恋人である」とは誰の言葉だったか。

 

「なぁ兄貴、俺が誰かと付き合うことになったら、どうする?」

 

「……それは、買い物に付き合うとかじゃなくて、男女関係における付き合うってことだよな?」

 

「それに気付くとかラブコメ系主人公として失格だな」

 

「何で気付けたのに罵倒されなきゃならんのだ!?」

 

 居間のソファーに座りノートパソコンに向かって事務仕事をしていた兄貴が愕然とした表情で顔を上げる。

 

 「付き合ってください」から「いいぜ、買い物だろ?」までがテンプレだというのに、ラブコメ系主人公としての自覚が足りないな。ワンサマーや難聴兄貴をもっと見習えよ。ちなみに少女漫画系主人公だと女の子の髪の毛に芋けんぴが付いていることを気付ける洞察力が必要である。知らんけど。

 

「大体、お前の文脈から考えて前者はあり得んだろ」

 

「じゃあなんで確認取ったんだよ」

 

「……色々あったんだよ」

 

 途端に視線が遠くなる兄貴。どうやら現在進行形でラブコメっているおかげで色々と学習した様子。早苗ねーちゃん達の調教(きょういく)は順調に進んでいるようだ。

 

 そうだな、と兄貴は一度キーボードを叩く手を止める。

 

「兄としては弟の恋を応援したいところではあるが、やはりアイドルのプロデューサーとして止めることになるかな」

 

 まぁ、だろうな。

 

「だが」

 

 ん?

 

「お前のファンだったら、お前が恋をしても受け入れてくれるような気がするがな」

 

「……と、言うと?」

 

「そのままの意味だよ。確かにアイドルっていうのは極論で言ってしまえば偶像そのもので、『こうであって欲しい』というファンの人の理想を形にした存在だ。理想が自分以外の誰かに恋をすることはなく、永遠に自分のものであり続ける」

 

 でもな、と兄貴は言葉を続ける。

 

 

 

「理想を超えたその先の何か、手の届かない何かに到達することが出来たら、きっとファンは受け入れてくれる。受け入れざるを得ない」

 

 

 

「……そんなものなのかなぁ」

 

「きっと、な」

 

 随分と曖昧な回答である。

 

「それにしても、お前がそんなことを聞いてくるなんて珍しいじゃないか。まさか気になる女の子でも出来たか?」

 

 魔王エンジェルの誰かか? それとも765プロの律子ちゃんか? と、ちょっと楽しそうに聞いてくる兄貴。普段自分が恋愛関係の事柄で弄られている分、弄り返してやろうという魂胆が見え見えだった。

 

「いーや。あくまでも例えばの話だよ。響ちゃんに恋愛関係の演技についてのアドバイスを求められたから、ちょっと考えてみただけ」

 

 それより俺は自分の義姉についての方が気になるんだが、と言ったところ、さーてちょっと電話してくるかな、とノートパソコンを片付けながらアッサリと話題を切り上げられてしまった。

 

 やれやれと思いながらソファーに座り直していると、携帯電話が着信を告げた。誰からだろうと開くと、ディスプレイに映し出されていたのはりんの名前だった。

 

「はい、良太郎です」

 

『あ、りょーくん、久しぶり。え、えっと、今時間あるかな?』

 

「あぁ、今日はもう仕事なくて家でゆっくりしてたところだ」

 

 何か用事か? と尋ねると、返ってきた言葉は少し遠慮がちに小さなものだった。

 

『と、特に用事があるわけじゃないんだけど……ちょっと久しぶりにお話がしたかっただけ。……め、迷惑だったかな?』

 

「……いや、女の子との楽しい会話だったら大歓迎だよ」

 

『……えへへ、ありがと』

 

 携帯電話を耳に当てたまま居間を後にし、俺は自室へと向かうのだった。

 

 

 

 まぁ、こうして気軽に話せる関係ぐらいが今の俺にはちょうどいいのかもしれない。

 

 

 




・リインフォースとの会話
ラストに向けての伏線をちょっとずつ撒き始める。なおラストがいつになるのかは一切不明。

・中二病はやてちゃん
一般人からしてみたら原作はやてちゃんの設定は中二病の宝庫。黒い翼とかラグナロクとか。

・アイスってすごいね!
ヴィータ「ハーゲン○ッツには勝てなかったよ……」

・「アイドルはファンの恋人である」
だからクリスマスにファンのためのイベントをしなかった765プロは云々かんぬんという記事を何処かで読んだような気がした。

・ワンサマーや難聴兄貴
ワンサマー もしかして:IS
難聴兄貴  もしかして:はがない

・女の子の髪の毛に芋けんぴ
「少女漫画 芋けんぴ」で検索!

・りんちゃんなう!
最後に出番をかっさらうりんちゃんはやはりヒロイン(確信)



 蛇足故に短め。本当はカットしてよかった部分てんこ盛りだが無駄に伏線を撒いておく。

 次回からはようやく空白期が終わりアニメ二期時間軸に突入します。

 ……シリアス増えるよヤッター(白目)
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