アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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※感想で言われるまでマジで忘れてた。


Lesson377 Episode of Beit 3

 

 

 

『は? 呉莉羅連合?』

 

「そうそう。早苗ねーちゃんなら知ってると思って」

 

『……一応聞いたことはあるけど』

 

 バイクの集団から離れたところで、餅は餅屋ということで交通課の警察官である早苗ねーちゃんに聞いてみた。

 

『なんでいきなりそんなこと聞きたがるのよ。……まさか、何かあったの?』

 

「そういうわけじゃないんだけど……」

 

『気になることがあるとか?』

 

「気になると言えば気になる……というか存在そのものが気になるでしょ。なんだよゴリラって」

 

 何を思ってそんな名前にしようとしたんだ。

 

『あぁ、うん、まぁそうよね……』

 

 俺の心のモヤモヤを感じ取ってくれたらしい早苗ねーちゃんは『とはいえ私も詳しいわけじゃないわよ』と前置きした上で教えてくれた。

 

『流石にチーム名の由来は知らないけど、アンタも一目見たなら分かるでしょ?』

 

「いやまぁ……うん……」

 

 なんというか、確かにゴリラだった。暴走族とはいえ女性相手に向ける言葉ではないと理解しているものの、ゴリラとしか形容する他なかった。それなりの人数がいたにも関わらず、例に漏れず全員ゴリラだった。なんかこう、容姿とかガタイとか雰囲気とか。

 

「なんなのあの暴走族」

 

『あたしに聞かれても困るわよ……』

 

 早苗ねーちゃんも困惑している様子だったが『あぁでも』と何かを思い出したらしい。

 

『暴走族ってこと自体には変わりないんだけど、悪い奴らではないのよ。いや素行は悪いんだけど』

 

「どっちだよ」

 

『以前呉莉羅連合がとある公園で花見をしてて、大声でウホウホ盛り上がって子どもたちが怖がるって通報があったのよ』

 

「ちょっとキャラ設定順守しすぎでは?」

 

『んで丁度パトロールに出てた私が現場に向かったのよ。そのときは一足間に合わなかったんだけど……』

 

「引き際がいいな」

 

『しっかりと後片付けどころか周囲のゴミ拾いを済ませてから立ち去ったらしいわ』

 

「お行儀もいいな!?」

 

『しかも苦情の「子どもたちが怖がる」っていうのは大声が怖かったっていうだけであって、周囲に対する礼儀自体はしっかりとしていたらしいわ』

 

「昨今問題になってるマナーの悪い連中にも見習ってほしいな……」

 

 なんか欲しかった情報からだいぶ斜め上に逸れているそれに困惑が隠せない。なに……この……なに? 俺は一体何を聞かされているんだ?

 

『これでバイクを違法改造せずに道交法をもうちょっと順守してくれれば、警察(あたしたち)も文句ないんだけどねぇ』

 

「その辺りはしっかりと暴走族なのか……」

 

 なんというかチグハグな連中だなぁ。暴走族だから反社会的な存在ではあるんだけど、早苗ねーちゃんが悪い奴らじゃないと言った理由は分かった。

 

「それじゃあその呉莉羅連合と抗争しそうなレディースとか知ってる?」

 

『抗争ぉ? アイツらはそーゆータイプのレディースじゃないわよ。仲間意識は強いから、仲間が危ないとかそーゆーときは動くでしょうけど。……あぁ、でも呉莉羅連合の総長と個人的に仲が悪い奴が……あ、ゴメン』

 

 少し気になる情報が早苗ねーちゃんの口から出てきそうになったが、その言葉は電話の向こうから聞こえてくる()()()()()()()によって遮られてしまった。

 

「あぁ、起きちゃったか。いいよ、こっちこそ時間取ってゴメン」

 

『報酬はなんか甘いものね』

 

「はいはい」

 

『ホラ、アンタもおじさんにお願いしなさい』

 

『あーうーあー』

 

「オッケー。なんか低アレルゲンなやつ買ってくよ」

 

 というわけで早苗ねーちゃんとの通話終了。

 

 とりあえずあの呉莉羅連合とかいうレディースは、正真正銘の暴走族でありつつ人間性的には悪い奴じゃないことは分かった。

 

「とはいえ、他のレディースが近くにいる以上、何かしらのトラブルが起こりそうな予感はするなぁ……」

 

 こういうときに限って無駄に的中率が高い俺の第六感がそう告げていた。でも何故か大事になりそうな感じではないんだよなぁ……。

 

「とりあえず現場にいるみのりさんにでもメッセージ送っておくか」

 

 既に現場入りしているであろうみのりさんなら、現地のスタッフ辺りから注意喚起ぐらい受けてるだろうけど、一応念のため。

 

「……そういや」

 

 最後に早苗ねーちゃんが言いかけた……。

 

 

 

 ――呉莉羅連合の総長と個人的に仲が悪い奴が。

 

 

 

「……あれコレ、フラグか?」

 

 

 

 

 

 

 リハーサルも終わり、少し休憩時間が出来たタイミングで拓海ちゃんを探してみると、近くの公園のベンチに座っている彼女を見付けた。

 

「………………」

 

「やぁ、拓海ちゃん」

 

「っ!? え、えっと……渡辺さん……」

 

 名前呼びの俺に対して、名字呼びの拓海ちゃん。少し距離を詰め過ぎたような気もするけど、普段の癖でアイドルの子は名前で呼んじゃうからご勘弁願いたい……。

 

「……さっきの話、気になってる?」

 

「………………」

 

 少々不躾かと思いつつも少し離れた位置に腰を下ろしたが、彼女は何も言わなかった。

 

 流石に自分の口から「私は元ヤンだから気になってる」とは言いづらいだろう。

 

「俺はちょっと気になっちゃったかな」

 

 だからここは。

 

 

 

「俺も昔は、ヤンチャしてたから」

 

 

 

 俺が自分から話そう。

 

「……えっ」

 

 気まずそうに目を合わせようとしなかった拓海ちゃんが呆気に取られた様子でこちらを見た。どうやら彼女の関心を掴むことには成功したようだ。

 

「わ、渡辺さんが……や、ヤンチャっすか……!?」

 

「そうそう」

 

「そ、それは、その……カルピスを原液のまま飲むとか……」

 

「ヤンチャのレベルが可愛いなぁ……」

 

「『いえーい拓海ちゃんと雫ちゃんのユニットやったぜー大乳ー!』とか叫ぶトップアイドルみたいな……」

 

「もしや周藤良太郎君のこと言ってる?」

 

 何やってるのリョー君。いやリョー君らしいけどさ。……いや冷静になって考えると『らしい』って納得しちゃダメだよね。

 

「お恥ずかしながら、結構派手にヤンチャしてたよ。毎日毎日バイクを乗り回して、喧嘩もしまくって」

 

「ぜ、全然見えねぇ……ステージ衣装と真逆じゃねぇっすか……」

 

「そうだよね」

 

 拓海ちゃんの率直な意見に自らも苦笑しつつ賛同してしまう。

 

「他人の返り血で真っ赤に染まった特攻服(トップク)ばっかり着てた奴が、今では王子様みたいな真っ白な衣装を着たりするんだから、笑っちゃうよね」

 

 いやホント。足を洗ってから花屋でバイトを始めたときにも似たようなことを考えたけど、今はそのとき以上のギャップがあった。多分当時の自分が今の俺を見たら助走を付けて殴りかかってくることだろう。もしそうなった場合、容赦なく蹴り飛ばして返り討ちにするけど。

 

「……拓海ちゃんは、自分の昔のこと、後悔してる?」

 

「……アレはアレで、アタシが自分で選んだ道だ。だから後悔なんてしてないっす」

 

「そっか。……逆に俺はちょっと後悔してる」

 

「それはやっぱり……今の活動に支障が出るかもしれないから……っすか?」

 

「……いや」

 

 

 

 ――俺のせいで()()()()()()()()から。

 

 

 

(……とは流石に言えないよなぁ)

 

 慰めるどころが自分の闇を押し付ける結果になりかねない。これは流石に言わなくてもいいだろう。これは俺自身の問題。俺だけが背負うべき罪。今の拓海ちゃんには関係のない話だ。

 

「でも、俺がそうだったっていう事実には変わりない。今は上手いこと隠すことが出来てるけど、いずれバレる日が来る。だからそうなった場合、俺は逃げも隠れもしない」

 

 今はマイクを握るこの拳で何人もの人たちを傷付けてきたという事実は、例えこれからどれだけの人数のファンを喜ばせることが出来たとしても、変えることが出来ないのだから。

 

「その点、拓海ちゃんは凄いよ。自分の過去を隠そうとせずにアイドルをやる決意をしたんだから」

 

「あ、いや、それはウチのプロデューサーの方針というか、頭すっからかんのバカのせいというか……」

 

「酷い言われようなプロデューサーさんだね……」

 

「嬉々としてアタシと雫に『セクシーでかわいいどうぶつコスプレショー』の仕事とか持ってくるし……」

 

 リョー君のご親戚の方だったりするのかな?

 

「でも、それを受け入れたのは拓海ちゃんの意志なんでしょ?」

 

「ちがっ! あの仕事は別に! ほ、本当に仕方がなく! アタシは嫌だったんだぞ!?」

 

「ゴメン俺の話の繋げ方が悪かった」

 

 コスプレショーのことは忘れて。過去のこと過去のこと。

 

「……アタシには、そういう昔のことを隠すなんてこざかしいこと出来ねぇし、こんなナリと性格してっからどーせすぐにバレる。だから開き直っただけだよ」

 

「なら、今更立ち止まってどうするんだよ」

 

「っ」

 

 言葉は強くなるかもしれないし、捉えようによっては喧嘩を売ってることになるかもしれない。

 

 けれど、俺の心の奥にほんの少しだけ残った()()が叫んでいるのだ。

 

 『うだうだ言ってんじゃねぇ』って。

 

「今ここに集まってきてる連中とは関係ねーんだろ? だったら胸張りやがれ。もっと背筋伸ばせ。それは『今の向井拓海』が背負うもんじゃねぇ。所詮同類とかそんなつまんねーことでイモ引いてんじゃねぇよ」

 

「………………」

 

「……って、一昔前の俺だったら言ってたんだろうね」

 

「……今もしっかり言ってるじゃねぇか」

 

 そう言いながらようやく拓海ちゃんは笑ってくれた。

 

「……ん?」

 

 リョー君からのメッセージ。なになに『イベント会場周辺に集まっている二つの族の内、一つのチーム名が判明』……って。

 

「なに呉莉羅連合って……」

 

「っ!?」

 

 そんな愉快な名前の奴らが……って思っていたら、それを聞いた拓海ちゃんが目を丸くした。

 

「え、もしかして知り合い?」

 

「……一応、不本意ながら……って、やべぇ!? 一つがゴリラの奴らだったんなら、もう一つが()()()()()だったら面倒なことになる……!」

 

「リュウグウ?」

 

 どうやら何かしらの心当たりがあるらしい拓海ちゃんは、突然立ち上がるとそのまま走り出した。

 

 

 

 ……い、今更だけど、なんかアイドルらしからぬ展開になってきたぞ……!?

 

 

 




・早苗ねーちゃん@育休中
マジで回収し忘れてた案件()
現在生後11ヶ月です。

・悪い奴らではない
ほぼ独自設定だけど、根っからの悪人ではないはず。
コンテストや大会もルール自体は守ろうとしてたし。恋人との馴れ初めも人助けだし。

・俺のせいで叔父さんが死んだ。
原作では確定事項じゃないらしいけど、抗争に巻き込まれた可能性が高いとのこと。

・リュウグウ
ヒントは『レディース』『ラブコメに登場』『作者がネタを拾う作品は微妙にマイナーが多い』



 なんでアイマスの小説なのに呉莉羅連合の説明に四分の一も費やしてるんだ……?



『どうでもいい小話』

 ユニットツアー山形公演当たりました! ……二月の山形に、いざ往かん!
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