アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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男子会話。


Lesson381 最高のアイドルたち 3

 

 

 

「というわけで隼人、『おっぱい大好きクラブ』に入らないか?」

 

「ブッフゥゥゥッッッ!?」

 

 

 

「うわハヤトっち汚いっす」

 

「リョーさんに話しかけられるときは口に物を含んじゃダメですよ」

 

「そっち飛んでない……? 大丈夫……?」

 

「オレの皿にはかかってないからセーフ」

 

「あっ、あたしサンチュ食べたーい」

 

「誰か一人ぐらい俺の心配してくれてもいいんじゃないかなぁ!?」

 

 いつだか約束した焼肉にハイジョ+咲ちゃんの六人を連れてきたのだが、ついでなので二ヶ月ぐらい前にはやてちゃんとの会話でチラっと思いついた『アイドルおっぱい大好きクラブ』への隼人を勧誘をしてみた。そしたら盛大に飲んでいたウーロン茶を噴き出した。

 

「大丈夫か隼人」

 

「心配してくれるのは嬉しいけど元凶はリョーさんだからね!?」

 

「確かに、口に物を含んでいるときに話しかけるのはマナー違反だったな」

 

「そうじゃなくてぇ……!?」

 

 ちなみに個室なのである程度の会話は問題ないものの、俺は変装をした上でみんなからは『リョーさん』と呼んでもらっている。

 

「でもお前も好きだろう、おっぱい」

 

「その質問に対してなんの躊躇もなく素直に返答が出来るほどメンタル強くないですからね!?」

 

「ちなみに俺は小学生の頃から公言し続けているぞ」

 

「ミスリルの如き精神(メンタル)……!」

 

 吸血鬼『Y談おじさん』の一件で性癖がバレて以来、取り繕うのがどうでもよくなってしまった。それからずっとフルオープンなおっぱい星人である。楽でいいぞ。

 

「周りからの目とか気にならなかったんですか……?」

 

「……?」

 

「そんな純粋な瞳で首を傾げられても……」

 

 とはいえ、あくまでもおっぱい星人を公言しているだけであって、誓っても小学生特有のスケベなイタズラとかはしてないぞ。寧ろそういうイタズラで困っている女性生徒を助ける側の生徒だった。

 

「そもそもなんだけど、一応小学校の頃はモテる側の人間だったからな」

 

「「「えええぇぇぇ!?」」」

 

 隼人と四季と春名が驚愕の声を上げるが、気持ちは分からないでもない。客観的に考えると俺も同じようなリアクションをしたと思う。

 

「おっぱい星人を公言している男子生徒の何処にモテる要素が……?」

 

「顔」

 

「身も蓋もねぇ!」

 

 小学五年生で盛大に性癖バレしたわけだが、それまでの周藤良太郎は悪く言えば根暗、良く言えば無口でミステリアスな男子生徒だった。ビジュアルの強い両親の血を引いているだけあって顔も悪くない。兄貴への劣等感に苛まれていたものの成績だって悪いわけじゃないし、運動だって苦手だったわけじゃない。

 

「だから色々と吹っ切れて性格がややポジティブになった小学校五年生から六年生が人生で一番モテてた時代といっても過言ではないな」

 

「え、今よりもっすか?」

 

「今の俺はトップアイドルという肩書ありきだから、それを差し引いちまえば大したことないよ」

 

(……どう思う?)

 

(少なくともりんさん美希さんまゆさんその他諸々……)

 

(リョーさん、なんか変なところで自己評価低いよねー)

 

 ちなみに中学高校は、アイドルになったことに加えいつも隣に恭也という正真正銘のイケメンがいたことにより女子人気は右肩下がりになっていった。まぁ中学はともかく高校の頃は魔境校の癖に顔面が強い奴ら沢山いたから、俺なんて没個性よ。

 

 っと、話が大分逸れた。

 

「俺の学生時代のモテ事情はどうでもいいんだよ」

 

「割とそっちの方が気になる話題ではあるんですけど……」

 

「今重要なのは隼人! お前におっぱい大好きクラブへ入る勇気があるか否かってことだ!」

 

「一片たりとも重要じゃないですよ!?」

 

「素直になれって男子高校生。ほら、誰かしらアイドルのグラビア雑誌とか持ってたりするんだろ?」

 

「………………」

 

 無言は肯定と見なす。

 

「ちなみに俺はあずささんと風花ちゃんと雫ちゃんの写真集を持っている」

 

「知ってる」

 

「知ってた」

 

「意外性無い」

 

 俺への理解度が高くて嬉しいよ。

 

「ちなみにりんさんのは?」

 

「言うまでもないかなって思って」

 

「……そ、それぐらいは……まぁ」

 

 やがて観念したらしい隼人が赤面しながらも肯定の言葉を口にした。

 

「うんうん、健全な男子高校生だな。……ちなみに誰の?」

 

「………………十時愛梨ちゃん」

 

 チョイスがガチ。だが気持ちは分かる。いいよね愛梨ちゃん。

 

「ようこそおっぱい大好きクラブへ!」

 

「なんか嫌だあああぁぁぁ!」

 

 

 

「………………」

 

「さっきからやけに静かだな、旬」

 

 確かにキャラ的にも性格的にも入りづらい話題だとは思うんだけど、それを加味したとしてもやたらと静かだった旬に話しかける。

 

「いえ、その……ふと『あと一ヶ月なんだなぁ』って思ってしまいまして……」

 

「あー、そういえばそうっすね」

 

「えマジで。……うわホントじゃん」

 

 旬の言葉に各々が今日の日付を思い出す。

 

 それは八事務所合同ライブ本番までの日数だった。

 

「未だに現実感がないんですよね……」

 

「言われてみればそうだなぁ」

 

「こうしてバカ言いながら焼肉食ってるぐらいだもんな」

 

 ジュージューと肉を焼くいい音が鳴り響く中、なんとなく個室の空気がしんみりしたものになった気がした。

 

「……まぁ、そこまで重く考える必要ないよ。そんなに大したことじゃないんだから」

 

 俺はそう言うものの、全員が『いやいやいや』と首を横に振った。

 

「大したことないわけないじゃないですか……!?」

 

「史上初の八事務所合同ですよ!? あの123プロと1054プロが主催の!」

 

「既に『アイドル史に残る』だのなんだの前評判が凄いもんね……」

 

 世間的にはそうかもしれない。

 

 でも、そうじゃない。

 

「いいか。今回のライブはお前たちにとって()()()()()()だ」

 

「通過点!?」

 

「いやそんなわけないじゃん!?」

 

「いーや通過点だ。今回のライブが最後になるのか? 引退するのか? しないだろ?」

 

「……しませんけど」

 

「なら、()()()()でいいんだよ」

 

 世間からの評判や周りからの期待に大きさに、感覚がズレてしまうのはよくあることだ。

 

 でもこれは、あくまでもただのライブなんだ。

 

「俺が先月やったステージと変わらない。お前たちが先週立ったイベントのステージとも変わらない」

 

 山場であることには間違いない。将来振り返ったときのハイライトにもなるだろう。

 

「緊張してもいい。気負ってもいい。自分の全てを賭ける想いで臨んでもいい」

 

 けれどゴールにしてはいけない。

 

「そうだな……お前たち学生組的に言えば、期末テストみたいなもんだ」

 

 学期の締めくくり。これまでに得た技術と技能全てを吐き出す発表会。

 

「期末テストに命かける奴はいないだろ?」

 

「……大学受験レベルですらないんですね」

 

「お前らにはまだ早い。せめてIE本選に出場するレベルにならねぇとな」

 

「それ日本だとリョーさんぐらいしかいないじゃないですか!?」

 

 そう、今はまだいいんだよ。

 

 そういうのを背負うのは俺一人で。

 

「なんかそう言われると、ちょっとだけ気が楽になった気がするっす!」

 

「そうだな! ……いや期末テストって聞いたら逆に気が滅入らねぇか?」

 

「そういえば本当の期末テストも近いんだよなぁ……」

 

「うわ忘れてたっす……」

 

 四季が前向きになったかと思ったら、春名と隼人と共にあっという間に沈下してしまった。ライブが年末だから、期末テストの時期と被ってしまったことに関しては正直申し訳ないと思っている。

 

「リョーさ~ん……! また夏休みのときみたいに勉強会を~……!」

 

「僕からもお願いします。僕たちだけで面倒を見るのは少し手に余ります」

 

 パチンと手を合わせて懇願する隼人だけではなく、旬からも勉強会の開催が懇願された。

 

「まぁ学生組にとっては死活問題だろうからな。分かったよ」

 

 ハイジョだけでなく、多分未来ちゃんとか愛ちゃんとかあかりちゃん辺りもヒイコラ言っていることだろうし、少しでもライブに集中できる環境を作ってやるのも運営側の仕事だ。

 

 

 

「ついでにそこで隼人はおっぱい大好きクラブの初顔合わせだな!」

 

「その話続いてたんですか!?」

 

「ふざけた話と真面目な話の寒暖差が酷い!」

 

 

 

 

 

 

「あ、次郎さん」

 

「いいぞ……! こい……! そのまま逃げろ……!」

 

 テレビ局の休憩スペースで見つけた次郎さん。どうやら備え付けられたテレビで競馬を見ているらしく、テーブルの上に置かれた両手が固く握りしめられている。

 

 次郎さんの反応を見ると、現在先頭を大逃げしている馬の馬券を買ったらしい。

 

 ……あ、凄い勢いで後続が上がってきてそのまま差し切った。

 

「おぉ、G1六連勝でついに獲得賞金が史上初の20億を超えましたか」

 

「うわあああぁぁぁ……!」

 

「え、嘘でしょ次郎先生そんなに頭抱えるほど負けたの?」

 

 レース結果が出た途端頭を抱えてテーブルに突っ伏してしまった。競馬に負けて本気で悔しがる人、両さんぐらいだと思ってた……。

 

「だが俺は悔いていない……! 俺は大逃げの夢を買ったんだ……!」

 

「夢を買うことは結構ですけど……」

 

 テーブルの上に放り出されていた馬券を手に取る。

 

「……いやだからってド本命外した三連複は夢が溢れすぎてません?」

 

 突っ込んだ額に触れてあげないのは僅かばかりの慈悲である。

 

「すどうさん……一生のお願いがあります……!」

 

「トイチ」

 

「これ以上ないぐらい明確な拒絶を意味する三文字!」

 

 拒絶はしてないですよ。誠意さえ見せてくれれば……ね?

 

 

 

「……競馬って怖いんだな、享介」

 

「そうだね、悠介……」

 

 

 

 違うんだよ、たまたまこの惨状を眺めていた蒼井兄弟……競馬が怖いんじゃなくて、馬券でお金を稼ごうとする考えが怖いんだよ……。

 

「いくら元が付くとはいえ、子どもを未来に導く教師の姿がこれっていうのはどうなんですか……?」

 

「本当に申し訳ない……」

 

「ミスターやましたに代わってソーリー……」

 

 その後、道夫先生と二人並んでコンコンとお説教をした。

 

 

 

 八事務所合同ライブまで、残り一ヶ月。

 

 

 




・隼人勧誘中
正直隼人Pの方々には(少しだけ)申し訳ないと思ってる。

・G1六連勝
執筆中にジャパンカップ見てたので。このまま引退か、有馬まで頑張るか……。

・馬券でお金を稼ごうとする考え
悪いとは言わないけど……。



 男子らしいおバカな会話だらけ。

 第八章も残り一話。

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